特集-Special Feature-

the GazettE

the GazettE

新たな息吹を吹き込まれた珠玉のバラードベストアルバム『TRACES VOL.2』。15周年を目前に控えたthe GazettEが作り上げた最新作の魅力に迫る。

“再録した楽曲たちによって構成されるベストアルバム”には、賛否両論、十人十色の反応があるに違いない。楽曲への愛が深いほど、楽曲たちが予想外の変貌を遂げるのではないかという不安を抱く人もいるだろう。だが彼らが作り上げたこの作品を聴けば、そんな事は杞憂に過ぎなかったことがわかるはずだ。心を震わせる新旧取り混ぜた12曲(通常盤は10曲)は、いずれもその当時の姿を留めつつ見事に新しく生まれ変わっている。今のthe GazettEだからこそ作ることができたこのアルバムをぜひともじっくり堪能していただきたい。今回の作品について、そしてリリースの二日後に国立代々木競技場第一体育館で行われる15周年ライブについて、5人に話を聞いた。

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RUKI

――今回のバラードベストを、音の厚みでこんなにも変わるものなのかという驚きと感動と共に聴かせていただきました。それでいて原曲から大きく変えていないので、残して欲しい音をきちんと残しつつ今のthe GazettEの曲になっている、という印象です。

葵:良い反応でよかったです。確かにベストの再録って「おやおや?」という感じがしますからね。今回、みんながそう感じるであろう部分はわかっていたので、そこを意識しながら作りました。変えても大丈夫と思ったところしか変えていないつもりです。それでも作っている段階で「前のほうが良いんじゃない?」という意見もあったりしたんですけどね。

――やはり再録には様々な反応があるんですね。ところで、前回のインタビューは昨年10月のハロウィンライブの頃でしたが、このアルバムの制作はそれ以前から始まっていたんですよね。

麗:そうです。着手したのは8月頃でした。

葵:ハロウィンライブの前からやっていたんですけど、ライブがあったので1回置いておこうと。そうしたら置きすぎちゃって今に至る感じです。

――想定していた制作期間内には収まりましたか?

RUKI:いや、2ヵ月くらいズレてますね。

麗:期間が全然想定できなかったんですよ。本当は年内に終わっているはずだったんですけど、その後に色々入ってきたから止めたりしたし。

――この作品を作ろうと決めた段階で、完成図はある程度見えていましたか?

葵:う~ん、どうだろう。今回初めてエンジニアを立てずに自分たちでやろうと決めたんですよ。その瞬間にすごい手探りになることが確定したから…つまり完成図は全然見えていなかったですね(笑)。

――なるほど(笑)。それにしても、映像然り、エンジニアの作業然り、最近the GazettEの中だけでいろんな工程が完結していっていますね。

葵:そうですね。今回、いろんなことをみんなで話し合いながらやったんですけど、メンバーの中でも率先してその作業をやらなきゃいけない人がいて。それはすごく大変だったろうなと思います。

――それは誰だったんでしょうか?

葵:あそこのマスクの人(麗)です。

麗:いやいや、俺は最後に調整というかMIXをしただけですよ。みんなで手探りでやっていましたから。

――今回手がけた作業は、映像を作るのと似た感覚でしたか?

麗:そうですね、非常に近いです。

――ということは、巨匠(RUKI)からの注文が入ったり?

麗:そうなんですよ。今回も巨匠が色々言ってきて…

RUKI:巨匠って俺!? 全然言ってないじゃん!

麗:いやー色々言ってたよ。

RUKI:REITAの方がひどかったし!

――え、REITAさんも?

麗:そうなんですよ。自分としては「完成図はこうなんだろうな」というバランスがあったんですけど、チェックの時にREITAが血眼になってヘッドホンで低音を探り始めて色々言ってくるんです。それが夢にも出てきましたからね…。それで、「低音を上げろ」っていうから「こんなに上げるの?」と思いながら上げたら、翌日には「ここの部分がデカい」って言うからすごく下げたりして。

葵:もー、そういうことはダメだって前に学んだじゃん。

REITA:『斑蠡〜MADARA〜』(2004年リリースのアルバム)の時に思い知ったのにね(笑)。

――最終的に、REITAさんの低音問題はどうやって決着をつけたんですか?

麗:俺が「これは絶対こう」と決めるようなことはしないで、REITAに責任を預けました。責任感をもって低音を作ってもらわないと困るし。

REITA:だから後半、麗に「どう思う?」って聞いても、「俺はわからない」しか言ってくれなくて…。

麗:「俺にはわからない領域だから、お前の気持ちいいバランスに持って来い」と。

REITA:でも俺が「1デシ(デシベル)下げて」「2デシ下げて」って言うと、それを麗が数字で打ち込むところを目で見るわけじゃないですか。そういう先入観もあるんですよね。なので、麗が画面を隠した状態で自分の気持ちいいところまでメーターを上げて、ご機嫌を窺ったりしてました。それが途中でミニゲームみたいになってたよね。

麗:うん。低音が変わるようなエフェクトが薄っすらかかる状況にして、画面を隠しながらREITAに「今、これ入ってると思う? 入ってないと思う?」って聞くと「入ってる」って答えるんです。けど、実際は入ってないんですよ(笑)。そうすると、「もう1回やろう!」って言うから何度もやったんですけど、ことごとく外して(笑)。

REITA:完全に時間の無駄だったよね。そのクイズをやってたのが夜中3時とかだし。帰るべきでしたよ(笑)。

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――戒さんは今回のアルバムの制作はいかがでしたか?

戒:俺も同じような作業でしたね。最初にみんなでフレーズを確認したときにドラムを録って、そのプレイを活かして麗の家で音を詰めていく作業をしたんです。ただ、途中でライブがあると作業を1回中断して、また再開するじゃないですか。これは決して悪いことではないと思うんですけど、時間が経つと「やっぱり、もうちょっとこうした方がいいかな」と思ってしまって、また1から作っちゃうんですよね。その後も時間が空くと、「やっぱりもう1回作り直そう」ということが続いて(笑)。やっぱり自分たちでやると、時間はあればあるだけ使っちゃいますね。

麗:ドラムにすっげー時間かけてたよね。ドラム研究会みたいだった。

戒:確かに、すっげー時間がかかったと思う。でも自分たちなりに調べながらやって、そこでの発見もあったから全然よし!なんですけどね。

RUKI:今回、本当に発見だらけでした。ベースとドラムの相性だったり、それにおいてのギターの感じだったり。すごく勉強になったし、ためになったなと。

麗:こういうテクノロジー的なことは、今のこの時代だからこそできたと思いますね。昔は個人ユースでできるようなものじゃなかったから。

――今の時代で、今の環境だからこそ録れた作品なんですね。

RUKI:そうです。そして今回、生を綺麗に録るのが一番難しいってことがわかりました。これは地獄だなと。ベースも弾き方が全然違ったもんね。音楽って未知だなと思いました。

――結成15年目を前にして「音楽って未知だな」というのは深い言葉ですね。

RUKI:確かに。でも今だからこそ思うのかもしれませんね。

――今回、得るものが多かったようですが、the GazettEは今後のレコーディングもこういう形でやるんでしょうか?

RUKI:いや、やらない(笑)。どう仕上げていくべきなのか、アレンジがどうなのかはわかったし。

REITA:次にエンジニアとやる時は、エンジニアとの戦いになりそうですけどね。

戒:大変そうだよね。

――今回の経験で知識がある皆さんとの仕事となると、次のエンジニアさんはハードルが高くなりますね。

RUKI:でもエンジニアの人は「我こそは!」っていう感じの人が多いし、自信もおありでしょうし。

葵:むしろ次のエンジニアさんは楽だと思いますよ。俺らに知識があるから下手な音を出さないですし。「下手な音を良い音にしてくれ」っていうのは無理があるだろうけど、どういう完成形かが見えていれば、それを美麗な音にしてくれればいいわけだから。

RUKI:まぁね(笑)。

――まだ見ぬ次の作品も楽しみです。それにしても今回の収録曲は名曲がズラリと顔を揃えましたね。

葵:歌ものは良い曲しかなかったので、どれを入れようかなって悩むぐらい…でしたか、RUKIさん。

RUKI:うん。もっと入れたい曲はありましたけどね。

葵:選ぶ時にテンポ感や音像の感じはあまり偏らないようにしたつもりです。

麗:でも、蓋を開けてみたらアコギが多かったね。しつこいくらい出てきた。

葵:うん。アコギは結構弾いたね。

――再録されてアコギの音がとても綺麗に聴こえてきたのが印象的でした。

葵:12弦がすごく綺麗に録れたんですよ。麗がマイクから何から全部用意してくれたおかげで。

麗:反省点もありつつ、ですけどね(笑)。

――静かな空間でじっくり聴きたい作品です。

葵:そうなんですよね。使っているリバーブもいいんですよ。自分も欲しくなって探したら、麗が使っているやつが出てきたんですけど…高くてびっくりした。

RUKI:レコーディング中にも相当買ってたよね(笑)。

麗:常に買ってる。普段SEを作るときにも使うから、新しいのをつい買っちゃうんですよね。いくら使ってるのかな…。

RUKI:こっちもそれに慣れてきて「あ、これ買ったほうがいいんじゃないの?」って言ったりしてるしね(笑)。

麗:そうすると貯金が減る。メンバーの貯金の額を見ちゃって「こんなに差が出てしまったか…」と。

REITA:俺を指すんじゃない(笑)。

――REITAさんはかなり貯めていらっしゃるんですね?

REITA:いやいや、全然!

全員:(笑)

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――今回の収録曲で、制作に一番時間がかかったのはどの曲でしょう?

RUKI:一生やってたのは…「CALM ENVY」かな。

麗:俺は「PLEDGE」だね。一生やってた。

REITA:いや、一生って(笑)。無事終わったじゃん。

――この作品の制作は「PLEDGE」から始まったんでしょうか?

麗:そうです。全部の要素が入っているからこの曲が基準になるし、これができないとアルバムはできないだろうなと思って。

戒:録りは大したことないけど、音を構築するのに時間がかかりましたね。

RUKI:全部入ってるもんね、ピアノもあるし、ストリングもあるし、アコギもエレキもあってハモリも多いし。マジで何万年やるんだよ、っていうくらいやってたから。

――じゃあ「PLEDGE」が完成した後は楽だったり…

RUKI:それが全然そんなことはなかった!

戒:最初は俺らもそう思ってたんですよ。思ってたんですけどね…(笑)。

麗:でも、「PLEDGE」ができてからは、他の曲にそれを反映させてならしていく作業だったから作業が早くはなりましたよ。この曲が微妙な仕上がりだったら他もコケていたと思うし。それに、「PLEDGE」をやって、他の曲を一通りやった後にもう一度この曲を見直した時に、「流れが変わったからまた直すか」とはならなかったんです。流れは変わったけど、これはこれで「PLEDGE」の方向性として全然ありだなと思えた。

RUKI:「さすがに時間をかけているだけあるな」という印象だったね。途中で基準は「PLEDGE」から他の曲に代わったけど。

麗:引き継いで、受け継いでいるからね。「PLEDGE」があって、さらに広がっていった感じかな。

RUKI:そうだね。最終的には全部良い感じに持っていけました。

――今回の作品で、特に思い入れのある曲はありますか?

RUKI:どれも思いがあるからこれっていうのはないかも。むしろまだあの辛さが鮮明に思い出されるし…。

葵:だね。俺は挙げるとしたら「絲」かな。すごく古い曲なんですけど、今やっても全然OKと思えるくらい磨かれたと思います。この曲のアレンジは割と最初のほうで出ていたんですよ。…きっと見えてたんでしょうね、巨匠の目には「絲」がこうなる姿が…。

戒:むしろ昔録った時から見えてたんでしょ?

RUKI:俺は本当はあの時からこうしたかったんだ。

麗:見えていたなら早く言ってくださいよ(笑)。

――「絲」もそうですが、10年以上前の曲でも不思議と古さを感じさせないですよね。

葵:そうなんですよ。普通、10年前の曲だとコード感だったり、歌詞の感じだったりで古さが出ますよね。確かにそれはあんまり感じなかったかもしれないです。