CASCADE×メトロノーム

◆他にないタイプの音楽を彼らはすごく突き詰めてきている(MASASHI)

MASASHI

――CASCADEの皆さんはメトロノームのニューアルバム『廿奇譚AHEAD』を聴いてどう感じましたか?

TAMA:シャラク君の声がいい感じのバランスで、甘すぎもせず、痛すぎもしないんです。でも何か抜けちゃう。それがデジタルサウンドによくハマるなぁと思って。「チソラ(血空)」とか。

フクスケ:あれは「ケックウ」と読むんです。

TAMA:「ケックウ」ね! あと、本当にこれはお世辞抜きで、皆さんそれぞれ才能がある人たちだと思っています。それが掛け算になって、ストイックなサウンドと、ちょっとキュンとくる切ない歌と、さらにライブではフクちゃんの落語ばりのMCでしょ。あと、この間リウ君と一緒にセッション(2018年3月に行われた「お洒落にアコースティックセッションライブ」@赤坂SO-DA)をやらせてもらったんですけど、彼はその場の空気を読むのが本当に早いんです。やっぱり色々教えてくれているんだろうなと思いました。…えーと、だからこれからも頑張って。

フクスケ:綺麗に締めましたね(笑)。

MASASHI:メトロノームはタイトルもそうですし、打ち込みとギターとのバランスのセンスが絶妙で。それは前作も今作もそうだと思うんですけど、ブレていない感じが聴く人にはすごく嬉しいと思います。他にないタイプの音楽という部分で彼らはすごく突き詰めてきていると思う。羨ましいという部分もありますし、そこはすごいと思います。

――ギタリストとしてフクスケさんをどう思いますか?

MASASHI:やっぱりTALBOはいいですね。僕は今から持てないという悔しさがあります。やっぱりTALBOは独特だし、TALBOといえばフクスケ君という感じですし。いいなぁと思いますね。

フクスケ:もっと精進したいと思います! でも僕からすればMASASHIさんは輪をかけて羨ましさに溢れています!

MASASHI:ありがとうございます(笑)。これからも、独自の個性で突き進んで行ってください。

フクスケ:…また綺麗に締めましたね。もしやCASCADEさん、もう対談を終わらせようとして…

MASASHI:違う違う(笑)。そう言いたくなるくらい応援の気持ちがあるということです。一緒にライブをやらせていただいた仲でもありますし。

HIROSHI:前作も再結成前も含めて、僕はメトロノームの曲を70曲ぐらい知っていて、サポートをしているんですけど、まずタイトルが面白い。さらに歌詞が面白い。そして曲もすごく個性的で覚えやすいんです。新しいアルバムも同じ感じなんですけど、僕はこれまでに比べて今回の作品の方が哀愁がある感じがしました。前のガーッと来て、ノリノリでワーッという作品に比べて、もうちょっと耳を傾けなきゃわからないと言うのが第一印象でしたね。昔からのメトロノームの美味しいところは全部出ている感じです。ライブも観に行かせてもらっているので、この曲はライブのこの辺にくるんだろうなとか、自分たちのアルバムと同じ感じで聴いてしまうんですよ。3人が良いバランスで曲を書いているので、「あ、これは多分フクちゃんの曲だろうな。ギターがゴリゴリだし」「これはドラムの打ち込みがシャラクっぽいな」と予想して、クレジットを見て「やっぱり!」って思う。そういうのも楽しいです。

――すごく近いところからメトロノームを見ているんですね。

HIROSHI:最早メトっ子ですよ(笑)。メトロノームは可愛いと言うか、CASCADEが一番ホッとするけど、その次にホッとすると言うか。ドラムを叩いる時もそうだし、ライブを観に行かせてもらって楽屋に行っても癒されますしね。

――収録曲で特に印象的な曲を挙げるとしたら?

HIROSHI:「夜空に舞う花弁」。あれはライブで楽しいだろうなと思います。

リウ:ちょっとアッパーで、ボコーダーが入っているやつですよね。

――リウさん曲ですね。HIROSHIさんから見てリウさんは、どういうベーシストですか?

HIROSHI:この表現が合っているかはわからないですけど、僕のイメージでは“元気”(笑)。めっちゃ動くのはもちろんなんですけど、手がずっとスラップなんですよ。手がおかしくなるぜ、みたいな。苦しい顔もせずに、笑顔ですごいなと思いました。あと、鍵盤の台の上から飛び降りたりして、ちょっとヒヤッとするときもあるんですけどね(笑)。

リウ:一度、飛ぶ角度を間違えて思いっきり上に飛んでしまったことがあって。それをHIROSHIさんが後ろから見ていて、ライブ後に、「あれは骨を折ったなと思った」って言われました。一応床の硬さとかは最初にチェックしているんですけどね(笑)。

◆TAMAさんが「この歌詞のこのフレーズがロマンティックだ」と言ってくれた(リウ)

リウ

――メトロノームの今回のアルバムは何を始点に制作したんですか?

フクスケ:アルバムのタイトルが最初にありまして。『廿奇譚AHEAD』という20年の奇譚(不思議な物語)のその先へ物語は続いていくよ、ということを提示して、みんな何となく、やんわりとそちらを向いてくれた感じです。あまりこちらから「こうだ!」というのは好きではないし、みんなに自由に作ってもらったほうがメトロノームらしいものができるので。

――中でも特に思い入れがある曲は?

リウ:僕はリード曲の「血空」ですね。フクスケ君作詞作曲の曲なんですけど、MVも撮ったし、今回の撮影場所にもピッタリだし。イメージ通りと言うか、さすがコンセプトを作った人だけあるなと思ったので、僕はリード曲に一票入れさせていただきました(笑)。

シャラク:オイラも最初にMV候補を決めようとなったときに「血空」を選んだんですけど、ほぼ満場一致みたいな感じでしたね。

リウ:リード曲はいつも「どの曲でもいいよね」という流れでなかなか決まらないんですけど、今回はすぐパッと決まったと言うか。担当の方も含めてみんな「この曲だ!」って。…そんなフクスケさんの曲です(笑)。

フクスケ:ありがとうございまーす(笑)。

――フクスケさんは、思い入れがある曲は?

フクスケ:思い入れがある曲って変わってくるんですよ。例えばシャラク作曲の「孤独氏」はリフがすごく難しいんですけど、シャラクからは打ち込みで来たから、これをどうやって弾くんだよ!と思いつつやりましたし、ソロを後から足すことになったんですけど、僕が他のツアーに出ていたので、そのツアー先のホテルで録ったこともすごく思い出深くなっちゃって。

――「主人公ルート」のギターもとても新鮮でした。

フクスケ:確かに、ああいうコードをループするのは僕もすごく好きで。変な言い方をすると、録っているときにキマッてくるんです。途中でふと気付くと、「どこだっけ?」ということが多々あって。そのくらいすごく入り込めて良かったですね。まぁそういうのもいっぱいありますけど…やっぱり「血空」ですね(笑)! 血のように赤い空とか、血で染まった空という意味を込めているんですけど、良い曲作ったなと思います!

――ところで、先ほどHIROSHIさんのカラコンが新鮮だったという話が出ましたが、メトロノームはこの対談前日に新しくアーティスト写真が発表になり、こちらも新鮮な感じが話題になっていました。中でもシャラクさんは、かなり躍動感があるポーズですよね。

シャラク:オイラ、太腿がプルプルするようなポーズを求められがちなんです(笑)。

フクスケ:写真を撮っている時に、僕もカメラマンさんの後ろから、「シャラク! マント振って! もっと振って! なびいているように!」って言っていましたからね(笑)。本当にプルプルしていて辛かったと思います。でも、うちのシャラクさんは、手足が長いから躍動感が出るんですよ。

――さらに青空の下の遊園地というのも新しいです。

フクスケ:本当はセピアのバージョンもあるんですけど、明るい方が今までと違ってパンチがあるかなと思って。

MASASHI:これは廃遊園地で撮ったの? 廃墟マニアだからここにしたとか?

フクスケ:そうではないんですけど、シャラクは廃墟好きですよ。

MASASHI:実は俺も結構廃墟が好きで。

シャラク:おぉ~そうなんですか! 化女沼レジャーランドという結構有名な場所みたいですよ。

TAMA:もうここにあるアトラクションは動かへんねんな。

シャラク:コーヒーカップはちゃんと回ったので、MV撮影のときにスタッフさんが裏で回してくれました。

MASASHI:世界観バッチリだったね。

シャラク:写真に写っている部分はこんな感じなんですけど、裏にレジャーランドの廃ホテルがあって、そこは今もちゃんとセコムとかされているんです。責任者の人が中に入らせてくれたんですけど、すごく良かったですよ。

リウ:廃ゴルフ場もあったしね。…何だか廃墟話で盛り上がってますね(笑)。

MASASHI:僕はマニアまではいかないけど、昔炭鉱だった場所とか、公園とか、苔生した公園が好きなんです。

シャラク:結構廃墟好きな人はいるんですよね。

MASASHI:結構いますね。カッコいいと思っちゃう。

――意外な共通点が見つかりましたね。

MASASHI:そうですね。ビックリしちゃった(笑)。

――アルバム収録曲の「回游論」の歌詞はこの場所にリンクしている気がしました。

リウ:あの歌詞は、この場所での撮影が決まってから書いたんですよ。あて書きと言うか。先にこういう写真を見て、ここで撮影するよと言われてから歌詞を書いたので、ちょっとでも世界観に近づけばなと。

TAMA:あの歌詞はリウ君の歌詞だよね?

リウ:そうです! よくおわかりで。

HIROSHI:お、結構マニアになってきてるね(笑)。

リウ:TAMAさんは一緒にセッションしたときにも「この歌詞のこのフレーズがロマンティックだ」って言ってくださったんですよね。

――確かにリウさんの歌詞は、ロマンティックな歌詞が多いですよね。

リウ:物語調とかが多いかもしれないです。嬉しいですね。

TAMA:みんな! これは、キュンキュンポイントです!

全員:(笑)

◆実現するかはわからないけど、一緒に曲を作ってみたい(フクスケ)

フクスケ

――先ほどからいくつか両バンドの共通点が挙がっていますが、皆さん作詞や作曲ができるというのも共通点ですね。

全員:確かに!

TAMA:でも僕、詞は書きますけど、アレンジはできないんです。機械に全く弱くて(笑)。

――では、25周年のCASCADEはぜひTAMAさんに機械に強くなっていただいて。

TAMA:そうなるかなぁ…。全然話が変わるんですけど、最近任天堂のスーパーファミコンでファイナルファンタジーをやっていて、こんなに面白かったっけと思って。

MASASHI:Ⅵね。

フクスケ:全然違う話なのにMASASHIさんがノッた(笑)!

TAMA:それを機械と言っていいのかわかりませんけど。

フクスケ:そして話が繋がった(笑)!

HIROSHI:大丈夫。電源があるものは機械ですよ。

フクスケ:話が全然違うほうに行きましたけど、ちゃんと戻ってきましたね。

TAMA:ブーメランみたい。

HIROSHI:ブーメラントークの使い手だね(笑)。

――両バンドとも大きな節目の年でもありますし、またぜひこの2バンドで何かやってほしいとファンの方々は期待していると思うのですが、実現したいことはありますか?

フクスケ:実現するかはわからないですけど、筋肉少女帯さんと人間椅子さんのように、一緒に曲を作ってみたいですね(※筋肉少女帯と人間椅子は合体バンド「筋肉少女帯人間椅子」を結成し、ライブやリリースを行っている)。こういうことは、好きなバンドとじゃないとできないし、相当な気持ちが必要だと思うんですけど、できたらすごく楽しいんじゃないかと思って。

TAMA:それは大賛成ですね。

HIROSHI:できるんじゃないですか? この2バンドならツインドラムにならないし、ツインギターとツインヴォーカルでいいかも。

フクスケ:あ、ほんとだ! パート的にもちょうどいい! でもさっき思ったんですけど、写真を撮っているときの体の厚みが違うんですよね。主に僕。これはどうしたものか…。

全員:(笑)

――とりあえず、筋肉少女帯人間椅子は全員アロハシャツだったので、アーティスト写真はお揃いの何かを着ていただいて。

フクスケ:お揃いの何かを着て、廃墟で無茶なポーズで撮ると(笑)。でも誰が曲作りを主導するかっていうのがなかなか難しいんですよね。

HIROSHI:そうか、誰かが引っ張らないといけないからね。

――この6人だったら誰が主導しそうですか?

全員:…(無言)。

リウ:伝言ゲームみたいに、ちょっとずつ作っていったら面白いんじゃないですか? 誰かが最初の16小節を作って、前後の組み立てを考慮して、それこそ最後どうなっていくんだろうみたいな。

フクスケ:なるほどね!

リウ:それだったら気兼ねなくできるし。「サビだと思ったら、その後もっとすごいのが出てきた!」とかありそうですけど(笑)。

――何だかとても具体的になってきたので、是非実現していただきたいです。では今日の対談、最後はどなたに締めていただきましょうか?

フクスケ:それはやっぱり、ブーメラントークの方に(笑)。

TAMA:え、僕!? じゃあ、えーと、これからですよ。うん。だから…これからもね…仲良くしてね?

全員:(笑)

フクスケ

(文・後藤るつ子/写真・コザイリサ)

ARTIST PROFILE

CASCADE

<プロフィール>

TAMA(Vo)、MASASHI(G)、HIROSHI(Dr)によるロックバンド。1993年結成。音楽オーディション番組『えびす温泉』の出演をきっかけに1995年11月デビュー。個性的で中毒性の高いネオ・ニューウェイヴ・サウンドとカラフルでポップなたたずまいとパフォーマンスが話題となり注目を浴びる。1998年リリースの『FLOWERS OF ROMANCE』や『YELLOW YELLOW FIRE』などのヒットで知られ、数多くの武道館公演を行いながら惜しまれつつも2002年に解散。2009年、約7年振りに復活し、熱狂的なファンの盛り上がりを受けて再スタートをきる。通算でシングル16枚、アルバム16枚をリリース。2018年に結成25年目を迎え、8月にはCASCADE 結成25th Vol.3「VIVA NICE TASTE」3公演を大阪と東京で開催する。

■オフィシャルサイト
http://www.cascade-web.net/

【リリース情報】

『VIVA NICE TASTE』
2018年7月25日発売
(発売元:徳間ジャパン)

VIVA NICE TASTE
TKCA-74671
¥3,000+税
amazon.co.jpで買う

【収録曲】

01.unfairly *新曲
02.Sexy Sexy,
03.S.O.S ロマンティック
04.YELLOW YELLOW FIRE
05.cuckoo
06.あなたのベッドで眠りたい
07.コングラッチェ
08.Dance Capriccio
09.FLOWERS OF ROMANCE
10.小さな星がほら一つ
11.VIVA NICE TASTE

【ライブ情報】

●CASCADE 結成25th Vol.3 「VIVA NICE TASTE」
8月4日(土)アメリカ村CLAPPER
8月19日(日)新宿LOFT(二部制)

ARTIST PROFILE

メトロノーム

<プロフィール>

シャラク(Vo)、フクスケ(G)、リウ(B)によるテクノ・ポップ・ヴィジュアル系バンド。1998年に結成。テクノ・ポップの他、ニュー・ウェイヴやパンク・ロックを色濃く感じさせる特異な音楽性で注目を集める。2009年の5月31日にC.C.Lemon ホール(現渋谷公会堂)でのライブをもって活動を無期限で停止。7年後の2016年同日に復活を発表。9月19日にZepp Tokyoで行われた再起動後初のワンマンライブ『Please Push Play』をソールドアウトさせた。2016年9月にシングル『解離性同一人物』を、2017年3月にアルバム『CONTINUE』をリリース。2018年8月2日の仙台マカナ公演を皮切りにメトロノーム結成20周年全国巡礼『ヤプー三神・巡礼[05→98→18迄-7=20]』がスタートする。

■オフィシャルサイト
http://meto21.com/

【リリース情報】

『廿奇譚AHEAD』
2018年7月25日発売
(発売元:KING RECORDS)

廿奇譚AHEAD
【初回生産限定メト箱】
(CD+DVD)
KICS-93723
¥5,000+税
ミニ・フォトブック封入&メト箱(三方背BOX)付き
amazon.co.jpで買う
廿奇譚AHEAD
【初回生産限定廿メト】
(2CD)
KICS-93724-5
¥4,000+税
amazon.co.jpで買う
廿奇譚AHEAD
【通常盤】
(CD Only)
KICM-3723
¥1,300+税
amazon.co.jpで買う

【収録曲】

[CD]※3種共通
01.廿奇譚AHEAD
02.血空
03.不安の殿堂
04.回游論
05.素晴らしい世界
06.主人公ルート
07.夜空に舞う花弁
08.我が為に鳴くパンドラ
09.孤独氏
10.おやすみ世界
11.弊帚トリムルティ

[DVD]※初回生産限定メト箱のみ
弊帚トリムルティ [Music Video]
血空 [Music Video]
メトーク(90分を超える20周年記念のスペシャル・トーク番組)

[CD2] ※初回生産限定廿メトのみ
(2018年再録ベスト・アルバム):
01.誤sick
02.不機嫌なアンドロイド
03.ΦD-SANSKRIT
04.魔法
05.薔薇と紅蓮
06.僕が僕の為に僕を辞める僕
07.ねじ式
08.カフカフ
09.先生
10.MATSURI
11.PSYCHO-ENEMY
12.三つ数えろ
13.デリート
14.アクアリウム
15.青い鳥

【ライブ情報】

●メトロノーム結成20周年全国巡礼『ヤプー三神・巡礼[05→98→18迄-7=20]』
8月2日(木)仙台マカナ
8月4日(土)札幌クラップスホール
8月5日(日)札幌クラップスホール
8月6日(月)函館club COCOA
8月11日(土)福岡DRUM Be-1
8月12日(日)広島セカンドクラッチ
8月18日(土)大阪BIG CAT
8月19日(日)名古屋ELL
9月1日(土)豊洲PIT[ツアー・ファイナル]