2019.12.16
怪人二十面奏@新宿BLAZE
単独公演巡業二〇一九 秋「ネオ・シュルレアリスム」千穐楽

6月にアルバム『聲命力』を発売し、充実した2019年を送った怪人二十面奏。単独公演巡業二〇一九秋「ネオ・シュルレアリスム」のファイナルとなった、12月16日新宿BLAZEでの公演の模様をお届けする。

緊張感をはらんだSEが流れ出し、場内が暗転。フロアには赤い包丁ライト(包丁の形を模したオリジナルグッズ。彼らのライヴには必須)の光が点滅する。幕が開き、メンバーが徐々にその姿を現した。ライヴの始まりを実感する、心臓が高鳴るひととき。

オープニングを彩ったのは、「色盲」。ステージ中央に設置されたソファにゆったりと腰かけ、歌い上げるマコト。艶やかなヴィジュアルとも相まって、遠目にはいたいけな雰囲気さえ漂わせている。さらに「噫無情」と続くと、その歌声は切なさを帯びていった。力強いリズムを背景に、情感溢れる歌声が会場いっぱいに広がっていく。

「BLAZE! 盛り上がっていきましょう。ようこそ!」と、オーディエンスに呼びかけ、マコトの動きとともに会場全体の空気が動き出す。続くのは「愛憎悪」。赤い包丁ナイフがきらめくフロアを前に、KENも軽快なステップを踏む。勢いのあるサウンドとは裏腹に、歌を含め曲全体の雰囲気は情緒に満ちている。マコトの作り上げる色濃い世界とサウンドとの対比は、彼らの持つ大きな魅力だ。

「2019年最後のワンマンです。この一年全てをぶつける」と力強く宣言すると、「G・G・P・G」。テンポよく攻め立てるようなサウンドに、タイトルを叫ぶ声が重なる。オーディエンスも熱せられるように動き出し、「想望カルト」「ヲルガン坂に見る夢」と、熱気は増す一方。左右に動き、こぶしを掲げ、手拍子を叩き、激しいノリを楽しむオーディエンスの姿が目立った。

「儚夢」では、軽快なリズムで心地よくノせたかと思うと、訴えかけるように言葉を詰めた語りで一気に引き込む。ドラマチックに「近代的極東唱歌」が始まると、力に満ちた歌声が辺りに広がっていった。立て続けに展開しながらも、それぞれの曲の主張は目まぐるしく趣きを変え、それでいて怪人二十面奏というひとつの色を帯びている。

同じメロディでも、リズムを変化させながら聴かせた「エフ」や、歌だけでなく、ギターでも聴かせたフレーズが耳に残った「透明。」。世界観を重視しながらも、ロックバンドとして作曲やアレンジを駆使してそれを表現しているのが怪人二十面奏だ。続くMCでも話していたが、次から次へと曲を生み出すことのできるKENの存在があるからこそ、彼らの音楽が成立しているのだろう。

MCでは、マコトと共にKENも口を開き、ひと息ついた後は、いよいよ終盤戦。「追いていかれないようについてきてください」と、「狼」から再び走り出す! その見た目からは意外なほど、荒々しく煽ってフロアに火をつけると、カラフルで派手な照明がステージを彩った。

「新宿」という、高らかなタイトルコールと共に始まったのは、憂いを帯びたメロディ。ビートに乗って駆け抜けていくような展開にオーディエンスもついていく。「もっと声を聞かせてください」と、「死せる Cecile セルシン摂氏0度」が始まる。会場全体を熱気が包み込み、その場に居合わせた全員が一緒に熱くなっていくような、そんな空気感が伝わってきた。フロアを見つめ、マコトも満足そうだ。

「一緒に地獄へ堕ちましょう」という言葉とともに、「ダムド」。感情の高まり、サウンドの勢い、照明の眩しさ。聴覚的にも視覚的にもめまぐるしく、オーディエンスは心地よい陶酔感さえ感じられたのではないだろうか。KENの激しい叫びを受け、さらにマコトが煽ると、「G,Jクローバー殺人事件」が幕を開ける。鋭い視線を投げ掛けるようなマコトの表情が目についた。その鋭さと勢いのまま、「可不可」を荒々しい歌で届けてくれた。

本編最後を飾ったのは、「生命力」。ここまでの勢いのままにひたすら突っ走って、あっという間に本編は終了。彼らの楽曲は短めのものが多いうえ、この日のセットリストにはテンポの速い曲が多かったこともあり、17曲も演奏されたとは思えない感覚だった。また、衝動に突き動かされた演奏のように感じられたことも、その体感に拍車をかけたのかもしれない。それでいてサウンドからは、統率されたような整然とした力強さが伝わってきたことも特筆すべきことだろう。

リラックスした様子で再び登場したアンコールでは、2020年の活動を告知。怪人二十面奏というバンド名だけに、2020年は自分たちの年ともいえる大事な一年であり、五周年を迎える年でもある。2020年2月20日にチケット代2020円で単独公演を行い、4月には全国二十か所単独公演巡業も決定。全国ツアーで回る地名を発表するマコトの言葉に、フロアのあちこちから歓声が上がるさまが微笑ましかった。

2019年最後のワンマンを締めくくったのは、「其の証」。歌が、サウンドが発する感情が、BLAZE全体に充満し、彼ららしい濃度の高い空間を味わうことができた。「2020年もめっちゃ楽しみたい」というKENの言葉と、「2019年もありがとうございました!」というマコトの言葉が、充実した2019年と希望に満ちた2020年を物語っている。着実に自分たちらしい歩みを続けていく彼らを、これからも追いかけていきたい。その先に広がる世界をおおいに楽しみにしている。

(文・村山幸/写真・大塚秀美)


【ライブ情報】
●一生に一度の20の日!怪人二十面奏単独公演決定!特別単独公演「二十」
2020年2月20日(木)渋谷DESEO
開場/開演20:00/20:20 ※22:00終演予定
料金:前売/当日共通 ¥2,020 *1DRINK別途

●5周年記念 全国単独公演巡業二〇二〇「THE NUMBER TWENTY」開催決定!
怪人二十面奏 結成5周年を記念した全国単独公演ツアー決定! 各公演、特別章を含む第一章~第八章、全9種の衣装で全20公演の史上最多公演数、ファイナルは新章コンセプトで2020年7月4日赤羽ReNY alpha!

●怪人二十面奏 5周年記念 全国単独公演巡業二〇二〇「THE NUMBER TWENTY」
4月21日(火) 恵比寿club aim
OPEN/START:18:30/19:00
【特別章】激!!戒神一家 篇

4月29日(水・祝) 静岡Sunash
OPEN/START:17:00/17:30
【第一章】怪人二十面奏参上 篇

5月1日(金) 横浜Music Lab.濱書房
OPEN/START:18:30/19:00
【第六章】魔都上海 篇

5月5日(火・祝) 福岡INSA
OPEN/START:17:00/17:30
【第七章】傀儡アンティーク 篇

5月6日(水祝) 岡山CRAZYMAMA 2nd Room
OPEN/START:17:00/17:30
【第五章】闇大日本帝國-海- 篇

5月8日(金) 姫路Beta
兵庫県姫路市本町68-170 大手前第一ビル B1
【第三章】闇大日本帝國-陸- 篇

5月9日(土) 大阪アメリカ村BEYOND
OPEN/START:17:00/17:30
【第四章】地獄文豪少年 篇

5月16日(土) 柏ThumbUp
OPEN/START:17:00/17:30
【第二章】電脳九龍城砦 篇

5月17日(日) 水戸SONIC
OPEN/START:17:00/17:30
【第八章】大正一〇八年、帝都滅亡 篇

5月22日(金) 浦和NARCISS
OPEN/START:18:30/19:00
【特別章】激!!戒神一家 篇

5月24日(日) 宇都宮HELLODOLLY
OPEN/START:17:00/17:30
【第六章】魔都上海 篇

6月6日(土) 札幌SPIRITUAL LOUNGE
OPEN/START:17:00/17:30
【第五章】闇大日本帝國-海- 篇

6月7日(日) 札幌SPIRITUAL LOUNGE
OPEN/START:16:00/16:30
【第八章】大正一〇八年、帝都滅亡 篇

6月12日(金) 長野livehouse J
OPEN/START:18:30/19:00
【第七章】傀儡アンティーク 篇

6月13日(土) 柳都SHOW!CASE!!
OPEN/START:17:00/17:30
【第四章】地獄文豪少年 篇

6月14日(日) 仙台spaceZERO
OPEN/START:17:00/17:30
【特別章】激!!戒神一家 篇

6月19日(金) HOLIDAY NEXT NAGOYA
OPEN/START:18:30/19:00
【第二章】電脳九龍城砦 篇

6月20日(土) 京都MOJO
OPEN/START:17:00/17:30
【第三章】闇大日本帝國-陸- 篇

6月21日(日) 奈良Neverland
OPEN/START:17:00/17:30
【第一章】怪人二十面奏参上 篇

7月4日(土) 赤羽ReNY alpha
OPEN/START:18:00/18:30
【第九章】XXXXXXXXXX 篇

料金(全公演共通):前売¥3,800/当日¥4,300 1Drink別途

怪人二十面奏 オフィシャルサイト http://k20.jp/