2019.9.11
Kra@TSUTAYA O-EAST
「Kra 18th anniversary LIVE【続・花の青春18切符】」

今年もこの季節がやってきた。遡ること18年前となる2001年9月11日にKraはライブ活動をスタートした。あれからちょうど18年後となる2019年9月11日(水)に、KraはTSUTAYA O-EASTの舞台に立っていた。「Kra 18th anniversary LIVE【続・花の青春18切符】」と題したこの日は、Kraの活動18年間の締めくくりであり、19年目へ進むための新たな一歩を踏み出すためのライブ。
18年間、彼らは素敵な夢を描き続けてきた。同時に、様々な苦難も重ねてきた。とくに今年は、メンバーが2人になるというこれまでにない大きな変化を経験。この日は、サポートメンバーに舞(G)・中村禎(G)・優一(Dr)を迎えての編成。
先に伝えておくと、今回のライブは活動初期から2008年頃までの楽曲を中心に構成。この日のサポートメンバーの舞が、Kraを卒業する前の時期に演奏していた曲たちだ。しかもライブのタイトルが、2008年に行った【花の青春18切符】ツアーの続編となる【続・花の青春18切符】。11年ぶりの続編という理由は後に記すが、11月から同タイトルのツアーも始まるように次の旅へと繋がる始発のライブでもあれば、Kraの今後を示唆する意味でもとても興味深い内容だった。まさに周年公演らしい特別感を持った、しかもこの日は2時間半だけ時空を歪ませ過去へとタイムトラベル。心を青春時代にトリップし続けたライブの模様を、ここへ記したい。

「さぁ腕を上げろ、そこから這い上がってみせな」、力強い景夕の声に合わせ飛び出したのが3rdアルバム『サーカス少年』に収録した「「_」(テイヘン)」だ。 時空を旅する列車が最初に停車したのが、2003年。勢い満載でライブへ挑むメンバーたち。その気迫に負けまいどころか、声を荒らげ、頭を振り乱し景夕の煽りへ挑みかかる観客たち。旅の幕開けは、とても荒々しい、互いに躍動とエナジーを放熱しあう熱狂の様から始まった。「揺らせ揺らせ揺らせこの世界を」と煽る景夕。冒頭から、会場にはクライマックスにも似た熱狂の風景が早くも描きだされていた。
唸りを上げる舞のギターが呼び寄せたのが、「MH」だ。荒ぶるロックな音に胸を熱く掻き立てられ、騒ぐ観客たち。景夕はモニターに足を乗せ、観客たちへ挑むように歌声をぶつけてゆく。むしろ騒ぐ声を貪りながら、それを己のパワーに変え次々と吐きだしていた。
熱い手拍子と軽快かつ和風なダンスビートに乗せ届けたのが、「春色の花」。軽やかにステップを踏みながら歌い奏でる景夕や結良。フロア中の人たちも、胸弾むビートに合わせ無邪気に飛び跳ねる。何時しか会場中がダンスフロアに変貌。熱気を膨らませながら、曲ごとに様々な”熱狂”や”夢中”をKraは届けてゆく。まるで、あの頃のように限界を忘れて楽しもうよと誘うように。

「18歳になりました。そろそろ中二病も抜けてくる頃ですけど」のMCに、変わらぬ景夕らしさを実感。MCでは「俺たちがどんなに腹黒かろうと君たちから見たらピュア」など、とりとめもない話をつらつらとしてゆくところもKraらしさ。そこは18年経っても変わらぬ姿勢だ。

ザクザクとしたリズムを刻みながら演奏が走り出す。馳せるビートの上で景夕は朗々と、甘くとろけるように「キャンディ」を歌唱。次第に演奏もねっとり妖しく絡みだす。べとつくような甘い誘いに何時しか心が絡め捕られ、彼らの演奏へ引きつけられていた。メロウにソウルフルに、さりげなくファンキーなグルーヴを描き出す。Kraは、その場に映画の一場面を映し出すように「街の灯」を披露。とてもお洒落でスタイリッシュな楽曲だ。ブルーを基調とした照明が作り出す蒼い世界の中、彼らは歌声や演奏を介し心惑わす不思議な物語を投影。ときに身体を揺らし震わせる景夕の姿や歌声に、淡い浪漫を覚えずにいれなかった。
流れたのが、どっぷりと憂いへ浸るように幕を開けた「会えない理由」だ。演奏が進むごと、より深くむせび泣く心模様をKraは塗り重ねてゆく。痛い想いを嘆くように歌う景夕の姿へ惹かれながらも、ディープでムートを抱いた演奏にも心を浸していたかった。終盤に描き出した、抑えられない感情を零すように歌い演奏する様。その姿も愛おしかった。時を旅する列車は2008年から2003年へ。揺れ動く想いのままに「名残草々」嘆き唱える景夕、その気持ちを熱く掻き立てる演奏陣。メロウな表情を描きながらも、ただ落ちるだけではなく、憂いやたおやかさなど高揚のドラマもKraは歌の中へ映し出していった。

「結成当初はメルヘンポップだけではなくファッションショー的な要素を取り入れようと「ファッションメルヘンポップ」というコンセプトを掲げて始めようとした」という話を景夕が語れば、その発言に対し、結良が「当時まだやることが早かったんじゃない」とも2人はMCで語り合う。「今でこそ尻尾や耳を付けるのも当たり前だけど、我々はやることが早かった」など、2人は自分たちの歩んできた道のりを懐かしそうに話していた。

「お前らの心の炎を見せてくれ」と叫ぶ舞の煽りから、ライブは後半戦へ。結良の唸るベースを合図にKraがぶち噛ましたのが「烈火」だ。優一のタイトなビートが身体へ突き刺されば、中村禎と舞のギターが荒ぶる音を響かせる。一触即発な空気の上で、景夕が破裂寸前の気持ちをぶつけだす。互いに燃え滾りたい。もっともっと高めあいたい。会場中を包みこむ心地好い緊張感と、破裂寸前にまで熱した気持ちが胸を熱く沸き立てる。終盤に生まれた、拳振り上げる一体化した風景。そこへ舞のギターが刺すように音を突きつけた。ワイルドでスリリングな空気を作りながら、演奏は「フュージョン」へ。2002年にタイムトラベルしたメンバーたちは尖った演奏を突きつけ、フロアへ熱を膨らませる。タイトなビートとスラップベースの音に合わせくるくる舞い踊る景夕と舞。さぁさぁ、もっと気持ちをアゲていこうか。
歌始まりの「無拓と無択と」の登場だ。走る演奏の上で景夕は甘い声を魅力に観客たちの心を歌で引きつける。くるくると手をまわす景夕の動きに合わせ、フロア中の人たちがくるくると手をまわし壮観な景色を描き出す。熱と力と躍動を注ぐ演奏や感情的な景夕の歌声に触発され、誰もが我を忘れ騒ぎだす。会場中の人たちが気持ちを一つにしたこの風景がたまらない。終盤に生まれた歌のやりとり。互いを求めあうことで熱を膨らます、この景色が最高だ!!
勢いをさらに激しく加速するように、Kraは「ヱン」を突きつけた。景夕やメンバーらの攻める演奏に触発され、フロア中からも絶叫が飛び交う。誰もが気持ちを荒らげる演奏へ飛び乗り、心の声を叫びに変え一緒に熱を高めあっていた。気持ちがどんどん上がり続ける。今にも客席へ挑みかからん勢いで歌う景夕の姿も、とても凛々しく見えていた。

「踊りましょう」、景夕の言葉に続いて飛び出したのが「ParAdE」だ。熱を抱いて疾走する演奏の上で、景夕は観客たちへ甘く誘いの声をかけてきた。フロアでは手バンしてゆく風景が数多く生まれていた。曲が進むごとに感情のボルテージも上げ続ける景夕。激しく唸る演奏の上で、景夕は身体をシェイクしながらフロアの熱をどんどん沸騰させてゆく。気持ちを一気に爆発させてしまえと煽るように、Kraは「ロック~兵定法~」を叩きつけた。メルヘンとは対極にあるとても荒々しい煽り系の楽曲だ。攻めるメンバーらの姿に触発され、フロアでも観客たちが上へ飛び跳ねれば、身体を前へとぶつけだす。互いに感情を剥き出しに暴れ続けろ。それが、ここに似合う姿だと言わんばかりの姿勢で、Kraは挑んでいた。
演奏は止まることなく「明日屋」へ。景夕の煽りに触発されフロア中から沸きだす熱した絶叫。誰もが手バンや折り畳みをしながら、メンバーたちの沸騰した演奏へ感情をぶつけだす。景夕と観客たちとの「ハロー」のやりとり。互いに剥きだした声で気持ちと気持ちをぶつけあう。そこに生まれるのは、裸になった想いをぶつけあう光景だ。「ハロー」と叫びあうたびに理性が溶けてゆく。景夕と一緒に「ハロー」と声を上げ続けたい。誰もが自分を開放してゆく中、何時しかフロア中が大きく身体を折り畳む様に塗り上げられていた。

もっと壊れろと煽るよう、本編最後にKraは「ショータイム」を突きつけた。景夕が、観客たちが大きく指を突き出し、共に触れあう喜びを覚えていた。結良が、舞がフロントに踊り出て観客たちを煽り出す。景夕が唸る声を上げ、観客たちを騒ぎ狂う宴の中へ巻き込み続けてゆく。止まらない煽りのバトル、いや、止めたくないからこそ何度も煽りを繰り返し、汗まみれの身体へさらに吹き出る汗を重ねていた。限界まで気力を振り絞り、頭を空っぽに気迫のみで想いを交わす。最後に残るのは興奮と快感なのをわかっているからこそ、Kraも観客たちも、互いに気持ちを裸に想いをぶつけあっていた。

「本日のセットリストは「花の青春18切符」のときと同じです。演奏しながら、こういう時代だったなと想いだしました。秋のツアーもこのセットリストを主軸にするわけではないですが、こういう雰囲気にしていこうと思っています」と、語った景夕。種明かしをするなら、この日のセットリストは「花の青春18切符」と題したライブツアーのときに演奏していた楽曲たちを軸に再構築した内容。セットリストは同じでも、それを今の自分たちの気持ちで届けたときにどんなケミストリーが心に生まれるのか、それをKraはこの場を通して試していた。

「ずっと君らの声を聞かせ続けてください」。アンコールは景夕の言葉を代弁するように「君の声」からスタート。とても優しく温かな想いを投げかける歌だ。心地好く身体を揺らす演奏の上で、景夕は「君とずっと手をつないでたいんだ」と歌いかけてきた。真心抱いたその声を、フロア中の人たちが熱い視線を舞台に送りながら胸に抱え込むように受け止めていた。「ジャンプしていこうかー!!」、跳ねたビートも心地好い「例え」に合わせ、会場中の人たちが飛び跳ねだす。メンバーらの甘い誘いへ呼ばれるままに、誰もが笑顔で跳ねる。景夕の「せーの」の声に合わせひと際大きくジャンプするときについ声を上げたくなる楽しさは、あの場にいてこそ覚えられること。

最後にKraが披露したのがメルヘンポップな世界観を投影した、ポップでチャーミングな「アシッドメルヘン」だ。景夕の振るタクトの動きに合わせ身体を揺らせば、手を振る観客たち。明るく開放的で甘い世界へ笑顔で飛び込みマシュマロのようなポップワールドを共に味わいたい。景夕のタクトの動きに導かれ、誰もが無邪気な童心に戻り笑顔で跳ね続けてゆく。景夕の振る指揮棒は、まるでハーメルンの笛のようにも思えていた。

やまない声を受け、メンバーはふたたび舞台へ。「進んでいくのが当たり前とはいえ、進んでいくのはとても難しいこと。これからもKraと一緒に歩いてくれればと思います」。景夕の声を受け、最後にKraは「ブリキの旗」を届けてくれた。
たとえそれがどの時期だろうと、Kraがそこにいる限り、僕らは彼らが掲げたブリキの旗の元へと集い、彼らの演奏に合わせこう歌い続けるだろう、「君と小さな花になろう 二人で揺れていよう 思いを告げ、告げられて そんな二人でいよう」と。この日も、会場中のみんなが景夕と一緒に歌えば、終盤には、想いを告げる観客たちの大合唱がそこには咲いていた。「届け!届け!君の所へ!この想いよ、もしも君に届いたなら…返して」と歌う景夕。その想いを受け、会場中の人たちが「君と小さな花になろう 二人で揺れていよう」と歌を返してゆく。Kraのライブを味わうたびに心が嬉しく震えるこの風景。これからも彼らと一緒にいたいからこそ、この歌を、また次の会場でも共に歌いあおうか。

11月より「続・花の青春18切符」ツアーがスタートする。この日の景色がどんな風に塗り重ねられるのか、それを楽しみにしていようか。

◆セットリスト◆
01.「_」
02. MH
03. 春色の花
04. キャンディ
05. 街の灯
06. 会えない理由
07. 名残草々
08. 烈火
09. フュージョン
10.無拓と無択と
11.ヱン
12.ParAdE
13.ロック~兵定法~
14.明日屋
15.ショータイム
En
01. 君の声
02. 例え
03. アシッドメルヘン
En2
01. ブリキの旗

(文・長澤智典/写真・NORI)


【ライブ情報】
●Kra WINTER LIVE 2019【 続・花の青春18切符 】
11月1日(金) 高田馬場AREA [開場/開演] 18:00/18:30
11月8日(金) 心斎橋VARON [開場/開演] 18:00/18:30
11月9日(土) 心斎橋VARON [開場/開演] 16:00/16:30
11月17日(日) 町田The Play House [開場/開演] 16:00/16:30
11月24日(日) 静岡Sunash [開場/開演] 16:00/16:30
11月28日(木) 青山RizM [開場/開演] 18:00/18:30
12月2日(月) HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3 [開場/開演] 18:00/18:30
12月8日(日) 新横浜NEW SIDE BEACH!! [開場/開演] 16:00/16:30
[全出演]
Kra(サポート:G.舞・G.内藤“SIN”眞太郎・Dr.生虫)
[料金] 前売 各¥5,400(税込、D代別)
一般発売:10月12日(土)

●Kra WINTER LIVE 2020【 続・花の青春18切符 】FINAL
1月22日(水)Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
1月23日(木)Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
※公演詳細後日

●Kra 主催 イベント『エキストラキングダムvol.3』
10月01日(火) 赤羽ReNY alpha [開場/開演] 18:30/19:00
[出演]
Kra(サポート:G.舞・G.内藤“SIN”眞太郎・Dr.生虫)、DaizyStripper
[料金] 前売 4,500(税込、D代別)

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