2024.08.24
ギル@高田馬場CLUB PHASE
「Alone with the flames」
8月21日に誕生日を迎えたギタリスト・ギルが、自身のバースデーライブ「Alone with the flames」を8月24日、高田馬場CLUB PHASEにて開催した。
ギルのステージはこれまでベース、ドラムを含めたスリーピースで行うことがレギュラーの形であったが、「今日はこういう編成で、発表された時は期待と不安が天秤にかけられたと思うんだけど、とても頼りになる男が支えてくれるのでね。今日だけのアレンジを皆さんにお届けできる特別な夜になりますので、最後まで楽しんでいこうぜ!」との言葉があった通り、本公演では盟友・テロ(†яi¢к、ex.ヴィドール)がドラマーとしてではなく、キーボードでサポート出演し、イレギュラーな二人編成での公演となった。
ノースリーブの衣装で登場したギルが真っ直ぐ天を指したのを合図に、彼にとってソロ初のワンマン公演であった1年前のバースデーライブと同様、メロディアスかつテクニカルなインスト「革命」が幕開けを飾った当夜。これまでに発表してきた音源『DAWN OF FLAME』シリーズ四作(2022年12月、2023年4月、8月、2024年7月)に収められた全12曲、既にステージでは披露済みの未音源化曲1曲、クラシックの名曲カバー2曲、自身のキャリアの中からセレクトした楽曲のカバー3曲、初披露の新曲1曲というラインナップが繰り広げられた。
最新作『DAWN OF FLAME IV』では、苦難を乗り越えた先の新たな展望と挑戦を表現しているが、当夜の編成も一つの挑戦と言えよう。ベースとドラムを同期で流しての演奏を基本としながらも、先述の通り随所でこの日ならではのアレンジが見て取れた。特に中盤ブロックでの温かく穏やかな光を感じさせるインスト「Tiny Grace」は、ギターと鍵盤のアンサンブルがより際立つものであったし、煌びやかなエフェクトをかけたギター音色でアルペジオを一節プレイした後、テロが奏でる鍵盤に乗せて歌い上げた「Liberty type2」は、通常の「Liberty」よりテンポも落とし、歌に重点を置いたバラードver.とも言える仕様に。また、後半に配された「Departure」では、普段のステージにおいて同期で流れている冒頭のピアノフレーズが、テロによる生演奏となったことも印象的だった。
なお、ギルとテロが同じステージに立つのは、ヴィドールのラストライブ以来、実に約13年ぶり。ギルの歌唱、テロのキーボードで「思春の痕 〜Love me,Hug me〜」(ヴィドール)を聴く日が来るとは誰が想像しただろう。
「バンドが止まっても仲良くやってるよ。我々は楽器が好きなキッズのまま」(ギル)と終始和やかなやり取りも繰り広げられ、「俺の曲を全部覚えるのは大変だろうから、4〜5曲演奏してくれれば、あとは顔で演奏してなんとかなるんじゃない?」とオファーしたというギルに対し、「アドリブでも、弾いているふりでもいいよと言ってくれたんだけど、ワンマンだから結構長いでしょ? ずっと弾いているふりをしているのもしんどいなと思って、せっかくなら全曲やると。でも、コード譜をもらって自分なりにアレンジしようと思ったんだけど、曲が難しい! とにかくキーがどんどん変わるから、お客さんもギルも見たいんだけど、俺その後に迷子になるなと思って、譜面に集中しています」という裏話が飛び出す一幕も。
また、去る4月に行われた1stツアーファイナルのステージ上で、このバースデー公演に向けて新曲を用意すると宣言しており、有言実行と相成ったわけだが、その楽曲「俗」について述べたギルの言葉を記しておきたい。
「今日のコンセプトと真逆のような、全然おめでたくない曲なんだけど、俺の中では自分への挑戦として、44歳になったばかりだけど、45歳に向けて自分の内面にあるダークサイドにも真摯に向かい合ったというか。歳を重ねていくと、新鮮なことってどうしても減っていくと思うし、世の中のあり方を誰しもがちょっとずつわかっていく。なんでこんな仕組みなんだろうとわかった時にガッカリする人もいれば、何くそと反逆する人もいて、色々なタイプの人がいるから世の中が成り立っているんだけどさ。人のあり方ってこうなのかなと、自分なりに暗い感じにまとめた曲ができました。それをなぜか誕生日のライブとして皆に祝ってもらうこの日に披露するという、斜め上どころか崖に落ちる感じのセッティングではございますけど、それも俺らしいかなと」
まさにダークなミディアムテンポの楽曲で、ギルの歌唱にオクターブ下の低音が重なる悪魔的なムードやゴシック調のサウンド、〈人の終わりなき欲望絶え間なく求める〉〈悍ましき人の業〉〈人の抗えぬ性よ〉といった歌詞が並ぶ、これまでのギルにはないタイプの1曲であり、そこに限界の先を超えて突き進むことを描いたヴォーカル曲「Exceed」が続いた流れは、闇の後に光を感じさせてくれるものだった。
後半戦では、Angeloの「JIHAD」インストver.において、交互に二人のソロ回しもありながら、ギルならではのクラシックの名曲カバーへ。これまでも様々な選曲がされてきたが、今回は同期をバックにギルのみの演奏で「威風堂々」、テロも加わり起伏のあるアグレッシブな展開を魅せた「カノンロック」(「カノン」のカバー)と、新たな2曲を披露した。
「俺も試行錯誤しながら、ちょっとずつ前には進んでいるわけで。さっきの新曲『俗』もヤバい歌詞だったと思うんだけど、ダークサイドが出てきて、そういう世界線もありだな、でも『Liberty』みたいな明るいのもいいよな、色々な俺があっていいよなと。色々な人生を紡いできたわけだから、色々な匂いや音、経験が俺の作曲で作品になっていくわけだ。これからも色々な作品を生み落としていくので、ぜひ期待していてね。今日は本当に集まってくれてどうもありがとう。お祝いをどうもありがとう」
そんな言葉から最終ブロックでは、シャウトも聴かせる未音源化の「Brutal Predator」、ギルとオーディエンスがフラッグを振る光景も見られた、力強さに溢れた「焔迅」、希望を感じさせてくれるメロディアスなインスト「HORIZON」、そして「自由をこの手に。右手を掲げて思いきり楽しんでいこうぜ」と最後に改めて「Liberty」をプレイし、拳を突き上げるフロアを前に、決意を新たに未来へ走り出す自身を投影したメッセージを届けたのだった。
記念すべき日の初の編成によるステージはこれにて幕となったが、当夜の二人の口ぶりから考えると、今後また彼らの共演を観られる日が訪れるかもしれない。そして、ギルの次回公演は10月18日に青山RizMで行われるワンマンライブ「Another mind gentile」で、何やらこのタイトルには重要な意味合いが秘められているとの噂だったが、「通称『アミゲン』。覚悟しておいて。俺、頑張って体絞ってくるから」というギルの発言から察してほしい。また、詳細は未定ながら、誕生日を逆さ読みした日付の12月8日には、昨年同様にお返しdayとして「Reverse Honey」公演を企画中とのこと。様々な挑戦を続けるギルの今後に期待したい。
◆セットリスト◆
01. 革命
02. バビロン
03. meteor
04. BREATH
05. 思春の痕 〜Love me,Hug me〜
06. arise
07. 俗
08. Exceed
09. Beyond the crisis
10. Tiny Grace
11. 炎舞曲
12. Liberty type2
13. JIHAD
14. 威風堂々
15. カノンロック
16. Departure
17. Brutal Predator
18. 焔迅
19. HORIZON
20. Liberty
(文・金多賀歩美/写真・浜本研志)
【リリース情報】
●『DAWN OF FLAME IV』
2024年7月21日(日)発売
[CD]¥1,500(税込)
<収録曲>
01. HORIZON
02. 焔迅
03. 炎舞曲
【ライブ情報】
●「Another mind gentile」
10月18日(金)青山RizM
●「Reverse Honey log2nd」
12月8日(日)大塚Hearts+