◆世界は残酷だという前提で、だけどというところから始めないと伝わらない(キリト)
――「DEEP VISION」はイントロからグッときます。これもAメロとサビ直結のシンプル構成ですが、リズムがKaryuさんらしいと言うのかTAKEOさんらしいと言うのか。KaryuさんからTAKEOさんには何か指示はあったのでしょうか?
Karyu:デモ通りにやってもらうのが基本で、そこからアイディアがあれば試してみて、良ければ取り入れるというのがここ数年のやり方ですね。
――ということは、やはりKaryuさんの作曲段階でリズムが普通ではないんですね(笑)。
Karyu:普通だと、このバンドでは通らないので(笑)。
キリト:普通で怒られるという変なバンドです(笑)。
――さすがAngelo(笑)。「DEEP VISION」で生から死まで描かれていて、最後の楽曲が「CRUELWORLD」という流れもとても綺麗で。それと、1曲目で〈それでも世界は続く〉と歌っていて、ラストが「CRUELWORLD」=残酷な世界というのが、キリトさんらしいなと。ネガティブに取れるタイトルですが、描かれている内容はある種ポジティブですよね。
キリト:自分の中で「CRUELWORLD」は、始まった途端に一番泣きそうになる曲なんです。歌詞の内容も多分100人中20人、もしくはもっと少ない人数しかちゃんとは理解できないと思うんですよ。言葉自体は簡単なんだけど、並べる時にちょっと暗号っぽくしているところがあるので、そのまま通じる人がどれだけいるかという部分で不親切なんだけど、自分の中ではリアルそのもので。タイトルが「CRUELWORLD」じゃなかったらそんなに感動できないんですよ。例えば「WONDERFUL WORLD」や「BEAUTIFUL WORLD」だったら一つも感動しない。「CRUELWORLD」だからリアルなんです。
――確かにそうですね。
キリト:要は目を背けて逃げ回る人にとってはこの世界は残酷なままだけど、単純なもので、向かい合う人に対しては世界は手を差し伸べる時もあるよと。目を背けていれば一生助けてくれない、諦めない人にだけ最後のほうで答えをくれるよという、その言い方は不親切に聴こえるかもしれないけど、リアルなメッセージだと思います。そりゃ厳しいよ、その厳しい中でどうしていく?っていう言い方しかできないんですよ。「世界は素晴らしいんだから、手首を切るなんてバカだよ」なんて言う奴がいたとしたら、僕は平手打ちします(笑)。アホなことを言うなと。そういう薄っぺらい甘い嘘を多くの大人は言うじゃないですか。それはなぜかと言ったら、他人事だから。言っている人間は、今この自殺を止めたいと思っているけど、来年その子が自殺するかどうかまでは知ったこっちゃないんですよ。だから結局、直接的なものというのはその程度なんです。そんな残酷なもの。
――なるほど。
キリト:だからと言って、歌だってそんなことは出来ない。ということは、他人はそんなことは出来ない。もっと言えば、世界はそんなことはしてくれないんだよ、甘えるなと。だけど一つ言えることがあるとすれば、諦めないで向かい合い続けるバカに対して、宇宙や世界は不思議なほど急にパカンッて蓋を開ける時があるんだよねということ。嘆いてばかりいる奴には一生ヒントすら見せないのが世界だから、考え様によっては残酷だし、考え様によっては素晴らしい。それは世界がどうこうじゃなくて、見る人間の目でどうにでも変わる。ということを言うには、こういう形の不親切さが自分にとってのリアルだなと。自分に言い聞かせている部分もありますけどね。
――私としては、この歌詞はわかりやすかったです。
キリト:そういう部分でも、このアルバムは共鳴する人を“作る”のではなく“探す”ということなんだと思います。決して親切ではないし、わかってもらうためにあれこれしているわけじゃなく、ぶっきらぼうな作品かもしれないけど、それをそのまま共鳴できる人もいればできない人もいる。一番のリアルじゃないかなと。だから、この曲で一番泣けるという人と僕は気が合うんだろうな(笑)。
――キリトさんが真剣に生きているからこそ描けるものだと思います。『RESONANCE』全体を通して、世界は続いていくから、死を迎えるその瞬間までどう生きるのか、ということなんだと思いました。
キリト:生きる素晴らしさを悩める若者に説く大人はいっぱいいるじゃないですか。いろんな手法があるけど、無条件に「世界はこんなに素晴らしい」と言ったとしても、その時に地獄の中にいる人にとってはその言葉は全然入ってこないですよね。例えば壮絶ないじめに遭っている人に「学校なんてあと数年我慢すれば、社会に出れば変わるんだから」なんて言ったとしても、絶対に入ってこないでしょ? その人にとっては今地獄なわけだから。「生きるってことは辛いことだよね、わかるよ」というところから話を始めないと、何の打開策も見えないし、気休めにもならない。だから世界は残酷だという前提で、だけどというところから始めないと伝わらないんじゃないかなと思うんです。
――前提が違うということですね。
キリト:周りの人間に対してもそうです。僕が誰から見ても良い人というところから始まれば、僕が何か間違えたら皆は文句を言うんですよ。だけど、僕がひどい人だという認識が皆あるから(笑)、ちょっと良いことをするとすごく良いことをしたように見えるし、僕が多少悪くてもそういうものだと済ませてくれるじゃないですか。
Karyu:(笑)!
キリト:そのほうが得じゃないですか(笑)。子供の時からずっとこの考えで生きていますから(笑)。
――6年前のインタビュー時に、8:2の黄金率の話をしましたね(笑)。
キリト:8厳しく2優しく! これが人間を操る黄金率です。…バラしちゃった(笑)。
Karyu:(笑)
◆そこを貫かなかったら、俺がこのシーンにいる意味ってないよなと感じる(キリト)
――キリトさんは2018年がデビュー20周年で、Karyuさんはこれから始まるツアー中にお誕生日を迎えます。ツアーも含め、2019年に次の年齢を重ねる時まで、どんな時間を過ごしていきたいですか?
Karyu:今回のアルバムが自分的に希望を持てる1枚になったので、新しい感覚でも出来るし、世間的にもすごく広がりが生まれるんじゃないかなという思いも込めて、ツアーを頑張っていこうと思います。ここから先の1年は、多分悩むでしょうね。もうこれ以上のものは作れないなという状態なので、早くも悩んでいます(笑)。
――『RESONANCE』を作り上げて、今は出し切った状態でもありますからね。
Karyu:次の何かが見つけられるツアーにもなればいいなと思います。
キリト:今年はソロでライブをやったり新曲も出したけど、パフォーマンスにしろ音源にしろ、やっぱりバンドで作るものには敵わないなというものでなくちゃいけないと思って。とは言え、自分が今後Angeloとは違う枠で実験して何かを見つけられれば、それを次のアルバムに還元できると思うし、そういう意味では今回のアルバムはソロで曲を出したのと作業が並行していたのもあって、キリトの曲が今までで一番少ない数で抑えていますけど、次は自分がバンド以外で突き詰めた可能性を、ちゃんと還元した形にしたいと思います。
――今年のソロのライブはアコースティック形態とバンド形態で、キリトさんのヒストリーを振り返れるものでもありましたが、MCで言っていた「バンドありきのソロ」「バンドのヴォーカリストとしてやっていきたい」という言葉も、ファンの方にとって印象深いものだったと思います。
キリト:今のところ、一人で何かをやってみても、自分がメインで考えているバンドというのは、そのどれにも及ばないほど予想外のものだし攻撃的なものだし、ドキドキするものという意味で、やっぱりバンドのヴォーカリストという生き方が自分にとって一番ドキドキするし、緊張感があって面白い生き方になるんですよね。もし一人でやるものが、バンドで出すものよりも遥かに上にいくということであれば、その価値観も変わるんだろうけど、バンドで世に出て未だにそのスタンスでやっている自分からすると、単純に他人が集まってバンドをやるというのが、自分の想像力を超える何かを期待できるものなので、その価値観でそのまま素直に対応しながらやっていくという歳の取り方が、今の自分にとっては理想なんだろうなと思います。
――キリトさんのバースデーライブでもあったAngelo LIVE at TOKYO DOME CITY HALL「THE CYCLE OF REBIRTH」のレポートにも書きましたが、ソロのライブの後にAngeloのライブを観ると、やっぱりキリトさんはバンドのヴォーカリストなんだなということを強く感じます。
キリト:そうですね。人によっては違うんだろうけど、僕の場合はたまたまそうだった。下手したらギスギスしかねない刺々しい関係性の中で、常に良いものを作るんだということのみに集中した…チンピラたちが(笑)、すごいものを作ってしまうという奇跡はバンドじゃないと出来ないことですからね。その荒々しさ、不確かな中で何か光るものを作っていくという作業は、決して楽しいことではないし、効率的でない時代にもなってきているのかもしれないけど、やっぱりそこを貫かなかったら、俺がこのシーンにいる意味ってないよなとは感じるので、こういう奴がいてもいいんじゃないかなと。やっぱり人それぞれで、一人で上手くいけば、もう今更バンドじゃないんだよなという人もいるだろうし。だけど自分の場合は試してみた結果、不思議とどこまで行ってもバンドマンでしかないというのを思い知っているので、こういうタイプもいるんですよね。
(文・金多賀歩美)
Angelo
<プロフィール>
キリト(Vo)、KOHTA(B)、TAKEO(Dr)の3人により結成され、2006年8月に正式デビュー。2011年8月、Karyuとギルのギタリスト2名が加入し、新生Angeloとして動き出す。同年10月、5人での初のアルバム『BABEL』をリリース。その後もリリース、ライブ活動を精力的に展開し、2015年にはパシフィコ横浜公演を成功させた。2016年に結成10周年を迎え、TOKYO DOME CITY HALLにてアニバーサリー公演を開催。2018年11月15日のTSUTAYA O-EASTを皮切りに、ニューアルバム『RESONANCE』を引っ提げた全国ツアーを開催する。
■オフィシャルサイト
http://angeloweb.jp
【リリース情報】
『RESONANCE』
2018年11月14日(水)発売
(発売元:ブロウグロウ 販売元:ソニー・ミュージックマーケティング)
【収録曲】
[CD](※初回限定盤、通常盤共通)
01. ACTIVATE RESONATE
02. CREVASSE
03. 残響
04. NEW CENTURY BIRTH VOICE
05. REUNION
06. ホログラム
07. 荊棘の棘
08. BREATH
09. DEEP VISION
10. CRUELWORLD
[初回限定盤DVD]
LIVE映像(10/4@豊洲PITより「CREVASSE」)
【ライブ情報】
●Angelo Tour 2018-2019「WAVY EFFECT OF RESONANCE」
2018年
11月15日(木)TSUTAYA O-EAST
11月17日(土)YOKOHAMA Bay Hall
11月18日(日)YOKOHAMA Bay Hall
11月21日(水)新宿BLAZE
11月22日(木)新宿BLAZE
11月29日(木)広島CLUB QUATTRO
12月1日(土)福岡DRUM Be-1
12月2日(日)福岡DRUM Be-1
12月8日(土)札幌 PENNY LANE 24
12月9日(日)札幌 PENNY LANE 24
12月15日(土)仙台 darwin
12月16日(日)仙台 darwin
12月22日(土)umeda TRAD
12月25日(火)TSUTAYA O-EAST(FC限定)
12月27日(木)名古屋CLUB Diamond Hall
2019年
1月4日(金)マイナビBLITZ赤坂
1月5日(土)マイナビBLITZ赤坂
●Angelo LIVE at 新木場 STUDIO COAST「PENETRATE RANGE」
2019年2月23日(土)新木場 STUDIO COAST