lynch.

◆一つの物事を進めるのにすごく時間をかけるスタンス(晁直)

――皆さんは結成当時からのオリジナル・メンバーですが、lynch.を作った時と今、バンドの方向性は変わりましたか?

葉月:いや、結成当時は全然固まっていなかったので、良い風にまとまったなと思います。

玲央:足りない部分が多かったので、それを一つ一つ増やしていったんです。lynch.はメンバーの加入はあっても脱退はない。それと同じように、楽曲に対する考え方や歌詞といった足りないピースをどんどん足していった感じです。

――10年前、今の状態をどんなふうに予想していましたか?

玲央:僕は予想通りですね。メジャーデビューしたってことはレコード会社と物を作っていくことになるんですけど、レコード会社のものになるんじゃなくて、新しいスタッフを付けていく、という風に解釈しているんです。一緒に作る人間が増えて、こういったものをこれくらいのフィールドでやっていくという青写真を常に持って活動を続けていったので、その青写真と現実のギャップが少ないという意味では予想通りかなと思います。

晁直:lynch.は、一つの物事を進めるのにすごく時間をかけるスタンスなんです。それを昔から今までずっとやってきて、いつの間にか10年経っていた感じですね。玲央さんは発起人なので青写真があったかもしれないけど、僕らは特にないんです。

玲央:10年なんてあっという間ですよ。『greedy dead souls』(2005年リリースのアルバム)のレコーディングがつい昨日のようです。

――10年分の音源の中で、ご自分たちのターニングポイントになった曲はありましたか?

葉月:僕は作曲者の立場として、曲だったら「I’m sick,b’cuz luv u.」、アルバムだったら『THE AVOIDED SUN』(2007年リリース)ですね。これをやればいいんだという目標というか、指針が見つけられたのがとても大きかったです。本当にこの曲に助けられましたから。結成当時は激しくてメロがある、ただそれだけで、特に何をやればいいか定まっていなかったんです。それをどうしたらいいのかを、この曲に教えてもらった感じです。そこからまた色々めぐって、そしてまた最近『GALLOWS』に教えられた感じがあります。

晁直:僕は良くも悪くも「ADORE」ですね。良い面はlynch.の代表曲と言ってもらえる曲だし、初めてMVを撮った曲ということです。ダメな点は…ダメな事務所に所属して1発目のシングルだったことですね。そこでとても成長しました。

――あんなに完成度が高い映像作品なのに。

晁直:大変だったんですよ…。

玲央:撮影は中断するわ、監督さんが言うこと聞かないわ、CGを作った子が泣き出すわ、葉月は立ち合いで編集するわ…

葉月:あのMV、最終的に監督は僕ですからね(笑)。

――CGを作った子が泣き出したというのは?

葉月:CGを作るとき、最後は僕が付きっきりでやったんです。指示を出して完成を待っていて「できました!」って言うから見たら、違うCGができているんですよ。「あれ? これ最初は黒い光だったのに白になってませんか?」って言ったら「こっちの方が良いと思って」って(笑)。「…やり直してもらっていいですか」というやり取りが何回かあって、最後は泣いちゃったんです。

――葉月さん、泣かせたんですね?

葉月:いやいや! 僕が泣きたかったです(笑)。あれでMV撮影が嫌いになりましたからね。朝始まって朝終わるって何だよと。朝10時入りの翌朝7時終わりで名古屋直帰でしたからね。いろんな苦労があって、あのカッコいいMVになったんですけど…最初見せられたやつは…(笑)。

玲央:観た後、全員無言だったからね(笑)。ちなみに僕のターニングポイントになった曲は「LAST NITE」です。晁直の話につながるんですけど、完全自主制作に戻って出したアルバム『SHADOWS』(2009年リリース)のツアーファイナルを赤坂BLITZでやったんです。それなりにインディーズ業界で名前が出てきた時期だったので、下手なことはできない、何かの失敗が大きなリスクになる、でもその中でメンバーだけでやっていこうと決意を固めた後の赤坂BLITZだったんです。ソールドアウトさせて、その1曲目の「LAST NITE」を演奏している時に「あー…大変だったなぁ…」ってしみじみ思ったんですよね。でも自分たちだけでできるっていうのを後輩にも見せられたし、自信にもなりました。

――断片を聞いただけでも伝わる、濃厚な10年間ですね。

玲央:笑い話ですけどね。でも、こういう作品を10年単位で出せたらいいと思います。その時にどういった作品にするかは、今後の自分たちの活動の積み重ねで決まると思いますが。

――10年後はどうなっていると思いますか?

葉月:うーん、マジでこれはわからないですね。

玲央:でも、僕らは階段を上るように、地に足を付けて上って来たバンドなので、規格外のものになっているということはない気がします。漠然とした説明ですが、10年後は今関わっている人数の倍以上がバンドに参加していると思いますね。そうすると、おのずとどんな会場でやっているかも見えてくる。そうなっていたいし、そうなるためにこれからどう進めていくか、だと思います。減らすことじゃなくて増やしていくことこそ、現状維持だと思いますから。

(文・後藤るつ子)


ARTIST PROFILE

lynch.

<プロフィール>

メンバーは、葉月(Vo)、玲央(G)、悠介(G)、明徳(B)、晁直(Dr)。激しくもメロディアスな楽曲とストレートなライブパフォーマンスが高い支持を得ている実力派ロックバンド。2011年6月、前作から約2年ぶりとなるアルバム『I BELIEVE IN ME』でメジャーデビュー。2014年12月27日、ワンマンとしては最大収容人数の新木場STUDIO COASTにてlynch.としての初ライブからちょうど10周年を2000人超のファンとともに祝った。2015年3月11日にベストアルバム『10th ANNIVERSARY 2004-2014 THE BEST』をリリースし、同日からこれまでにリリースしたアルバム作品タイトルを冠した公演名のツアーをスタートさせる。5月にはバンドにとって初となる東京、大阪、愛知を回るホールツアー「HALL TOUR’15『THE DECADE OF GREED』」の実施も決定している。

■オフィシャルサイト
lynch.jp

【リリース情報】
『10th ANNIVERSARY 2004-2014 THE BEST』
2015年3月11日発売
(発売元:KING RECORDS)
バンド結成10周年を迎えたlynch.の2枚組ベストアルバム。結成時から今までにリリースされた膨大な楽曲からメンバー自身が選曲した全36曲が収録されている。

『10th ANNIVERSARY 2004-2014 THE BEST』初回完全生産限定盤
初回完全生産限定盤
[2CD+DVD]
KICS-93170~1
¥7,963+税
『10th ANNIVERSARY 2004-2014 THE BEST』通常盤
通常盤
[2CD]
KICS-3170~1
¥3,241+税

【収録曲】
[CD]
<DISK1>
01. ADORE
02. I BELIEVE IN ME
03. liberation chord
04. INVINCIBLE
05. VANISH
06. STARZ
07. melt
08. an illusion
09. forgiven
10. THE TRUTH IS INSIDE
11. THE FATAL HOUR HAS COME
12. DEVIL
13. ALL THIS I’LL GIVE YOU
14. LIGHTNING
15. from the end
16. a grateful shit (LIVE)
17. TIAMAT (LIVE)
18. pulse_ (LIVE)

<DISK2>
01. LAST NITE
02. I’m sick,b’cuz luv u.
03. NIGHT
04. GREED
05. -273.15°C
06. NEW PSYCHO PARALYZE
07. LIE
08. BALLAD
09. AMBIVALENT IDEAL
10. PHOENIX
11. JUDGEMENT
12. INFERIORITY COMPLEX
13. THE BLASTED BACK BONE
14. MIRRORS
15. unknown lost a beauty
16. A GLEAM IN EYE
17. discord number (LIVE)
18. DAZZLE (LIVE)

[DVD]※初回完全生産限定盤のみ
10th HISTORY MOVIE(10年を振り返るスペシャル映像)+The 10th BIRTHDAY LIVE MOVIE(2014.12.27@新木場スタジオコースト)

■LIVE
lynch.「TOUR’15『GAZE ME GATHER ME』」
3月11日(水)京都府 KYOTO MUSE(GREEDY / GALLOWS day)
3月14日(土)香川県 DIME(AVOID / SHADOW day)
3月15日(日)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM(BELIEVE / COMPLEX day)
3月17日(火)福岡県 DRUM Be-1(GREEDY / GALLOWS day)
3月20日(金)兵庫県 神戸VARIT.(AVOID / SHADOW day)
3月28日(土)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠(BELIEVE / COMPLEX day)
3月29日(日)岐阜県 岐阜club-G(GREEDY / GALLOWS day)
4月1日(水)埼玉県 HEAVEN’S ROCK Kumagaya VJ-1(AVOID / SHADOW day)
4月4日(土)新潟県 Live Hall GOLDEN PIGS RED STAGE(BELIEVE / COMPLEX day)
4月5日(日)宮城県 darwin(GREEDY / GALLOWS day)
4月8日(水)北海道 札幌KRAPS HALL(AVOID / SHADOW day)
4月9日(木)北海道 札幌KRAPS HALL(BELIEVE / COMPLEX day)

lynch.「HALL TOUR’15『THE DECADE OF GREED』」
5月3日(日・祝)大阪府 NHK大阪ホール
5月4日(月・祝)愛知県 刈谷市総合文化センター大ホール
5月8日(金)東京都 渋谷公会堂