vistlip 〜Tohya~

Zepp Tokyoでの最後のライブを終えたvistlip。慣れ親しんだ会場に別れを告げ、さらなる未来を目指す彼ら一人ひとりに、現在の思いを聞いた。~Tohya編~

2021年10月17日のZepp Tokyoでのライブを終えて、Tohya(Dr)は、今のvistlipのバンド力がいかに上がっているかということを繰り返し話してくれた。そして、彼自身も最初にZepp Tokyoのステージに立ってから、この10年で大きく意識を変えたという。彼はこれまで、ライブが終わると自身のSNSでその日のライブの感想を綴っていた。しかし「今回は全てをVifで話す」と前置いて、その思いを語ってくれた。


進化できたと実感したライブ

ライブを終えた今の心境は?

Tohya:僕が今回のライブ後に1番強く感じたのは、これまでZepp Tokyoでライブをやれてきたこととか、バンドで培ってきたものがあったからこそ、終わった後に総合的にその日のライブを評価できるようになったということです。これは自分としてもバンドとしても、すごく成長した部分だと思います。今までだったら、全体を雑に捉えて「グチャグチャだったけど、良かったな」と思ったり、全然良くなかったはずなのに「最高だった!」と言ったり、正直、周りの評価を聞き入れられていない状態だったこともあったんです。でも今回は、最初から最後まで機材のトラブルや色々なことがあったけど、その全てを受け止めて、あのステージをやれて良かったと評価できるようになった。そのことがあったからこそ、僕の中ではこれまでよりも進化できたと実感したライブになったと思います。

今回の衣装はそれぞれキャラクターが設定されていて、Tohyaさんは、狼男とフレディでした。ライブでは智さんから「我々の飼い犬」と言われていましたね。衣装についてはいかがでしたか?

Tohya:僕の衣装は普段は装飾がないので、いつもメンバーの衣装が並べられたときに、1番シンプルなんですよ。でも今回は、衣装を初めて見たときに「あれ? どれが僕の衣装だろう」と思ったくらいに、全員の衣装に大きな装飾があって。自分の衣装にも装飾があったことがすごく嬉しかったです。ステージでは、装飾が邪魔だから脱ぐとか外すとか言っていたんですけど、実はそれは強がりで(笑)。本当は衣装の装飾にすごく憧れていたので、今回は演奏の障害になるまでは、着てやり通そうと思っていました。だから、自分のキャラクラーが狼だろうが、フレディだろうが、犬だろうが、僕はもう今回の衣装が嬉しくて。よく瑠伊が「憑依してライブをやっている」ということを言うんですけど、ようやくその気持ちがわかった気がします(笑)。あの衣装を着たことによって、オープニングの演出から世界観に入り込んでやれた感じがあったので、衣装ってすごく大事なんだなと実感しました。

今回のライブで、自分自身のプレイで1番良かったなと思ったところは?

Tohya:オープニングですね。SEから演奏があったので、冒頭からかなりちゃんと世界観に入り込んでドラムを叩くことができました。改めて自分でも、自分のプレイが成長したなと感じたんですよ。

10年前に行われた最初のZepp Tokyoのライブから観ていて、それはすごく感じました。Tohyaさんのドラムの音の土台がしっかりしているからこそ、他のメンバーも自由に表現ができていると思います。

Tohya:ある時期から、「ドラムが変わったね」と言われるようになって。そこから、ドラマーとしての意識をより高めていったというか。今までどこか気を抜いていたり、なあなあになっていたりした部分を、よりしっかりしようと考えるようになったんです。それが日頃のプレイに出るようになったと思います。だから今回は、細かいことなんですけどドラムスティックのことも結構気にしていたんですよ。ライブ前、スティックはたくさんあると思っていたんですけど、よく見たら新品が全然なくて。もちろん、一度使ったものでも使えるんですけど、消耗品なので削れているんですよ。そうすると、スティックの重みが変わってしまうんです。それが気になって、ライブではスティックにささくれが一つできたら、曲ごとに変えました。そういうこともライブで気にするようになりましたね。そういう、今まで気にしなかった細かいところまで気にするようになったことに、自分自身でもドラマーとしての成長を感じました。

他のメンバーの「これが良かった!」と思ったところは?

Tohya:ライブ前のインタビューでも話していたように、本番でも「Rosalia Lombardo」のYuhのギターが素晴らしかったです。でも、今回のライブで1番持っていかれたなと思ったのが、本編最後の「彩」での、瑠伊のベースソロですね。あれはライブとしての最高のシーンだったと思うんですよ。

まさかの、でしたよね。

Tohya:もちろんプロとしては、ミスはあってはならないことなんですけど、ライブを観ている人たちにとっては、すごくレアなことじゃないですか。そのせいか、こちらが思っている以上に、喜んでくれたりするんですよね。なので、瑠伊のベースソロのあの瞬間は、会場にいた人たちの気持ちを一気に全て持っていったと思います。最高でしたよ。だから僕は、もしかしたら瑠伊のあれは、わざとだったんじゃないかな?と疑っているんです(笑)。

アンコールの「-OZONE-」が、Zepp Tokyoで演奏する最後の曲になりました。あのとき、どんな思いでいましたか?

Tohya:今回のZepp Tokyoでも、2階の関係者席でうちの社長が観ていたと思うんですけど、かつて「-OZONE-」を演奏したときに、社長がいる関係者席を見ながら泣いてしまったことがあって。それは「-OZONE-」に〈あの頃に比べ前に進めた?〉という歌詞があるからなんですよね。今回もその歌詞を意識しました。やっぱりいろんな思いが詰まっている曲だし、自分自身もこの曲を作っていたときのことを今でも思い出すんです。2009年8月にシングル『-OZONE-』をリリースしてから、実はすごく時間が経っているんですけど、その曲を今でもみんなが好きでいてくれたり、やっぱりこれだよねと思っていてくれたりするので、最後のZepp Tokyoでのライブを締め括る曲が「-OZONE-」で良かったし、この曲だからこそ気持ちよく終われたなと思います。

改めて、この10年のZepp Tokyoでのライブで1番記憶に残っていることは?

Tohya:2014年の七夕のライブのときに、「CLASSIC OPERA」で僕がアフロのカツラをかぶって、智が歌っている横でラップをする「クラシックオペラップ」をやりました。あれはあれで良かったと思うんですけど、今振り返ると、Zepp Tokyoという素晴らしいステージですごいことをしたなと思います。若気の至りですね(笑)。

vistlipには、まだまだ伸びしろがある

Tohyaさんは以前、Zepp Tokyoのステージで来てくれた人たちを楽しませようと、バラエティ豊かなパフォーマンスを披露していましたよね。でも、最後のZepp Tokyoでは、ドラマーとしてプレイに集中するというスタイルに変化を遂げました。さて、Zepp Tokyoを出た今、今後vistlipとして、一人のアーティストとしてどう歩んでいきたいと思いますか?

Tohya:今までZepp Tokyoのような大きいステージだと、どうしても不安になったり、ミスをしちゃいけないというプレッシャーを抱えてやってきたところがあるんです。でも何年もやってきて、メンバーはもちろん、観に来てくれるファンの人たちも、vistlipのライブで何かトラブルがあっても、起きてしまったトラブルよりも、そのときにどう対処するか、どういう気持ちで臨むかという切り替えが、すぐにできるようになった。気持ちをすぐに切り替えて今を楽しめる空間に戻すということが、vistlipとしても、Tohyaというドラマーとしても、今回が1番落ち着いてできていたと思います。僕がPCのトラブルを修正している間に、メンバーが繋いでくれたり、ファンの子たちも不安にならずに待っていてくれたりした。今までだと、トラブルが解決しても、僕がすごく不安そうな顔や悲しそうな顔を見せてしまったので、心配してくれるファンの子もいたんです。でも、もう今はそういうこともなく、気持ちを切り替えて、ちゃんとリセットしてリスタートできる。本当にずっとやってきたからこそ、今の姿になれたのかなということをすごく感じましたね。だからこれからも、さらにベストパフォーマンスを積み重ねていきたいです。

あの日のライブのMCで、智さんから“良い未来”という言葉が語られましたが、vistlipにとっての良い未来とは?

Tohya:今回の機材トラブルは、「B」の演奏の途中で起きたんです。PCの電源が抜けていて、充電が無くなってしまい、PCから出している音が途中で切れてしまった。あのとき、PCからの音が切れたことは、もちろんメンバー全員がわかっていました。でも全員が、「音が止まっていても自分たちの演奏だけでやり通せる」って気づいたんですよね。この曲のエンディングは智の歌、Yuhのギター、PCからの音で構成されているんですけど、智とYuhがすごく自然に二人だけでエンディングを見事に演っていたんです。

長く活動してきたバンドならではの、まさに阿吽の呼吸ですね。

Tohya:「これぞバンドだ! エモい!」と思って、僕も最後に本来無かったシンバルの音を派手に入れました。トラブルがあっても見事に曲をやりきったメンバーに。ありがとう!という気持ちを込めて叩いたんです。バンドの力で、トラブルが起きた曲を無事に完結させた。こういうことができるようになったのは、vistlipがバンドとして、今ちゃんとしっかり成長したからこそだと思います。もちろんそれぞれに、悔しい部分もたくさんあったと思うんですけど、総評として、僕はすごくバンドの力を感じるライブだったと思います。だから、vistlipはこれから先、年月をかけて、そういう力がどんどん増していくバンドになっていけばいいんじゃないかな。そもそもの楽曲の力はあると信じているので、バンド力がさらに高まればもっと良いバンドになれる。vistlipには、まだまだ伸びしろがありますから。

(文・武村貴世子/編集・後藤るつ子)

vistlip

智(Vo)、Yuh(G)、海(G)、瑠伊(B)、Tohya(Dr)

オフィシャルサイト

ライブ情報

【ライブ情報】
●Merry Bell 2021
12月17日(金)CLUB CITTA’

●V.I.P.LiST limited LIVE「HYSTERIC MEDIA ZONE」
12月26日(日)高田馬場AREA

●「HAPPY BIRTHDAY TO THE CENTER LINE」
2022年1月18日(火)新宿BLAZE

●V.I.P.LiST限定イベント
2022年2月

●V.I.P.LiST&MEMBER LiST限定 東名阪ONE MAN LIVE

●7th ALBUM 東名阪ONE MAN LIVE

リリース情報

●7th ALBUM 発売
2022年春