2021.07.17
BLUEVINE@LOFT HEAVEN
BLUEVINE Acoustic Tour 2021「Another RAINDROP」

6月5日よりスタートしたBLUEVINE初のアコースティックライブツアー「Another RAINDROP」が7月16、17日LOFT HEAVENでの2days公演にてファイナルを迎えた。

昨年3月にミニアルバム『RAINDROP』をリリースしたBLUEVINEは、その最新作を引っ提げ本来昨春にツアーを開催予定だったが、コロナ禍の影響により延期に。その事態を受け、ファンと共有するはずだったツアーを、記憶に残る作品として共に作り上げようと、クラウドファンディングのみで入手可能な無観客ライブの映像作品化プロジェクトを実施。また、同年5月以降は様々なライブハウスとタッグを組み、多くの配信ライブを積み重ねてきた。

そして今年2月には2周年ライブ、3月にはアコースティック形態でAKI(B)のバースデーライブを有観客で行ったが、“ツアー”としては今回が約1年半ぶりの開催となったのだった。実は上記プロジェクトのリターンの一つとして昨年末に行われた初のアコースティックライブが、今ツアーの布石になっていたという。もしも普段通りの日常が続いていたならば、このタイミングで彼らがアコースティック形態でのライブを行うことはなかったかもしれない。「(コロナ禍で)バンドが成長できた」とは生熊耕治(Vo&G)が発した言葉だが、まさにその一つの形が今ツアーだろう。

かくして迎えたグランドファイナル。SEの雨音が鳴り止むのと交差するように「Made in Blue」で幕を開け、アンコールを含め全10曲が披露されたわけだが、どの楽曲においてもバンドとしてのアレンジ力と表現力の高さを実感させられるものだった。楽曲を生かすも殺すもアレンジ次第と言っても過言ではない。その難しさと面白さ、これこそ音楽・バンドの醍醐味の一つではないだろうか。

原曲ではメロコアのような熱いノリの「PRAYER PRAYER」が、キャッチーさを全面に押し出し、カントリーミュージックを思わせる軽快な明るさに変貌を遂げていたり、ヴォーカルとギターのみで情感たっぷりに始まった「花弁とアガペー」は、3人の音が合わさった瞬間からボサノバ風になったりと、意外性を感じるアレンジもあれば、トリッキーなリズムが特徴的な「SHEEPLE」では、原曲同様バチっとキマった3人のユニゾンを魅せてくれた。

メッセージ性の高い楽曲たちは、より“歌”が際立つアレンジが施され、ドラマチックな展開を見せた。BLUEVINEの始まりの曲「モーニングスター」は、アコースティックと言えどもリバーブを深くかけた生熊のギターの音色、一歩一歩踏みしめながら、着実に真っ直ぐ突き進んでいくかのようなAKIのベースと赤松芳朋のドラム、そのアンサンブルはどこまでも広がる空、そこに伸びゆく“蒼き蔦”の情景を思い浮かべることができるものだった。次いで披露された『RAINDROP』の“裏リード曲”と言ってもいい「BIRTHDAY」では、生熊がアカペラで歌うセクションもありながら、生きていくことをテーマに綴られた言葉の一つひとつを私たちにしっかりと届けてくれたのだった。

後のMCの中で「ツアー初日は指が震えたけど、今は緊張しなくなった」というAKIの発言があったが、BLUEVINEのアコースティックライブはAKIがピアノを担うことができるのも強みの一つ。この日のライブ後半は、ギターヴォーカル、ピアノ、ドラムというスリーピースで展開していった。最新作のリード曲「RAINDROP」では、元々ギタリストである生熊が自身の歌と向き合う中で、近年密かに努力を重ねていたミックスヴォイスの進化を感じることもできた。次いで披露されたのは「SIGNAL」。ダークなムード漂うピアノのフレーズから始まりつつも、一気に開けるサビ部分で赤松のシンバル使いの妙が光り、より華やかかつエモーショナルな演奏を響かせたのが印象的だった。

本編ラストには「終わりだけど未来のスタートという意味を込めて」(生熊)と「オワリノハジマリ」を奏で、フロアにはハンドクラップが。さらにアンコールでは未音源化ながらファンからの人気も高いミディアムナンバー「JEWEL」で、愛に満ちたラストシーンを迎えたのだった。

この日、生熊はこう語った。「どんな状況でも前に進むことを選んだメンバーを誇りに思います。色々なものを喪失した30代だったけど、40代でBLUEVINEをやれて、失うものがあっても得るものもあるんだなと。センターに立って歌いたいという思いを二人が受け入れてくれて感謝しています。今は強く生きられる」

10月16日の生熊の誕生日には、本来のバンドスタイルでライブを開催することが発表された。このツアーを経て深化したBLUEVINEが、満を持して本領を発揮する日を楽しみに待ちたい。

◆セットリスト◆
01. Made in Blue
02. PRAYER PRAYER
03. SHEEPLE
04. 花弁とアガペー
05. モーニングスター
06. BIRTHDAY
07. RAINDROP
08. SIGNAL
09. オワリノハジマリ

En
01. JEWEL

(文・金多賀歩美/写真・江隈麗志)


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