特集-Special Feature-

◆厳しさ8割・優しさ2割

――個人的に「Arès」がすごく好きなんですけど、“Arès”って殺害と戦いの神の名前ですよね? こんなに美しいメロディーなのに、どうしてこのタイトルなんだろうって気になっていたんです。

キリト:こういうタイプの曲を書くときは、自分で調べられる上での知識を置きつつ、その上でそのキャラクターに自分が憑依するわけなんですよ。そうなった時に、諸説言われていることだけで判断できないじゃないですか。例えば歴史上の誰かがいたとして、歴史的なデータだけでその人を判断するのは他者がすることでしょ? だけど本人にしてみたら、「こういうことをやってしまったんだけど、実はこういう思いがあって。だけど誰にもそれを言う必要はない」みたいな気持ちがあったかもしれないじゃないですか。そういうのが憑依したときに、こんな想いもあったのかもしれないとか、なぜ破壊の神になったのか、なぜそういうことになっていったのかっていうのは、本人の気持ち的には、もしかしたらこういうことを思っているのかもしれないっていうような。だとしたらおもしろいかもっていう。

――なるほど。

キリト:例えば“悪魔”っていう言葉一つとってみてもいろいろな流れがあるじゃないですか。神と対照的な悪の存在ってあるけども、いろいろな説を見ればね、元は同じ神の子どもだったのが“堕天使”という形で拒否されて地上に落とされてしまって戦うようにはなっている。けど、元の気持ち、神に対する愛情は他の人間や他の神と同じようにあるんだけど、ちょっと歪んで「なぜ自分だけが」っていうところから始まってたりすると考えると…ストーリーはいろいろあるでしょ? だから僕が“悪魔”をタイトルにして曲を書けば、もしかしたらものすごくラブストーリーかもしれない。

――この「Arès」の最後の2行はすごく優しい印象ですよね。もしかしたら“Arès”がそう思っていたかもしれないと。

キリト:はい。

――優しいといえば、「Reflect」の〈君だけは守ろうと決めた〉という歌詞がすごく素敵だなと思って。

キリト:はは(笑)。そうですか。

――すごくストレートで優しい言葉ですよね。アルバム全体的にどの曲も、すごく覚悟をもって生きていて、その中で時折優しさや愛情が垣間見えるという印象がとても強かったのですが…これがキリトさんの愛の形でしょうか?

キリト:(笑)。んーどうなんですかね。そういうバランス感は僕の人格も出てるのかもしれないですね。その…厳しさ8割・優しさ2割みたいな。

――厳しさ多めで(笑)。

キリト:自然とそうなっちゃってますから…そういうのも作品には出るんじゃないですか。なんか、厳しさの中に優しさ2割くらいの方が優しさが光りませんか? 周りの男の人でちょっと考えてみて、8割厳しい人が2割優しいとキュンときませんか?

――きます(笑)。

キリト:逆だとさ、8割優しい人が2割ちょっと嫌なとこあったら、なんかイラッとなるでしょ?

――なりますね(笑)。

キリト:それがね、人の浅さだと思うんですけど(笑)。

――(笑)。8割厳しい人の2割の優しさはずるいですよね。

キリト:それね、僕の黄金率なんですよ。作品を作るうえでの。別にどっちが大事っていうことじゃないんですよ。ネガティブな曲だったり緊張感を煽ったり興奮させるような要素だったり、そういうものがロックをやるうえで根源的にあるものではあるんですよ。ピースフルでのん気なものって基本的に僕は嫌いだから。その緊張感や危機感、ネガティブさだったり暴力的な要素だったりっていう中に、なぜそこまで無茶するのかっていう理由になり得る切なさだったり、何を守ろうとしてるのか?っていうことの片鱗が、2割くらいやっぱり出てしまうんですよね。その2割もすごく大事だからちゃんと見てほしいし。だけどそれをなんで2割にするかっていうと、自分の黄金率の割合だと2割が限度なんですよね。聴く人にとってはそこだけ見たいって思うかもしれないけど。例えば、すごく酸っぱい飴玉があって舐めていくと最後の核の部分だけすごく甘かったりする。 そういうときってその甘い部分がすごくおいしいからって甘いだけの10割の飴にしてくれればいいのにって思うかもしれないけど、そうしたら意味がない。コーティングがあってやっとたどり着くそこが甘く感じるっていう、このバランスは崩れないわけなんですよ。僕が作るときは。

――まさにその黄金率にキュンとしました。

キリト:してもらえると(笑)。

◆目で見えているものが全てなのか

――根本的なことに話は戻るんですが、今作のタイトル『RETINA』(網膜)が意味するものとは?

キリト:誰でも外の世界のものを視覚的に見るうえで、網膜を通してものを見て判断する。目の前で何が起こっているのかっていうことだったり、それを見た上で何を感じるのかっていう、網膜を通して見たものをまた網膜に戻して今度は自分の脳でどう感じるかっていうことで。その全てを感じ取るうえでの元ですよね。自分の網膜を通して何を見るかっていう。それが世の中で起こっていることだったり、自分に降りかかっている出来事だったり。

――ジャケット写真の目に映っているものが何なのか気になりました。

キリト:結局人は網膜を通して視覚的なものを見るでしょ? その視覚的なものを見ても100人いれば100通りの見え方があるわけじゃないですか。例えば、複数の男性が一人の女性を見たとして、なんとも思わない人もいれば一目惚れする人もいて、いろんな解釈があるように、戦争一つとっても、ある国から見れば「この戦争は正義の行いだ」と思うだろうし、ある側面から見れば「こんな人間の罪悪」と思う人もいるっていうところでは、視覚的な物事一つにしたって解釈の仕方は違うっていうところで。今回、ショートフィルムを作ったりもしているので、いろいろ一言じゃ言いきれないものがあるんですよ。このジャケ写は、ただ普通に人間の環境だけ映すんじゃなくて、なぜこう網膜を与えられてるのかっていうところにも意味があって。あなたが今視覚的に見て解釈しているであろう物事っていうのは自然現象的に起こった必然な物事なんだろうか。もしくはこういうふうに(ジャケット写真)第三者から与えられた視覚的な出来事で、それで何を感じるかまでもしかしたらコントロールされてるんじゃないのかとか、いろんな疑いがね。目で見えているものが全てなのか、テレビに映っている情報が正しいのか、人から聞いている情報が正しいのか、それは全部定かではない中で、自分で自分を守るために、自分の未来を生きるために、自分はどう判断するのかっていうことなんですよ。だからこれ(ジャケット写真の目に映るもの)は言ってみれば与えられた景色ですよね。自分で見てるわけじゃない。この網膜を通して何が見えるのかっていうことなので。仕掛けみたいなこと。

――この作品の本質をとても表すジャケットデザインなんですね。そして、11月27日の赤坂BLITZを皮切りにツアーが始まり、大晦日は大宮ということですが、どんなツアーになりそうですか?

キリト:新しいアルバムを引っ提げてという形なので、内容もガラッと変わるだろうし、当然一番新しい今のAngeloがバシッと出ると思います。大宮は結果的に地元みたいな形になりましたけど、それはそれで盛り上がるんじゃないかと。お祭り的なカウントダウンになると思います。

――ライブで『RETINA』の楽曲が聴けるのを楽しみにしています。

(文・金多賀歩美)

Angelo

<プロフィール>

PIERROT解散後、キリト、KOHTA 、TAKEOの3 人により結成され、2006年8月に正式デビュー。結成5 年目の節目となった2011 年8 月、Karyu(ex. D’espairsRay)とギル(ex.ヴィドール)のギタリスト2 名を迎え入れ、新生Angeloとして動き出す。同年10月、アルバム『BABEL』を発表し、翌月よりスタートした全国ツアーは各地ソールドアウト。そして2012年、シングル『Calvary』、『RIP/MOMENT』のリリースを経て、11月14日にニューアルバム『RETINA』をリリース。今作を引っ提げ11月27日の赤坂BLITZを皮切りに全国ツアーをスタートさせる。


■オフィシャルサイト
http://angeloweb.jp/


【リリース情報】
『RETINA』
2012年11月14日発売
(発売元:ブロウグロウ 販売元:ソニー・ミュージックディストリビューション)
“網膜”を意味するAngeloのニューアルバム。2012年に発表されたシングル曲「Calvary」、「RIP」を含む全12曲収録。

RETINA 初回限定盤A
初回限定盤A
(CD+DVD)
IKCB-9522~9523
¥4,500(tax in)
RETINA 初回限定盤B
初回限定盤B
(CD+DVD)
IKCB-9524~9525
¥4,500(tax in)
RETINA 通常限定盤
数量限定通常盤
(CD+DVD)
IKCB-9526~9527
¥3,500(tax in)
RETINA 通常盤
通常盤
(CD)
IKCB-9528
¥3,150(tax in)


【収録予定曲】
[CD]※共通
01. PROGRAM
02. Calvary
03. CONVICTION
04. RIP
05. SANDS OF TIME
06. Flashback
07. Arès
08. Script error
09. 事象の地平線
10. Reflect
11. シナプス
12. RETINA

[DVD]
初回限定盤A:LIVE映像(6/30@NHKホール1)
初回限定盤B:LIVE映像(6/30@NHKホール2)
数量限定通常盤:「シナプス」Music Clip