Ruiza

あの日から現在に至るまでの経緯と心情、Ruiza本格始動の幕開けを飾る『Alive』を紐解く。夢の続きを君に見せるから――

2024年3月をもって無期限活動休止となったDのギタリストRuizaが、全7曲収録のミニアルバム『Alive』を完成させた。2006年にスタートした“Ruiza solo works”ではインストゥルメンタルを中心に活動してきた彼だが、このたび本格始動するソロ名義では、ヴォーカルを含むゲストミュージシャンを迎えたバンド編成での楽曲およびステージとなる。Dの活動休止以降、Ruiza初のメディアインタビューとなった今回。あの日から現在に至るまでの経緯と心情、そしてRuizaの今が詰め込まれた第1弾作品について、じっくりと語ってもらった。


Ruizaという競技は僕にしかできないこと

偶然にも1年前の昨日、D活動休止前最後のインタビュー取材日でした。そして、あの記事のコメント動画の中で、活休前ラストライブを終えて最初に食べたいものは?という質問をしていて。

Ruiza:僕、「唐揚げ」って言いましたっけ(笑)?

はい(笑)。実際どうだったのかなと。

Ruiza:どうだったっけな…。終演後に特典会があったんですけど、それがちょっと色々ありましたので、家に帰ったのがもう朝だったんですよね。だから、慌ただしすぎて何を食べたかも覚えてなくて(笑)。

ライブ自体もフルボリュームの濃厚な2daysでしたしね。

Ruiza:もうやりきった感が強くて。僕としては、ちょっと間を空ける、いわゆるお休みみたいな、ぬるい気持ちの活休ではないので。人生を懸けてやってきたので、覚悟を決めて発表したし、言ってしまえば活休の話が出たのはもう何年か前なので、そこからは覚悟を決めていたんですよね。悔いのないように出しきろうと。すごく好きなバンドだったので、一番良い状態を残したいなとはずっと思っていて、そこに向けて一生懸命やりきったなという感じですね。僕はまだラストライブの映像は観られないです。もちろん制作している段階での確認はしましたけど、製品版は観てないですね。

Ruizaさんのオフィシャルサイトにある2024年4月1日のDIARYに、「活動休止を発表した直後、(休止した時に)自分がどんな気持ちになるのか全然わからなかった。もしかして音楽から離れたくなるかもしれないし、ギターはもういいかなってなるかもしれないって考えることもあったけど、休止してもやっぱり音楽もギターも大好きでした」と書いていましたよね。

Ruiza:実際、休止後のことは何も考えてなかったんですよね。何か次にやることを見据えていた人もいたかもしれないですけど、僕は全くそんなことなくて。昨年7月にソロのライブをやったんですけど、決めていたのはそれだけで。それもたまたまだったんですよ。2023年の6月ぐらいかな、活休を発表して少し経った頃に、池袋RED-Zoneで友だちと喋る機会があって。「今後どうするんですか?」って聞かれて、「いや、なんも考えてないよ」と言ったら、「やればいいじゃないですか。会場を押さえましょうよ」という話になったんですよ(笑)。

本当にたまたま(笑)。

Ruiza:ただ、ラストライブの直後は、自分自身がやろうって気持ちに絶対ならないだろうなと思ったんですよね。3月に休止して、じゃあ4月からやるか、5月からやるかとか、とてもじゃないけど思えないだろうなと。もし動けるとしたら、季節が変わってからだろうなって。春はもう自分の気持ちも本当に想像がつかなかったので、しばらく時間が欲しいなと思ったんです。それで、7月の池袋RED-Zoneを仮で押さえたんですよ。もし、その後やりたくないなとなっても、まだキャンセルはできるなと思って。あとはもう本当に何も考えず。だから、2024年って自分のことはほとんどやってないんですよね。

サポートやイベント出演で表に出る機会は結構あったので、アクティブに活動している印象がありました。

Ruiza:それ、よく言われるんですよ(笑)。でも実際、ソロの動きは三つくらいしかしてなくて。前もって決めていたら、もっと早く動いていたはずなんですよ。ていうか、決めてないと動けないじゃないですか。だから、僕の2024年の行動が、今言っていることの証明ですよね。素直な心情がそのままこの1年に反映されていたかなと。

4月の段階で先ほどのDIARYを投稿したのは、どういう理由だったんでしょう?

Ruiza:活休後すぐにいろんな人が声を掛けてくれたんですよ。サポートもそうですし、ダウトの幸樹が「こんな時期に言うのも」って気を遣ってくれつつ、4月20日のダウトpresents 「バンギャルフェス’24」@CLUB CITTA’への出演オファーをくれたんですね。なんかそれがすごく嬉しくて。必要としてくれているなと思ったのと、姿を見られて安心するファンの人もいるのかなと、自分のためよりも、そういう気持ちで受けました。それ以外にもトークイベントとか、司会をしてほしいとか、色々お誘いをいただいたんですけど、活休後初めて姿を見せるんだったら、やっぱりギターを弾きたいなと思ったので、最初にダウトのイベントに出ることにしました。で、それを決めたから、自分自身を動かさなきゃなと思って、3月の終わりからできる範囲でですけど、急に色々決めていったんですよね。

イベント出演を決めたことが、良いきっかけになったと。

Ruiza:正直、やってほしい声と、やらないでほしい声が両方あったんですよ。何て言ったらいいのか難しいですけど、D以外での動きを嫌がる人はいましたね。Dじゃないのは別に見たくないのかな?なんでダメなん?って思う反面、その気持ちもわかるし…色々すごく迷っていたというか、何をしたらいいんだろうと。それもあって、2024年は自分の活動を制限していたというのは大きいですね。新しくバンドを組みたい気持ちは全くなくて。というのも、いろんな気持ちの人がいると思うので、できるだけ汲んであげたいけど、それを考えながらだと楽しくできないと思うんですよね。楽しくできないことをわざわざやる必要はないし、自分が楽しめてないものを見せるのもちょっと違うなと思って。7月のソロのライブをやるまでは、割と内にこもった感じでしたね。

ここまでのRuizaさんの言葉やDIARYに書かれていることも含め、ファンの方がどう思うかというのをすごく考えているのが伝わってきます。

Ruiza:最近言っていることなんですけど、 あの人はこうで、この人はこうとか、勝手に競わせる人いるじゃないですか。そんなのどうでもよくて、そもそも僕はRuizaという競技を一人でやっているんですね。その競技は僕にしかできないことだし、僕も他の競技はやっていないので、誰かと比べられても困るというか。それって野球とサッカーを比べているようなものなので、そういうことをしないでほしいなと。意味がないので。そんなことをすごく感じながら、2024年を過ごしていましたね。

色々ありますね…。

Ruiza:5人の動きを見て、そう考えるんじゃないですかね。活休後すぐに動いていたメンバーもいましたよ。自分もですけど、何かしらの活動を目の当たりにすることで複雑な気持ちになる人もいたかもしれないし、しばらく観られないかもと思っていたのに、すぐに観られて嬉しいっていう人ももちろんいたと思うんですよね。いろんな考えの人はいるだろうなと思うので、僕としてはなるべく優しくありたいなっていう感じで。そこは変わらず今でもそうですね。

ちなみに、2024年に多くのミュージシャンの方々と共演したのは、やはり良い刺激になりましたか?

Ruiza:それはやっぱりありましたね。初共演の方も多かったし。これまでは全てにおいてDを優先していたので、お断りしていたこともいっぱいあったんですよ。だから今、せっかくの機会なので色々やりたいなと思って。もちろんタイミングが合わなくてできなかったお話もあるんですけど、受けられたお話や、やってみたいなと思うものはなるべくやりました。

初めてバンドを組んだ時の感覚に似ている

以前までのRuiza solo worksは基本的にインストゥルメンタルでしたが、現在のRuizaさんのソロプロジェクトはヴォーカルも入ったバンド編成です。この形にすることに至った経緯を教えてください。

Ruiza:7月のライブを考えていくうちに、“終わらないもの”を作りたいなと思ったんですよ。僕がソロでやることって、基本的に自分がストップしない限りは終わらないじゃないですか。それがそもそものスタートですね。で、僕のソロではあるけど、結局自分がやりたいことの一つはバンドサウンドなので、それを形にしたいなというところで、Ruiza Bandみたいなものを作ろうと思いました。

現在のRuizaさんの活動において、Sethさん(Moi dix Mois)の存在はかなり大きいのではと。

Ruiza:そうですね。Sethさんって、僕が20歳頃からの付き合いなんですよ。当時、僕はDistray、SethさんはAMADEUSというバンドだったんですけど、僕らが約25本の全国ツアーを回った時に10ヵ所ぐらい出てくれて、すごく仲良くさせてもらったんです。僕としては、ライブで地方に行くのが初めてのバンドだったので、わからないことだらけの時に、Sethさんは既に有名な人で、僕の感覚ではちょっとじゃなくて相当先輩で、簡単には接触できないような存在だったんですね。なので、憧れの先輩が一緒にツアーを回ってくれたみたいな感じで、ずっと大好きな先輩で。ただ、先輩すぎて、一緒にやりたいなみたいなのは、当時からついこの間まで考えたこともなかったんですよ(笑)。

そうだったんですね。

Ruiza:AMADEUSの曲もすごく好きで、当時ツアーの移動中に皆で聴いていましたし。Moi dix Moisも、MALICE MIZERを見てきた僕からしたら、雲の上の人たちで。だから、Sethさんも先輩から雲の上の人になっていました(笑)。だけど、「Japanese Visual Metal Tour」(2023年9〜10月開催のMoi dix Mois、Versailles、D、摩天楼オペラによる共同ツアー)の時に色々話をして、僕が勝手に抱いていたSethさんに対するイメージが、良い意味で取れたというか。元々仲良かったのが、そこでさらに仲良くなったんですよね。

話してみないとわからないことってありますもんね。

Ruiza:結局、僕が声を掛けたのは「バンギャルフェス」の出演が決まって、自分が動かないとってなった後なんですよ。変わらず僕の好きな歌を歌っていたので、Sethさんが必要だなと思って。ただ、そもそもSethさんがそういう活動をしていいのかどうかもわからなかったので、僕個人のサポートを引き受けることができるのかということから聞きました。

SNSを見ていると、このプロジェクトにかけるSethさんの熱量がすごいなと思って。

Ruiza:嬉しいですね。僕、やりたいことが最初から今まで何一つ変わってないんですよ。大昔にやっていたバンドの時と、作る曲の内容は変わっていたとしても、やりたい世界観や雰囲気、曲調はどのバンドでも同じなんです。ただ、Sethさんに声を掛けた段階ではまだ曲もなくて。だからSethさんとしては、最初は新しいことができる楽しみくらいの感覚だったかもしれないです。その後、自分が一番やりたいことを突き詰めて作ったのが、今回MVになっている「深層」なんですけど、Sethさんがやってくれると決まった後に聴いてもらったら、めちゃくちゃ気に入ってくれて。ひょっとしたらSethさんのルーツに何かしらが引っかかるのかもしれないですね。特にサビのメロディを「こういうの歌いたかったわ」って。

数十年来の仲にも関わらず、今ここでガチッとはまったわけですね。

Ruiza:そうそう(笑)。僕からすると救世主というか。今ここでこうなるタイミングだったんだなってすごく思いますね。

それこそSethさん自身が「Sethのポテンシャルを最大限に活かした、言ってみれば俺の為に誕生したともいえる楽曲達!」とXに投稿していましたよね。

Ruiza:そうですね(笑)。Sethさんの歌を聴いてMVを撮ることを決めたので、「深層」だけ早めにレコーディングしたんですよ。他の曲もデモは揃っていたんですけど、実際歌を聴いたことで、こういう歌い方をするんだとか、ここはこういう風に声が伸びるんだとか、いろんなことを知って。そもそも歌のレコーディングに立ち会うこと自体が10年ぐらいぶりで、そこで曲を一緒に生み出していく感覚がすごくあったんですよ。よく「曲は生き物」って表現するじゃないですか。「深層」を作った時に、まさにそれを感じたというか。歌が入ることで、ここを変えよう、こうしたほうがもっと良くなるなみたいなことがいっぱいあったんですよね。

一緒に作ることの良さを改めて感じたと。

Ruiza:時代の進化で、近年は各自宅レコーディングになっていたので、この感覚って皆でスタジオレコーディングをしていた時期まで遡っちゃうんですよね。それで、自分の中でのイメージとして、こう歌ってほしいみたいなのが何ヵ所かあったので、お願いしたら、逆に「そうやってよかったんだ!?」と言われたり。Sethさんって、Moi dix MoisはManaさん主体のプロジェクトですし、さくら前線も3人のグループで、あとは演歌歌手の美良政次という活動がありますけど、自分主体のロックバンドという形は今はないんですよね。Sethさんの中で、ここはこういうアプローチをしようというのがあると思うんですけど、それを解き放った感じで、すごく楽しんで歌ってくれていましたね。

ところで、水面下で制作していたわけではない、すなわち3月以降のこの数ヵ月間に7曲作り上げたことになるので、結構ハイペースですよね。

Ruiza:やりたいなと気持ちが切り替わってからは、初めてバンドを組んだ時の感覚に似ているというか。ワクワクしている感じが強くて。どんどんアイデアが出てきて、書き始めてからはバーッとできましたね。

今回、全て一人で作詞作曲することを前提として制作に臨んだのでしょうか?

Ruiza:今後はわからないですけど、最初の作品としては全て自分で作りたいなという気持ちがありました。でも、ドラムを美景君、ベースをツネ(Tsunehito/D)と華凛ちゃん(DAT)にお願いしたことで、それぞれ自分では思い浮かばないフレーズが入ってきたので、一人と言いつつも結果的にいろんな人の力をお借りしていますね。シンセ周りも最初は全部自分でやっていたんですけど、エンジニアをやってくれた舜さん(NEiN、覇叉羅)にお願いしたら、自分にないものを入れてくれましたし。だから結局、あまり一人にこだわっていないというか。生み出すのはもちろん自分ですけど、その先のプロセスは一番良い完成形を取ればいいかなと思っています。

色々なアイデアが入ると広がりますもんね。

Ruiza:ギターが他の人となってくると、またちょっと違うと思うんですけどね。でも、もしかしたら今後、楽曲によってはゲストとして誰かにギターソロを弾いてもらうのもありだと思うかもしれないですね。今の段階では全く思わないですけど、必要だと思ったらそうするかもしれないし、一つ作品を作り上げたことで、今まで以上にいろんなところにアンテナを張れるようになった気はしますね。ちょっとだけ外を見る余裕ができてきたのかなと。いろんな人とやってみるというのは、自分が2024年に様々なサポートやイベント出演をしてきたのと感覚が近いというか。やってみたから広がったことってめちゃくちゃあったので、作品を彩るのも自分一人にこだわらなくて良かったなと思います。