DEZERT

初の日比谷野音公演を前にDEZERTが語る“ヴィジュアル系”。各メンバーのルーツ、シーンの10年間、「V系って知ってる?」の真意とは――

2021年9月に結成10周年を迎えたDEZERTがVif初登場。近年では全国ホールツアーの完遂、日本最大規模の大型野外フェスへの出演など、より勢いを増し、昨年7月に名盤と名高いアルバム『RAINBOW』を生み出したことも記憶に新しい。そして今年3月にはシングル『再教育』をリリース、それに伴うツアーを5月1日に終えたばかり。6月18日には初の日比谷野外大音楽堂公演を控えるDEZERTだが、彼らからの提案もあり今回のインタビューの軸は「ヴィジュアル系について」。メンバーそれぞれのV系ルーツ、そして今まさにシーンの中核を担っているバンドが感じていることとは?


独特で奇抜な言葉が目に入ってきて、「それ最高!」みたいな(Miyako)

Miyako

初登場ということで、Vif恒例の他己紹介をお願いします。

SORA:では、まず僕が紹介します。DEZERTのスーパーアイドル、Miyako君です。

Miyako:そんな無の表情で(笑)。

SORA:Miyako君は世界一美男子だと僕は思っています。動く彫刻、Miyakoです。

Miyako:本当に思ってる(笑)?

Sacchan:内面のことゼロって(笑)。

Miyako:じゃあ次は僕が。DEZERTの仏、Sacchanです。何かを悟っているんじゃないかと思うくらい仏で、最近は韓国にハマっています。昨日、韓国のアーティストのMVをSORA君が流していて、覚えて踊っていてすごいなぁと思いました。

確かに、踊っている印象があります(笑)。

Sacchan:本当ですか。何かすいません(笑)。では次は、唯一無二のヴォーカリスト、千秋さんです。それ以外は言えない感じです(笑)。

千秋:SORA君は…早漏な人。

Sacchan:何事もね。

SORA:(頷く)ヴィジュアルロックバンド業界で一番早漏だと思います。誇りを持って早漏だと思います。よろしくお願いします。

よろしくお願いします(笑)。この記事の公開前日6月6日から、渋谷に千秋さんの巨大ボードが出現することになっていて、「V系って知ってる?」というキャッチコピーになっているわけですが、これにはどのような思惑が?

Sacchan:事務所、主に社長なんですけど、これを出すぞーと盛り上がってくれて。何かキャッチコピーを考えろと言われてSORA君が出した案です。

SORA:普通に今、V系って知っている人が少ないだろうなと思って。僕が知っているヴィジュアル系はカッコいいものなので、それを伝えたいなと思って「V系って知ってる?」と問い掛けました。「知らねーよ」とか思ってくれるだけでもいいかなと。

千秋:僕がヴィジュアル系に出会った時って、ヴィジュアル系という言葉はアンダーグラウンドだったと思うんですよ。ちょっとヤバい人たちみたいな。もちろんX JAPANとかはいたけど、僕的には雑誌『Cure』や『SHOXX』に載っている人たちがヴィジュアル系というイメージでした。そこから15年くらい経って、ヴィジュアル系という言葉は皆知っていると思うんですけど、内容は知らないじゃないですか。特に若い子とか。例えば「メンズアイドル」と言ったら、何となく想像は付くけど、「ヴィジュアル系」と言うと、大衆が思っているイメージとはちょっと違うところで僕らはやっているから、「V系って知ってる?」という言葉はそういうことなんじゃないかなと思っていました。

SORA:そうそう。

改めて、皆さんのV系ルーツを伺いたいと思います。SORAさんはhideさんがルーツというのは有名ですよね。

SORA:有名ですか? それは嬉しいです。バンドをやりたいと思った原点が、僕はhideさんから始まって、その繋がりから色々なアーティストを知っていきました。なので、一番テッペンに君臨しているのは死ぬまでhideさん、死んでもhideさんです。それはマジで変わらないです。

幅広くいろんな音楽は聴きましたか?

SORA:音楽が大好きなので結構満遍なく聴いてはいたんですが、ヴィジュアル系には固執していました。基本的に僕は明るいチャラけているヴィジュアル系が大嫌いだったので、いわゆるオサレ系と言われるバンドが本当に嫌いだったんです。hideさんを好きになって、X JAPANを好きになって、割と硬派なバンドが好きだったので、10代の頃はDIR EN GREYが大好きでしたね。今、レジェンドと言われる方々は、hideさんの周りからどんどん知っていっていきました。D’ERLANGERやMUCCとか、今、光栄なことに関わりある大先輩もたくさんいます。

同じ事務所にはたくさんのレジェンドがいらっしゃいますもんね。

SORA:とにかく10代の頃の僕は、「イェーイ!」みたいな明るいバンドに未来はないなと思っていたので、いわゆるコテ系と言われていた、信念を持って伝えたいことがグワーッとあるバンドが好きでしたね。ヴィジュアル系というジャンルに関しては、独断と偏見で黒くて硬派なバンドをめちゃくちゃ聴いていました。

Miyakoさんはいかがですか?

Miyako:本屋さんでshullaが表紙の号の『Cure』を見たのが最初で、それが青っぽい照明で、メンバーの顔に血がバッと付いているような写真だったんですよね。当時、中学生の俺はそれを見て「こんなバンドがいるんだ!」と思って。やっぱり中学生くらいだと中二病チックな感じじゃないですか。だから「血、最高!」みたいな(笑)。ライヴのタイトルとかも普通のバンドにはないような独特で奇抜な言葉が目に入ってきて、「それ最高!」みたいな感じで。『SHOXX』や『FOOL’S MATE』とか、ヴィジュアル系が載っている色々な雑誌を見ていましたね。

その後は?

Miyako:それから自分自身もバンドを始めて、その時のメンバーがコテコテ系のバンドが好きだったんですけど、「こういうバンドも聴いてみなよ」ってthe studsを薦められて。聴いてみたらギターのサウンドがすごく衝撃的で、俺が聴いてきたヴィジュアル系のギターサウンドじゃなくて、それにまた憧れました。それで人づてに頼んで、aieさんがthe god and death starsの活動をしている時にローディーをやりました。そういうコアなヴィジュアル系から色々な方向に、それこそMALICE MIZERとかの耽美系と言われるものも聴いたし、色々な種類のヴィジュアル系を聴きましたね。

SacchanさんのV系ルーツは?

Sacchan:僕自身はあまりヴィジュアル系を通っていないと思っていたんですけど、結構年の離れた姉が、X JAPAN、LUNA SEA、GLAY、L’Arc~en~Cielとかをすごく応援している人だったんです。だから家に自然とそういうCDが大量にあって。当時はそれがヴィジュアル系かどうかという価値観で触れ合ってはいなくて、当たり前というか、音楽=そういう人たちみたいな感じだったんですよね。今思えば、僕のヴィジュアル系ルーツと言われると、GLAYが結構強いと思いますね。GLAYでベースという楽器を知ったり、初めてコピーしてみた曲もGLAYだったりしたので。あと、ヴィジュアル系とは少し離れるかもしれないですけど、THE YELLOW MONKEYも。当時は意識していなかったけど、今思えばこの二つが僕のルーツと言えばルーツなのかもしれないですね。

思春期に聴いた音楽はずっと残りますからね。

Sacchan:そうですね。今も当時のGLAYの曲を聴いてみたりすると、やっぱりなにか特別感ある感じしますもんね。

千秋さんのV系ルーツは?

千秋:中学生くらいかな、ヴィジュアル系という言葉は何となく知っていましたけど、僕も姉が聴いている音楽を聴いたりしている中で、ギリギリL’Arc~en~CielやGLAYはありました。知り合いにヴィジュアル系が好きな奴もいましたけど、僕的には本屋で、確か表紙がMIYAVIさんだったかな、眉ピや口ピが開いていて、すごくカッコよくて「こんな人、街におらへんな」と、ちょっと興味を持って立ち読みしました。友達がマイナーなバンドのCDを貸してくれたりもしましたね。ただ、どのアーティストがルーツというのはないんですよ。L’Arc~en~CielやJanne Da Arcをヴィジュアル系と言うのであれば、そうかもしれないですけど。

こういうジャンルがマイノリティーであってもいいんじゃないか(Sacchan)

Sacchan

昨年末に行われた「DANGER CRUE 40th Anniversary JACK IN THE BOX 2021」@日本武道館で、千秋さんが「このシーンは元気がないとか、終わったとかよく言われますが。これからは“俺たち”がこのシーンをちゃんと背負っていくんで」と言っていましたよね。

千秋:「JACK IN THE BOX」って、うちの会社が主催しているイベントで、僕が学生の頃からあったし、一種の憧れのイベントではあったんですよね。いろんな人がコラボしていたり…それこそGLAYのTERUさんとL’Arc~en~Cielのhydeさんが一緒に「誘惑」(GLAY)を歌ったり、会場も幕張メッセでやったり、そういう大規模なイメージがあったんですけど、回数を重ねるに連れて規模が小さくなってきたと思うんですよ。そんな中で、去年のイベントの時に社長が「今年で終わりかな」みたいなことを楽屋で言っていて、「それはあかんやろ、何でなん」と思って。昔のようにはできないかもしれないけど、名前はずっと続ければいいやん。ヴィジュアル系だってそう。hideさんだって、SORA君はヴィジュアル系と言ったけど、果たして本人はどうなのかなという話で。名前の独り歩きで文化になったという部分もあると思うから、終わらせるのは勿体ないんじゃないかという部分で、色々考えていたんですよね。

なるほど。

千秋:それで仕切る人がいないんだったら、俺ら中心にやってもいいしと思って。まだそこまでのバンドじゃないかもしれないけど、そこまでのバンドを目指しているわけだから、俺ら中心でもええやん、何ひよってんねんっていう感じだった気がしますね。

近年このシーンは元気がないなという実感はありましたか?

Sacchan:実際、肌感ではそう思っていたんですけど、こういうものってサイクルで回っていくものだとも思っていて。僕らが感じてきたもので言うと、X JAPAN、LUNA SEA、L’Arc~en~Ciel、GLAYが大人気だった時代があって、その後も良い波があって、ネオヴィジュアル系という言葉もあったと思うんですけど、そういうのがまたドカンと流行って、それから僕らがバンドを始めて10年間くらい経つんですけど、その中で沈んでいる空気感というのは何となくは感じていました。ただ、これも肌感でしかないんですけど、また一周回りつつあるんじゃないかなと個人的には最近特に思っているんです。こういうジャンルがマイノリティーであってもいいんじゃないかみたいな雰囲気になりつつあると思っていて。だから今、ここからすごく調子よくなっていくんじゃないかなという気はしているので、渋谷の看板に対しても今さらV系という言葉をわざわざボンッと打ち出すのは、皆、こういうジャンルを久々に意識してみたら面白いんじゃないの?っていう雰囲気感も含めてというのもありますね。

DEZERTは10年以上活動していますが、この10年間ヴィジュアル系シーンの波はどのように感じていますか?

千秋:それは面白いテーマですね。昨年末で閉店してしまった高田馬場AREAが聖地と言われていて、若手バンドが目指すようなイベントがたくさんありましたよね。僕がヴィジュアル系をやり始めた時というのが、ちょうど同世代にViViDが出てきた時というイメージがあって。

そうなんですね。

千秋:それで一瞬盛り上がったと思うんですよね。どの観点で「盛り上がる」と言うかは難しいですけど、モテるイメージだったんですよ。ヴィジュアル系をやっている人ってカッコいいよねという。元々は「ぶっ飛んでいてカッコいい」だったのが「イケメン」になったわけです。だけどその後、「ちょっと変だよね」になり、「ズレているよね」という波があった気がするんです。そういうふうに、この10年で世間一般のイメージが変わってきた気がしますね。それが僕はネオヴィジュアル系の弊害だと思っているんですよ。僕は好きだったし、ネオヴィジュアル系にも色々なものがあると思っていたんですけど、一般的には一つしかイメージがないような10年間だったなと。2011年頃ってViViD流行っていたよね?

Miyako:うん、流行ってたね。同年代だったから結構仲が良くて、ライヴもよく一緒にやっていました。俺は俺で結構頑張っていて、負けたくないなと思っていたけど、結局ViViDは武道館までやっちゃったから、あの時はすごく悔しかったですね。

千秋:てっきり東京ドームくらいまでやると思っていたけどね。

Miyako:そうだね、あの時はそう思ってた。素敵なバンドだったよね。