2020.12.25
生熊耕治@学芸大学APIA40
生熊耕治 単独公演二〇二〇「春待月」-下弦ノ刻-

BLUEVINE、cuneと並行して、ソロ名義での活動を行っている生熊耕治(Vo&G)が、コロナ禍の影響による多くのライブの延期や中止を経て、約10ヵ月ぶりとなる有観客ライブを12月25日に開催した。

「やっと“ただいま”って感じですね」――これは後のMCで生熊が発した言葉。本来であれば、彼は2020年の1年間を通してMONTHLY LIVE 2020「MONOGATARI」を開催予定だったが、ライブの通常開催が叶ったのは2月まで。3月以降はONLINE LIVE「MONOGATARI」として配信ライブの形をとったが、「本来の意図を失う」という生熊の思いから、「MONOGATARI」を冠したライブは7月をもって一旦の終わりを迎えていた。しかしながら、その後も様々なテーマのもと配信ライブを積極的に行い、ファンとの絆を深めてきた2020年。形は変われど、「MONOGATARI」公演スタート時に約束した毎月新曲を披露するという決め事を、1年間貫き通してきた。つまり、この1年間で“生熊耕治”名義の12曲もの新曲が生まれることとなった。

かくして迎えた「生熊耕治 単独公演二〇二〇「春待月」」は、人数制限を設けた上で1stステージ「-上弦ノ刻-」、2ndステージ「-下弦ノ刻-」の2部制で行われた。本公演は生熊がライフワークとしている単独の弾き語りによるアコースティックライブ。一口に「弾き語り」「アコースティックライブ」と言えど様々なスタイルがあるが、生熊のステージはパーカッションパッドやルーパーなども用いながらバリエーションに富んだ楽曲たちが披露され、彼の抜群のメロディセンスと、ヴォーカリスト、そしてギタリストとしてのパフォーマンスを存分に堪能できることが醍醐味。その表現の幅は年を追うごとに広がりを見せている。

「物語る獣」で幕を開けた2ndステージ「-下弦ノ刻-」。この楽曲は今年1月発表の新曲であり、「MONOGATARI」の核になるものであったことから、2020年の生熊耕治と切っても切り離せない、まさにこの日に相応しい1曲だろう。〈ただ愛することを知りたかった ただあなたとずっと生きていたかった ただ愛だけでは生きれなかった〉――切なさと愛しさが同居するミディアムバラードに乗せたメッセージが聴く者の胸を打つ。なお、この楽曲については1月公演時に「何のために生きているのかを考えていたらできた曲」と述べられていたことも付記しておきたい。

「この曲をやっと皆の前で歌うことができます」という言葉から奏でられたのは「Over the Moon」。コロナ禍の真っ只中、生熊が精神的に沈んでいた時期に書き上げた4月発表の新曲だ。闇の中にいるからこそ、光を求める楽曲が生まれるのだろう。2020年、この温かな楽曲に救われた人も多いに違いない。〈いつもの日が帰ってきたら 笑って必ず出逢おう〉…未だ“いつもの日”にはなれないながらも、こうして再会できたことは大切な第一歩。歌い終えた生熊は、穏やかな笑みを見せていた。

真っ赤に染まったステージにスモークが漂う中「Bless」ではアコギの音を歪ませ、エモーショナルな空気を充満させれば、本編後半はパッドでのキックドラムとオーディエンスのハンドクラップも合わさり、心踊る空間を作り上げるなど、様々な表情を見せていくのが生熊のステージ。曲間に「きよしこの夜」を奏でるという、この日ならではの嬉しい計らいもありながら、「2020年最後の新曲を。未来の俺たちに」と告げ、「Dear」が披露された。〈こんなにも愛おしい出来事が待っているから〉〈どうか幸せでいて〉と歌う、生熊の思いが詰まった楽曲は、この時間を共有した全ての人たちの心に届いたことだろう。

深い愛情が綴られた名バラード「Eternally」、そしてハッピーかつキュートさも併せ持つ「ビューティフル」をもって、この日のステージは幕となったが、2021年1月にも有観客ライブを開催予定であることが発表され、「どうなることやらだけど、今はやる気満々です。だって未来に楽しいことがないと。僕の今の目標、1月に皆にまた会える日を迎えること。元気でいようぜ」と告げたのだった。

この日、生熊はこうも話していた。「2020年、悔しいこともいっぱいあったけど、楽しかったです。ファンの人たちがちゃんと側にいてくれていると感じられたことが、本当に支えになりました」――2020年は、あらゆる物事が押し進められ、淘汰され、変化していった年。だからこそ同時に、多くの人々が物事の本質、大切な存在について気付かされる1年でもあったはずだ。それはすなわち、2020年という時を共に過ごしてきた相手とは、この先もその関係性は続いていくのではないだろうか。生熊耕治と、彼を愛する人々の結び付きがより強固なものになったように。

◆セットリスト◆
【1st:-上弦ノ刻-】
01. ジギタリス
02. DOLCE
03. CRISPY
04. Dear
05. 没交渉
06. RATRACE
07. トナンの翼
08. FANTASIA
09. VEGA

En.
01. FISH

【2nd:-下弦ノ刻-】
01. 物語る獣
02. Over the Moon
03. Tremolo
04. Bless
05. Dear
06. Chandelier
07. Mr.ベンダー
08. 細胞レベルまで愛でて痛い
09. Eternally

En
01. ビューティフル

(文・金多賀歩美)

 

【ライブ情報】
●生熊耕治 Live&Streaming Live2021「Cross Road with U vol.2」
1月23日(土)本八幡Route 14
1st開演18:00 / 2nd開演20:30
チケット:一般7,000円 / 学生3,000円(来場者特典あり)
一般発売:1月6日(水)22:00〜

【配信ライブ情報】
●生熊耕治 単独公演二〇二〇「春待月」
アーカイブ公開中(1月8日(金)23:59 まで)
配信チケット¥3,500
-上弦ノ刻-:https://twitcasting.tv/kouji_ikuma/shopcart/40934
-下弦ノ刻-:https://twitcasting.tv/kouji_ikuma/shopcart/40936

●生熊耕治×黒田倫弘ぶらり旅2021「黒生~今年はお家でことよろ編」
1月10日(日)16:00
配信チケット¥3,000
https://twitcasting.tv/kurodastaff/shopcart/46640

●生熊耕治スタジオライブ「Rhetoric」
毎週水曜19:30から
¥2,500 ツイキャスプレミアにて生配信

【「Over the Moon」Lyric Video】

【「Bless」Lyric Video】

生熊耕治 オフィシャルサイト
https://kouji-ikuma.amebaownd.com/