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lynch.の過去に現在を反映させ、さらなる未来を見据えたベストアルバム『10th ANNIVERSARY 2004-2014 THE BEST』をフィーチャー!

結成10周年のアニバーサリーイヤーを迎えたlynch.。この大きな節目の年に彼らが打ち出したのは、過去の名曲たちに現在を反映させたベストアルバム。2枚組36曲というボリュームにも関わらず、捨て曲なし、絶妙なさじ加減で取り交ぜられた楽曲は、その並びも含めてファン垂涎の作品となった。この作品を通じて見えてくるlynch.の過去、現在、未来を、葉月(Vo)、玲央(G)、晁直(Dr)に語ってもらった。

◆僕が結構ファン目線なので、そのあたりはわかっているつもり(葉月)

――10周年のベストアルバム、どんな作品にしようと思っていましたか?

玲央:個人的に、既存の音源をそのまままとめて出しただけのベストがすごく嫌いなんです。自分はコレクターなので、好きになると音源を全部そろえるんですけど、既に持っている音源をプレイリストで並び替えただけのものであればいらないと思うんですよ。やっぱり出すなら現在が反映されているものであってほしいし、全ての音源を持っている人でも欲しくなる作品じゃないと出したくないという思いがあります。今回は、まずメンバーのそういう総意があっての企画でしたね。

――作品への強いこだわりを感じます。

玲央:こだわってますね。このベストは、インディーズの頃の作品と聴き比べてもらうのも面白い聴き方だと思います。単純に過去の音源を集めただけだと、その方法では楽しめませんからね。

――今回の収録曲はメンバーによる選曲だそうですが、どういう基準で選びましたか?

葉月:最初、俺が30曲くらい選んで持って行ったんです。特にそのセレクトにメンバーからのNGはなく、むしろ「これが入るなら、これも入れようよ」と増えていって結果36曲になりました。

玲央:葉月が持ってきた曲がほぼ全部収録されましたね。誰も削る方向で話を持っていかなかったという(笑)。

葉月:シングル集やヒットソング集だったらまた違ったんでしょうけど、僕らシングルを全然出していないし…

玲央・晁直:(笑)

葉月:そういうものじゃなくて、バンドにとって重要だったり、ライブで人気がある曲を選んでいったらおのずとこうなったんです。

玲央:この作品は、よくある、メーカーと契約が切れたときの資金回収目的のベストではないんです。あくまで「10th Anniversaryで、10年史を語る上で外せない曲、入れたい曲はどれですか?」という基準で選びました。ベストアルバムというと過去を振り返るようなものが多くて、後ろ向きな姿勢に捉えられがちですけど、あくまで先を見据えた上で、今整理しておこう、というニュアンスの方が近いかもしれませんね。

――一部、とてもストレートな表現もありましたが、あくまでも前向きな、未来に向かうベストなんですね。先ほど葉月さんが「ライブで人気の高い曲」と言っていましたが、この収録曲は曲順も含め、ファンにとってはたまらないラインナップだと思います。

葉月:そうですね。「さすが!」とは言われましたけど、「何でこうしたんですか」って声はあまりなかったです。僕が結構ファン目線なので、そのあたりはわかっているつもりではいるんですけどね。

晁直:選曲のコンセプトが「ライブのような感じ」だったので、そういう前提で考えたらこの曲たちは外せないものばかりでした。自分は、最近ライブで定番の『EXODUS-EP』(2013年リリースのアルバム)や『GALLOWS』(2014年リリースのアルバム)の曲は絶対に入れたかったですね。

葉月:あ、そうなんだ。

――あれ?

晁直:だって最初のリストになかったから、「ないんだー…」と思って。

葉月:ないよ。入れたら『GALLOWS』買ってもらえなくなっちゃうじゃん! でも入れないとタイトルと違っちゃうんだよね。『10th ANNIVERSARY 2004-2014 THE BEST』って言っているのに2014年の曲が入っていなくて、それを2015年に出すっていう(笑)。

晁直:曲を決める会議をしたのは『GALLOWS』を出してすぐだったからね。ツアーが終わったくらいかな。

葉月:その頃は「まだ『GALLOWS』は早いでしょ」って言ってたんですけどね。入っちゃいました(笑)。

――DISK1、2それぞれにインディーズの曲とメジャーの曲が入り混じって収録されていますが、年代順に分けるという案はなかったんですか?

葉月:それはうちの明徳君(B)が考えていたんですけど、並べたら全然良くなかったんですよ。「お前、これ全然良くないけど大丈夫?」って言ったら「あ、そうっすね」って(笑)。

玲央:年代順にやろうとすると「discord number(LIVE)」の後に「unknown lost a beauty」「pulse_(LIVE)」と来ちゃう。それはもう的外れすぎるでしょ。葉月がこの並びを考えてくれたんですけど、明徳は最後まで反対してたよね。みんなが「まるで2Daysのライブを観てるみたいだね」って言っていたら、明徳だけ不服そうにしてましたから。「出した順がいいです。ベスト盤てそういうものです」って言って。

葉月:彼は、シミュレーションせずに理想だけ言うからなー(笑)。

玲央:葉月や僕はプレイリスト順に並べて、「こことここを入れ替えた方がいいな」と具体的な検証をしていくんですけど、彼はそういうのはすっ飛ばしているので…。

葉月:天才なので仕方ないです。まぁ一瞬で論破しましたけどね(笑)。

――AK氏、すごい逸材ですね。タイプ的に玲央さんとは真逆なのでは。

玲央:そうなんですよ。彼は行き当たりばったりですからね。

◆ライブ的要素を入れていこうと思った(玲央)

――それにしても、「2Daysのライブのようだ」という表現がぴったりの、まさに神セットリストです。

玲央:最初、レコード会社の人にも、なぜこの並びなのか伝わっていない部分があったんですが、「そういう風にとらえてもらったら、比較的スッと入って来られると思います」と言ったら、なるほど!と言ってもらえました。うちは10年間、ライブに重きを置いて、年間50本くらいコンスタントにやりながら活動してきたので、こういった企画に対してライブ的要素を入れていこうと思ったんですよ。そういう意味もあってライブVer.も入っているんです。

――ライブVer.が入っているベストというのは、とても珍しいですよね。

葉月:そうですね。それに、この曲たちは今スタジオで録っても、多分ライブテイクを超えられないだろうなと思ったんです。お客さんのレスポンスがあって初めて成立するというか、むしろ無しでは成立しない。なのでライブテイクの方が良いと。

玲央:ライブテイクにはエアー(客席の音)もちゃんと入りますからね。それに、みんなも今回のベストに参加しているという意味合いも含めて。

――音を聴いてその場の空気が伝わってきました。

玲央:そう言ってもらえると、とてもうれしいです。これまでにライブDVDを出したことはあるんですけど、ライブテイクがCDになるのは10年やっていて初めてなので。

――画がなくても臨場感があるのはさすがです。ちなみに今回、インディーズの曲は録り直したそうですが。

葉月:ほぼレコーディングし直しました。リレックは11曲ですね。

玲央:晁直に関しては、またちょっと録り方が違っているんです。

晁直:僕は「liberation chord」と「from the end」の2曲しか録っていないんですよ。過去の作品で、データが欠損していたりするものだけですね。他の曲は、テイクは昔のままで、今のサウンドの音を上から貼り付けるというミックスのやり方です。

葉月:最新のテクノロジーを駆使したものになりました。歌も全部録っているわけではなくて、気に入ったところはそのまま使っているところもありますし。

玲央:弦楽器もそうですね。アナログなエフェクターを使っていたりすると、ワウのかかり方がどうしてもコンディションに影響するんです。前の音の方が良いって言って、悠介(G)の音を僕の家のHDから引っ張ってきたりもしました。上手い下手じゃなくて質感が再現できないものがあるんですよね。失礼な言い方ですけど、質素なレコーディングスタジオだからこそ出た音もある。これは好き嫌いの問題なんですけど、そういったものは積極的に採用していきました。その中でも、歌が一番混在しているよね。

葉月:そうですね。もうどこを残したか全然わかんない。昔の曲を録り直すと、「前の方が良かったのに!」っていうことが多々あると思うんですけど、僕はそれがすごく嫌なんです。なので「何で変えちゃったんだよ」って思われそうなところはそのままにして、今やったほうが良いところだけ録り直しているので、昔からlynch.を知ってくれている人にもあんまり不満の出ない仕上がりになっているんじゃないかと思いますね。

玲央:新旧が混在しているんですけど、録り直すこと自体が目的ではないですからね。つい、そこに走りがちなんですけど、リスナーとしての目線で言うと「ここの歌い回しはなくなってほしくない」「ここのギターの音ってスカスカだけど良い味出してるよね」っていうのが絶対ありますから。

――玲央さんが残したかった音はありますか?

玲央:…それが、僕は全部録り直しているんです。メジャーデビューして、ギターテックさんという専門職の方とお仕事をさせていただいて、一緒に音源制作をしていく中で、気を付けていかなくてはいけない重要なポイントをすごく勉強させてもらったんです。インディーズの時は全部独学だったので、今回はそういう知識を反映させた上で、もう一度録り直そうと。それに、明徳が2010年に加入したのでインディーズの時の作品には一切参加していないんです。彼のベースが入ることで曲の表情も若干変わってくるので、悠介もベーシックな部分は全部録り直しました。

葉月:ちなみに、弦楽器は全部それぞれの家で録ってます。スタジオに入らなくてもこれだけできるっていう証明CDになりました。

――明徳さんは、インディーズの曲を全曲録り直したんでしょうか。

玲央:そうです。明徳はインディーズの時の曲を初めて録るということで、先代のベーシストである葉月の目の前で録っていました。結構ハマってたよね。

葉月:そうですね。最後の日、菓子折り持ってきましたから。

全員:(笑)