A9 come back スペシャル

A9 come back スペシャル パーソナルインタビュー 将

A9パーソナルインタビューのラストは、ヴォーカルの将。復活のステージとなった8月23日の11th Anniversary Live「Re:birth-飛翔-」を経て、客観的に自らを見つめ直し、全国ツアーで最新作『銀河ノヲト』を昇華させているA9だが、将が語るあのライブの裏側には、様々な思いが渦巻きながら、メンバー、スタッフ、ファン、A9に関わる全ての人たちへの愛情と誠意が満ちていた。さらに、あの件の最終結論から今後の課題(?)も…。

◆A9の中での自分というのを再確認して

――既にツアーがスタートしていて、FCライブ2daysを終えたところですが、改めて8月23日のライブの率直な感想を教えてください。

将:今まで映像や音で、みんなの元に帰ってきたよというのを伝えて、早く安心させたいという気持ちがあったんですけど、やっぱりバンドの本質ってライブだと思うので、A9として5人でステージに立った姿をやっとみんなに見てもらえたという安心感だったり、それができた喜びというのがまず僕らにあって。ファンの方から大切にしていただいているんだなというのがわかるような、そういう空気感が渦巻いているのを肌で感じるライブでした。

――幕が下りて、フロアが見えた瞬間はどんな気持ちでしたか?

将:11年前の5月19日に、初めてこの5人でステージに立った時も、ミドルテンポの曲で幕がサーッと開いて。その時、みんな紆余曲折ありながら前のバンドが解散したりして、それぞれがファンの前に帰ってきた瞬間でもあったんです。規模は全然違うんですけど、その始動の時とちょっとデジャヴでしたね。あと、たぶん結成1年のSHIBUYA-AXでのライブでも、紗幕を垂らしてシルエットの状態で丸々1曲やったんです。ああいう演出って、ちょいちょい大切な時にやっているというのもあって、それが余計に相乗効果でグッとくるスタートでした。

――沙我さんは、ああいう演出は照れるから、普通に出て行くほうがテンションが上がると言っていましたが、将さんはいかがですか。

将:ああいう舞台演出的な見せ方こそが、こういうバンドの強みだと思うんです。沙我くんは、もっとプリミティブなところで勝負したいという考え方の人なので、どっちがいいかというのはその時々ですけど。あの登場案は、独立を支えてくれたマネージャーも一緒に考えてくれて、みんなの元に帰ってきた瞬間を大事にしようという気持ちが、すごく表現された演出だったと思います。

――あのライブで、完全復活を遂げた実感はありましたか?

将:ライブの内容的にはツアー初日という感じで、テクニカルなところでは初日感は出てしまっていたので、あそこで「良かった! 復活した!」というつもりは全くなくて。やっとスタートを切らせてもらったという感謝の気持ちでいっぱいだったんですけど、各地にも待ってくださっているお客さんたちがいると思うので、あのスタートの場所からまた成長していかないといけないなという気持ちで、あの日のライブは終わりましたね。

――最新曲ではないにも関わらず、「Daybreak」や「Heart of Gold」などが、この日のためにあるような曲に感じられたのが印象的でした。

将:「Daybreak」を出した時は似たような状況だったんですよね。

――レーベル移籍第1弾シングルでしたよね。

将:はい。バンドってターニングポイントはその都度あるので、どうしてもかぶるところはあって。何より、去年やった「Supernova Symphonia」というツアーがアジアを含めるとバンドのキャリアで一番長いツアーで、その時にやっていた曲たちがみんなの中での最新の僕らとしてずっと残っていて、それが育っていてくれたんだなって。こんなにアンセムだったっけって、僕らもびっくりするくらいの一体感がありましたね。

――将さんのソロセクションのDJタイムはPITのみで、地方ではやっていないようですが、初の試みとしてやってみた感触はいかがでしたか?

将:僕がソロで何かやると言ったら、ピアニストを呼んで歌うとかもあるんですけど、それよりは自分の好きなことをやらせていただきました。でも、ああいうのって映像演出ありきだったりもするので、機材的な問題もあってPIT以外ではあんまりやるべきじゃないなと思って、PIT限定にさせてもらったんですけど、見てもらえてすごく嬉しかったですね。

――映像は虎さんが制作されたそうですが、あれは全部お任せだったんですか?

将:そうですね。二日前くらいに頼もうと思っていたVJの人ができなくなって、やっべーと思ったら、虎が「俺、やろうか?」って。もう、マジ愛してる。

――(笑)。

将:すごく嬉しかったですね。

――昨日(9月13日)のライブの「Spiegel」前のMCで、PITの時はオーディエンスに戸惑いを感じたと言っていましたが、PITではそのように感じる部分が多かったですか?

将:海外だと、とりあえず踊っちゃえみたいなところがあるので、戸惑うとかは見受けられないんですけど、日本のお客さんって、周りを見てどうしたらいいか判断する人が多いので。でも、みんな初めて聴いているから周りを見てもノレるわけがないという。それが日本のライブシーンの良いところでも悪いところでもあると思うので、全て受け入れて僕らからこういう風にしたらいいんじゃない?って、ちゃんと提案するほうが誠意かなと思って、そういうものを発信していこうと思っています。楽しんでもらいたいんです。

――ヒロトさん曰く、ツアーで早速PITよりも手応えを感じているとのことでしたが、もうだいぶ新曲やお客さんの変化を感じていますか?

将:PITが終わった時点では、5人でのバランスがすぐに噛み合っていたわけじゃなかったんですけど、11年一緒にやっているので、その辺がすぐに軌道修正できていっているというのが、バンドの力が付いてきているなと思う部分だったりしますね。

――なるほど。

将:個人的には、普段「ヴゥァー! ヴゥォー!」みたいな曲を聴いているので、ちゃんと歌おうという意識があんまりなかったんです。音程やリズムが云々とか、気にしたらダセーみたいなのが心のどこかにあって。そういうのがPITではちょっと乱暴な歌だったなと思っていて。客観的に見て、A9のメロディってすごく繊細なメロディが多いので、やっぱりその繊細さが必要だなと、ツアーに出てからはピッチもしっかり捕えて歌うようにしたら、より曲に入り込めるようになって、自分を解放できている手応えは感じています。そういうA9の中での自分というのをメンバーの中でも再確認して、歯車になって回り始めたから、バンドが前に進められてきているのかなというのはありますね。

――PITで最もグッと来た瞬間、心に残っている場面を教えてください。

将:ヴォーカリストなので「フリージアの咲く場所」は、すごく…。振り向いてはいないので、プロジェクターの映像が実際にどういう風になっているかは、やっている最中はわからないんですけど、正面を向いていても放射線状の光の色は見えていて。ネイチャーっぽい素材が投影されていたんですけど、ちょっと空を飛んでいるように錯覚する瞬間があって、それは歌っていてすごく気持ちいい体験でしたし、トリップするような感覚で歌えたので、すごく印象に残っています。でも「すべてへ」は…ちょっと泣いちゃいましたね。

――あれは別格ですよね。

将:うん、あそこはね。あえて個人的なものを挙げるなら「フリージアの咲く場所」ということで。

――将さん、ヒロトさん、虎さんの各ソロセクションと、沙我さん×Naoさんのセクションの間に「フリージアの咲く場所」が入るというセットリストが意外でした。

将:これはね、公の場で沙我くんに対して言いたいことがあるんですけど。

――どうぞ(笑)。

将:こんなバラード前の盛り上げづらいセクションを人にやらせて、これから盛り上げるぞっていう美味しいセクションに自分を持ってくるっていう君のやり方が、まぁそういうのも僕は好きだけど、それでいいの?って(笑)。

――確かに(笑)。将さんが一番難しいところでしたよね(笑)。

将:難しい! しかも、「盛り上げなくていいよ」って言われたんですよ(笑)。

――え、DJタイムなのに(笑)?

将:だからチルアウトというか、テクノというか、ガーッと盛り上がる感じではないトラックにしたんですけど。すごい難しかったよっていうのは、あえて公の場で言います(笑)。でも、音に対して真摯に向き合っている感じが表現できたソロセクションだったので、良かったとは思いますけどね。

◆A9っていう存在がみんなにとってどういう意味を持っているのか

――それにしても、昨日のライブを観ていて、A9ってすごく多才だなぁと思って。

将:そうですねぇ。虎なんて、全パートやってましたからね。RAP、DJやらされて、ベース弾かされて、ドラム叩かされて(笑)。

――すごいですよね。虎さんがインタビューの際に「ギタリストがギターだけ弾くのは、時代的に古い。何でもできるバンドがいい」と言っていたので、有言実行の人だなと。

将:なんで彼ってあんなにエゴがないんだろうと。大体いつも、黙って見ていて「これが足りないから、俺がやるわ」っていう感じなんですよ。どうやって育てたのか、彼の親御さんにインタビューしたいですね。

――(笑)。虎さんも「バンドをやっていく上で付随するものは、意外と技術があれば解決できる」と言っていましたし、ヒロトさんも「僕らが作り出すもの全てにおいて、全部の責任を持って表現していく」と言っていました。

将:やればやるほど、何でも自分でやったほうが早いんですよ(笑)。日本を代表するレベルの人と関われると「頼んでよかった」と、やっと思えるんですけど。映像やデザインに関して、僕らは素人ですけどA9のことを一番わかっているということを加味すると、という話ですけどね。僕らは作品を受け取っている人たちの顔を見ながら活動しているわけで、A9っていう存在がみんなにとってどういう意味を持っているのかというのを感じ取っているつもりなので、そういうところを置いていかないためにも、これからも自分たちが物作りの中心に立ってブレないようにしなきゃいけないなと、最近より強く感じていますね。

――ところで、沙我さんの回から始まったA9の楽屋が汚い問題というものがありまして。(※沙我ヒロトの記事参照)将さんから見て、どう思いますか?

将:他のバンドがどうかわからないんですけど…A9って汚いのかな?

マネージャー:食べ物、飲み物を置きっぱなしにするのは、ひどいなと。

将:あぁ。僕は食べたらすぐ片付けるんですけど、A9って飲み物も食べ物もちょい残しで置いておくんですよ(笑)。なんなんだろ、あれ(笑)。お弁当もちょっと残して置いておくし、紙コップが一番(笑)。飲みかけのものがずっと置いてある(笑)。そうですね、ちょい残しが一番悪い。

――それが一番の要因だと(笑)。

将:ちょい残しって全員やるんですよね。でも、なんでみんなちょい残し…わからないです。たぶん、もったいない、いつか飲むだろう、で忘れる…人々。

――(笑)。将さんは基本的に物は多いタイプ、少ないタイプどちらですか?

将:アートディレクターの佐藤可士和さんが好きなんですけど、その人がちょっとでもいらないかもという気持ちになったら全部捨てろと言っていて。僕の家も自分が興味のあるもの以外、極力すぐに捨てるようにしています。でも、紙コップは僕も一日2、3個は…作成しています(笑)。なので、ちょい残しを卒業するのがA9の今後の課題です。

――「全員のちょい残し」が原因という結論に至りました(笑)。

将:はい、全員だと思います。ヒロトも気付いたら片付ける良い子なんですけど、ハッと気付くまでは…。スイッチが入るまではO型らしいところがあって。

――ヒロトさんは、自分のものをキチッと綺麗に置いていると言っていました。

将:と思いきや、一番ちょい残しするのがヒロトです。でも、彼は自分の中でこうありたいというものを持っている人なので、キチッとしている部分と素の部分が交錯しているのかもしれないですね。

――なるほど。さて最後に、今後のA9、どのようなバンドを目指したいですか?

将:誰もが知っている曲というものを作りたいですね。それと、A9だっていう世界を。ベクトル的に逆のことかもしれないんですけど、両立できると思うんです。それを目指してやっていきたいなと思います。そして、また日の丸を背負って武道館でやりたいですね。

――ヒロトさんからも、その言葉が出ました。

将:目標は具体的に言葉にしていったほうが。当たり前ですけど5人だけじゃできないことで、周りの人からも力を貸していただかないと絶対にできないことなので、一つひとつ大事に発信して、みんなで目指していきたいなと思います。

(文・金多賀歩美)