25周年と20周年という記念すべき年に新たなアルバムをリリースするCASCADEとメトロノーム。比類なき個性が光る2バンドの初対談が実現!
ズバ抜けた個性と存在感でシーンに衝撃を与えてきたCASCADEとメトロノームが今年、共に大きな節目の年を迎えた。更に7月25日、奇遇にも同日にアルバムをリリースすることが決定! 25周年を迎えるCASCADEが作り上げたのは、新たな命を吹き込まれた懐かしの名曲たちが贅沢に収録されたセルフカバーベストアルバム、メトロノームが完成させたのはこれまで以上にエッジの効いた楽曲たちに彩られたニューアルバム。いずれも周年にふさわしい必聴の1枚となっている。そんな作品について、そしてお互いについて、今回実現した初のスペシャル対談で6人に大いに語ってもらった。
◆これから来る人たちなんだろうなとすごく気になっていた(TAMA)
――まずは両バンドの出会いから教えてください。
HIROSHI:この3人の中では、フクちゃん(フクスケ)が一番付き合いが長いんじゃないかな。
フクスケ:そうですね。僕のソロプロジェクトADAPTER。のライブ(2011年12月に行われた「福助。バースディ Go!Go!福助。NIGHT-2011-」@新宿BLAZE)にCASCADEさんを呼ばせていただいて、対バンさせてもらったのがきっかけです。
TAMA:その時、CASCADEの曲をカバーしてくれたんだよね。
フクスケ:そうですそうです。「FLOWERS OF ROMANCE」をご本人様に何の許可もなくやらせていただいて(笑)。
TAMA:すごくカッコよかったですよ。
――シャラクさんとリウさんはいつ知り合ったんですか?
リウ:僕は、去年HIROSHIさんにメトロノームのサポートで叩いていただいた時にご挨拶したのがきっかけです。
HIROSHI:二人ともその時からだよね。
リウ:そうですね。スタジオに入る前に居酒屋で顔合わせをしたのが初対面でした。
――再起動後なんですね。意外です。
リウ:そうなんですよ。もちろん、こちらから一方的には知っていましたけど(笑)。
――そして両バンドの初対バンは昨年11月に原宿アストロホールで行われた「テレイコブランディング『CA-DA』」ということで。
MASASHI:そう考えると超近々の仲なんですよね。
フクスケ:知り合ったばかり、みたいな(笑)。
MASASHI:ちょっとまだ照れがある、みたいな(笑)。
――あの日のMCでTAMAさんが、「90年代の頃、イベントで各地を回る先々でメトロノームとライブをやってほしいとよく言われた」と言っていましたね。
TAMA:そうなんです。キャンペーンで回っていて、レコード店の方に「面白いバンドいない?」って聞くと、みんな「メトロノーム」って答えるんですよ。僕の友達にも「メトロノームが面白い。カッコいい」と言われて。そこでメトロノームの名前がインプットされたんです。でも、これから来る人たちなんだろうなとすごく気になっていた時に渋谷公会堂(当時はC.C.Lemon ホール)でメトロノームが活動休止して。残念ながらライブには行けなかったんですけど、「ライブ見たかったな」「お会いしたかったな」という気持ちがありました。その後、復活ブームみたいな流れがありましたけど、復活するバンドで話題になるような人はもういないだろうと思っていた時にメトロノームが復活して、しかもHIROSHI君がサポートをやるという話になって。やっぱりすごく衝撃的だし、話題になる人たちだし。しかも僕らのライブにも来ていただいたりして……ねぇ誰か、この話のまとまりをつけてくれる?
全員:(笑)
フクスケ:僕は後半、見守ろうと思ってました(笑)。
TAMA:優しいね、本当に(笑)。
――CASCADEとメトロノームには共通点が多いですよね。CASCADEは今年25周年でメトロノームは20周年、さらにどちらも活動休止後に復活を遂げたバンドです。
TAMA:しかもどちらも3人ですし。
HIROSHI:休止期間も7年で同じだし。今回のアルバムの発売日が重なったのも、偶然でビックリしました。
MASASHI:そうなんだよね。
TAMA:だから、もしかしたらタイミングを狙っていたのかなって(笑)。
HIROSHI:メトロノームに誰か策士がいるんじゃないかな(笑)。
――実は色々計画していたのかもしれませんね。まずHIROSHIさんをサポートドラムに、というところから緻密な計画が…
フクスケ:違うんです! ADAPTER。のライブにCASCADEさんを呼ばせてもらった時は、メトロノームをやっていない期間だったのでそんな下心は一つもなく! ピュアな心で好きな先輩をお呼びしたんです。その後メトロノームが復活する時に、1回目のライブ(2016年9月19日に行われた「Please Push Play」@Zepp Tokyo)は前のメンバーに叩いてもらったんですけど、2回目以降はドラマーが決まっていなかったので、誰かいい人がいないかなということになって。それでその時に、さも知っているかのように、「俺、CASCADEのHIROSHIさんを知ってるよ? 君たちCASCADE、知ってる?」って言いました(笑)。
全員:(笑)
フクスケ:それで、HIROSHIさんにすごい低姿勢のメールをお送りしたんです。「もしよろしければなのですが、そのようなお仕事はやっておられますでしょうか」って(笑)。
TAMA:その話は聞いてなかった(笑)。
フクスケ:そしたら快く「いいよ!」って。「お金もいらないよ!」って。…あ、今のは冗談です(笑)。
HIROSHI:ライブ後のご飯の面倒までみてもらってます(笑)。
――そこから両バンドの接点が生まれたんですね。ところで、先ほどメトロノーム復活の時の話が出ましたが、CASCADEが復活した時どんな気持ちでした?
リウ:復活ライブはLIQUIDROOMでしたよね。武道館とかでやっているイメージだったので、「会場が小さすぎるんじゃない!?」と思った印象があります。
シャラク:オイラはヴォーカルとして、年齢を経ても同じ声が出るものなのだろうか、と思っていました。TAMAさんも独特の声をされているので。でも対バンをしたときに、「CDと同じ声だ!」と思って。それを維持できているのは、すごいと思いましたね。
――原宿アストロホールで、「二大可愛い声ヴォーカリストの対バン」だとシャラクさんが言っていましたが、まさに時代を超越した可愛い声です。
HIROSHI:可愛いの大事(笑)。
◆一瞬仲間っぽいなと思うんですけど、TAMAさんのほうがレンジが広くて、「くそぉ!」って(シャラク)
――そんな両バンドが奇遇にも同日にアルバムをリリースするということで、お互いの新作についてお話いただこうと思います。まず、メトロノームの皆さんはCASCADEのセルフカバーベストアルバム『VIVA NICE TASTE』を聴いてどう感じましたか?
フクスケ:新曲(「unfairly」)を聴かせてもらったとき、ファンとしては“らしさ”が抜けていてほしくないというところが一番大きかったんです。でも、ちゃんとらしさがあって、すごくカッコいいと思いました。それと同時に、HIROSHIさんがカラコンしてる!というところが気になって。何分距離が近づいてしまったもので、そういうところが気になっちゃう(笑)。
HIROSHI:(笑)
フクスケ:でも本当にらしさが全開で、すごくカッコいい曲だなと思って聴きました。
――ちなみにフクスケさんが最初に聴いたCASCADEの曲は何でしたか?
フクスケ:僕は「Kill Me Stop」なんですけど、一番好きなのは今、頬に描いている「しゃかりきマセラー」(共に1995年リリースのデビューアルバム『VIVA!』収録曲)です。
HIROSHI:フクちゃんは対バンをやらせてもらった時にも、CASCADEの漢字(「段滝」)を頬に描いてくれたんだよね。
TAMA:そういうところがメトロノームのライブならではと言いますか、痒い所に手が届くと言いますか(笑)。
リウ:僕は、復活後に出されているリード曲を聴くと、復活前よりも派手なシンセがあったりする印象が強いです。自分もすごくそういう曲が好きなので、もしかするとその辺りでも共通の何かがあるのかなと思いつつ、今回の新曲を聴いたら、もうちょっと原点回帰したという感じで。でもフクスケ君が言うように、こういうのもいいなと思ったし、懐かしい感じがしました。僕も最初に聴いた曲はテレビで見た「Kill Me Stop」だったんですよ。(音楽バラエティ番組『えびす温泉』の)審査員がべた褒めしているのを観ていました。それと印象に残っているのが、HIROSHIさんが司会をやっていた『Break Out』で。
HIROSHI:CASCADEのメンバーが順番に司会をやっていたんだよね。
リウ:その時にHIROSHIさんがドラムの解説をしていたんですけど、とにかく喋りが達者で。こういうバンドマンの人がいるんだ!と思ったことを覚えています。
シャラク:オイラは、サポートをやってもらっているからかもしれませんけど、ドラムの音がすごく今時だなと思いました。HIROSHIさんのドラムの音のイメージは、カツンという感じなんですけど、バシッと硬いと言うか。今のCASCADEはこういう感じの音にまとめるんだなと思って。当時、自分がドラムを打ち込むときにおかずの入れ方を参考にしていたんです。うちのドラマーにも、ここで2拍3連でこういう入れ方をしてとお願いしたりして。
HIROSHI:ありがたいです。
――シャラクさんは同じヴォーカリストとして、TAMAさんをどのように捉えていますか。
シャラク:同じ系統の声じゃないですか。だから一瞬仲間っぽいなと思うんですけど、TAMAさんのほうがレンジがすごく広くて、「くそぉ!」って(笑)。お互いの曲を歌ったときに「こんなキーが高いんだ!」と思います。
――フクスケさんから見てMASASHIさんはどういうギタリストですか?
フクスケ:初めてCASCADEさんを見たときに、こういうギターの使い方があるんだと思ったんです。その当時もシャラクとバンドをやっていたんですけど、初めてMASASHIさんのプレイを見て、一本の弦をこんなにずっと弾き続けるんだ!これはカッコいいな!と。なので僕もMASASHIさんの真似をして透明な縁の眼鏡をかけて、金髪を七三にしてギターを弾いていました(笑)。
――大分影響されていますね。
フクスケ:かなり(笑)。
リウ:でもセンスがある感じがするよね(笑)。
フクスケ:そうそう。自分がお洒落になった気持ちになってやっていたんですけど、僕には似合わなくて、今見たらただちょっと気持ち悪い人でした(笑)。でも頑張って真似したくなるくらい、見た目もギターもカッコ良かったです。突出してお洒落でしたからね。
――確かにCASCADEは当時からズバ抜けてお洒落でしたよね。
フクスケ:滅茶苦茶お洒落でしたよ。MASASHIさん、その節は知らないところで勝手にお世話になりました(笑)。
MASASHI:いやいや、ありがとうございます(笑)。
◆バンドを20年やっていて、さらに新しいものをどんどん取り入れていくという姿勢(HIROSHI)
――リウさんは、リズム隊としてHIROSHIさんのプレイをどう捉えていますか?
リウ:HIROSHIさんは、とにかく自由と言うか。MASASHIさんはラフに弾いているようでも正確無比なんです。フクスケ君もそうなんですけど、カチッとしていて。それに対してHIROSHIさんが両極端と言えるくらいすごく自由で、ご一緒させてもらったときにビックリしました。それがお互いの良いところでもあるんですけど、全然違うから逆に上手くいくのかな。HIROSHIさんは、リハと本番で叩くフレーズが全然違いますからね。
HIROSHI:そうなんです。困らせちゃっているんですよ(笑)。
フクスケ:たまに、1番が丸々違うときがありますからね。そういう時は「キター!」って思います(笑)。
リウ:僕たちは曲数が多いし、ツアーでセットリストをガラッと変えたりするので、HIROSHIさんに無茶を言ってたくさん曲を覚えてもらっているんです。なので僕ら3人とも、HIROSHIさんの手癖が大分わかるようになってきました(笑)。ファンの方からも、ライブで観ていて楽しいと言われるんですけど、本当に人間味に溢れているから、観ている方も毎回楽しめるんじゃないかな。
――リウさんから見て、MASASHIさんとフクスケさんは似たタイプですか?
リウ:似ていると思いますよ。
MASASHI:そうなのかなぁ。
HIROSHI:うん。似ていると思う。僕は二人とやっていますから。
リウ:実は僕、HIROSHIさんからMASASHIさんがどういう感じで作曲をやっているかをこっそり聞いたりしているんですよ。
MASASHI:あらまっ!
リウ:(笑)。裏情報なので詳しくは言えないですけど、すごくストイックで、話を聞いていてすごいなと思ったし、自分はまだまだだなと思いました。
MASASHI:照れるなぁ…(笑)。
リウ:HIROSHIさんに聞けば何でも喋ってくれるので(笑)。機材についても教えてもらっています。
TAMA:クリエイティブな話をしてるんだね。
HIROSHI:そうだね。僕たちもそういう節があるんですけど、バンドを20年やっていて、さらに新しいものをどんどん取り入れていくという姿勢は偉いと思うんですよ。一度カナダに一緒に行かせてもらったときに、5日間か6日間ぐらいずっとリウ君と同じ部屋だったんですけど、そのときに結構音楽の話をしたんです。すごく質問をしてくるので偉いなと思って。だから全力で答えました。
――お二人ともクリエイティブなことにとてもストイックなんですね。ところで、今回の作品はCASCADEにとって2000年リリースの『ピアザ』、2002年リリースの『VIVA NICE BEST』以来の3枚目のベストアルバムですが、初のセルフカバーにしたのはなぜだったんでしょう?
HIROSHI:セルフカバーってこれまでやったことがなかったんですよね。25年やっていると、ライブの定番と言うか、昔の良い曲たちがいっぱいあって。でも今とは音質も音量も違ったりするんです。それを今ライブでやっている感じそのままにパッケージにしたいなという気持ちがありました。
――新曲を含む、名曲揃いの1枚ですが、制作自体はとてもスムーズに進んだそうですね。特に思い入れがある曲はありますか?
MASASHI:いっぱいありますよ。
TAMA:でも選曲で揉めたりはしなかったですね。やっぱりその辺りはライブで絶対に聴きたい曲、やらなきゃ終わらないみたいな曲と考えると、みんな思っていることは大体一緒だったので。あとは大体15~20曲ぐらい選んで、その中から消去法で決めました。
――今回の作品はジャケットのデザイン然り、新曲のMVに登場するCASCADE缶然り、昔の作品のオマージュが散りばめられていました。あれは、どういう意味合いで入れたんですか?
MASASHI:あの缶は作ってもらったんです。いろんなところでファンの人に喜んでもらいたいという思いがあるんですけど、オマージュで遊び心を入れたと言う感じですね。
――そういう細かな部分も含め、セルフカバーをしたことで、改めて楽曲たちの新たな魅力が引き出された1枚という印象です。
MASASHI:そうですね。当時やっていたことをもう一回さらった感じなんですけど、ライブでは端折ってジャーンとやっている部分もあるので、そこは勉強になったかなという。改めて研究できて良かったです。