2023.08.21
ギル@高田馬場CLUB PHASE
「Birth of G」
2022年1月をもってAngeloが無期限活動休止となって以降、ソロアーティストとして始動したギタリスト・ギルが2023年、自身の誕生日8月21日にソロ初のワンマン公演「Birth of G」を高田馬場CLUB PHASEにて開催した。
ギルはこれまでに『DAWN OF FLAME Ⅰ/Ⅱ』(2022年12月/2023年4月)の二作を発表してきたが、さらにこの日、新たに『DAWN OF FLAME III』を発売。その共通の冠が示す通りストーリーは続いており、一作目は旅の出発を意味し、二作目は自由を象徴、そして三作目は障壁を乗り越えるというメッセージが込められている。
この数ヵ月のコンスタントなリリースやライブ活動を見れば、極々順調にも感じられるギルの活動だが、そこに至るまでには当然ながら準備期間があったわけで、公の場に立つ機会がなかったという意味では空白の期間が存在した。彼がソロアーティストとして初めてステージに立ったのは、今から僅か4ヵ月前の2023年4月。つまり、あの日から1年以上の時を経て表舞台に帰ってきたのだ。そしてツーマンライブとイベント出演の各2公演を経て、満を持して迎えた1stワンマンライブが、この2023年8月21日「Birth of G」。そこにはギルの様々な思いがあったことは想像に難くない。
これまでのステージ同様に、高井淳(B)、ばる(Dr/DuelJewel)がサポートを務めるスリーピース編成で行われた本公演。1曲目を飾ったメロディアスなインスト「革命」の冒頭、この特別な夜の幕開けを告げるようにギルはギターを高く掲げ、ネックに口付けをした。その後も音源化曲を軸に据えながらステージを展開していったわけだが、三作の音源に収録されているのは全9曲、5月のツーマンライブではカバーを含め11曲が披露されていたものの、このワンマンライブでは最終的になんと全18曲が披露されたのだ。その構成が実にバラエティに富んでいたのが、何ともギルらしい。
前半ではオリエンタルなムード漂うインスト「バビロン」、ミディアムテンポのヴォーカル曲「Exceed」と最新作の収録曲を早速プレイ。ギターを主役としたインストをメインとしながら、前作からはギターのプレイと共に歌声も披露しているギルだが、「Exceed」は歌とギターの両方が主役であることが強く伝わってくるもので、限界の先を超えて突き進むことを描いたリリックも印象的だ。
そして、未発表の新曲が2曲組み込まれていたことは、最新のギルを提示するものと言えよう。序盤に「跳べー!」という絶叫から投入されたのが「Brutal Predator」。後のMCの中で「突然知らない曲があったけど、皆一緒に跳んでくれて、今日は俺を祝ってくれる気持ち100%で来てくれているのが見てすぐわかったので、とてもとても愛されているなと嬉しく思った」と話した通り、オーディエンスがさすがの順応力を見せれば、中盤に「この曲は色々苦労したけど、自分の中では思いの詰まった曲」という前振りから供された「炎舞曲」はまさに舞曲を思わすメロディーと拍子の変化が特徴的で、ギルのキーワードでもある「炎」を掛けたタイトルも秀逸。
そこからギル作曲によるAngeloの2曲「BREATH」「JIHAD」がインストver.で演奏されたが、「JIHAD」のギターソロ後にはドラム、ベース、ギターと各パートのソロ回しセクションが組み込まれたのが新たな点で、そこにギルが「ミッキーマウス・マーチ」のフレーズを忍ばせるという遊び心も。さらに、「皆と楽しめるようにいろんな仕掛けを入れていこうかなと思ってね」と、ここからギル曰く「俺の音楽人生に欠かせない曲」だというブロックへ。
その始まりは、誰もが知るあの壮大な「ファイナルファンタジー: メインテーマ」をプレイ。次いでTHE YELLOW MONKEYの「JAM」、LUNA SEAの「Desire」を、イントロアウトロや間奏はギターをプレイしつつ、まさかのギルの歌唱で披露、さらにはヴィドールの「カラクリロマンス」をハンドマイクで歌い、その絶品のシャウトでフロアを煽り倒したのだ。歌声自体は既に披露しているギルではあるものの、これはさすがに驚きの展開としか言いようがない。
ちなみに、「ファイナルファンタジー: メインテーマ」は子供の頃から好きでリコーダーや鍵盤で弾いていたそうで、「JAM」は初めて人前で演奏した曲、「Desire」はエレキギターを始めたきっかけの曲とのこと。また、ヴィドールの曲をステージで歌ったのは人生で二度目だそう。まさにギルの音楽人生を辿るような選曲は、この特別な誕生日のステージだからこそ実現したものだろう。
「まさか歌うとは思うまい(笑)。有り得ないことを突然やり出すのが俺だから。でも皆ついてきてくれて、またこれはこれで愛を感じました。本当にありがとうね。今日はもちろんソロ活動ではあるし、誕生日だし、ワンマンだし、俺が楽しければ何でもいいじゃんっていうのが大前提でやらせてもらっていて、それに瞬間で応えてくれる皆、本当に最高です」とギル。
そして、「ここまで来るのにも色々ありました。どういう形で皆の前に帰ってきたらいいかなという時期もあったし、決して作曲のスピードが早いタイプの人間でもないしさ、こだわりばかり貫いて回り道ばかりしちゃって、皆を待たせてしまうこともしばしばあったし。人生は上手くいかないことばかりだけど、皆に会えるこういう時間があると、そんな辛かった過去とかはもうどうでもよくなるというか、乗り越えていけるよね。そんな苦難困難は誰にだって大なり小なりあるわけで、そんな思いを音にして曲にしたらどうなるんだろうというのが次の曲です」と告げ、披露されたのが最新作収録のインスト「Beyond the crisis」。起承転結のある構成と華やかなメロディーが魅力的だ。
そこから疾走感溢れるキャッチーなロックナンバー「Liberty」へと続いた流れは実に見事で、この楽曲は二作目に収録されたギル初のヴォーカル曲だが、既に彼のテーマ曲のような存在に進化していることが感じられたのが印象深い。次いで、ギルの速弾きとシャウトが炸裂する「arise」でコール&レスポンスを楽しんだ後、「楽しいことはこれからも続くんだぜ? また今日から始まる俺の栄光の1年、皆の祝福を浴びて、新たなスタートを切るから!」と、初作品の1曲目に収録されたギルの始まりの曲「Departure」をもって温かなエンディングを迎えたのだった。
サポートメンバーを送り出した後、「ワンマンライブっていうのはすごいね。自分のやりたいことを好きなだけやることができるし、そこに誕生日が重なると、NOと言う人がいない(笑)」と和やかに話しながら、「本当の本当の『Birth of G』のフィナーレ、心して聴いておくれ。俺の大事な1曲なんだ」と、最後にたった一人ステージに立ち、なんとギターレスでピアノ&ストリングスのオケをバックに「Liberty」を熱唱。決意を新たに未来へ走り出す自身が投影されたメッセージをまっすぐに届け、フロアを見渡しながら頷くギルの姿が印象的だった。
「やれることを全部出し尽くしたなという感じで、とても満足しています。皆が俺を愛してくれて祝ってくれて、とても素敵な日になりました。43年前に生まれた時は、俺は泣いていて、周りの大人は笑っていて、今日は俺も皆も笑っていて、史上最強の8月21日を作るというテーマがあったんだけど、良い日になったんじゃないでしょうか。突然歌い出してみたり、何の前触れもなく新曲をやってみたり、皆からしたらお騒がせ者かもしれないけど、それでも皆が愛してくれるから、時より調子に乗っちゃう時もあるけどさ。本当に今日集まってくれてありがとう!」
そう感謝の思いを述べると、誕生日を皆に祝ってもらえた喜びを返したいという思いから、8月21日の日付を逆さ読みした12月8日に「Reverse Honey」と題した2ndワンマンライブを青山RizMで開催することを発表した。
「最後の最後に歌で終わるのもどうかなと思ったんだけど、チャレンジをしていかなきゃいけないなと思って、そういう姿を皆に見てもらうことによって、俺の音楽をより愛してもらえたらいいなと思って今日という日に臨みました。でも本当にやってよかったと思います。最初はもちろん不安だったし、どうなるかもわからなかったけど、やらないと何も始まらないしね。俺の中では、今日は伝説の日の始まりくらいに思っているんだ。そのくらい大きなものと受け止めて、これからも皆と一緒に最高の時間を過ごせるように生きたいと思っていますので、これからも一緒に楽しんでいこうぜ! どうもありがとうございました!」
こうして幕を下ろしたギルの1stワンマンライブ。やりたいこと、やれることを詰め込みながら、彼を愛してくれる人たちへのありったけの思いが込められた、ソロアーティスト“ギル”の今現在の集大成であり、新たな始まりとなる一夜だった。
◆セットリスト◆
01. 革命
02. meteor
03. Brutal Predator
04. バビロン
05. Exceed
06. Tiny Grace
07. 炎舞曲
08. BREATH
09. JIHAD
10. ファイナルファンタジー: メインテーマ
11. JAM
12. Desire
13. カラクリロマンス
14. Beyond the crisis
15. Liberty
16. arise
17. Departure
18. Liberty(Gt less ver.)
(文・金多賀歩美/写真・Kenshi Hamamoto)
【配信情報】
●「Birth of G」
アーカイブ配信中
チケット販売:~2023年9月4日(月)23:59
【リリース情報】
●『DAWN OF FLAME III』
2023年8月21日(月)発売
※8月21日(月)1stワンマンlive「Birth of G」高田馬場CLUB PHASEにて会場先行発売
オンラインストアにて発売
GG21-003 ¥1,500(税込)
<収録曲>
01. バビロン
02. Exceed
03. Beyond the crisis
【ライブ情報】
●「Reverse Honey」
12月8日(金)青山RizM