Zepp Tokyoでの最後のライブを終えたvistlip。慣れ親しんだ会場に別れを告げ、さらなる未来を目指す彼ら一人ひとりに、現在の思いを聞いた。~Yuh編~
上手のギタリストは孤高。ゆえにYuh(G)は自らのギタープレイに人一倍集中している。そんな彼が2011年7月7日に初めてZepp Tokyoのステージに立ったときから変化したこととは? 理想を高く掲げる彼の姿勢から、音楽だけでなく総合的に楽しませるエンターテイナーとしてのvistlipというバンドの姿がくっきりと浮かび上がってきた。
ステージとファンとの間で対話ができるようになりたい
ライブを終えた今の心境は?
Yuh:13周年のライブというよりは、コンセプトに沿ったライブを終えたという手応えが大きいですね。アンコールの「-OZONE-」の辺りで、最初のZepp Tokyoのときは、半年以上活動をしていなかったのに、たくさんの人が集まってくれた記憶が蘇ってきて感慨深かったです。あのときはすごく嬉しかったし、制作のスタッフが「何も活動していなかったのに、どうしてこんなに人が集まるんだ?」と驚いていたことを思い出しました。
海さんがインタビューで、「最初のZepp Tokyoのときは、ライブが始まる前にメンバーがとても緊張していたから、チケットの売れ行きを黙っていた」という当時のエピソードを明かしてくれました。
Yuh:僕自身はそんなに緊張していなかったと思うんですけどね(笑)。Zepp Tokyoのライブは、毎回1曲目で鳥肌が立って、ちょっと感極まる感じがあるんですけど、ステージに行く前の緊張は、2度目のZepp Tokyo公演以降はほとんどないですね。だから1度目もそんなに緊張していなかったと思います(笑)。多分、僕がvistlipのライブで開演前に1番緊張していたのは、2010年7月7日の渋谷O-EASTでのライブでしたよ。
今回の衣装はそれぞれキャラクターが設定されていて、Yuhさんは、ジェイソンと死神でした。衣装についてはいかがでしたか?
Yuh:僕の衣装には羽根が付いていたんですけど、まさか自分の衣装に羽根が付く日がくるとは思わなかったです(笑)。一つひとつ丁寧に衣装に付けられていて、それが衣装の雰囲気を出していて良かったですね。
ライブ前のインタビューで、「Rosalia Lombardo」付近がグッと入り込めると話していましたが、本番ではいかがでしたか?
Yuh:「Rosalia Lombardo」と「星屑、ボクと君へ。」の2曲が、個人的に入り込みやすいと思っていました。僕が好きで影響を受けたギタリストの一人に、SUGIZOさんがいるんですが、「Rosalia Lombardo」を弾いているときは、SUGIZOさんがまるで自分に憑依したかのような感じがあったんですよ。SUGIZOさんのフレーズや伸びやかなギターの音色のイメージを自分に取り入れて弾いたのですが、まだまだ自分は振り切れていないなと思いました。
今回のライブでのYuhさんの音や佇まいから、最初にZepp Tokyoのステージに立った頃に比べて、ギタリストとしての意識の変化があったのではないかと感じました。ご自身ではどう思っていますか?
Yuh:14~5年やってきても、やっぱりまだ楽曲に入り込みきるということが上手くできないんですよ。専門学校に通っているときから、先生にも「すごく冷静に弾くよね」と言われていて。確かにそうだなと思います。もっと曲の中に入り込もうという試みはこれまでもやってきたんですけどね。今回のライブを友人でドラマーの峻洋-TakaHiroが観に来て「すごく良かった。本当にカッコよかった」と言ってくれたんです。プレイヤーとしては、自分でも良かったと思っているんですけど、エンターテイナーとして、ステージ上のギタリストとしては、まだまだ足りない部分がたくさんあります。最近、ギタリストとしてステージとファンとの間で対話ができるようになりたいと思うようになりましたが、以前はその意識がありませんでした。昔は、「自分が弾く、ファンは観ている」という捉え方だったんですが、それが今は、「ちゃんと対話をしよう、伝えよう」と思っている。ギターを弾いていないときにも、アクションで、自分の高まっている気持ちを伝えようと考えるようになりました。だから、エンターテイメントとしてのギタリストの在り方への意識が、自分でもあの頃に比べてちょっと成長したのかなと思うところはありますね。
Yuhさんの意識の変化は、vistlipのバンド力も上げたと思います。だからこそ「B」で起きたトラブルにも冷静に対応できたのではないでしょうか?
Yuh:トラブルに関しては、このメンバーで長い年月をかけてやってきたことが力になっていると思います。それこそ今では、無音が怖くない。昔は、MCでも無言になる瞬間が怖くて、それを必死に埋めようとしていました。
今回のライブでは、MCを投げっぱなしにして、全員無言になっていた時間がありましたよね。誰も話を続けないんですか?と思いました(笑)。
Yuh:そうなんですよ(笑)。今は気にしないんですよ。誰もヤバいとも思わない。だから「B」でPCのトラブルがあっても、「あー止まったか」と冷静でいられた。あとはもう、どういう空気でいくのかということを探りながらやっていく感じになりましたね。
今回のライブで、メンバーの「これが良かった!」と思ったところは?
Yuh:瑠伊の「彩」でのベースソロのミスは、終わりの空気をすごくバラエティな方向に持っていった感じはありますよね(笑)。あと、バンドとして総合的に良かったと思ったのは「B」でのトラブルの時。曲の演奏中にPCが止まって、シンセも何も流れなくなってしまって。「B」の最後は、いつもはシンセと智の歌と僕のギターで合わせていたんですけど、PCからの音が何も無くなってしまったので、あの状況で曲の最後を表現できるのは智と僕だけだったんですよ。その瞬間、智はどういう風に思っていたかわからないんですけど、二人で呼吸を合わせなきゃいけないと思った。そうしたら、自然に二人で演奏ができて、「B」をちゃんと終わらせることができたんです。その瞬間は、智と僕の二人が良かったところかなと思います。
アンコールの「-OZONE-」が、Zepp Tokyoで演奏する最後の曲になりました。あのとき、どんな思いでいましたか?
Yuh:「-OZONE-」の演奏を始める前のMCから、最初にZepp Tokyoのステージに立ったときのことを思い出していました。Zepp Tokyoでライブを演ることを目標にしているバンドやアーティストもいるし、僕らにとってもZepp Tokyoという場所は、大事な通過点でもあり、チェックポイントの一つだった。そのZepp Tokyoにちゃんとお客さんがたくさん入って、ライブをやれているのは嬉しいことだなと思っていました。
改めて、この10年のZepp Tokyoでのライブで1番記憶に残っていることは?
Yuh:やっぱり、最初のZepp Tokyoでたくさん人が入っていたことが何よりすごいインパクトでしたよね。
あのとき、みんなvistlipを待っていましたよね。
Yuh:そうですね。あの光景はずっと忘れないと思います。
自由に好きなことをやる。それこそがvistlip
さて、Zepp Tokyoを出た今、今後vistlipとして、一人のアーティストとしてどう歩んでいきたいと思いますか?
Yuh:昔から言っていることですが、僕の根底にはずっと、みんながちゃんと知っているアーティストになりたいという思いがあります。コロナ禍で、バンドもアーティストも、やらなきゃいけないことが増えたと思うんですよ。僕らはずっと前から、音楽以外にも、バラエティに挑戦した動画を公開したりもしていました。でも中には「アーティストがそれをやらなくてもいいんじゃない?」と思う人もいると思うんです。僕らはコロナ禍の前から色々なことをやってきていて、それがバンドを知ってもらうことに繋がればいいのかなと思ってきました。僕らは昔から、音楽一本でいきます!というバンドではなかった。だから、これからもいろんなことをやると思います。vistlipというバンドの芯はずっと変わらないので、これからもブレないでやっていきたいです。
Yuhさんが考える、vistlipの芯の部分とは?
Yuh:うちは結構自由にやってきているので、「自由」こそが芯だと思うんですよね。音楽も、それ以外のことも自由にやってきた。とにかく自分たちが好きでやりたいことをやってきたから、その「自由」が芯であって、それが良いと思ってくれる人たちがいて、付いてきてくれている。自由に好きなことをやる。それこそがvistlipらしさだと思います。
あの日のライブのMCで、智さんから“良い未来”という言葉が語られましたが、vistlipにとっての良い未来とは?
Yuh:めちゃくちゃ売れて将来安泰という未来はもちろん嬉しいですけど(笑)、最近考えていたことではあるんですが、今回のライブを経て、さらに歳を重ねてお金を稼ぐ必要がない年齢になるまで、5人で変わらず音楽なりいろんなことがやっていきたいと思いました。
Yuhさんのお話を聞いていて、最後のZepp Tokyoのライブで5人の絆がさらに深まったことが伝わってきました。
Yuh:そうですね。体力的にライブが難しい年齢になっても、この5人で何かやっていられたらいいですね。
(文・武村貴世子/編集・後藤るつ子)
vistlip
智(Vo)、Yuh(G)、海(G)、瑠伊(B)、Tohya(Dr)
オフィシャルサイト
ライブ情報
【ライブ情報】
●Merry Bell 2021
12月17日(金)CLUB CITTA’
●V.I.P.LiST limited LIVE「HYSTERIC MEDIA ZONE」
12月26日(日)高田馬場AREA
●「HAPPY BIRTHDAY TO THE CENTER LINE」
2022年1月18日(火)新宿BLAZE
●V.I.P.LiST限定イベント
2022年2月
●V.I.P.LiST&MEMBER LiST限定 東名阪ONE MAN LIVE
●7th ALBUM 東名阪ONE MAN LIVE
リリース情報
●7th ALBUM 発売
2022年春