Cazqui 圭

Cazqui:対談第2回はBAROQUEの圭さんにご登場いただきました!

圭:よろしくお願いします。

Cazqui:よろしくお願いします!
まず読者の方が気になるのは、二人の関係性ではないかと。
まずは出会ったきっかけから話していこうと思います。
出会いは2015年1月頃のギター会で、大先輩が大勢いらっしゃる中、勇気を出して、最初に声をおかけしたのが圭さんだったんですよね。

圭:そうだったね。ギター会は本当に世代が幅広くて、上は60代から下は20代までいるけど、俺も一番下の世代に近い分、Cazquiも話しやすかったのかな。

Cazqui:いや、実はですね…。

圭さんは自分が10代の頃から雑誌・メディア等で拝見していた圭さんそのままだったんですよ。

圭:なるほど、ルックスという面でね(笑)。

Cazqui:この業界、ステージとのオン/オフをハッキリ切り替えていらっしゃる方も多いです。
なので「この人は本当に”あの人”だろうか。人違いだったら失礼だし、安易に声をかけるのもな…」なんて思うんですけど、圭さんは、100人中100人が「あれは圭さんだ」って言うような、アーティストイメージそのままだったんです。

圭:そうだったんだ(笑)。俺は、元々ノクブラの尋を人づてで知っていたんだよね。Cazquiは、前に12012の(宮脇)渉さんから「ノクブラのCazquiとは、きっと圭と話が合うと思うよ」って言われていたから、会った時に「この子がそうなのか」と思って。

Cazqui:ありがたいお話です。ちょうどギター会が行われた時期の某誌インタビューで、今まで影響を受けたアルバムとして『Sug life』を挙げさせていただいたんですよ。
そんな時に圭さんにお会いしたので、非常にタイムリーでした。
で、錚々たる顔ぶれに気負う自分に対し、圭さんは「一緒に飲み物取りにいこうよ」と言って下さったんですよ。優しいです。

圭:みんなも来たらわかると思うんだけど、あの場所で緊張しない人はいないんじゃないかな(笑)。すごい威圧感だもんね。俺もそういう気持ちがすごくわかったから、大丈夫かなと思って。

――何人ぐらいいる会なんですか?

圭:30人ぐらいかな。

Cazqui:あのときは多かったからそれ以上だったかもしれないですね。

圭:しかも、ほぼ大御所の人たちばっかり。あの日はCazquiと結構喋ったよね。

Cazqui:そうですね。同じパートの方と言葉を交わすのは有意義な時間ですが、相手が”いつ、どんな作品を残してきたか”というのを承知の上でお話を伺うのが、一番楽しいです。
BAROQUEもkannivalismも、自分が能動的に聴いているバンドでしたから。

圭:音楽性が違うから、そこがすごく意外だったな。

Cazqui 圭

――今回はどういった流れでお誘いしたんですか?

Cazqui:確か前回のギター会のときに圭さんに、次回出ていただけませんかってお誘いしたんですよね。

圭:そうだね。Cazquiとはギター会で会ってからちょいちょい連絡を取るようになって、去年の赤坂BLITZで初めてライブを観させてもらって。俺は後輩のギタリストたち皆大好きなんだけど、Cazquiは後輩であることを差し置いてもリスペクトができるギタリストでありアーティストだと思ってる。なかなかいないよね。それと通じる部分としては、お互い音楽オタクってことかな。

Cazqui:ありがたいお話です。圭さんに同志と言っていただけるのは、光栄です。
音楽の形式は違えど、第一回の対談にお招きしたギルガメッシュのお二人にも、圭さんにも、強い共通点を感じるんです。
圭さんは、バンドの音楽スタイルであったり、形態であったり、数多の変遷を遂げながらキャリアを築かれていらっしゃいますよね。
しかし、それぞれの時代の音楽性の中に、確かな不変性が感じられるんです。強い芯や人となりが。

圭:俺がCazquiに対して持っている印象はそれで。やっぱりギタリストとしても、アーティストとしても、一番大事なのはその人の人間性とその音楽性が繋がっていることだと思うんだよね。逆に言うと楽器や音楽を通して自分を表現できなかったら、それはミュージシャンじゃない。極端に言えば、喋っているだけでその人の音楽が聴こえてくるような人が真のアーティストだと思う。自分がそうなれているかどうかはわからないけど、俺もそうありたいし、それが一番大切だと思ってるよ。そういうギタリストって、若いやつでは正直あんまりいない気がするんだけど、Cazquiにはそれを感じる。そこが好きなところかな。

Cazqui:そんな風に言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます。
では、ここからはお互いのルーツ、感化されたアーティストについて伺いたいと思います。
BAROQUEは各時代ごとに多様なエッセンスが垣間見えるバンドだと思うのですが、圭さんが感化された存在は、何でしょうか?

圭:俺は父親がドラムをやっていて、昔ミュージシャンだったんだよね。だから楽器とか音楽はすごく身近だった。父親はビートルズとか、ストーンズの世代だったから、俺はそういうのを聴きながら育って。あと当時の日本のJ-POPも好きだったから、小学校低学年ぐらいからレンタルCD屋とかで、ヒットチャートのCDを全部借りるみたいな子供だった。その中でX JAPANやLUNA SEA、L’Arc-en-Cielという、いわゆる日本のヴィジュアル系のバンドと出会って好きになって、ギターを弾きたいなと思ったんだよね。一方でビートルズから始まってUKロックもずっと好きだったし。

Cazqui:そうだったんですね。ヴィジュアル系ロック特有の煌びやかさ、UKロック特有の湿り気、それぞれの要素を圭さんの作品群からも感じられますね。

圭:身近な人で言えば、SUGIZOさんとか、Kenさんにはすごく影響を受けた。SUGIZOさんがソロアルバムでやった90年代のドラムンベースやトリップ・ホップにも影響を受けて、そういうのも派生で聴いたりしてったし。俺の音楽のルーツの中で一番大きな存在はUKロックやヴィジュアル系なんだろうけど、基本的に音楽が好きだから色々かな。

Cazqui:仰る通り、BAROQUE…特にアルバム『sug life』は、当時流行だったミクスチャー要素を持ちながら、それに留まらない多様性をすごく感じましたね。自分は高校生の頃、ヴィジュアル系と洋楽メタルをメインで聴いていたんですけれど、それぞれの音楽をずっと聴いているうちに、それぞれの”王道スタイル”に対して食傷気味になっていた時期があったんです。
そんな時に「ガリロン」を聴いて、何だこれ!って思ったんですよ。抽象画のような音像で、特にアルバム版はめちゃくちゃヴォーカルミックスが小さいけど、それは意図的なものなのか?なんて。

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圭:そうそう。確かにそうなんだよ。

Cazqui:そして、歌い回しもすごく崩していて。
”ボーカルを立てる音作り”が世の中では良しとされていますが、自分は逆に、あの抽象画のような音像が、耳に残って離れなかったんです。リズムの主体になっている、ブレイクビーツも印象的でした。
そこからですね。歪んだギターが何本も重なっていて、一聴して何が起こっているかよくわからない、それでいてほのかに切なくて、キラキラしたもの。いわゆるシューゲイザーに惹かれるようになりました。ある種、僕のシューゲイザーやそういった方面の音楽への目覚めはBAROQUEだったと思うんです。そこからCOALTAR OF THE DEEPERSなど、国産シューゲイザーにハマっていきました。

“ガリロン”
BAROQUE
Lyric:怜
Music:圭

アルバム「sug life』収録。・・・Cazquiの青春でございます(笑)

“Malice against”
NOCTURNAL BLOODLUST
Lyric:尋
Music:Cazqui

ミニアルバム「ZeTeS』収録。重ねたギターで生み出す抽象の壁。
“デスコア”と形容される事が多い中、あくまで作曲者としては、”シューゲイズ・シンフォニック・ブラックメタル”というテーマの楽曲。

“I-V-III”
NOCTURNAL BLOODLUST
Lyric:尋
Music:Cazqui

アルバム”THE OMNIGOD収録”。
NOCTURNAL BLOODLUSTライブ定番曲。BAROQUE「ガリロン』同様、ブレイクビーツを主体とした静と動の楽曲。

圭:嬉しいな。今Cazquiが言ってくれたようなことを、その当時の周りの人がどれだけ理解してくれていたか…。

Cazqui:探究心の強い人は、そうでない人より先を行ってしまいますよね。
そして自分の気持ちに嘘はつけない。だいたい、5年ほど早い(笑)

圭:そうなんだよね。俺はギターを始めたのが小学校5年生ぐらいなんだけど、こういう性格だから「始めたからには、とにかく誰よりも早くプロになりたい」と思って。だから、義務教育の間ももどかしくて、中学校2年ぐらいからバンドを組んで、高校受験をしないで、15歳ぐらいでいわゆるバンドマンになった。ラッキーなことにお客さんが集まるのがあっという間だったから、始めてすぐに300~400人ぐらい入るようになったんだよね。バンドを続けていく中でやっているキャラクターと音楽が一致しないとカッコ悪いと思うようになった。当時16歳ぐらいだったから経験もなくて、“10個ぐらい年上の人たちよりもギターが上手く弾けない!”とかコンプレックスもいっぱいあって。だから、自分に逆に何ができるだろう、自分の強みって何だろうって考えたんだよ。そのときに、自分の歩んでる生き様とメッセージが一致しているほうが伝わるんじゃないかと思ったんだよ。

Cazqui:そうだったんですね。出会ってからの圭さんは律儀で真摯な方という印象が強いんですけど、それまで僕がBAROQUEの皆さんに抱いていたイメージは破天荒というか…

圭:それは事実だね(笑)。

Cazqui:今のお話を伺うと、理想のロック像に対して誠実に向き合ったがゆえ、なのかなと。

圭:やるんだったら本物になりたかったからね。若いときはカート・コバーンがじゃないけど、生き様=ロックだと思っていて。誰よりも早く成功して、誰よりも早く死にたいと本気で思ってた。生きていること=バンドやっていることだったんだよね。だから俺は、ステージに上がったら全然違う人になっちゃうっていうのはカッコ悪いと思ってた。ずっと音楽をやってきた大人たちよりは上手にできないけど、ステージで大暴れして、自分らしく生きようというメッセージを伝えるのが自分の強みであり仕事だと思っていたから。その分、迷惑をかけた人もいっぱいいるけどね(笑)。

Cazqui:今も、己が自負を持てるアーティスト像でありたい、というところは一貫しているのではないでしょうか?

圭:そうだね。ただ、デビューしてすぐに武道館をやったとき、ちょっと虚しかった。勢いだけで突っ走ってきちゃったから、バンドの規模と音楽があまりにも伴っていなくて。その時に、自分達なりに音楽と向き合わなきゃと思って、完成したのが『suglife』だったの。それが19歳ぐらいかな。その当時やりたかったこととか自分がやれることを、そのアルバムに全て詰め込もうと思って。でも子供だから、ファンのことまでは考えられていなくて、沢山のファンの子たちを突き放しちゃったと思う。でもそこでCazquiみたいに引っ掛かった子たちもいたわけだから、結果的にそれが自分たちであったということなのかな。

Cazqui:『sug life』は発売の数年後に、ものすごく評価が高くなったアルバムなんですよね。
今でもあのアルバムを名盤と称えるコアなリスナー、シューゲイザー好きも多いと思います。僕のiTunesの「ガリロン」の再生回数はちょっと気持ち悪いくらいですからね(笑)。

圭:(笑)。その頃は本当に自分の好きなものの要素を組み合わせて、世の中にない自分だけのオリジナルの曲を作りたいって思ったんだよね。10代のうちに聴いたいろんな音楽を、いろんな要素を、それをごちゃ混ぜにして実験していたみたいな感じだった。

Cazqui:仰る通り、あのアルバムは”今好きなものを真似てみた”という安直な内容ではないなと思います。
その実験…音楽的追及は、のちにkannivalismに引き継がれ、そして今のBAROQUEに繋がり…形態は変われど、一貫しているものがあるように感じます。
自分の所属するNOCTRNAL BLOODLUSTも、変わらぬ自分が、変わらぬ熱量でバンドと向き合ってきましたが、世間の認識は変わっていきました。
BAROQUEにも通ずる部分があるのではないかと思っています。
圭さんはkannivalismを結成し、解散後baroqueを結成して、武道館まで辿り着き、一度解散を経てkannivalismを再結成し、圭さんのソロも挟みつつ、baroqueの再結成に至り、そしてメンバーの脱退を経て、今現在は二人体制のBAROQUEになって…。
そんな中でライフワークとして曲を作り、ギターを演奏するという過程で何を感じましたか?

圭:やっぱり葛藤が多かったね。15、16歳でkannivalismを始めて世に出て、そしてすぐバロックになって、そのときにいろんなファンの人と出会った。当時のファンからしてみれば、怜という人物像だったり、圭という人物像が好きなわけだよね。でもその頃の俺たちは16歳ぐらいで一番成長する時期なんだよ。だから、成長していく自分たちと、ファンが求める俺たちの像のギャップにずっと葛藤してた。お客さんからしてみれば、やんちゃで、ちょっとアイドル性もあって、カラッと明るい部分もあって…っていうのがバロックのイメージだったから、求められていることと『sug life』みたいな音楽を追求したい自分たちのギャップの葛藤はすごかったね。

Cazqui:やっぱり、そうだったんですね。

圭:『sug life』は初めて音楽というもので自分を表現できたアルバムなんだよね。それまでは、若いなりの生き様で強引にねじ伏せてきた。普通は、中学生ぐらいでギターを始めて、高校生のときに文化祭でバンド組んで、とかだと思うんだけど、俺の場合は人生で初めて作った曲とかがCDになっているんだよね。だから言わば普通の人からしたら黒歴史みたいなもので世に認識されちゃったわけだよ。

Cazqui:黒歴史が表に出てしまい、そしてそれが”当時のイメージ”になってしまった、と。

圭:そう。それって普通ではないでしょ? だから、言葉は悪いけど、19~20歳ぐらいのときは、正直もうこんなお子様みたいな事やってられないと思ってた。今だから言えるけど、その頃の自分らの周りのヴィジュアル系ってものをすごく幼稚に感じていたからね。だからファンを裏切りたいわけではないけど、今の自分が作りたいものはこれじゃないなんだ、っていう。そのことで、20代の時にずっと苦しんでいたと思う。

Cazqui:今は、少し報われましたか?

圭:そうだね。それは本当に二人になってからかな。去年、アルバム『PLANETARY SECRET』を出したんだけど、そこでやっと、自分がやっている音楽に年齢が一致してきたと思った。今31歳で、『suglife』は自分で言うのもなんだけど、19歳が作ったような音楽には聴こえないし、ちょっといき過ぎたというか、背伸びし過ぎた感はあるよ。

Cazqui:僕は最近のBAROQUEの質感としては、kannivalismの2ndアルバム『helios』に近しいものを感じるんですが、その頃と今で変わったことはありますか?

“mum.”
Kannivalism
Lyric:怜
Music:圭

圭:自分の中では結構変わっていて。『sug life』を作って、その後kannivalismになって、やっぱり多くのファンに理解されなかったんだよね。当時、それがすごく悲しかった。自分が全身全霊をかけて作ってもファンの子には一つも理解されない、そういう意味で孤独を感じて。だから20代前半のソロをやっていた頃は、もう理解してもらおうとも思っていなかった。誰のためにやるかと言ったら自分のためで、自分の音楽を追求するためだけにやってた。もう人に理解されなくても、売れなくてもいいやって思っていて、そういう風にしか音楽と接していなかった。

Cazqui:そうだったんですね…。

圭:正直言うとその頃はライブも好きじゃなかったしね。人前に出るのもすごく嫌な時期もあった。俺が好きなものは、多くのファンの人が求めているものではないから、もうファンと自分はわかり合えないという気持ちになっていたし。だから『helios』も、自分の中にある“自分は何なんだろう”ということを音楽で追及していたから、すごく閉鎖的だったと思う。

Cazqui:kannivalismも、初期は『helios』ほどの湿り気はなかったですよね。この時期にも変化があったように感じます。

圭:そうだね。もちろん好きな曲も沢山あるけど、やっぱりビジネス的な面と戦いながらっていうのもあったと思う。レコード会社があって、ちゃんとシングルっぽい曲を作らないといけないという責任もあったから。

Cazqui:そういった性質の楽曲を求められた時も、圭さんは腐らず、誠実に向き合われていたように感じます。だからいずれもキャッチーに成立している。

圭:やりたいことと求められることが違うのは苦しかったけどね。ずっと付いてきてくれるファンの子たちもいたけど、いつからか俺は他の人に理解されなくてもいいと思って自分の自己顕示欲を満たすために音楽をやっていて。でもそういう活動の中でkannivalismは壊れた。それで、皆が求めてるものをやろうとバロックを再結成したらしたでメンバーが居なくなって怜と二人になって、辞めたくなっちゃったの。

Cazqui:そうだったんですね。

圭:うん。もうBAROQUEも辞めて、何なら音楽も辞めようかなと思って。悲しいけど、早くに世に名前が出たことによって、すごく縛られたんだよね。見てくれるファンの人達も多かったから、ただのワガママじゃ終われなかった。それでバーストしちゃって、何で二人になってまでやらないといけないんだろう、という状態が続いて。だけど幸か不幸か契約の問題があって、やらなきゃいけなかったんだよね。

Cazqui:僕はその時期のメンバーさんの心情が気になっていたんです。なのでインタビューを読んだりしていました。

圭:何となくわかったでしょ(笑)? 勘がいいやつとか同業者には伝わっていたと思うよ。でもその時、俺はどうしたいんだって、ものすごく考えたんだよ。本当に自分がやりたいことって何だろうって考えたときに、一つ壁を超えたというか、上手く伝えられないんだけど、自分のためだけにやるのはバカらしくなったんだよね。綺麗事じゃなく、人のため=自分のために、という心情になれたというか、そう切り替わった瞬間があって。そこからは、「こんなにすげーものを作った俺すげーだろ」じゃなくて「自分が気持ちいいと思う音楽って何だろう」とか「自分が純粋に感動できる音楽って何だろう」っていうところを人と共有したいと思えるようになった。

Cazqui:僕も一年前、赤坂BLITZでのライブで、「好きな音楽をやる」という、突き放し発言をしましたね(笑)。

圭:言ってたね。でもその気持ちはすごくよくわかるよ。

Cazqui:その時期の圭さんと、重なるところがあるのかなと思いました。

圭:でも、Cazquiの場合はCazquiが貫き通したいものと、ファンが求めているものが一致しているからいいと思う。それは正直羨ましくもあるし。Cazquiはよりブルータルに、感情を激しく爆発させるようなものがやりたいわけだよね。そして、それをノクブラのファンも求めている。だから「LOUD PARK 16」に出演するという結果も出たと思うし、そこは突き通すべきだと思うよ。我々の場合はもう少し道が険しいかもね。いわゆるシューゲイザーとか、アンビエントのバンドって日本では人気がないから市民権がないんだよ。それもよくわかった。

Cazqui:自分が貫きたい事をファンが支持してくれているとすれば、ありがたく思います。圭さんの仰る通り、そうでない場合も多いと思うので・・・。

圭:でも、そういう10代20代の経験を通して、自分を偽って活動するのは一番苦しいってわかったんだよね。やっぱり好きなことじゃないと続けられないし、どこかで無理がきて、病気になったり、メンバー同士の仲が悪くなったりする。簡単に言うと、“シューゲイザーは売れないからやらない”んじゃなくて、“シューゲイザーを沢山の人に伝えるにはどうしたらいいか”を考えれば建設的だし、ポジティブなわけで。俺はそれに気が付くまでに20代丸々かかっちゃった(笑)。でも今は俺の持っている音楽性や好きなものはこれだってわかっているし、配られたカードはこれなんだから、それをどれだけ最高のカードにできるのかって考えるようになったんだよ。

Cazqui:シューゲイザー然り、メタル然り、やはりニッチな音楽性を貫く上での葛藤や、試行錯誤はありますよね。
自分は、初めて自分のバンドでライブをしたのはヴィジュアル系として鹿鳴館で。高校生の時なのですが。
そこからメタルのシーンを経て、次にハードコアのシーンへ。そして表立ったキャリアが始まりました。で、なぜ一度ヴィジュアル系をやめてしまったかと言うと…
当時、次こそ本気でやろうと思って、ベースのMasaと二人でメンバー探しをしていまして。
何度か音を合わせた現役の人に、曲を持っていったりもしてみたんです。結果的にノクブラの原曲となったものもありましたね。
すると”そんな音楽性のバンドをやる意味がない”と。
つまりビジネスとしての土壌がない音楽は「そもそも無価値』だからやりたくない、という人が多かったんです。
で、こんな保守的でつまらない人達とはやりたくないな、とカズキ少年(16)は思ったんです。
もういいや、と。

圭:このシーンそういうことがいっぱいあるよね。

Cazqui:圭さんのように、“◯◯を沢山の人に伝えるにはどうしたらいいか”というような発想の人は周りにいなかったです。
“それは売れないから避けて、売れてからやりたいことをやるべきだ”と言う人があまりにも多かった。
成功するまではひたすら自分を偽れと。けれどそれは違うだろうと。

圭:そうなんだよ。俺はそれがわからなくて、俺が作りたい音楽は売れないんだ。
俺が作りたい音楽をやると売れないから、もうやりたいことをやっちゃダメなんだ。封印しなきゃ、我慢しなきゃ、音楽嫌いにならなきゃと思ったりもしてたよ。

Cazqui:辛いですね。気持ちに嘘をつくと、自分の場合は対外的にも良い結果が出せなくて。
正直、今でも存在証明のために音楽をやっているという気持ちが強いです。

圭:俺は若い頃、本当にそれしかなかった。若くて成功して、すごいと思われたかったし、極端な話、天才だと思われたかった。だから、もっと人がやらないことをやろう、人ができない曲を作ろうと思って。でもそれだけになっちゃうと、もうコミュニケーションじゃないんだよね。ファンを突き放していると思うし、本当に自己顕示欲を満たすためだけだったと思う。

Cazqui:圭さん然り、自分の敬愛する方って、そういう経験のある方が多いんですよね。「あのときは自己顕示欲にまみれていた!」という。

圭:俺、先輩方がそういう気持ちで作ったアルバムも好きなんだけどね(笑)。

Cazqui:分かります(笑)けれど本人はそれをすごく反省しているような言い方をするんですよね。あれは失敗作だったって(笑)…だがそれが良い(笑)。

圭:そこでファンを1回失ったりもしているしね。でも、それはそれで必要なことだと思うよ。

Cazqui:そうかもしれないですね。
ところで、今のBAROQUEは、映像であったり、アーティスト写真であったり、ライブのグッズデザインであったり、あらゆるところがトータルで完成されているように感じるんです。これまで制約がありながらも、自分たちのアイデンティティを保ち続けてきたという印象があって。BAROQUEはいわゆるオサレ系という定義を生み出したバンドでもありますよね。

圭:うん。俺らがやったことをみんな真似してた。曲もルックスも真似されたし。それが単純に嫌で、すごくバカらしく感じたよ。だって、ヴォーカルが18歳で、ギターが16歳で、そんなガキが作ったものを大人が真似するなんて、本当にくだらなく思えたの。だから自分たちが真似されている容姿や衣装でいるのが嫌で、ヴィジュアル系がちょっと嫌いになったんだよね。もちろんビジネス的には、最初の頃のヴィジュアルをずっと続けていればいいわけだし、そうしたら、もしかしたらもっと成功したかもしれない。でも堪えられなかったんだよ。当時の自分たちが子供だったからというのがあると思うけど。

Cazqui:今はどうでしょう?

圭:今はいい意味で自分達らしい事しかやらない。ワガママじゃなくて、みんなが楽しめる方法で自分の好きなことをやるという考えになった。例えばインストアイベントでも、前は複数枚買わせることに罪悪感があって、すごく嫌だったけど、今はそういうイベントをやるなら自分たちも楽しめるやり方を考えようと思えるようになった。アートワークもそう。ただし、自分で自分を嫌いになるようなことは嫌だから、自分のバンドをダサいと思うようなことは一つもしないでおこうと思ってるよ。

“CELEBRATE”
BAROQUE
Lyric:怜
Music:圭

アルバム”PLANETARY SECRET”収録

“SWALLOW THE NIGHT”
BAROQUE
Lyric:怜
Music:圭

アルバム”PLANETARY SECRET”収録

Cazqui:その誇り高さはずっと一貫していますよね。

圭:とはいえ、俺たちは散々譲って、もう自分たちの手の届かないところでいじくり倒された経験があるからだけどね(笑)。

Cazqui:それでもなお、こうして立ち上がって、拘りを持ち続けている点が魅力的だと思います。自分も、かつて思い通りにやれない時期は心が折れそうになったので。

圭:20代のときにウダウダ言って現状に文句を言っている自分に嫌気がさしたんだよ。俺はヴィジュアル系だからとか、早く売れちゃったからこうなったとか、もう好きなことはやれないとか、文句を言っている自分が嫌で。だから、怜と二人になったとき、どうやったらBAROQUEというバンドを自分も最高に心からカッコ良く思えて、みんなにもそう言えるのかを考えた。今はそれをもう一回やり切ろうとしている感じかな。バンド名を大文字にしたのもあえてで、大文字で表記するBAROQUEは当初自分たちの中で一番カッコ悪かったんだけど、それをどうやったら心からカッコいいと思えるものにできるかが、自分のこれからの人生で大事なことなんじゃないかと思ったんだよね。

Cazqui:とても学ぶべき点の多いお話です。ありがとうございます。
ところで、本来ヴィジュアル系はトータルクリエイトと言いますか、音楽に纏わる全てに情熱を注ぐバンドの多いジャンルだと思うんですが、特に今のBAROQUEは全てに神経を張り巡らせている印象があるんです。そんな中で、他ジャンルへのアプローチは何か考えていますか?

圭:確かにヴィジュアル系の良い部分はそういうトータリティがあることだよね。俺が好きだったヴィジュアル系も正にそうで、BAROQUEもそういう統一性を持たせることに重点を置いていて。ただ俺たちはまだそこが完璧に確立していないなとも思っているんだよね。だから他ジャンルに関してはこれからと思ってる。ただやればいいってもんじゃないとも思うし。他のジャンルでも、ダメなバンドは全然ダメでしょう?

Cazqui:それは、同感です。

圭:結局やっぱり本物とやらないと意味ないからね。

Cazqui:そうですよね。しかしながら、アーティストにもリスナーにも、隣の芝生が青く見えている方が多く見受けられます。

圭:憧れみたいな感じなんだよね。でも、ちょっと違うなと思う。

Cazqui:圭さんも僕も、ヴィジュアル系というものを、かっこいいジャンルだと思って足を踏み入れたと思うんですけど、その定義が壊れてきているのかなと。

圭:本当にその通りだね。だからヴィジュアル系のシーンから外に出ていくとしても、そこに素晴らしいバンドはいっぱいいるけど、俺たちはもっと確立してからいこうと思う。むしろ今は、先輩たちからヴィジュアル系の良い部分を吸収しようと思っているんだよね。今度Kenさんのイベントに出たりもするし、そういう本当にちゃんと音楽をやってきた、自分のルーツになっている人たちのエッセンスももっと継承したい。もっと吸収して、もっと自分のフィルターで磨いて、別の世代でもっとやってやりたい。今はその段階かなと思ってる。

(後編に続く)

(文・Cazqui)

ARTIST PROFILE

BAROQUE

BAROQUE

GIRL //SO// SWEET
GIRL //SO// BRAVE
FINAL

■8月12日(金)
OPEN 18:30 / START 19:00
TSUTAYA O-EAST
チケット料金
スタンディング ¥5,400(ドリンク別)

【ticket info.】
・ローソンチケット0570-084-003(L:76922)
・チケットぴあ0570-02-9999(P:300-141)
・イープラス http://eplus.jp

ARTIST PROFILE

NOCTURNAL BLOODLUST

NOCTURNAL BLOODLUST

全国ONE MAN TOUR “DEIMOS” 開催決定!!チケット一般発売中!

9月3日(土)東京・渋谷 clubasia -男限定- 17:00/17:30
9月4日(日)埼玉・HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3 17:30/18:00
9月10日(土)神奈川・新横浜 NEW SIDE BEACH!! 17:30/18:00
9月11日(日)千葉・柏PALOOZA 17:30/18:00
9月18日(日)群馬・高崎club FLEEZ 17:30/18:00
9月19日(月・祝) 新潟・GOLDEN PIGS BLACK STAGE 17:30/18:00
9月22日(木・祝)石川・金沢 vanvanV4 17:30/18:00
9月24日(土)長野・LIVE HOUSE J 17:30/18:00
9月25日(日)静岡・Sunash 17:30/18:00
10月1日(土)岡山・livehouse IMAGE 17:30/18:00
10月2日(日)兵庫・神戸VARIT. 17:30/18:00
10月15日(土)北海道・札幌COLONY 17:30/18:00
10月16日(日)北海道・札幌COLONY 17:30/18:00
10月22日(土)宮城・HOOK SENDAI 17:30/18:00
10月23日(日)岩手・the five morioka 17:30/18:00
10月29日(土)香川・高松DIME -Halloween Special Day1- 18:00/18:30
10月30日(日)愛媛・松山サロンキティ -Halloween Special Day2- 18:00/18:30
11月3日(木・祝)福岡・DRUM SON 17:30/18:00
11月5日(土)鹿児島・SR HALL 17:30/18:00
11月6日(日)熊本・熊本 B.9 V2 17:30/18:00
11月12日(土)愛知・CLUB 3STAR IMAIKE 17:30/18:00
11月13日(日)愛知・CLUB 3STAR IMAIKE 17:30/18:00
11月19日(土)大阪・心斎橋 THE LIVE HOUSE soma 17:30/18:00
11月20日(日)大阪・心斎橋 THE LIVE HOUSE soma 17:30/18:00
12月3日(土)東京・TSUTAYA O-WEST -女限定- 18:00/18:30
12月25日(日)東京・Shibuya WWW -Merry Fxxkin’ Xmas. (NCBL Moblie会員限定)- 18:00/18:30
12月31日(土)東京・原宿ASTRO HALL -HAPPY HELL YEAR!! 2016-17 COUNT DOWN- 22:30/23:00
2017年4月1日(土)東京・新木場STUDIO COAST -TOUR FINAL- 17:30/18:30

[TICKET INFORMATION]
※9/3 渋谷 clubasia ~ 12/3 TSUTAYA O-WEST 公演

前売:¥3,800 / 当日:¥4,300
■NCBLスマホ会員「NCBL Mobile」会員先行予約
■2016年5月22日(日) EX THEATER ROPPONGI 会場先行予約
■OFFICIAL HP先行予約

■お申込後の住所変更・申込内容(抽選当落結果)確認はこちら
<PC・スマートフォンから>http://diskgarage.com/getticket/support.html
<携帯(ガラケ―)から>http://k.getticket.jp/cs/
【受付に関するお問合せ先】
ディスクガレージ 050-5533-0888(平日12:00-19:00)
■チケット一般発売
2016年7月2日(土)~各プレイガイドにて
https://eplus.jp/ath/word/42446

※12/31 原宿ASTRO HALL / 2017’4/1 新木場STUDIO COAST 公演
前売:¥4,000 / 当日:¥4,500
■NCBLスマホ会員「NCBL Mobile」会員先行予約
2016年9月3日(土) 22:00~9月11日(日)まで (抽選/最優先)
■各会場先行予約
2016年9月3日(土) 22:00~9月25日(日)まで (抽選)
■OFFICIAL HP先行予約
2016年9月12日(月)~9月25日(日)までGET TICKETにて (抽選)
■チケット一般発売
2016年11月5日(土) 各プレイガイドにて

ARTIST PROFILE

Cazqui

Cazqui

<プロフィール>

Cazqui(カズキ)1990年2月17日〜
日本のギタリスト、作曲家。
所属バンドはNOCTURNAL BLOODLUST。
7弦ギターを用いたトリッキーなギターリフ、シュレッドスタイルのリードプレイ、曲線的かつ非常にアグレッシブなライブパフォーマンスを持ち味とする。
バンド結成当初からCaparison guitars製の7弦ギターを愛用し、2016年2月に同ブランドよりオフィシャルギタリストとして認定され、海外メタルギタリストが名を連ねる中、数少ない日本人エンドーサーとなる。
プラチナヘアーを徹底し、白を基調とした衣装を好んで着用している。
作曲面ではエクストリームミュージック及び近代的なメタル/ハードコアを基盤としながらも、HM/HR・ジャズ・エレクトロニカ・シューゲイザー・ヴィジュアル系など多様な音楽性の影響下にあるミクスチャー的作風が特徴。
作曲家としてNARASAKI(COALTAR OF THE DEEPERS、特撮)を尊敬しており、LADY BABY”蓮華チャンス”(NARASAKI作曲・大槻ケンヂ作詞)ではリードギターを担当した。
なお、筋肉少女帯のファンでもあり、当サイトにおける二者対談企画にて、橘高文彦(筋肉少女帯、X.Y.Z.→A)より”俺の思うギターヒーローが出てきた”と、その特異なプレイスタイルを評価される。
代表作はNOCTURNAL BLOODLUST”ZeTeS”(2016年)。