2022.08.09
DEZERT@SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
「study」#10 -真夏の“最高の食卓”補習編-

個性の範疇をはみ出すくらいの勢いで響きわたるザラついた音たちも、文字面のうえではことごとく倫理観が崩壊している中で描かれる歌詞世界も、あのシュールでアヴァンギャルドなジャケットデザインも含めて、全ての面で素晴らしく破綻していたのが『最高の食卓』というアルバムだったのではなかろうか。

2016年に発表されて以降、今に至るまで長きにわたり名盤として語られ続けているDEZERTの『最高の食卓』。あのアルバムをもって我々へと供されたのは、理路整然とした典型的フルコースとは全く違う、シェフの気まぐれ料理だけで構成されたかのような異端のコース内容であったという印象がとにかく強い。

破綻していたからこその、渾沌と虚無に満ちた激しさ。破綻していたからこその、不条理な歪みが生み出す面白さ。破綻していたからこその、不安定で儚い美しさ。『最高の食卓』の中に詰まっていたそれらの要素は多くのファンから絶賛され、業界内での評価も高まり、DEZERTの存在感を不動のものにしたことは周知の事実であるはず。

ちなみに、この8月中にDEZERTがSHIBUYA PLEASURE PLEASUREにて集中開催しているシリーズライヴ「study」は、彼らがこれまでに発表してきた過去のアルバムについて補習するための場となるが、このたび8月9日に開催されたのは「「study」#10 -真夏の“最高の食卓”補習編-」。リリースから6年の時を経て、今現在のDEZERTがこのライヴを通してどのような晩餐を賞味させてくれたのかと言えば、それは斬新さが際立っていた鮮烈な味わいこそ当時のままでありながらも、ここまでに多くの経験を積み視野を拡げてきたことで彼らが獲得してきたコクや深みというものが、そこにしかと加えられていたように感じたのである。

というのも、DEZERTのYouTube公式チャンネルには、2016年6月5日に行われた当時のライヴ映像『【楽しい食卓ツアー】FINAL at Zepp Tokyo“ Trailar』がアップされており、その内容と今回のライヴをあらためて見比べてみるとその差はあまりにも歴然としていたのだ。オープニングSEの選曲も、まずは「「あー。」」から始まる構成も、6年前とまるで同じように始められたにも関わらず、今回の「「study」#10 -真夏の“最高の食卓”補習編-」で聴けたそれは、リアルに破綻したものとは異なる“忠実に再現された破綻加減”で表現されており、そこに当時のような生々しい危なっかしさのようなものが漂うことは決してなかった。たとえるならば、ガチで破れてしまったダメージ・ジーンズと、デザイン性なども考慮しながら意図的にダメージ加工のジーンズでは圧倒的に後者の方がカッコいいものとして映えやすいわけで、一見どちらも破れているように見える=破綻しているように見えるのだとしても、そのプロセスは全く異なるという構図とこの件はきっと似ているに違いない。

「あの『楽しい食卓ツアー』はね、みーちゃん(Miyako)がDEZERTに入って初めてのワンマンツアーだったんですよ。どうだった? あの時って楽しかった?? 『楽しい食卓ツアー』はあのタイトル通りに楽しかった???」(千秋)
MiyakoやSacchanの顔をのぞきこむようにしながら、千秋がステージ上でこう問い掛けるも両者は苦笑をするのみで芳しい返答はなし。そして、そのあとにすかさず千秋がこう続けたあたりが実に興味深かった。「まぁ、あの頃からギクシャクし始めたからね。俺たち(笑)」

『最高の食卓』でバンドとしては名実ともにハネたにも関わらず、当時のDEZERTの内情は決して順風満帆な状態であったとは言えなかったらしく、以前のインタビューでは千秋が以下のような発言をしていたこともある。
「みーちゃんが入って『最高の食卓』を作って、っていう流れに関してはもう正直言うとあんまり覚えてない。勢いだけでなんとかしてた、というのが実情。でも、あのアルバムはそれなのに高く評価されたんだよ。皮肉なもんだよね」(千秋)

また、今回のMCでは『最高の食卓』の制作エピソードとして“何故このアルバムは1曲目からギターの音が割れているのか”ということについても、今さらながらにメンバーたちが解説をしてみせる一幕があったので、ここにその内容も記しておこう。

「『最高の食卓』の時はSacchanがミックスをしてて、その一方で同時に俺とSORAくんとみーちゃんで他の曲のギター録りをしててな。俺がだんだん丿って来て、勢いでDiezelっていうギターアンプのベースとハイをガンって上げて、逆にミッドは思いっきり下げてみたら、SORAくんは「それ、キてる!」って凄い盛り上がったんだよね。みーちゃんはちょっとヒいてたし、Sacchanも困ってたけど(笑)」(千秋)
「そう。送られてきた音を聴いて、さすがにこれは…と思って少し整えたら速攻で千秋くんから電話が来て「おい、音イジったやろ! ぬるくなっとるぞ!!!」って怒られました(苦笑)」(Sacchan)
「で、そのあと「最強にズンズンした音のカッコいいアルバムが出来た!」っていうことでSORAくんがミヤ(MUCC)さんに聴かせに行ってんな」(千秋)
「面白かったよ。ふたりで密室で聴いてたら、ミヤさんに「…SORA、オマエ耳おかしいのか??」って言われた(笑)。でも、そのあとに「今こんなのやるヤツいねぇから、俺は好きだよ。グッと来た!!」とも言ってくれたっていう」(SORA)

そんな『最高の食卓』の楽曲たちが刻々とステージ上でパフォーマンスされていった中、今宵のライヴにおいてひとつの佳境と感じられたのは本編後半にてMiyakoの弾く不協和音とSacchanの繰り出す不穏なベースライン、SORAの鋭く切り込むようなリズムがオルタナティヴロック的に炸裂した「「宗教」」において、千秋が〈生まれなければよかったと知りながら なぜ生きるの?息をするの?目を開けるの?〉というオリジナルの歌詞を〈生まれてよかった 僕は期待をしてるんだよ これからも期待をしている こんな世界で 期待をしている〉と歌い上げた場面で、6年前であればこんなにもポジティヴな言葉を千秋が歌うことはきっとなかったものと思われる。

そのうえ、次の「「誤解」」でも随所に〈欲しいものなんて何もないんだ 昔の僕に自慢出来るように生きたいだけ〉〈でもね ふと見る鏡に映る男は 僕の嫌いな僕自身だ〉といったあらたな歌詞がちりばめられ、最後には〈さぁ過去に塗り固められた罪の先をノックしよう。〉が〈〜扉の先をノックしよう。〉と明確に歌い替えられたのだった。とかく排他的だった6年前の彼と、今の千秋ではメンタリティがそもそも違うということが、こうしたところからもよく伝わってきたのは言うまでもない。

「「study」#10 、今日は一緒に勉強してくれてありがとうございます。あの不安定だった過去も、不安定な未来も、この不安定な今も、今日8月9日ここに真実だけを残していきます。俺はずっと不安だ。とことん不安にならなきゃ気がすまないんだ。だから、ひとつ言えるのは…とりあえず生きようじゃないか!」(千秋)

この言葉を受けての「「ピクトグラムさん」」では、エンディング部分の〈意味を探す朝なんて 何度でも迎えるから〉に追加して〈その時まで 生きていよう 生きてよう〉と歌われたことも、DEZERTが何故この機に 「study」で『最高の食卓』と真正面から向き合うことになったのかを物語っていた気がする。

なお、この後のアンコールでは前回の「study」#9で発表された10月12日のシングル『The  Walker』や、2023年1月の東名阪ツアーに関するインフォメーションにくわえ、10月28日にShibuya WWW Xにて「DEZERT × 夕闇に誘いし漆黒の天使達 “すっごいツインテールを決める会”」、11月15日に東京キネマ倶楽部にて「DEZERT × Royz “デザートとロイズでアナタのハートに火はツキマス~?…多分ダイジョウブデスっ!”」が行われることも発表され、季節外れながら良曲である「さくらの詩」や、Sacchanのリコーダー・ソロが光った「大塚ヘッドロック」などがあれこれと演奏されたのち、最後の最後を飾ったのはコアファン以外にも広く知られるほどシーンにおける知名度が高く、アルバム『最高の食卓』の中でも特別なポジションを占める曲「「君の子宮を触る」」。

またも千秋の提案により、終演後に観客らが規制退場をする際には、Sacchanが延々とインスト曲「-26時の冷凍庫-」を生演奏しながら見送るという手厚いファンサもありつつで幕を閉じ、かつては破綻しきっていたはずの世界を絶妙なサジ加減で再構築してみせた今回の「「study」#10 -真夏の“最高の食卓”補習編-」は、8月17日の「「study」#11 -真夏の“TODAY”補習編-」へと繋がって行くことになる。ただ、アルバム『TODAY』も実は千秋が以前このようにコメントをしたことがあるいわくつきの作品であったりして。

「正直なことを言うと『最高の食卓』の頃は自分がやりたい音楽が何なのかよくわかんなかったし、どう生きていけばいいのかもわかんなくて、あれは完全にオーバードーズ状態だったんですよね。しかも、そこから脱却するのには2018年に『TODAY』を出すまでの2年の時間が必要で。今思っても、あの2年は暗黒期だったねぇ(苦笑)」(千秋)

真夏の補習を締めくくる次回公演において、DEZERTがいかなるかたちで『TODAY』と対峙していくことになるのか…。ここはさらなるお手並み拝見といきたい。

◆セットリスト◆
01. SE
02. 「あー。」
03. 「セイオン」
04. 「不透明人間」
05. 「ここにラブソングを」
06. 「おいしい脾臓は笑わない」
07. 飼育部屋
08. 「追落」
09. みぎて
10. 「問題作」
11. 「排泄物」
12. 「宗教」
13. 「誤解」
14. 遮光事実
15. 「ピクトグラムさん」

En
01. さくらの詩
02. 大塚ヘッドロック
03. 「死刑宣告」
04. チョコレートクリームチェーンソー
05. 「君の子宮を触る」

(文・杉江由紀/写真・西槇太一)


【ライヴ情報】
●DEZERT × 夕闇に誘いし漆黒の天使達 “すっごいツインテールを決める会”
10月28日(金)Shibuya WWW X
OPEN 17:45/START 18:30
チケット料金:オールスタンディング¥6,000(税込・全自由)
※整理番号付、入場時ドリンク代別途必要、営利目的の転売禁止、未就学児入場不可

<ひまわり会(DEZERT)・すっごいファン(夕闇)チケット先行受付(抽選)>
受付期間:8月9日(火)21:00~8月15日(月)21:00
入金期間:8月19日(金)13:00~8月25日(木)21:00
※イープラス抽選受付、スマチケのみ、お1人様1枚まで(分配不可)

DEZERTオフィシャルファンクラブ「ひまわり会」会員限定受付ページ
夕闇に誘いし漆黒の天使達 オフィシャルファンクラブ「すっごいファン」

オフィシャルHP先行受付(抽選)
受付期間:8月20日(土)12:00~8月27日(土)21:00
入金期間:8月31日(水)13:00~9月6日(火)21:00
※イープラス抽選受付、スマチケのみ、お1人様2枚まで(同行者登録有)

◎チケット複数枚数ご購入の場合
複数枚数をご購入の場合は、イープラスの『同行者登録システム』にて事前にご同行者様の情報をご登録のうえお申込みください。
※お申込み完了後の氏名変更は出来ません。
イープラス同行者登録システム

一般発売:9月25日(日)10:00~
問:DISK GARAGE 050-5533-0888

●DEZERT × Royz  “デザートとロイズでアナタのハートに火はツキマス〜?…多分ダイジョウブデスっ!”
11月15日(火)東京キネマ倶楽部
OPEN 17:45/START 18:30
チケット料金:1F・オールスタンディング¥6,000(税込・全自由)
※整理番号付、入場時ドリンク代別途必要、営利目的の転売禁止、未就学児入場不可

<ひまわり会(DEZERT)・WINGS(Royz)チケット先行受付(抽選)>
受付期間:8月9日(火)21:00~8月15日(月)21:00
入金期間:8月19日(金)13:00~8月25日(木)21:00
※イープラス抽選受付、スマチケのみ、お1人様1枚まで(分配不可)

DEZERTオフィシャルファンクラブ「ひまわり会」会員限定受付ページ
Royz オフィシャルファンクラブ「WINGS」

オフィシャルHP先行受付(抽選)
受付期間:8月20日(土)12:00~8月27日(土)21:00
入金期間:8月31日(水)13:00~9月6日(火)21:00
※イープラス抽選受付、スマチケのみ、お1人様2枚まで(同行者登録有)

◎チケット複数枚数ご購入の場合
複数枚数をご購入の場合は、イープラスの『同行者登録システム』にて事前にご同行者様の情報をご登録のうえお申込みください。
※お申込み完了後の氏名変更は出来ません。
イープラス同行者登録システム

一般発売:9月25日(日)10:00~
問:DISK GARAGE 050-5533-0888

●2023年 東名阪ツアー
1月7日(土)なんばHatch
1月9日(月・祝)名古屋 DIAMOND HALL
1月14日(土)TOKYO DOME CITY HALL
※詳細は後日発表

●「study」※SOLD OUT
「study」#9 -真夏の“タイトルなし”補習編-
8月3日(水)SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

「study」#10 -真夏の“最高の食卓”補習編-
8月9日(火)SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

「study」#11 -真夏の“TODAY”補習編-
8月17日(水)SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
OPEN18:30/START19:00

【リリース情報】
●New Single『The Walker』
2022年10月12日(水)発売

[初回限定盤](CD+DVD)DCCL-245〜246 ¥2,750(税込)

[通常盤](CD)DCCL-247 ¥1,650(税込)

[CD]※初回限定盤・通常盤共通
01. The Walker
02. あの風の向こうへ
03. モンテーニュの黒い朝食
04. The Walker (instrumental)
05. あの風の向こうへ (instrumental)
06. モンテーニュの黒い朝食 (instrumental)

<初回限定盤特典>
・特典DVD付
The Walker Music Video -Director’s Cut ver-
The Walker Music Video -Behind the Scenes-
「神経と重力」Live Video at 日本武道館 (JACK IN THE BOX 2021)

・初回盤仕様ジャケットデザイン
・トレーディングカード 3枚入り(ランダム封入)

<通常盤特典>
・トレーディングカード1枚入り(初回プレスのみ。ランダム封入)

※トレーディングカードの絵柄は選べません(全10種類)
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