2024.04.21
ギル@高田馬場CLUB PHASE
1st tour「The will of fire」
ギタリスト・ギルがソロアーティストとして初めてステージに立ったのが、2023年4月25日。そこから約1年を経て実現した、初の東名阪ツアー「The will of fire」最終公演が2024年4月21日、1年前と同会場となる高田馬場CLUB PHASEにて行われた。
つまり当夜はツアーファイナルであると同時に、ソロアーティスト“ギル”の活動1周年、そして彼のステージに欠かせない高井淳(B)、ばる(Dr/DuelJewel)を含めた“チーム・ギル”の活動1周年でもある、一つの節目とも言える日。加えて、盟友・シュン(G/ex.ヴィドール)がファイナル公演のみゲスト出演することが事前にアナウンスされており、より特別感が増すこととなったのだった。
昨年末に行われた「Reverse Honey」公演において、全20曲というギルのソロステージ史上最多の曲数が披露されたことも記憶に新しいが、本ツアーではそれをさらに更新し、名阪公演では各21曲、そしてファイナルでは全22曲が繰り広げられた。
これまでに発表してきた音源『DAWN OF FLAME』シリーズ三作(2022年12月、2023年4月、8月)に収録されている全9曲、既にステージでは披露済みの未音源化曲4曲、そしてクラシックの名曲カバー3曲、自身のキャリアの中からセレクトした楽曲のカバー6曲というのが、当夜のメニューの内訳。ソロ一作目収録のメロディアスかつテクニカルなインスト「meteor」で幕を開け、早速ステージ上手下手を行き来し、フロアを見渡しながらプレイすれば、シャウトも響かせる未音源化の「Brutal Predator」で勢いづけ、「ようこそ、『The will of fire』ツアーファイナルへ! 会いたかったぞ!」とギル。
Angeloの「BREATH」インストver.を経て、アルペジオを奏でながらの歌唱で始まる、限界の先を超えて突き進むことを描いたヴォーカル曲「Exceed」をじっくり聴かせる。そこに綴られた〈掲げた炎の意志を絶やさずに滾らせて〉という歌詞は、まさにツアータイトルともリンクすることから、一段と響いてきたのが印象深い。次いで、オリエンタルなムード漂う「バビロン」、温かくもドラマティックなミディアムナンバー「Tiny Grace」、アームを駆使した音色も特徴的な「炎舞曲」、疾走感のある「HORIZON」と、前半戦はタイプの異なる様々な楽曲で展開していった。
「終わりに向かって皆と一緒に暴れていこうと思っていて、今は俺のギターで英気を養ってもらう時間かなと思っている」との言葉から中盤に配されたのが、ギルならではのクラシックの名曲たちのカバー。緩急のあるバンドアレンジが魅力的な「ハンガリー舞曲第五番」のほか、今ツアーで初披露となったのは、ピアノ左手パートの同期に乗せて、右手パートの終始細かいフレーズによるメロディーをギターで奏でた「子犬のワルツ」、冒頭をギターで聴かせた後にオールインし、元々展開の激しい楽曲をバンドで見事に表現した「Czardas」と、様々な魅せ方で楽しませてくれた。
そして「革命」を皮切りにギアチェンジすると、Angeloの「JIHAD」インストver.では、昨今のライブでお馴染みとなった3人のソロ回しもありながらフロアを盛り立て、「arise」ではギルの速弾きとシャウトが炸裂。ここで「今か今かと待っている方がいる」とシュンを呼び込み、「もしかしたら俺以上に楽しんでくれるかもしれない。ここから先は4人で、このツアーを賑やかしに来てくれたシュンさんと共に音楽を奏でていくので、ついてきてくれるかい!?」とヴォーカル曲「Liberty」を演奏すると、二人が向かい合い、ギターソロをハモるシーンも見られた。
その後、ヴィドールの楽曲たちの連投にフロアが湧いたのは言わずもがな。今ツアーで初めてセットリストに組み込まれた「…サンガコロンダ!!」、これまでのギルのステージでも披露していた「思春の痕 〜Love me,Hug me〜」「カラクリロマンス」、さらにこのツアーファイナルでのみ「人魚」が追加されることに。もちろんギルはギターヴォーカルでのプレイとなったわけだが、「カラクリロマンス」「人魚」ではハンドマイクで歌う姿も見られた。
ちなみにギル曰く、シュンとハモリのギターソロが弾きたいと思って「人魚」を選曲したという。実際この日、センターで向かい合ってのギターソロや、寄り添いながらのアウトロのプレイも奇跡的な瞬間であったし、「久々のツインギターで、なんだかんだ俺が一番舞い上がってたのかな。息切れを起こしています(笑)」「込み上げてくるものがあったり、二人揃うと普段見えない景色も見えたり。ああだったな、こうだったなとか一人感慨深くなっちゃって」と、ステージ上で実感のこもった言葉を述べたのだった。
さらに、メッセージとしては先述の「Exceed」と同じ方向性でありながら、シャウトを多用したヴォーカル曲かつライトハンドの見せ場もある「焔迅」は、ヴィドールの楽曲からの流れも実に自然で、まさしくギルが歩んできた歴史が繋がった感覚を覚えたのが印象深い。なお、「焔迅」はメンバーコール曲に進化していたのだが、後のMCで明かされた通り、この楽曲の演奏中に、ギルのイヤモニのケーブルが外れるというアクシデントが発生していたそうで、なんと無音の耳栓状態の中、プレイしていたとのこと。そんな状況も「ライブっていうのはドラマがあるね。色々なアクシデントがあって面白い」とギル。
そして、「最高のドラムと最高のベース。名古屋大阪とやって、東京もいよいよ終盤。一瞬だったなと。はっちゃけちゃって、とても良いギターが弾けたし、今日も忘れられないね。本当にどうもありがとう。これからも最高の最幸の笑顔を見るためにギターを弾き続けますから、ついて来てくれよな! 『The will of fire』最高のものになりました! また一緒に楽しもうぜ!」と、ラストはチーム・ギルの3人で、ギルの始まりの曲「Departure」を奏で幕となったのだった。
最後にギルはこう述べた。
「ツアーを成功させたと言っていいでしょう! これも二人とスタッフの方と、皆の愛と、俺の血の滲む努力! なんつってね(笑)。本当はこんなイヤモニ事件とかもなく、走り抜ける予定だったの。砕けた雰囲気にならないようにしたいなと思ったけど、アットホームな感じでシュンさんも来てくれたり、はっちゃけちゃうと、そういうモードの俺のスイッチが入ってしまって。アクシデントを誘発して、それはそれで忘れられない思い出に残るライブになったから、これは一つの正解の形ではあるなと思っているんですが、これから先はそうじゃない俺もどんどん出していけたらなと思っています」
8月24日、再び同会場にてバースデーライブ「Alone with the flames」が開催されることが決定した。ライブの内容は未確定ではあるものの、この日に向けて新曲を用意するとの宣言も。「皆と楽しい時間を過ごせるようにするので、ぜひ期待して待っててね!」とのこと。ぜひ今年も祝福の一夜を共にしてほしい。
◆セットリスト◆
01. meteor
02. Beyond the crisis
03. Brutal Predator
04. BREATH
05. Exceed
06. バビロン
07. Tiny Grace
08. 炎舞曲
09. HORIZON
10. ハンガリー舞曲第五番
11. 子犬のワルツ
12. Czardas
13. 革命
14. JIHAD
15. arise
16. Liberty
17. …サンガコロンダ!!
18. 思春の痕 〜Love me,Hug me〜
19. カラクリロマンス
20. 人魚
21. 焔迅
22. Departure
(文・金多賀歩美/写真・浜本研志)
【ライブ情報】
●ギルBirthday live「Alone with the flames」
8月24日(土)高田馬場CLUB PHASE