Angelo

僕が言ってきたことが正しかったということの証明になる

この度『CIRCLE』がリリースとなります。円=全てが繋がっている、ループする、そういうものの象徴としてのタイトルであり、活休前最後の作品だからこそ、ずっと描き続けてきたことを最も端的に表す言葉としてチョイスしたのかなと。

キリト:そういう意識でやってきていますからね。ただ、CIRCLEというのは螺旋でもあって。二次元的に考えれば一つの円ではあっても、立体的に考えると螺旋になっていて、繰り返し続いていくんだという、円を描きながらも前に進んでいるという意識のCIRCLEなので、決して円の終着点が終わりではなくて、次の螺旋の始まりであるんだよということですね。

歌詞の中にも〈螺旋〉や〈連鎖〉というワードがありますね。サウンド面において、1曲目に攻撃的な「COUNTDOWN」を持ってきた意図というのは?

キリト:一つの作品なので映画みたいなもので、言いたいことは一つあったとしても、序盤で緊張感を持たせて、そこからスピード感の変化もありつつ、最後まで聴いてもらった時に本質の言いたいことが伝わればいいなという感覚で。なので、自分なりに色々な選択肢を考えた時に、やっぱりAngeloらしさということを考えれば、攻撃性から始まるのがらしいんじゃないかなと思ったんですよね。

一切手を緩めないAngeloの姿であったり、攻撃的に始まって温かなラストへ向かっていくという作品の流れが、とてもAngeloらしさを感じました。リード曲をどんなものにするか、これまでより悩んだりはしましたか?

キリト:いや、今回は悩まなかったですね。「SIGHT」は今作で最初に作った曲で、僕自身はAngeloを一度止めるということをわかった上で作っているので、最初に作った「SIGHT」にそれが全部詰まっているんですよね。そこから始まって他の曲を補完していくという感じだったから、「SIGHT」は核になるものだったし、自分の気持ちを一番素直に出している曲かなと思います。

曲調だけで考えると、近年のAngeloだったら「SIGHT」がリードにはならなかったんじゃないかと。攻撃的な部分やAngeloらしいマニアックさとキャッチーさの共存という観点では、「ガイア」が一番それっぽいかなと思って。

キリト:Angeloも色々なアプローチをしてきたんだけど、それ自体が肩透かしというか、ひねくれたAngeloというバンドらしいなと逆に思ったんですよね。だから「SIGHT」をチョイスしたというのもあります。「ガイア」みたいな曲をリードに持ってきたほうが、最後までらしかったねという考え方もあれば、だからこそ肩透かし食らわすんだよというところで「SIGHT」を持ってくるのもAngeloらしいと言えるので、どの選択をしたかということですね。

「SIGHT」になったのもすごく理解はできて。温かさや未来に向かっていくイメージが重要だったのかなと感じました。周年ライブで初披露した際も、とても温かな空気で。あの時の映像が今回のMVにもなっていますが、初披露した時の感触はいかがでしたか?

キリト:さすがに皆泣いているなと思いましたけど、ただ、本当に言いたいことはここから徐々に伝えていければいいと思いながら歌っていました。悲しいだけじゃない、やってきたこと全てが大事なことで、前向きに一つの終わりを迎えるという考え方だってできるんだよということを、これから見せていかなきゃいけないと思っています。

アプローチは様々あれど、今作で伝えているのは、終わりは始まりであることだと思います。活休前最後の作品だからこそ、キリトさんが描き続け、伝え続けてきた芯の部分をブレずに、なおかつ顕著に表したかったのかなと。

キリト:まさに。一つの終わりというのは別の始まりでもあるのは絶対にそうだから、別れもまた他の出会いを迎えるに当たっての始まりということでもあると思うし、もっとマクロ的なことを言えば、死ですら何かの始まりかもしれないじゃないですか。魂が残るのか生まれ変わるのか、確信的なことはわからないけど、やっぱり人の死というものも何かの始まりであると思うので、生と死が表裏一体のように、終わりと始まりは繋がっているんだという元の考えがあります。

それこそ「PURELAND」は死というものを人生の分岐点とリンクさせて描いているのだと思いますが、特にキリトさんの今を感じる、リアリティのあるメッセージに感じました。

キリト:「PURELAND」って字面だけ見ると、純粋な楽園みたいな感じにも思えるけど、直訳すると極楽浄土で、死を迎えて浄土に向かう、だけどそこから魂が次にどこへ向かうのかというところでは始まりでもあると。それと、そこまで抱えていた色々な苦しみから魂が解放されて、また何もないところから始まりを迎えるという。開放感もあるけど死をイメージして書いた曲でもあるので、そこのバランス感というのは独自のものだと思うんですよね。ポップで明るいように聴こえる曲ほど、結構怖い歌詞を書いていたりするので(笑)。

「PURELAND」にある〈何もかもありのままに見せよう 次の物語で迷わないように〉〈終焉の構造までも描こう 次の物語でめぐり逢うように〉という部分など、キリトさんの生き方が表れていて、「自分の生き様をロックバンドのヴォーカルという立場を通して、全てをストーリーとして見せていくことが、僕が選んだエンターテインメントの道。だから、生き様そのものを間違っちゃいけないと常に思っていて」という以前YouTubeライブで話していたことにも繋がるなと思いました。

キリト:まさにそうですね。

生き様そのものを見せていくという意識は、いつ頃からあったのでしょうか?

キリト:んー、結構最初からそうでしたよ。じゃないと、リアルな作品を作るのは難しいと思っていて。ただ、モチーフは色々なところから持ってくるんですよ? それこそ架空の話に見せかけて、実際は自分自身に置き換えてリアルに表現しているという、二重構造みたいなやり方をしてきたので。でもやっぱりそれくらいの覚悟がないと自分の言葉というのは出てこないと思ったし、例えばラブソング一つ書くにしても、業界にあるフォーマットを何かパクって持ってきて、こんなラブソング書きましたというのでは恥ずかしくて歌えない。自分の実体験や価値観、痛みや苦しみも全部詰め込んだ時に、ただのラブソングじゃなくなる。自分にとってリアルであれば、そのリアルさが聴いている人に全部は伝わらなくても、ちょっと他とは違うぞというところまでは行けるんじゃないかという風に最初から思って書いていました。痛みや苦しみもちゃんと伴っているからこそ、その中に見えた希望や喜びというのが伝わるんじゃないかなと思います。

バンドの状況を考えると、全てそれを重ねて歌詞が捉えられるところはありますが、コロナ禍に通じるものでもあるし、むしろ普遍的なテーマですよね。なおかつ、ファンの皆さんへ向けたリアルタイムのメッセージとして綴った部分もあるんだろうなと。

キリト:奇しくもAngeloというバンドも終わりを迎えるということは、辛いことではあるんだけど、同時に僕自身が歌詞の世界観としてずっと繋げていたストーリーに、ちゃんとした説得力を持たせる結果になったのかなと思うんですよ。物事には必ず終わりがあって、だからこそその時その時の今を大事にしなきゃいけないんだということを考えれば、Angelo自体がそもそも終わらないものであってはいけなかったので。それだと僕が言っていることが説得力に欠けるところがあったと思うから。別にそういうことを考えて終わりにするわけじゃないけど、実際にそういうタイミングが来てしまうことも、僕が言ってきたことが正しかったということの証明になる。そういう意味では、すごく皮肉な現象ですけど、物事には終わりが来るので、どう向き合って次に進むためのものとして自分の中で受け入れるかということを、ファンの人にも問わなければいけないのかなと。

なるほど。

キリト:だけど、そういう辛い問いを投げかけるからには、新しい自分の中での覚悟がやっぱりあるわけで、Angeloが終わっても僕自身が繋げてきたストーリーを止めないということが、辛い問いを投げかける側のせめてもの責任かなと思っているんです。まだ今の段階で言うことではないかもしれないけど、Angeloが実際に来年の1月に終わりを迎えても、その先、僕が作ってきたストーリーは終わっているわけじゃないということを見せていきたいと思います。それをどういう風に受け止めて感じてくれるかはファンの人たちの気持ち次第ではあるから、わからない部分ですけどね。強制する気はないけど、形は変わっても、求めてくれる人を受け止める場所というのを僕自身がなくすことはないです。

最後は笑顔で終わりたい

「砂の城」「SIGHT」「LINKAGE」「CONNECTED NEW CIRCLES」の後半4曲の畳み掛けは、曲調とストーリーが相まってとてもグッと来ます。「LINKAGE」は今作中もっともストレートな歌詞だと感じていて、タイトルも含めて「SIGHT」で伝えていることをさらに確かなものにするというか。

キリト:歌詞は一つのアルバムのことを考えて大体同時期にバーッと全て作っていくので、時期が離れることはないんですけど、曲順も決めてから歌詞を書いたり歌入れをしていくので、やっぱりストーリーとして繋がっているんですよね。だから「SIGHT」で言っていることがあった流れからの「LINKAGE」になっています。後半4曲の畳み掛けの中で何を言いたいかというのは、やっぱり悲しいことだけど、同時に次の始まりに対しての得体の知れない期待感のほうに目を向けようよという切なる思いですよね。難しいですけどね。それをそのまま「そうですか」と感情をコントロールできる人ばかりじゃないということをわかっていながらも、切ないほどにそれを伝えたいというか。

キリトさんの切なる願い。

キリト:今わかってくれなくても、いつか振り返った時にでもいいから、これで良かったんだと思ってもらえるようなものを作ることが、できる限りの誠意だし、そういう風にして発信するしかないんですよね。今全てをわかってくれと言ったって無理な話だから。だけど、時間が経ってわかってもらえることってあると思うんです。言ってみたら、僕の歌詞はこれまでもそんなものばかりだったんですよ。何年もしてから「あ、キリトが言っていたことってそういうことだったんだ」と、やっとわかってもらえるみたいなことってPIERROTの時からずっとそうだったので、時間差に関してはもう仕方ないというか、そういうものだと思っていますね。

ちなみに「LINKAGE」は始まり方も終わり方も新しさを感じたのと、展開がたくさんあってリズムパターンも多く、メロディアスだけど切なさもあって、個人的にはとても好きな楽曲です。

キリト:この曲に限らず、メンバー全員がAngeloが終わるということがありながらも当然決して手を抜くことなく、むしろ本当に最高傑作を作って終わりにしようという思いがあったからできたアルバムだと思うし、そういう意味では考えていることは一緒だったと思いますね。最高の状態まで持っていって終わりたいという。手を抜いたり投げやりになるんじゃなくて、最後までできることを全て詰め込もうという思いは一緒だったと思います。

歌詞に関しては各曲が絡み合っているのも感じたところで。例えば「COUNTDOWN」で〈始まりを描こう 逆説の未来へ〉と言っていて、「SIGHT」で〈終わりをただ描こう〉と言っていたり、「CONNECTED NEW CIRCLES」の〈嘆きの空を突き抜け〉は「PIERCE THE SKY」とリンクしたり、〈時間を越えて扉を開こう〉というのは「SIGHT」の最後の英詞部分と同じ意味ですよね。こういう絡み合いは意図的にそうした部分もあるのでしょうか?

キリト:アルバムなので1曲に全てを集約させる必要はなくて、曲ごとに微妙にやり方を変えつつ、だけどアルバム全体で伝えたい一つのメッセージに繋がればいいという考えなので、色々な矛盾した感情の揺れ動きは曲ごとにあっていいと思うんですよね。ただひたすら悲しんでないで前に進もうと言われたって、人は受け入れづらいし、悲しいものは悲しいとして、そうだよねという曲もあっていいと思うし、前に進むと一概に言われてもそこには抵抗があって、そうそう簡単ではないという気持ちがありながらも、だけどやっぱりやらなきゃいけないんだという、人間なので色々な感情が混在するけど最終的に一つの行動を取らなきゃいけないというところに繋がらなければいけない。そういう意味では全10曲で、それぞれ言っていることが微妙に違うものがあっていいと思うし、だけどキーワードとして共通するものがあるという不思議なバランス感というか。それこそが感情を伝えるという意味ではリアルかなと思いますね。

何も約束されていない未来だからこそ面白いんだということも、これまでキリトさんが伝え続けてきたことですが、「PIERCE THE SKY」では〈手を取り合って行こう〉、「CONNECTED NEW CIRCLES」では〈共に踏み出そう〉という一人称ではない表現なのが印象的です。

キリト:やっぱり全体的にファンの人のことを考えてですよ。全部が自分を取り巻く全ての人たちに向けたメッセージですよね。でも曲によって、例え一人称を使っていたとしても、それはファンの人たち一人ひとりに向けているので、誰か個人を指して言っている歌はないです。だから、〈君〉と言っていても、それ自体が聴いている一人ひとり全ての人たちに言っているので、言い方の問題ですけど、今回はそれすら使わずに、もっと多くの人にという使い方をしたのは、やっぱりこのタイミングでのアルバムだからというのが大きかったとは思います。

「CONNECTED NEW CIRCLES」の〈与えられた現在(いま)を生きよう〉で今作が締め括られるわけですが、ライブの画が見える楽曲であり、曲順のストーリーとしても破滅と創造、その連鎖だからこそ大切なのは今なんだという綺麗な流れになっています。

キリト:そうですね。過去とか未来とか、歌詞を書く上でモチーフにすることはあっても、結局一番大事なのは今現在だというのは、常に崩さず持っている気持ちで。数年前にPIERROTのライブを久しぶりにやった時にも、最後のメッセージとして、過去を懐かしんだり感傷に耽るのもいいけど、大事なのはその上で今を大切に生きることだと言ったのもそこだし、それは今も変わらずある思いです。Angeloは終わってしまうけど、やっぱり大事なのはこれから先、常に迎えていく今現在、それを大切にしてほしいというのが一番の思いでありメッセージですね。そういう気持ちの表れとして受け止めてもらえればいいなと。ネガティブな終わり方ではなくて、今までやってきた全てを肯定して、ポジティブなものに帰結させたいなという気持ちです。

11月20日から始まるツアーが「THE END OF CIRCLE」、そして1月15~16日の代々木第二体育館でのラスト2daysが楽曲と同じタイトル「CONNECTED NEW CIRCLES」ということで、まさに終わりがあって新しいサークルに繋がると。

キリト:そこが自分のひねくれたところかもしれないけど、やっぱり最後は始まりで終わりたいんですよね。無茶な言い方というか(笑)。そもそも僕はPIERROTでデビューした時も、最初のアルバムが『FINALE』(1999年)から始まったりしているから、始まりと終わりが実は同意義の言葉なんだという価値観は、その時から変わってないんですよね。始まりを描くには終わりを描かなきゃいけないし、終わりを描く時には始まりも描かなきゃいけないという逆説的な考え方。だからあえて始まりというコンセプトで終わりたいなと。Angeloの終わりを悲しむだけだと15年一生懸命やってきたものが可哀想だから、難しいかもしれないけど気持ちを切り替えて、それぞれの人たちがAngeloというものを一緒に楽しんだ時間を「良かったよね」と言って終われるような流れにしたいですね。最後は笑顔で終わりたいなと思います。

(文・金多賀歩美)

Angelo

キリト(Vo)、Karyu(G)、ギル(G)、KOHTA(B)、TAKEO(Dr)

オフィシャルサイト

リリース情報

New Album『CIRCLE』
2021年11月17日(水)発売
(発売元:ブロウグロウ/販売元:ソニー・ミュージックソリューションズ)

[初回限定盤](CD+DVD)IKCB-9576~77 ¥3,850(税込)

[通常盤](CD)IKCB-9578 ¥3,080(税込)

収録曲

[CD]※共通

  1. COUNTDOWN
  2. VOICE
  3. スーサイドゲーム
  4. PIERCE THE SKY
  5. ガイア
  6. PURELAND
  7. 砂の城
  8. SIGHT
  9. LINKAGE
  10. CONNECTED NEW CIRCLES

[初回限定盤DVD]
ライブ映像(10月4日@豊洲PITより「SIGHT」他4曲)

ライブ情報

●Angelo Tour 2021-2022「THE END OF CIRCLE」
11月20日(土)YOKOHAMA Bay Hall
11月21日(日)YOKOHAMA Bay Hall
11月24日(水)新宿 BLAZE
11月25日(木)新宿 BLAZE
11月29日(月)CLUB CITTA’川崎
11月30日(火)CLUB CITTA’川崎
12月4日(土)札幌 PENNY LANE 24
12月9日(木)仙台 Rensa
12月11日(土)名古屋 DIAMOND HALL
12月12日(日)大阪 umeda TRAD
12月18日(土)広島 CLUB QUATTRO
12月19日(日)福岡 DRUM LOGOS
12月25日(土)TSUTAYA O-EAST(FC限定)
2022年
1月8日(土)TSUTAYA O-EAST
1月9日(日)TSUTAYA O-EAST

●Angelo「CONNECTED NEW CIRCLES」
2022年
1月15日(土)代々木第二体育館
1月16日(日)代々木第二体育館