A9 come back スペシャル

A9 come back スペシャル パーソナルインタビュー ヒロト

A9パーソナルインタビュー第4弾は、ギターのヒロト。復活までの道のり、ライブ、音源、グッズ…多岐に渡る話のどこを切り取っても、ひたすらに熱く、真摯にA9の全てと向き合う彼の思いを感じることができた今回。「相当戦ってきた」1年を経た今だからこそ、彼から発せられる数々の言葉は、力強さに満ち溢れていた。そして具体的な目標として、あのステージの名前を彼の口から聞くことができた。

◆「僕たち、もう大丈夫だ」って思えた

――既にツアーがスタートしていますが、まずは8月23日のライブの率直な感想を教えてください。

ヒロト:移り変わりが激しいこの時代に、1年って結構な時間だと思うんです。心持ちとしては、幕が落ちた瞬間に例えお客さんが一人だったとしても、本気でやるつもりでいましたけど、あれだけパンパンの人が集まってくれて音楽ができたということが、すごいことだなと。とても幸せなことだと思いました。

――フロアが見えた瞬間はどんな感覚でしたか?

ヒロト:キタコレ!って(笑)。そこから1曲1曲進むに連れて、やっぱり“ここ”だなと思いましたね。やるべきことはここにある、と。

――あのライブを終えて、完全復活を遂げた実感はありましたか?

ヒロト:正直、完全復活とまでは言えないかなと思いました。1年も間が空いたことは今までになかったので、この時間って大きいなと。1曲1曲、体に入ってくるのは実感できたんですけど、スポーツ選手と一緒で、間が空いた分、3倍4倍5倍もやらないと戻ってこない。いくら準備をしていても、ライブをやらないとその感覚は充電できないのかなと。メンバーがいて、スタッフさん、クルーの人たち、オーディエンスのみんながいたら、ある種それで五体満足というか十二分なんですけど、より高みを目指しているというところからすると、復活は遂げたけど、完全復活ではないなという感じでしたね。ポジティブな意味で、このバンドにはもっとあるよね、と思いました。

――新曲たちに対するお客さんの反応は、どのように感じましたか?

ヒロト:あの1回じゃわからないですね。ツアーが始まってみて、反応が良かったんです。単純にその場所の音の感じや、僕らが1本目はまだ掴みきれていなかったというのもあると思うんですけど。

――今はPITの時よりも手応えを感じていると。

ヒロト:そうですね。あの時は、じっくり聴きたいという気持ちもあっただろうし、こっちもいかにちゃんと届けるかというところだったので、いくらライブを想定して作っていても、実際にやってみないとわからない部分があるんですよね。お互い掴んできて、早速良い感じになってきました。1ツアーやって、すごく化けそうだなと。僕ら自身、気持ちの変化というのが一番大きくて。正直この1年、相当戦ってきたのでメンタルも強くなったし、すべきこと、やっていくべき道が見えているので、その上でやる今までの曲、ライブ自体も違うと思うんですよ。すごく変わっていくと思います。

――ライブを観ていて、とても気持ち良さそうにギターを弾くなと思って。

ヒロト:5人で音が出ている瞬間は、すごく気持ちいいですね。ソロセクションは自分の趣味嗜好全開だったので、もちろんですけど(笑)。去年、とある先輩に「10周年のライブがすごく緊張する」という話をしたら、すごく良いアドバイスをもらったんです。会場が野外で、天気が崩れるかもしれないので「正直ギターを濡らしたくないんですよね」とか言ってて(笑)。そしたら「考えてもしょうがないじゃん。未来に何が起こるかわからない。起こった時に起こったなりの見つけもんがある。例え停電しようと、その瞬間瞬間なりの宝がそこにあって、常にその宝物を見つけるという意識だけ持っていれば大丈夫だよ」と言われて。

――素敵ですね。

ヒロト:それからすごく楽になって、あらゆる瞬間を楽しめるようになったんですよ。今この瞬間に何が落ちてるかなって。例えば、メンバーの誰か一人がテンパってるかもしれない。でもそういう意識を持っていると、音でもすぐに感じられるし、じゃあ俺はどうしようという風になる。ちょっと寄っていって目を見るだけで、逆にそれがきっかけで良い波ができ始めたりすることがあって。なので、終始楽しそうなんだと思います(笑)。

――すごく周りが見えているんですね。

ヒロト:結構見えるようになったかもしれないです。ライブ中、全部が見える瞬間っていうのがたまにあるんですよ。自分の外から全部を見ているような感じで、その先に起こること、自分がこの後どうするかとかが全部わかっちゃう瞬間があって。その感覚は過去に4、5回くらいしかないんですけど、それに近いものは感じられるようになってきて、そうすると、オーディエンス一人ひとりとよく目が合うようになって。そういうモードに入っている時って、やっぱり良い波が訪れるんですよ。

――「目が合った」というのは、実際にありますよね。

ヒロト:よくお客さんは「勘違いかもしれないけど」って注釈を付けますけど、合ったと思ったら絶対に合ってるんですよ。そういうことがリアルタイムで感じられる場所がライブなので、その一瞬一瞬をすごく楽しんでいます。

――では、最もグッと来た瞬間、心に残っている場面を教えてください。

ヒロト:「すべてへ」はもちろんなんですけど、あえて「開戦前夜」。これは一昨年のFCツアーからプレイし始めたんですけど、歌詞の世界観もすごく覚悟のある曲なんですよね。メンバー的にも今の状況を見据えて作ったところもあって、タイトル通りすごくパワーがあって、去年やった過去最長のツアーでめちゃくちゃ育った曲なんです。1年空いてプレイしたのに、全部がぶっ飛んでいたんですよね。サビが来た瞬間に「僕たち、もう大丈夫だ」って思えたんです。

――確かに、とてもパワーを感じました。

ヒロト:このパワーを一瞬でも出せれば、大丈夫だなと思えたんですよね。

――ところで沙我さん曰く、ヒロトさんは8月23日のライブを終えて「携帯の電源をオフにして、海に行く」と言っていたそうですが。

ヒロト:あのステージにたどり着くまで、本当に大変で(笑)。ソロライブ(5月4日「A9 HIROTO BIRTHDAY GIG&FAN MEETING 2015 -Anniversary-」@吉祥寺 CLUB SEATA)をやって、Toshlさん(X JAPAN)のサポート(7月20日「魔夏の夜Toshlロック祭り」@赤坂BLITZ)をやって、並行してこれがあって。いったん無になろうと思って「今日の夜中までにやりきるから、明日だけは消えるよ」と宣言していたんです。で、実際に海には行ったんですけど、携帯はオフれなかったです。ライブを一つ終えれば何かが始まって、色々な確認ごとが山ほど来て、それを対処しつつ。

――とりあえず、海には行けて良かったです。

ヒロト:行ったんですけど、すごい嵐のような風で。砂が巻き上げられて「Daybreak」のMVのトラウマ再びみたいな(笑)。

――(笑)。本来、泳ぎに行ったのか眺めに行ったのか、どちらですか?

ヒロト:好きな音楽を聴きながらサンセットを見て、一日ボーッとしようと思っていたんですよ。けど、とても安らげる状況じゃなくて、超高波だし、砂が来て痛いし(笑)。でも少しリフレッシュはできました。

◆あのステージでまた音を鳴らしたい

――グッズデザイン等を手掛けているヒロトさんの元には、『銀河ノヲト』の特殊な仕様に関しても感想など届いていますか?

ヒロト:「事前に楽曲は聴いていたけど、こだわった仕様だったので、すごく愛おしいです」という声をもらって、良かったなと思いました。音だけで言ったら、クラウドファンディングで配信したハイレゾのほうが表現力は格段に良いんですけど、CDは物としての価値だけじゃなくて、CDのフォーマットとしての音の良さもあるんです。僕らが作り出すもの全てにおいて、全ての可能性を追究していきたいと思っていて。自分たちの足で歩み出した以上、全部の責任を持って表現していく。その第一歩だったので、ちゃんと伝わっているんだなとわかると嬉しかったです。まだ感想を言ってないという人は、どんどん言ってほしいですね(笑)。

――みなさん、ぜひ。

ヒロト:例えばCDの盤一つとっても、プレス工場や材質一つで音が変わってくるので、データが完成しましたというだけじゃなくて、お客さんの手に届くその瞬間までちゃんと責任を持って作っていこうと思っているので、それは宣言しておきます。

――そして、今回のグッズも素敵なものばかりですね。

ヒロト:メインのモチーフデザインが出来上がるまでが一番大変で。グッズのチームも全部新しい環境でスタートしたので探り探りやっていて、iPhoneケースが出来上がったところで、自分的に「よし、キタ!」と。なので、これは結構愛着があるんですよ。

――すごく綺麗です。

ヒロト:せっかくの機会なので話すと、昨年のFCライブの時は蝶々がモチーフのデザインだったんですけど、蝶々って復活とか生まれ変わるという意味合いがあって。今回、A9って元々は和洋折衷というコンセプトがあったというのを一回りした表現にしたくて、このデザインにしたんです。蝶々もいて、蓮の花があって…蓮の花を調べるとわかるんですけど、今の状況にドンピシャなんです。あんまり説明がましくすると重たくなっちゃうので、あえて言ってなかったんですけど。

――色々な意味が込められているんですね。

ヒロト:気付いたら自分がこういう物作りのポジションになっていて、なんでだろうって考えたら、音と人を現実にある物で繋げたいんですよね。人がいて音が出ればそれでライブは完結するんですけど、その時間が終わった後、こういうグッズとかがあると過去の時間とリンクできる。その役割を担うものを提供したいんです。ライブをやるから当たり前に物販があるのではなく、もっと意味のある、価値のあるものにしたくて、メンバーで話し合って「MIDNIGHT GALAXY」という冠をちゃんと付けました。

――グッズに関して、ここまで深く思いを込めているアーティストは少ないと思います。

ヒロト:ありがとうございます!

――ちなみに、一つ聞いておきたいことが。沙我さんのインタビューで、A9の楽屋がすごく汚いというお話が出て、その要因は虎さんとNaoさんと言っていたんですが、虎さんにそのお話をしたら、違うと(笑)。

ヒロト:ははは(笑)。虎さんは確かに物はないですけど、脱いだ服をバン、バン、バンッて感じなので。現場スタッフがその脱ぎ散らかした服を片付けたり、僕も気付くと、さり気なくハンガーに掛けたりしているんですよ。気付いたら片付いているから、虎さんは「俺じゃない」って言うんじゃないですかね(笑)。

――誰かがやってくれているのに(笑)。

ヒロト:沙我くんがNaoさんだって言ったのは、PITの時にNaoさんが自分の持ち場の機材を放置して帰っていて、僕と沙我くんで片付けたんですよ(笑)。だからだと思います。基本的にNaoさんはそんなに散らかしている感じはないんですけど、時としてそういうことがあるという。

――虎さん曰く、みんな現場に着くと机の上にカバンを広げるので、物だらけになると。

ヒロト:確かに。僕もまず電源がある場所を探してPCをセットして、ポーチとサングラスを所定の位置に置いて、テリトリーを作るんです。ホテルでもどこでも一緒で、全く同じ行動を必ずするんですよ。見る人が見たら、物がいっぱいあるように見えるのかもしれないですけど、僕の場合は全てキチッと綺麗に置いてあるので。

――なるほど(笑)。みなさんそれぞれ、違うパターンで物に溢れているんですね(笑)。

ヒロト:それが混ざると、すげー散らかって見えるんでしょうね(笑)。確かにPITの楽屋はひどかったなぁ。初日ってグッズが各メンバーに支給されるので、さらに物で溢れ返るんですよね(笑)。

――次の将さんの見解も楽しみです(笑)。では最後に、今後のA9、どのようなバンドを目指したいですか?

ヒロト:この5人でここまできているというのは、それ自体に意味があると思うんです。当たり前ですけど他に代わりなんていないはずなので、もっとそれを自覚した上で、この5人にしか作り得ないものを追究していって、その先にきっと何かがあると思うんですよね。周りや時代がどうこうじゃなくて、この5人の集合体とそれに反応してくれた人たちで、何ができるかというのを脇目を振らずに追究していきたいですね。あとは、もう言っちゃいますけど、この復活後の第1フェーズで、ちゃんと日本武道館のステージに戻るということをやり遂げたいですね。

――その言葉が聞けて嬉しいです。

ヒロト:その先もありますけどね、まずはそこに。それにはこのバンドに関わった人一人残らず必要で、その全ての人たちと一緒に、あのステージでまた音を鳴らしたいですね。

(文・金多賀歩美)