どうにかして希望を見出そうと(Karyu)
『[evolve]』について伺っていきたいと思います。今作の作曲者は、キリトさん6曲、Karyuさん4曲ということで、キリトさんの曲数がKaryuさんより多いのは2011年のアルバム『BABEL』以来です。キリトさんの曲が多くなることは想定していたのでしょうか?
Karyu:いや、全然それはなくて。今回が一番多く全員が曲出ししたアルバムじゃないかなと思います。その中でも、曲が上がってきている段階で、リーダー的にこの流れでいこうというのを決めていたのかなと思います。本人じゃないので実際はわからないですけど。
KOHTA:兄さんのほうは特に、これをやりたいという明確なものが結構後半で出てきたので、それで形になっていったという感じですね。曲数が足りないとかではなく、ギリギリまで模索して出てきた結果です。
Karyuさんはアルバム『RESONANCE』(2018年11月リリース)で出し切った感があって悩みながらも、『FAUST』(2019年11月リリース)で実験して新たな可能性を見出したので、「2020年は気分が晴れやか」と昨年言っていましたが、その点では結果どうでしたか?
Karyu:あの時は晴れやかでしたけど、今年は人生で経験したことのないことが起こっているので、必然的に日々思うことや感じることが普段より多くて。そういう部分で考えると、割と作りやすかったりはしました。前作が結構キャッチーだったり、一般的にも聴きやすい感じだったので、それはそれで良しとしつつ、今回は自分のマニアックな部分とかやりたいことを、よりフィーチャーして作ろうというのがまずあって。だから、今作に収録していないものも含め、僕が出した曲はマニアックなものが多かったと思います。
今作は1曲目「Enter the NEOPHASE」から苦しみの中でも希望の光を感じられて、全曲聴き終わった時に、すごく優しさ、愛情を感じるアルバムだなと思ったんです。もちろん歌詞が大きな要素ではありますが、曲順もそういう印象に繋がる要因の一つかなと。
KOHTA:それはありますね。確かにいつもとは違うというか、単純に進化した自分たちを見てくださいということだけじゃなくて、今年は誰しもが同じ大変な思いをしてきた中で、僕らもそれは一緒だし、僕らも皆に勇気付けられているから、共に歩んで行きましょうという思いですよね。最後の「ALL FOR YOU」は特にそれを感じてもらえるかなと。優しさだけじゃない力強さだったり、寄り添って皆で合わさった力というものを感じてもらえる作品になったと思います。
全10曲の中でファンの方が少なくても3回は泣いてしまうだろうなと思いました。キリトさんの思い、バンドとファンの皆さんで乗り越えてきた2020年の様々な出来事が蘇る作品です。
Karyu:状況が状況で色々と重なったりして、メンバー自身もそうなんですけど、どうにかして希望を見出そうと。そういう思いが曲の流れなどにも反映されているので、かなり共感はしてもらえると思います。
〈希望〉と〈未来〉というワードが歌詞に多く出てきますよね。詞に関しては、全ての曲において今年キリトさんが話していたことが詰まっているなと。そういう意味でも2020年を表す作品になっていると思います。
KOHTA:今年の状況だったり、僕らの精神的状況が詰め込まれていますね。僕は特に「ティアドロップ」は色々と響きます。何て言うか…結果的に愛に溢れているというか。細かい表現はさて置き、全体的に前向きな感じを受けますよね。やっぱり、特に「ALL FOR YOU」はいいなと思います。
全体の流れが本当に素晴らしくて、後半「ティアドロップ」「春の風」「MISSING LINK」「ALL FOR YOU」が、より響いてきますね。
KOHTA:Karyu作曲の「春の風」「MISSING LINK」も、すごくマニアックだけど、ちゃんとポップに聴かせる部分を押さえていて、良い流れだと思いますね。
「春の風」はキャッチーなだけではない力強さがある曲で、構成は複雑かつサウンドはヘヴィーですよね。
Karyu:よくぞ言ってくれました! 僕の言うマニアックさって、構成の間に出てくる一部分で、急にそんなの出てくるの!?みたいなものがあって、自分的にそういうものが得意だったりするので、それが詰まった曲です。
「MISSING LINK」は、また構成が不思議な曲で。私が思うAメロ、Bメロ、サビの認識は合っているのか疑問だったりします(笑)。
Karyu:それはもう僕の術中にハマっていますね(笑)。
KOHTA:この曲は特にそうですよね。Bメロというよりも、Aメロ、サビ、大サビみたいな錯覚に陥るというか。
Karyu:サビを二つ作りたかったんですよ。でも、イントロから最後までコード進行はずっと一緒なんです。そういう聴かせ方のマニアックさみたいなところで、同じコード進行だけど聴かせ方で大分変わってくるよというのを突き詰めた曲ですね。
Karyuさんの曲はあと1曲「Amon」がありますが、これはとてもKaryuさんっぽいなという第一印象でした。
Karyu:まさに。それと同時にもろにコロナ禍の精神状態が反映されていて、負の感情がものすごく入っている曲ですね。でも、それに立ち向かって行くようなイメージで作りました。
KOHTA:陰と陽の差が激しいというか。そこは面白いなと。出だしなんか、もうドロドロじゃないですか(笑)。だけどサビで開けるので、そのギャップがKaryuの得意なところでもあるし、より表現できていると思いますね。
確かに、Karyuさんが得意とするものでありつつ、サビの開き方がまた新しい感じだなと。ベースのコード感がグッとくるポイントな気がしました。
KOHTA:割と自由にやらせてもらいましたね。いつもKaryuの曲は、割と自分のテイストを入れさせてもらっていますけど、この曲は歌メロも良いので、それを邪魔しない程度にうねりを意識しました。
大袈裟ではなく生きていく上での糧になった作品(KOHTA)
ところで、「:evolve」は曲調としてリード曲になるだろうという想像はしていましたか? というのも、「Swallow」は結構リードっぽい曲調だなと感じて。
Karyu:「:evolve」は想像していませんでしたね。ただ、周りがやらなそうな感じというのは「:evolve」のほうが強いかなと思うので、多分Angeloらしさというところで、この曲になったのかもしれませんね。
KOHTA:僕も想像はしていませんでした。でも、10月4日のライブでやってみて、視覚的にも曲の画が見やすかったのはあるので、これがタイトル曲になるのはわかるなと思いましたね。
ちなみに、「:evolve」はサビのリズム隊が忙しそうだなと思って(笑)。
Karyu、KOHTA:(笑)
KOHTA:確かに、忙しいです(笑)。特にドラムなんか…というか、ドラムはどの曲も忙しそうですけど(笑)。
そうですよね。相変わらず大変そうな曲が多いなと思いました(笑)。
KOHTA:「Swallow」もそうだし、「CELL DIVISION」とかエゲツないテンポで(笑)。
Karyu:地獄ですよね(笑)。
KOHTA:やっぱりTAKEO君は器用なドラマーだなと思いますね。よく叩けるなと毎度思うし、その中でもTAKEO君らしさというのがちゃんと入っているので、ドラムも聴きどころですね。忙しさや再現度の難しさとか、心をくすぐられるんじゃないかなと。
Karyuさんは作曲する上で、いつも新しさや音色など様々な部分でこだわっていますが、今回これは言っておきたいということはありますか?
Karyu:新しい試みで言うと、自分の中での裏テーマ的な、構成を複雑にする、今までやったことのない感じにするというのは、クリアできたと思うので良しとするんですけど、有観客のライブをやってみて、今までのライブができないのであれば、現状に見合った曲というか、その場でも楽しめるようなアイディアを入れた曲を作っても良かったのかなと、今となっては思いますね。
KOHTA:今回収録されなかったKaryuのデモ曲の中にも、僕個人的には結構好きな曲がいっぱいあったんですよ。
Karyu:正直、僕もかなり自信作だったんですけど(笑)。
KOHTA:兄さんもそうですけど、Karyuも結構ギリギリまで曲作りをしてくれていて、特に最後のほうで出してきた曲とか、本当に今作に入っていてもおかしくないクオリティーだったし。
Karyu:いつか日の目を見るのかどうか…。でも、リーダーがストーリー的にこういう流れでというのがあったと思うので、アルバムが完成してみて、やっぱりそれに相応しい曲が選ばれているなと。だから…仕方ない(笑)。
KOHTA:コンセプト的にも、彼が描いていたものには、本人が持ってきた曲がハマるんだろうなというのはメンバー皆思ったので、今回はこういう形になりましたね。
やっぱり今作はストーリーがすごく見えますもんね。
KOHTA:彼の場合は歌詞も書くので、色々と同時に考えて、こういうのが欲しいというものをギリギリまで悩んで出してきたんだと思います。そこら辺はデモの段階で伝わってきたので、これでいこうと決まりました。
もうこうなったら年に1枚ではなく、もっと出してしまうのはいかがでしょう(笑)。
Karyu:いやいや、もたないですよ(笑)。
KOHTA:10年以上、アルバムを毎年リリースしているアーティストって、なかなかいないと思いますよ。それをやって来られたのは、メンバーにもファンの皆さんにも感謝ですよね。
年に一度、新しい作品を聴けることが、こんなにも嬉しいことなんだというのは、Angeloで年々感じています。
Karyu、KOHTA:おー、ありがとうございます。
KOHTA:今年は特にそうかもしれないですね。世間がこういう状況下で、ここまでのクオリティーのものができて、改めてそう思ってもらえるのはすごく嬉しいし、自分たち自身もまだまだいけるという確信にも繋がります。そういう意味で、しんどい時期だったけど、それだけじゃないなと。この先の希望だったり、大袈裟ではなく生きていく上での糧になった作品でもあります。今年もあと2ヵ月弱で終わりますけど、これが必要なことだったんだなと思えば、2020年の状況もそんなに悲しむことではないなと思えます。
さて、11月17日からツアーがスタートしますが、今作の中でライブ映えしそうだなと思う楽曲は?
Karyu:今まで通りなら「MISSING LINK」は良い光景が浮かぶんですけど、そうなればいいなという希望も込みで、この曲ですね。
KOHTA:今回はライブ映えを考えて作ってはいないですけど、「:evolve」はオーディエンスを巻き込みやすい曲でもありますし、結果的にどれもライブ映えしそうですね。「Swallow」も良い疾走感で入り込めると思うし、「Amon」もライブでやるのが楽しみですね。あの世界観からの弾け方とか、ファンの方も結構喜んでいただけるかなと思います。
Karyu:個人的に「CELL DIVISION」は、お客さんがどのテンポで取って頭を振るのかが楽しみです(笑)。ハーフにするのか、そのままいくのか(笑)。
KOHTA:そのままいったら、頭取れちゃいそう(笑)。
速いですからね(笑)。ちなみに、KOHTAさんとギルさんがイヤモニをするようになったのは、キリトさんがアンプの音が大きいと怒るから、とYouTubeラジオ生配信「深夜で切人」で言っていたのですが(笑)。
KOHTA:イヤモニに関しては、僕もギルもむしろ逆の理由ですね。僕は、誰の音とかではなくて全体的にサイドのスピーカーから出る音が大き過ぎて、耳の疲労がすごかったのでイヤモニにしました。
Karyu:ギル以外皆、音がデカいんじゃないですか(笑)。
KOHTA:君が一番デカいと思いますけど(笑)。あとは、歌やシーケンスも結構なボリュームで返しが出ていて収拾が付かなくなってきたので、変えたというのが大きいですね。やっぱりイヤモニにすると欲しい音の調節ができるので、良いんですよね。
なるほど。では最後に改めて、ツアーに向けてファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
Karyu:現状、緊張感のある中でのツアーになるので、まだ今も無事できるのかという不安があります。毎回言っていることではありますが、今しか感じられない空間ではあるので、この瞬間を一緒に楽しめたらなと思います。最善の対策をして、お互いに楽しみましょう。
KOHTA:こういう状況下で迎えるので、まだ気を付けなきゃいけないことはたくさんありますが、それでもやっぱり日常を取り戻していかなきゃいけないというところで、前向きに捉えて皆で乗り越えていけたらいいなと思います。僕らだけじゃなく、皆が協力してくれないと成り立たない空間でもあるというのは、今年はより痛感しましたし、未来に向かってやっていけるように、皆で一丸となって頑張りましょう。
(文・金多賀歩美)
Angelo
キリト(Vo)、Karyu(G)、ギル(G)、KOHTA(B)、TAKEO(Dr)
オフィシャルサイト
リリース情報
New Album『[evolve]』
2020年11月11日(水)発売
(発売元:ブロウグロウ/販売元:ソニー・ミュージックマーケティング)
[初回限定盤](CD+DVD)IKCB-9573~74 ¥3,500+税
[通常盤](CD)IKCB-9575 ¥2,800+税
収録曲
[CD ※共通]
- Enter the NEOPHASE
- Swallow
- :evolve
- CELL DIVISION
- Amon
- AN ENDLESS MULTIVERSE
- ティアドロップ
- 春の風
- MISSING LINK
- ALL FOR YOU
[初回限定盤DVD]
LIVE映像(10月4日@大宮ソニックシティ 大ホールより「:evolve」他4曲)
ライブ情報
●Angelo Tour 2020-2021「THE FORCED EVOLVE」
2020年
11月17日(火)CLUB CITTA’川崎
11月18日(水)CLUB CITTA’川崎
12月19日(土)大阪umedaTRAD
12月20日(日)名古屋ボトムライン
12月25日(金)TSUTAYA O-EAST(※FC限定)
12月27日(日)仙台Rensa
2021年
1月9日(土)TSUTAYA O-EAST
1月10日(日)TSUTAYA O-EAST
- 11月17日、1月9日、1月10日公演はZAIKOにて生配信あり