2021.03.21
CHIYU×KIMERU×WAЯROCK@SHIBUYA REX
VR Presents「CROSS OVER CARNIVAL」

ヴィジュアル系シーンでベーシスト&ヴォーカリストとして活動するCHIYU、声優・小林正典のソロプロジェクトWAЯROCK、2.5次元舞台を中心に俳優としても活躍し、今年でデビュー20周年を迎えるKIMERUの初共演となったライブイベント「CROSS OVER CARNIVAL」が3月21日、SHIBUYA REXにて行われた。

3人が各ステージでのMCの中で、開催できたことへの喜びを口にした通り、本来は2020年5月に開催予定だった今イベントだが、新型コロナウイルスの影響により延期を余儀なくされ、この日、ようやく有観客生配信という形で振替公演が実現したのだった。また、CHIYUはベースを弾きながら歌うのは約1年ぶり、WAЯROCKはオンラインも含めライブ自体が約1年ぶり、そしてKIMERUは約1年半ぶりとなるソロライブのステージとなり、各アーティストにとって感慨深い一日となったことは間違いない。なお、KIMERUとCHIYUは楽屋で「どうやってライブをやっていたか覚えていますか?」という会話をしていたとか。

トップバッターを務めたのはWAЯROCK。サポートメンバーを迎えた5人編成でのバンドスタイルでステージに立ち、プロジェクト名を冠したナンバーで、赤く染まった場内に熱のこもった歌声が今宵の幕開けを告げる。続く「Call my name」でWAЯROCKがお立ち台に上がれば、フロアには満場の拳が。疾走感のあるロックチューンに乗せた〈あの日から歌い続けると決めた〉〈君に声が届くように〉という言葉が胸を打つ。

「CROSS OVER CARNIVALへようこそ! 声は出せないけど楽しんでいきましょう!」と挨拶し、「Tasty night」で会場をダンスフロアへと一変させれば、キャッチーなメロディーが印象的な「Forgive me」、メタル調のハードナンバー「Nosferatu」と様々な表情を見せていく。

「コロナ禍になり、世の中に必要ないんじゃないかと落ち込んだ時もあります。でも、音楽やエンタメは生活の中で必ず必要になってくるんじゃないかなと、改めて今、思います。こうして足を運んでくれる皆さんや画面越しに観てくれている皆さんに届けられるもの、明日に繋がるもの、音楽やエンタメにはその力があると思っています。まだまだ厳しい状況は続きますけど、一人で頑張っていると思わないで、僕らを通して何かを感じてもらえるんだったら、一緒に戦っているんだということを忘れないでほしいです。僕は自分と接してくれた人、手が届く限りは絶対に助けたいなと、自分の力で何かできることがあるんだったら、協力したいなと思って生きています。一緒に乗り越えていきましょう! そしてエンターテインメントを通して皆さんと繋がって、絆があるってことを改めて思いながら、ずっとそれを感じながら皆さんと一緒にこれからも生きていきたいと思っています」

そんな熱いメッセージの後に歌い上げたのは「KIZUNA」。そこには〈声枯れ果てても/胸張り裂けても 歌い続けるよ〉という一節が。さらに力強さ溢れるロックナンバー「Perfect Triumph」で、ブレずに前だけを見て突き進むこと、未来への希望を示し、WAЯROCK=小林正典の音楽人生の歴史と決意表明とも取れるドラマティックなステージは幕となった。

二番手はCHIYUが登場。〈君と僕を繋ぐメロディー〉のリフレインも印象的な愛情溢れるポジティブソング「wiθ U」でスタートを切ると、ベース&ヴォーカルを務めるCHIYUは、センター定位置の他に下手側にも設置しているマイクスタンドへと曲中にポジションを変えながらパフォーマンス。穏やかな笑みを浮かべながら歌うその姿に、より多くの観客へ寄り添おうとする彼の思いが見て取れた。

ハードな一面を見せた「愛欲の華」を経て、〈GREEEED!! Oh YEAH!! GREED is Good Oh YEAH!!/AMAROCK!! Oh YEAH!!〉に合わせたオーディエンスのハンドクラップとともに始まったのは「AMArican Dream」。尼崎出身のCHIYUによる自分自身への応援歌だが、それは同時に彼を愛してくれる人たちへ“AMArican Dream”を見せたいというメッセージでもあるだろう。次いで、切なさを持ち合わせたメロディアスな「無限の風」で孤独と希望を歌い上げれば、デジタリックな「書生論」でのsebastian(G)のタッピングや、YASU(Dr)のトリッキーなリズム、そしてジャジーなムードを纏った「apathy house」でのベースソロなど、スリーピースの演奏面でも観客を魅了した。

「いろんな音楽の繋がり方があると思いますが、今後もその時々の最善策をとって皆と繋がっていけたらいいなと思います」と述べ、「俺の人生の中で一番カッコいい曲ができたと思っています。こう見えて昔はキラキラ系と言われていました。元祖キラキラ系です。そんなキラキラな曲」という紹介から「Egoistic GAME」を披露。ポップなラブソングに乗せ、オーディエンスは手でハートを作り、どこまでもピースフルな空気が場内を満たした。さらにダンスナンバー「FREAKY DANCE」、ミクスチャーロックの「Regret」と、盛り上がること必至の2曲を連投し、満場のハンドクラップとともにラストシーンを迎えた。そして最後に「最高の時間をありがとう! また会いましょう!」という言葉をもって、ステージを後にしたのだった。

トリを飾ったのはKIMERU。「楽しんでいこうぜー!」という第一声からTVアニメ『遊☆戯☆王VRAINS』のオープニング曲「go forward」で幕を開けると、「1年半ぶりのライブで緊張している」と話すKIMERU。そしてこの日はキーボード&マニピュレーター香川大稀との二人でのパフォーマンスということから、「(WAЯROCKとCHIYUが)バンドだったのですごく寂しいけど、僕の気合いでカバーしようと思います」と、同オープニング曲「calling」へ。さらに畳み掛けるようにTVアニメ『テニスの王子様』オープニング曲「Make You Free」を繰り出し、場内の熱を上げていく。

クールかつ色気を持ったパフォーマンスと、親しみやすさのあるキュートなトークのギャップもKIMERUの魅力の一つだろう。「密集の時代に早く戻りたいですね」「エンタメも他の業界も、回っていくといいですね。しみじみ…」と思わず本音が漏れたところで、「2.5次元舞台の超歌劇『幕末Rock』に出演した時にカッコいいと思ってカバーさせてもらった曲」だという「ハチノジディストーション」を披露するにあたり、「本当は声を出してほしいけど、振りだけでもぜひ」とレクチャーしてから演奏へ。その甲斐あってフロアには多くの八の字が舞ったのだった。

ここでムードを一変させたのは「戦慄と旋律~Dのテーマ~」。後のMCで「『劇場版 獣電戦隊キョウリュウジャー ガブリンチョ・オブ・ミュージック』挿入歌で悪役“デスリュウジャー”のキャラソン」という説明があったが、場内にはレーザーが飛び交い、狂気や絶望を感じさせるハードナンバーをエモーショナルに歌い上げるKIMERUの姿が印象的だった。その切り替えの早さや憑依的な表現は、数多くの舞台を積み重ねてきている彼だからこそ成し得ることができる強みの一つかもしれない。

「皆さんが声を出せない分、もっと煽りたくなって声が枯れますね(笑)」と呟く場面もありながら、序盤のMCにおいて「『遊☆戯☆王』はご縁があって何曲か歌っているので、今日はその曲たちを」という言葉があった通り、この日3曲目の『遊☆戯☆王』ナンバーであり、TVアニメ『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』最後のオープニング曲となった「OVERLAP」を披露。そしてラストには、浅倉大介作曲によるピースフルでパワフルなKIMERUとの相性抜群のデジポップ炸裂ナンバー「Junk beat」で、オーディエンスとともにハッピーな空間を作り上げたのだった。

それぞれソロアーティストとしてステージに立った3組だが、普段の活動フィールドはもちろん、その音楽性やステージングも異なり、三者三様の個性を存分に活かしたまさにクロスオーバーな一夜となった。今後の3組の活動は、各オフィシャルサイトやSNSをチェックしていただければと思うが、最後にKIMERUから「今日のご縁でWAЯROCKさん、CHIYUさんと知り合うことができたので、今後もどこかで皆さんとお会いできる日を楽しみにしています」という言葉があったように、彼らが再び交わる日が来ることを楽しみに待ちたい。

◆セットリスト◆
【WAЯROCK】
01. WAЯROCK
02. Call my name
03. Tasty night
04. Forgive me
05. Nosferatu
06. KIZUNA
07. Perefect Triumph

【CHIYU】
01. wiθ U
02. 愛欲の華
03. AMArican Dream
04. 無限の風
05. 書生論
06. apathy house
07. Egoistic GAME
08. FREAKY DANCE
09. Regret

【KIMERU】
01. go forward
02. calling
03. Make You Free
04. ハチノジディストーション
05. 戦慄と旋律~Dのテーマ~
06. OVERLAP
07. Junk beat

(文・金多賀歩美/写真・堅田ひとみ)

 

CHIYU オフィシャルサイト
https://amagasaki-rockstar.com
KIMERU オフィシャルサイト
http://www.kimeru.com
WAЯROCK オフィシャルサイト
https://avex.jp/warrock/