Angelo「NEOPHASE」- 4ヵ月間の記録 –

2020年7月18日~8月2日、Angeloが約5ヵ月ぶりの有観客公演となる東名阪アコースティックライブ&生配信「Angelo Acoustic Live circuit & Streaming「NEOPHASE Ⅲ – The quantum method -」」を開催した。どんな時も立ち止まらず進み続けるAngeloが、このコロナ禍において新たな第一歩を踏み出した日、そこに至るまでの足取りを辿ると共に、本公演の模様をお届けする。この記録を残すことで、2020年現在のAngeloの生き様を知っていただくことはもちろん、今後、バンドの歩みの中でも重要な分岐点になるであろう日々が、あなたの記憶に残ってくれたら幸いだ。


新型コロナウイルス感染拡大の影響により、多くのアーティストがライブ、イベントの延期や中止を余儀なくされ、これまでとは異なる形での活動、表現方法を模索する中、無観客での配信ライブが珍しくなくなった昨今。一口で「配信ライブ」と言っても、演奏形態、演出、会場、収録機材、配信システムなど、その形は様々だが、各アーティストそれぞれの在り方、美学に基づき考え抜かれた結果であり、そこに正解不正解は存在しない。誰もが予想もしなかった困難な状況の中、それぞれがベストを尽くしていることに違いはないのだ。

去る4月8日。それは7都府県に緊急事態宣言が発令された翌日だった。Angeloは5月1日から開催予定だった全国ツアー「Angelo Tour 2020「Mephisto Rebellion」」の全公演中止を発表。一縷の望みを持ち、本来の開催日から数ヵ月後の振替公演を発表するアーティストも多く見られた中で、この潔い決断はAngeloらしくもあった。そして、その1ヵ月後の5月8日、自身初となるリハーサルスタジオからのアコースティックライブ生配信を6月7日に開催することを発表したのだった。

なお、コロナ以前からキリト(Vo)はYouTubeでの配信を積極的に行っていたが、さらに5月は緊急事態宣言が解かれるまでの期間中、連日YouTubeラジオ生配信「深夜で切人」を実施しており、先が見えない不安な日々が続く中、彼の言葉の数々に救われた人も多かっただろう。そこではキリトのリアルタイムの思いや、自身の過去についても赤裸々に語られていたが、4月上旬の配信の中で彼はこんな言葉を口にしていた。

「何のために僕らはバンドをやっているのか。お金儲けがしたくてバンドマンをやっている人なんていない。だけどなぜバンド、音楽、エンターテインメントという人を楽しませる業種を選んだのかということを、こういう時こそ原点に立ち返って考えるようにしているんです。大変な時こそ、自分のことよりも、皆に楽しい思いをしてもらえるように、勇気や希望を持ってもらえるような何かを作らなきゃというのが、エンターテインメント側にいる僕の使命だと思っている。」

「どんな状況でも乗り越えて、自分が生きてさえいれば、また音楽を作って皆さんに届けることができる。そう思えば、やっぱり生きなきゃいけないと思っています。そして、僕のバンドの曲を待っていてくれる人たちにも、やっぱり生きてほしいと思うんです。僕も絶対に生き延びるから、皆にも絶対に生きていてほしい。そしてまた会いに来てほしいと思います。生きてさえいれば、また必ず会えますから。」

5月22日、先述のツアーに引き続き6~7月に開催予定だったホールツアーの全公演中止が発表されたが、翌5月23日にはキリト一人による弾き語り生配信が行われた。これに関してはプライベートスタジオからの完全DIYな配信だったわけだが、「ホールツアーの中止のこともあって、歌わなければいけないという使命感みたいなものが」「ファンの方だけじゃなく、メンバーやスタッフに向けても何かを伝えようとしているという意味合いもあって」と、後日キリトはその胸中を語ったのだった。

「深夜で切人」が最終回を迎えたのは5月26日深夜。キリトは早い段階で、この状況下では別の世界線を作らなければいけないと考え、「NEOPHASE」というタイトルで配信ライブをやると決めていたことを明かしたのだが、ここで驚きの展開が待っていた。量子力学に基づき、自ら並行世界を作った世界線が「NEOPHASE」であり、様々なチャレンジをしてきたキリトは、ライブにおいても新しい形を作り上げなければいけないと考え、23回に渡って配信し続けた「深夜で切人」も一つのライブだと思ってやってきたというのだ。連日、ラジオ配信の中ではキリトの曲解説と共にAngeloの楽曲が流されていたわけだが、つまりその全23曲で1本のライブだったという結末だ。

そして6月7日、初の配信ライブ「Angelo -Acoustic Live Streaming「NEOPHASE」-」を行ったAngelo。5人が円になって向き合う配置も新鮮ながら、普段のライブでは観ることが叶わない高画質な至近距離でのメンバーの姿、アコースティックの細かなニュアンスまで聴き取れる音質という、高クオリティー配信ならではの良さ、だからこそ際立つバンドの表現力をも感じることができた。全12曲が披露され、この日の模様がLIVE DVDとして受注生産限定リリースされること(※受注期間終了)、第2弾配信ライブが7月5日にバンドスタイルで開催されることが発表になった。

この日キリトは、「これから先待っている未来があまりに未知な未来で、あまりに何の保証もない未来で、誰かがお手本を見せてくれるような状況じゃない中、真っ白な場所に自分で道を世界を描いていく…これは人によっては難しいことだと思うかもしれませんが、僕は昔からそういう作業が好きなほうで、誰も保証してくれないからこそ、誰もやったことがないからこそ、自分が先頭に立って道を切り開くことの楽しさをわかっていますから」と、何とも彼らしく頼もしい言葉を残したのだった。

第1弾とは趣向を変え、7月5日の配信ライブ「Angelo Studio Live Streaming「NEOPHASE Ⅱ – The switched world -」」は、バンドスタイルでレコーディングスタジオからの生配信だったわけだが、その理由はライブ中に発表された通り、当日のライブ音源が7月31日にデジタルリリースされた。この日、メンバー全員による本番直前生配信でKaryu(G)が口にした「リハをやって、バンドで音を出す楽しさを思い出した」という言葉は印象的だった。また、キリトからは「普段のライブを無観客でやるという形ではないので、レコーディングのような緊迫感があると思います。だから、「お前ら、行くぞ!」とか煽ることはないです」という予告も。

緊張感と気迫が混ぜ合わさった独特な空気感の中、予告通りキリトが煽ることはなかったものの「皆さんがモニター越しに各々狂ってくれると信じているので、存分に狂ってください」と静かに言葉を投げかける場面もありながら、終始圧巻の熱量で全18曲が披露された。なお、この日はTAKEO(Dr)背後からのカメラアングルがあったことが配信ならではで、ファンにはたまらないものだったのではと推測する。

緊急事態宣言の解除以降、イベント開催の規制は段階的に緩和されてはいるものの、当然これまで通りというわけにはいかない中、多くのアーティスト及びスタッフは試行錯誤の日々が続いている。そんな状況下で、Angeloはいち早く有観客でのライブ再開に踏み切った。東名阪アコースティックライブ&生配信「Angelo Acoustic Live circuit & Streaming「NEOPHASE Ⅲ – The quantum method -」」の開催は6月23日に発表されたが、観客を各会場収容人数の50%以下に制限し、間隔を空けた配席とした上で、公演中は着席、雑談や声援を禁止。また、入場時の検温、消毒はもちろん、着用必須のオリジナル布マスク&コットン手袋を配布するなど、感染予防対策を徹底し行われることとなった。

こうして遂に迎えた7月18日、EX THEATER ROPPONGI。Angeloとしては2月24日以来の有観客ライブであり、過去2回の配信ライブから続く「NEOPHASE」を冠したライブの第3弾。この日の本番直前生配信では、ギル(G)が気合いが入り過ぎて1時間早く会場に到着してしまったことを打ち明ける場面も。そして、KOHTA(B)は「(ファンと)一緒の空間にいられること自体が楽しいと思う」、TAKEOは「僕らにとってもいつもとは全く違う景色なので、その不思議な空気も含めて味わいたい」と本番への思いを語り、メンバーは口を揃えて「未知を楽しむ」と話していたのだった。

歓声だけでなく拍手も不要と伝えられていたこともあり、完全なる静寂の中、メンバーが順に登場するという“違和感”から「ACTIVATE RESONATE」で幕を開けたこの日のステージ。キリトは最初のMCで「やっと会えたね…」と呟いた。「この日をどれだけ待っていたんだろうと思いながら歌っています。この一歩を踏み出すことが本当に正しいのかわからないまま踏み出して、何かあった時には責任を負わなければいけない。でも、遠い未来を考えれば、踏み出さなければといけないと思いました。不思議な空間ですが、この違和感を楽しんでください」と告げ、「これから先のきっと明るい未来を祈って」と、「PRAY」へ。

その後もこの特殊な静寂に包まれながら全15曲が披露され、アコースティックver.にアレンジされた楽曲たちは、通常の形とはまた別の魅力を放ちながら、確かな熱量をもって、より真っ直ぐに私たちの心に響いたのだった。これまで当たり前にあったライブというエンターテインメントの醍醐味…「同じ空間を共有することが、こんなに尊い時間だったんだなと噛み締めています」というキリトの言葉が全てを物語っていた。また、約5ヵ月ぶりの再会となったファンに対し、音楽だけでなく直接的な言葉でもその思いを伝える場面があった。ライブ終盤、「Crave to you」を披露する直前のキリトの言葉を記したい。

「20代からバンドをやって来て、何度かヤバイなという状況もありましたが、ファンの皆さんに支えてもらって、背中を押してもらってやって来られました。嘘!?と思うようなことは突然やって来ます。それでも僕らはまだ生かされている。僕は今も歌っている。そこには何か意味が、役割があるんだと思います。ファンの皆さんからもらってばかりではいけないので、君たちを何があっても守りたいと思うんです。僕にできることと言ったら、この場所で歌を歌うことです。命続く限り、必ずこの場所に戻って来ます。いつでも会いに来てください。僕らは音楽を奏で続けます。僕は歌い続けます。これからもよろしく」

そして、「これから先も辛く冷たい世界かもしれません。それでも、俺たちは生きていけるよね? 一緒に乗り越えようとしてくれている人たちがいるから、俺たちも乗り越えられると断言できます。これから先も一緒に乗り越えていきましょう。厳しい世界だけど素晴らしい世界です」と、ラストナンバー「CRUELWORLD」をもって終演を迎えたのだった。世界は残酷だが諦めない人間に対しては手を差し伸べるというAngeloらしいメッセージが綴られたこの楽曲は、収録アルバム『RESONANCE』(2018年11月)のリリース以降、ほぼ全てのステージで演奏されてきた。この楽曲が聴く者の胸を打つのは、私たちが生きるこの世界のリアルだから。

キリト
Karyu
ギル
KOHTA
TAKEO
previous arrow
next arrow
 
キリト
Karyu
ギル
KOHTA
TAKEO
previous arrow
next arrow

最終日となった8月2日、名古屋 DIAMOND HALL公演では、今回の東名阪公演を収めたLIVE DVD&Blu-rayの受注生産限定リリース、恒例の“天使の日”10月4日には、大宮ソニックシティ 大ホールにてAngelo 14th Anniversary「THE GROUND OF REUNION」を開催(※入場者定員約1,200名)、さらに11月11日には待望のニューアルバムをリリースすることが一挙に発表された。「この大変な状況の中で、新しい作品を出すことを躊躇しているアーティストもいると思いますが、やっぱりAngeloは迷わず今年も新しいアルバムを、新しい世界を作って、皆さんに聴いていただくというやり方を止めないと決断しました」と、Angeloは次なるフェーズへ歩み出すことを宣言したのだった。

かくして、東名阪公演は終幕を迎えたわけだが、「NEOPHASE」第1弾と第3弾では、同じアコースティックであってもバンドから放たれる熱量(量というよりは種類と言うべきかもしれない)は、どこか違ったように思う。7月26日、大阪 umeda TRAD公演の本番直前生配信の中で、ギルが東京公演で実感したこととして「人前で演奏できることがすごく嬉しくて、皆に見てもらえていると普段の自分以上に良い演奏ができる瞬間があった」と話した通り、無観客か有観客か、それはアーティストの心に大きな影響を与えるのだろう。もちろん会場に足を運んだ人々も、生で体感すること、空間・時間を共有することの尊さを再認識したことと思う。一日も早く平穏な日常が戻り、何の不安もなくライブを開催できる日が来ることを願って止まない。

また、この一連の流れを通して改めて感じたのは、Angeloには今現在のこの世界にリンクする楽曲たちが、数多く存在するということだ。それはどんな時代背景であろうと、大切なものが変わることはなく、彼らが表現するものに一切のブレがないことの証でもある。絶望の闇を描きながら希望の光を見せてくれるのがAngeloというバンドだ。そして、何があろうと前に進んでいくことを、その音楽と生き様で示していく。これまでも今もこれからも、多くの人々がそんな彼らと彼らの音楽に救われているのだろうと思う。最終日のラスト、キリトは「「NEOPHASE」の流れ、これから大きい意味を持つと思います。振り返った時に、皆で一緒に戦ったこと、大切な第一歩なんだと思える時間だったと思います。最大限の感謝を込めて、そして次に進んでいくための決意表明として、この曲で「NEOPHASE」を終わりにしたいと思います」と告げていた。白紙の明日、何一つ保証のない明日であっても、「A new story」にあるように、〈逆風が吹き荒れる 先の見えない道 奇跡はその向こうにあるから また創り上げよう〉。

(文・金多賀歩美)

【セットリスト】

●2020.06.07
Angelo -Acoustic Live Streaming 「NEOPHASE」-
01. ACTIVATE RESONATE
02. 光の記憶
03. 薄紅の欠片
04. Speak to deep colors
05. ホログラム
06. Umbilical cord
07. 止まない雪
08. Voice of the cradle
09. 螺旋
10. CRUELWORLD
11. SEE YOU AGAIN
12. A new story

●2020.07.05
Angelo Studio Live Streaming「NEOPHASE Ⅱ – The switched world -」
01. A MONOLOGUE BY MEPHISTO
02. ファウスト
03. HYBRID CENTURY
04. NEW CENTURY BIRTH VOICE
05. The Crime to Cradle
06. ORIGIN OF SPECIES「ALPHA」
07. 際限ない渇き
08. 事象の地平線
09. 荊棘の棘
10. DEEP VISION
11. CRUELWORLD
12. THE CROCK OF ULTIMATE
13. DAY OF THE END
14. OUTBREAK
15. Collapse parade
16. 報いの虹
17. シナプス
18. Daybreakers

●2020.07.18
Angelo Acoustic Live circuit & Streaming「NEOPHASE Ⅲ – The quantum method -」@EX THEATER ROPPONGI -NEWSTYLE TESTCASE-
01. ACTIVATE RESONATE
02. 薄紅の欠片
03. Speak to deep colors
04. PRAY
05. EVE
06. ロザリオ
07. 事象の地平線
08. 光の記憶
09. 螺旋
10. Voice of the cradle
11. Sorrow tomorrow
12. A new story
13. Crave to you
14. SEE YOU AGAIN
15. CRUELWORLD

●2020.07.26
Angelo Acoustic Live circuit & Streaming「NEOPHASE Ⅲ – The quantum method -」@大阪 umeda TRAD
01. Beginning
02. 螺旋
03. 光の記憶
04. Speak to deep colors
05. EVE
06. Sorrow tomorrow
07. 止まない雪
08. ホログラム
09. Voice of the cradle
10. 事象の地平線
11. PRAY
12. A new story
13. Crave to you
14. CRUELWORLD
15. SEE YOU AGAIN

●2020.08.02
Angelo Acoustic Live circuit & Streaming「NEOPHASE Ⅲ – The quantum method -」@名古屋 DIAMOND HALL
01. 光の記憶
02. 螺旋
03. ACTIVATE RESONATE
04. Speak to deep colors
05. Sorrow tomorrow
06. PRAY
07. 胎動
08. 止まない雪
09. Voice of the cradle
10. 事象の地平線
11. ホログラム
12. SEE YOU AGAIN
13. Crave to you
14. CRUELWORLD
15. A new story


【リリース情報】
●New Album『タイトル未定』
2020年11月11日(水)発売
10 Songs Include
※詳細は後日発表

●LIVE DVD&Blu-ray『Angelo Acoustic Live circuit & Streaming「NEOPHASE Ⅲ – The quantum method -」』
受注生産限定盤(WEB限定)
※受注生産限定盤のみとなりCDショップ等でのお取り扱いはございませんのでご注意下さい。

受注期間:~10月3日(土)23:59
詳細・お申込はこちら:https://www.ffb.tokyo/angelo
※お届けは10月28日(水)頃を予定しております。

[Blu-ray]ANXB-00011 ¥11,600+税(※別途配送料)
特殊パッケージ、16Pブックレット
[DVD]ANXB-00012〜14 ¥9,800+税(※別途配送料)

<収録内容>
2020年7月18日(土)EX THEATER ROPPONGI公演
2020年7月26日(日)大阪 umeda TRAD公演
2020年8月2日(日)名古屋 DIAMOND HALL公演

【ライブ情報】
●Angelo 14th Anniversary「THE GROUND OF REUNION」
10月4日(日)大宮ソニックシティ 大ホール
17:00開場/18:00開演

<チケット>
全席指定(入場者定員約1,200名)
料金:¥13,200(税込)
ファンクラブ先行料金:¥12,650(税込)※同行者は非会員可
来場特典:メンバー直筆サイン入りポストカード(5枚セット)会場配布
制限枚数:お一人様1公演につき2枚まで
※3歳以上有料/別途手数料あり
詳細はこちら:https://interplaymembers.jp/blog/category/staff/
ディスクガレージ 050-5533-0888

<ライブ配信チケット>
料金:¥3,800(税込)+ZAIKO手数料
ZAIKO販売ページ:https://angelo.zaiko.io/e/14thAnniversary

【音源配信情報】
●Angelo Studio Live Streaming「NEOPHASE Ⅱ – The switched world -」
7月31日(金)よりライブ音源ダウンロード・サブスクリプション配信
https://linkco.re/QDS41Eee

Angelo オフィシャルサイト
http://angeloweb.jp