2026.02.27
DEZERT × Royz × 甘い暴力@東京キネマ倶楽部
「DEZERT PARTY Vol.18」

DEZERT、Royz、甘い暴力が提示した“時代”の目印──。

DEZERTによる主催ライヴ「DEZERT PARTY Vol.18」が2月27日に東京キネマ倶楽部で開催された。この企画は2011年から不定期開催されているDEZERTの主催ライヴであり、そのタイミングとバンドのベクトルに応じて、彼らが“対バンしたい相手”とぶつかるという純度の高いイベントだ。

最後に開催されたのは2025年5月の恵比寿リキッドルームで、その際はDIAURAに加え、Support ActとしてDEXCOREを迎え、超満員の盛り上がりを見せた。およそ10ヵ月ぶりの開催となる今回も、Royzに甘い暴力と名実共に現在のシーンを牽引するバンドが集結したこともあって、会場キャパシティを遥かに上回る応募が殺到し、チケットは当然ソールドアウト。

3月20日に幕張メッセワンマンを控えるDEZERT、9月16日に自身初の日本武道館ワンマンが決まったRoyz、新体制になってもその手を緩めず走り続ける甘い暴力と、三者三様でありながら、成熟期を迎えるバンド同士が激突した待望の夜の模様をレポートする。

甘い暴力

トップバッターは甘い暴力。定刻と同時に陽気な出囃子が鳴ると、文(G)と義(B)が登場し、開口一番「どうも~!」とまるで今から漫才でも始まるのだろうかと思わせるテンションで客席を沸かせる。続けざまに「ドキドキワクワク!甘い暴力のヴォーカル咲はどこだ~?」と問いかけるが、たしかに咲の姿はステージ上にはなく、代わりに配された灰色の空気人形やサブステージの段ボールのなかを調べても見つからない。すると「イエーイ! みんな元気~? 甘い暴力です!よろしくお願いしまーす!」と声が聴こえる。その姿が2階にあることを確認すると歓声があがり、咲がステージに合流すると満を辞して「嘘キス」からライヴがスタート。

彼らのライヴは常にオーディエンスをいかにして楽しませるかを最重視して構築されており、こういった対バンの場面でもその信念は揺らがない。メロウな楽曲で小気味よく会場を揺らすと、嘔吐するようなアクションを導入にファストに畳みかけた「ゲロ」、ユニゾンでダイナミズムを感じさせる「首絞めアマチ」と攻撃的に攻めたてた。オーディエンスの一糸乱れぬ振付も壮観で、この共犯性と一体感は甘い暴力でしか体感できないカタルシスのように感じる。

「今日、俺、パイセンたちにとことん噛み付いてやろうと思ってんだよ。大阪からケンカ売りに来てんだよ!」と意志表明して始まったのはリリースされたばかりの新曲「虎伏戦吼」。

潔いほどのラウドさがむしろ新鮮な1曲は、“あいつらは終わったと言われてからが勝負や”という強烈なリリックがどうしたって耳を惹く。新体制になってから2週間足らずで、炎を絶やさぬ決意を叩きつける「虎伏戦吼」は今のバンドのすべてだ。“舐めとったら血ィ見んどワレ”との言葉どおりに、指先で五臓六腑をなぞりながら歌い叫ぶ咲の目つきは鋭いものへと変貌していることに気がつく。

甘い暴力は楽曲の多彩さと大胆な振り幅も武器としているバンドで、ストイックさの対極にファンシーも有するが、この日は前者が強調されるメニューで構成された。ただ、そのいずれの楽曲にもタイトなプレイの中心に芯として歌がある。彼ら自身が歌モノのバンドであることを自負しているように、中盤に披露された「フェティッシュ」では艶のある咲の歌声が冴えわたった。義の操るボトムの動静が幾度も展開される文によるソロとともにドラマティックさを演出すると、咲はそこに深くエロティックなブレスを添える。それは咲、文、義の3人がこの新たな体制においても甘い暴力たる説得力を感じさせる最たる場面だったようにも思う。

「千秋の旦那、見てっか? 奇しくもDEZERTも最近、同じタイトルの曲を出したけど、俺らにもこの曲がある」との発言に歓声が上がったのは、バンドの根源たる「無修正」。疾走する楽曲で再びテンションをあげていくと、終盤は一層バンドサウンドが強調された「暴動」、コール&レスポンスで気合いを高めた「勝て」を叩きつけて完走。

“能ある鷹は爪を隠す”とは言ったものだが、その鋭利さで見事にクロスカウンターを撃ち抜いた甘い暴力。新体制の決意と同じくらいに、変わらぬ魅力も届けてくれた。

Royz

続いて登場したのはRoyz。昨年、甘い暴力と2マンツアーを周った一方で、DEZERTとも数年越しの2マンを開催し、まさにこの夜の中心部を担うバンドとしてRoyzは適役と言えるだろう。

昴(Vo)の「パーティーしようぜ! 肩の力抜いて派手にやりましょう!」を合図に「キュートアグレッション」から始まった。それにしても驚かされたのは、バンド全体から漂う圧倒的な自信だ。一時代を担う存在と目されている3バンドが集まる場だけに、お互いの意地やプライドが激突することが想定されたが、あくまでこの場を楽しみ、楽しませるというプリミティブな思想が今のRoyzには脈々と流れている。

新衣装で登場したことも、この日に賭ける気合いというよりは純粋に驚かせ楽しみたいといったピュアさだったように思う。

曲のブレイクでも「“親友”が誘ってくれたので遊びにきました!」と発言したり、楽屋にいるDEZERTの千秋に対して「ずっと友達!」と手短にこの日の目的を伝えると、アッパーなナンバーを連打。余計な力感がないことがむしろバンドの骨太さを明瞭にする。

日本武道館ワンマンが決定したRoyzにとってもエポックメイキング的な楽曲となった「丸の内ミゼラブル」では、お馴染みの緑に光るRoyzスティックが美しく揺れた。

杙凪

「丸の内ミゼラブル」、「紫苑」と続くブロックは、東京という街の一角で描かれる失恋ストーリーの関連性が胸を締め付けるが、そのなかでも、昴のヴォーカリゼイションは特筆すべきものだ。元来、歌唱力に定評のあるヴォーカリストだが、その感情過多な歌声は楽曲の物語の解像度を何倍にも引き上げるものだった。曲中でも、主人公の心情と相まった幼げなあどけない表情を見せたかと思えば、アウトロでは放心したような顔つきで没入する。そのロングファルセットも歌唱スキルをひけらかすものではなく、詩世界に調和したもので、この中盤のブロックは流石としか言いようのないものだった。

公大

観る度にその訴求力を増していることが驚異的な智也(Dr)のパッション溢れるドラミング、アグレッシブネスを引き受ける公大(B)の硬質なサウンド、杙凪(G)が携える叙情性と、それぞれがミュージシャンとして確立されているからこそ、外に発することだけでなく、内面を向いたプレイでも余韻を引き出すことができる。

ただ、そこはせっかくの3マン。充分な間をとって空気を整えてから、再びハードなナンバーに切り替える巧みな流れもみせた。

「俺らは勝ちにきた!」と告げた「阿修羅」では「頭振れ!振り乱さんかい!」やら「かかってこい!ボケ!」と昴も関西人丸出しのモードで容赦なく盛り上げる。この日出演するDEZERT・千秋、甘い暴力・咲もそれぞれ関西出身とあって、そういったアングルもなかなかに珍しい。

智也

DEZERTの姿に刺激を受けたことを公言している彼らにとっても、自らの武道館公演と同じくらいの想いをしっかり届けたかったのだろう。

堂々たるアンセムとして鳴り響いたラストナンバー「GIANT KILLER」を終えると「3月20日、DEZERT幕張メッセ最高の日に…!そしてその先も、素晴らしい日になりますように!」と親友の大舞台に向けて、これ以上ないエールを贈ってRoyzはステージを去った。

DEZERT

荘厳なSEに招かれるように登場したのはこの夜の首謀者であるDEZERTだ。ここまで繋いできた甘い暴力とRoyzの会心のアクトがあっただけに、“PARTY”とはいえ、生ぬるいものではなく一定の緊張感を感じさせる。

一番最後に現れた千秋(Vo,G)がお立ち台に片足をかけ、会場を見渡すと、SORA(Dr)の打ち鳴らす大陸的なリズムから「My Unhappy Life」に雪崩込んだ。不穏なムード、荒々しいリフと開けたサビが絡み合うのは、彼らのレパートリーのなかでは実は斬新な部類だ。

「ようこそ! DEZERT PARTYへ! ただの主催ライヴじゃねえぞ!」と告げて続いたのは「「不透明人間」」。のっけからハードサイドの楽曲を並べているあたりからも好戦的なことが伝わる。昨年から今年2月にかけて自身初の47都道府県ツアーを敢行したバンドにとって、どうしても味わう機会から遠のいていた、“対バンで刺激を受けること”が今回の公演の目的だ。

千秋

日本武道館ワンマンを成功させたのち、次なる目標となる幕張メッセに向かうにあたって始めた全国行脚。それは巡礼的なお礼参りの意味と同時に、長い期間をかけてベスト・オブ・DEZERTを探し出す旅でもあった。一方で、対外的な刺激から遮断されたまま、幕張メッセに臨むことにクエスチョンを抱いた千秋の呼びかけで実現したこの3マン。その対バン相手が時代の中心地に加速するRoyzと甘い暴力であることからしても、DEZERTが提示するべきは横綱相撲ではなくガチスパーのようなスリリングな肉弾戦であることは明白だ。好意的な緊張感はどこか懐かしい顔つきのDEZERTでもあり、千秋も喉が千切れんばかりの壮絶なシャウトをかます。

Miyako

「世の中、センスが良いとか悪いとか色々な意見があるけどさ、あんたが好きな音楽か、好きじゃない音楽かそれだけだろ! 今日はあんたの好きな音楽かまさせてもらうんで、もっと来てもらっていいですか!」

直情的な爆発力が47都道府県ツアーの意義を実感させる「「変身」」では、これまでの足跡における様々なエッセンスを感じさせることも興味深い。

意外な選曲に驚かされたのは続けて披露された「「遭難」」だ。メロウなバラードは喪失感のある歌詞が何故だかやけに体温を感じさせる。雄弁に語るSacchan(B)のフレーズと情熱的なMiyako(G)のソロもハイライトであるし、淡々としていることで情感を増すSORAのドラミングも、千秋の天性の声質を活かすアクセントとして濃厚な聴き応えがあるものだった。

Sacchan

“PARTY”にあたって、何を持ち寄るかはそれぞれの個性が出るが、DEZERTが持ち寄ったものは“音楽”だ。千秋が人差し指をくるりと回し、ここからアゲていこうぜ!と言わんばかりにジェスチャーした最新ナンバーのひとつでもある「「無修正。」」は、入り組んだセクションに、音色の遊びとポジティブな歌詞が冴えわたる1曲である。従来のアングラなバンド像とは対極に位置する「「無修正。」」は起爆剤になっていることも含め、バンドの音楽的充実度を感じさせる場面だった。

これまでの歴史のなかで音楽性を大きく変遷させながらも、一貫性が損なわれないのは、千秋が書き連ねてきた言葉に嘘がなく、その時系列に沿うことでそのメッセージが深みを増すからだ。2014年に放たれた「「遭難」」を経て披露された、2025年リリースの「「無修正。」」はたった2曲にして重厚な道のりを感じられる時間だった。

SORA

「私なんていなくても、俺なんていなくてもって思ってるんじゃない?…そんなヤツ、俺が全否定してやるよ。あんたが肯定してくれた今日があるから、ここで3バンド、音楽を鳴らさせてもらってます!」

ラストは「僕等の夜について」。その言葉に呼応するように拳がかかげられるフロアの熱狂は、どのバンドのファンであるかの垣根を超えて、この夜に集った音楽を肯定するかけがえのない光景だった。

咲/千秋

ほどなくしてかかったアンコールでは、咲、昴とそれぞれ1回ずつ、さらにオーラスでは3人のフロントマンが集結して「「殺意」」を合計3度に渡って披露。

咲は「一番殺意が高いヤツはどいつじゃ!? 見せたれ!」と火を注いだし、千秋が「甘い暴力もいずれ武道館をやるでしょう!」と発言すると会場からは拍手が巻き起こった。きっとそれは新体制でも不惑の精神で進む決意を示した甘い暴力への敬意だろう。「甘い暴力は幕張観に来てくれる?」という千秋の問いに「観に行くよ!」と咲がアンサーしたのも忘れ難い。ここまで深い関わりがなかった2人の間にも共鳴するものがあったのだろう。

千秋/昴

一方で、Royzの「α」をアカペラで歌う千秋にツッコミを入れる昴の姿も、友情が溢れるナイスなシーンだった。

最後はおおいにパーティー感を演出しながら大団円となったのだが、それは甘っちょろい馴れ合いではなく、この夜をもって互いに認めあう気持ちが深まったことによる答え合わせのような手触りだったことも付け加えておきたい。

昴/千秋/咲
昴/千秋/咲

DEZERTは3月20日に幕張メッセ、Royzは9月16日に日本武道館でのワンマンが控えている。甘い暴力も全国を周っている最中だ。待望だった3マンを終えて、またそれぞれ歩むべき道へ帰っていく。

対決姿勢で挑んだ甘い暴力、己の導き出した正しさで立ったRoyz、音楽で対話してメッセージを届けたDEZERT。三者三様の正しさがあるように、集まったオーディエンスの数だけ正しいものも、正しくないものもあるはずだ。

千秋は最も悩める3バンドだと自評したうえで、同じ葛藤を抱える仲間がほしいとも以前語っていた。まったく異なるからこそ認められる、分かり合える。孤独は孤高の証でもある。

この3バンドが提示したものは大げさではなく、未来への道しるべであり、彼ら自身にとっても新たなきっかけになるものだったと思う。それぞれのこれからにも大いに期待してほしい。心底そう思える夜だった。

◆セットリスト◆
【甘い暴力】
01. 嘘キス
02. ゲロ
03. 首絞めアマチ
04. 虎伏戦吼
05. フェティッシュ
06. 無修正
07. 暴動
08. 勝て

【Royz】
01. キュートアグレッション
02. VENOM
03. クロアゲハ
04. 丸の内ミゼラブル
05. 紫苑
06. 君に手向ける一輪の嘘
07. 阿修羅
08. GIANT KILLER

【DEZERT】
01. My Unhappy Life
02. 「不透明人間」
03. 「変身」
04. 「遭難」
05. 「無修正。」
06. 「君の子宮を触る」
07. 僕等の夜について

En
01. 「殺意」 with 咲(甘い暴力)
02. 「殺意」 with 昴(Royz)
03. 「殺意」 with 咲(甘い暴力)&昴(Royz)

(文・山内秀一/写真・Megumi Iritani)


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