◆一番すごいものをやりたい
――清春さんの中でのsadsの存在意義が変化してきたのかなと感じていて。2012年のインタビューで3つの活動のイメージを伺った時は、ソロは「音楽。サウンド志向」、黒夢は「友情」、そしてsadsは「スポーツに近い。アスリート的」と(笑)。
清春:ははは(笑)。それはあるよ。どっちかと言うとトレーニング(笑)。
――それもあるとして(笑)、ソロとはまた別の形で、より究極を突き詰めようとしているのを、ひしひしと感じます。
清春:今更やるんだったら本気で凄い演奏、曲、パフォーマンスだっていうバンドしかやりたくないんです。ライターさんがカタルシス、バイオレンスとか書いて、色々なバンドがそういう言葉を売りにするじゃない? そうやって簡単に書くけど「うわっ、本気ですげー!」って思うバンドって実はそんなにいないんですよ。大したことないけど、ライターさんもとりあえず書かなきゃいけないから書く。うちらは「こんな言葉じゃ足りない! なんとかして伝えたい!」って思われるようなバンドでありたいし、そういう音こそを実際に出していたいと思うわけです。
――言葉以上の音を。
清春:しかも、本来は黒夢もsadsもやる必要はないんです。最初は理由あって復活したんですけど、その余波で今やっているわけじゃなくて、K-A-Zくんすげーな、GOくんすげーなというところで、クボタ(B)にはまだまだ頑張ってほしいなと。会話レベルでも本気なんですよ。「K-A-ZくんとGOくんがたまに一瞬乱れる時、お前ベースなんとかできないの?」っていうシビアな話も4人でする。それが本当の姿だと思ってもいて。バンド幻想ってやっぱりあって、そこにハマっちゃうとバンドってアホみたいにファンに甘えちゃうので、それを超えなきゃ絶対いけないんですよ。もしK-A-Zくんのギターが大したことなければただデカイ人で、GOくんが上手くなければただドラムがうるさいだけの人になるわけなので、そしたら僕は一緒にやりたくないわけです。だけど彼らとなぜ一緒にやっているかという理由が明確にある。でも残念ながら、クボタはそこでまだぶつかり合えてない時がある。二人は僕とぶつかり合って、共鳴し合っている部分があっても。お前、今日付いて来てない時がたくさんあったよな?っていうことも言えているから、まだクボタがいるんです。
――なるほど。
清春:海外にも行ってみたいし。ジャパン文化が通用するような場所じゃなくて、まともに海外のバンドと同じ条件でやった時に「こっちのほうが音すげーじゃん」っていう風に普通になりたい。演奏のぶつかり合い、一緒に上がっていく感じはソロにはないものなので、前よりは本気になっているんですよね。ただ、それを邪魔する声がたまにあったり。
――というと?
清春:sadsって言うと未だに「TOKYO」(1999年7月発売1stシングル)や「忘却の空」(2000年4月発売4thシングル)のイメージがあるじゃないですか。今のsadsを見てないやつはsadsの名前を簡単に出すなって思うんですよね。sadsとして古い写真や映像が出されたりすると、余計なことするなよって思うくらい、今のsadsにこだわってるんです。もう全然違うわけじゃん、バンド名だけが残っている状態、あとは僕が同一人物だということくらい。ソロを経てヴォーカルのスタイルも変わりましたし。本当に一度観に来てみてほしいです。バンド名変えちゃおうかな(笑)。
――あとはクボタさんの頑張りですか。
清春:毎日のテーマなの。奮起を待っているんですけどね。僕は人時や沖山優司さん、有能なベーシストとやってますから、可哀想だけどどうしても比べられるよね。レコーディングのエンジニア、ライブのPAもそうだし、ローディー、あとは音楽に鋭いファンや関係者だったり。可哀想だけど今は全然届かないと思うんです。黒夢とsadsは違うからと言われても僕らはそういうヴィジョンでやってない。一番すごいものをやりたい。「やばい」って本当に思えるのしかやりたくないの。
――クボタさんにもそうあってほしいと。
清春:昔の僕だったら武道館での再始動ライブの後、1ツアーをやってこれならメンバーチェンジしてるはずです。けど、その後4年も一緒にやってる。僕自身がsadsをやる気なくすようなトラップをいっぱい仕掛けてくれて(笑)、正直もうsadsはいいかなと思った時期もあったんですね、「EXTREME MADMAN」ツアー(2011年9月10日~10月28日)の時かな、毎晩演奏の反省会で楽しくもなんともなくて。結局良いライブをする時って簡単に言うと俺が良い時で、それってバンドをやってる意味もないなと思ったりもして。
――そんな時期があったんですね。
清春:やるなら凄い人材とやりたいっていうのは、僕らの年齢的に思わなきゃいけないし、ファンの人もそれを見たいと願っていてほしいですから。カッコいいところも、お茶目なところも見たい、けど本来は凄い人達と凄いライブをしている清春さんを観に来る、それが6000円7000円払っている私たちの価値の一つだと思っていてくれるはずなので、やっぱり凄くない人がいちゃいけないんだと普通に思います。僕は一緒にやる人が凄くなっていけば僕のテンションも上がっていくと思ってる。ファンの子たちを連れて、決して今までの姿を裏切らずに、圧倒的な景色を見たいっていうだけなんですけど。
――5年も一緒にやっているのが不思議ですね。
清春:僕もよく待てていると思います。でさ、ファンの人にこそ甘やかしてほしくない。例えクボタくんのファンであってもさ。お金を払ってくれてるんだから、演奏に対してもっとシビアな感想を持っていいと思うの。カスい演奏をした時に「清春、一緒にやってる意味ないじゃん」って。K-A-ZくんとGOくんはそこを軽くクリアしているけど、クボタに関しては今はただ単に人生的に僕が引き上げてるだけっていうさ。これまでの経験上それじゃ絶対よくないんだよね。K-A-Zくんとか別のヴォーカリストともやっているけど、はっきり言うと僕とやることで一番才能輝けるわけで、それをK-A-Zくんもわかってくれてるんだと思う。もちろんGOくんもそう。それは、お互いにお互いのないところを補い合っているんだと思うんだよね。
――3人は信頼し合っていて、リスペクトし合っているのをいつも感じます。
清春:K-A-ZくんとGOくんは演奏や存在感で僕を押し出してくれるし、結果的に僕をカッコよく見せてくれてると思うけど、彼らも僕と一緒にやっている時が一番輝いているんだと思う。でも、クボタは違うんだよね。なんで俺がお前にボランティアでお小遣いあげなきゃいけないんだよ、みたいな(笑)。
――この記事、どこまで書いたらいいか悩みます(笑)。
清春:いや、全然書いてください。これは壮大な愛なんです。ただ、愛というのはいつか切れる。タイミングを考えてもっと早く上手くなってくれって思うんですよ。今のサウンドって、K-A-Zくんがギターでありベースでグルーブをカバーしちゃってるのね。ベースがもっと凄くなればK-A-Zくんが楽なのになぁとか、わざわざギターを同機で張ってる理由とか、しれっとしてるけどお前のせいなんだからなっていう。クボタは人間的には可愛いですよ。けどsadsで一緒にやるなら、これまでの人生ではプレイを一番頑張らなきゃいけない。下北でヘラヘラやってた時間の長さが形に出ているんだと思いますね(笑)。嫌だったら辞めてもいいんだけど、「やりたいです!」ってまだ言えてるからいさせるんです。
――そして海外にも行きたいと。
清春:もう50歳ですから(現在46歳)。やれるうちにやりたい。精神は老いないんですけど、肉体はやっぱり大変なんですよね。50歳を過ぎると、男性は生命力の低下を感じるようになるらしいのよ。そうなった時にこのストロングなスタイルというのができるのかなって。で、早くしてよと。黒夢で人時と僕がいて、もう一人ギターヒーローみたいな人がいなくて、それが嫌だったからsadsを組んだんですけど、結局また今も肩サイドしかいない。そういうのを早く解消したい。でもここまであからさまに話しあえるバンドも今日本にいないと思う。メンバー同士で飯を食ってる時も、リハの時も、インタビューの時も同じ会話だよ。なんとか期待してるんですけどね。
――クボタさん、頑張ってください!
清春:人生的にも本当に頑張り時なんだよ。いつもチャンスをあげてるしさ、K-A-ZくんもGOくんもいつもアドバイスして励ましてる。でも彼は練習してなかったり。簡単に言うと7月にsadsをやるから、スキルを磨く時間がそのあと約1年間あるわけですね。僕らも期待しているわけですよ。けど、練習しないでスタジオに来てたんです。それさお前、ファンに申し訳ないだろって言うんです。sadsやるからには全力でやりたい。ロックミュージシャンとしての夢、これまでやってないことがあるとしたら少しでも叶えたいと思ってやっているので、僕はやるからには本気なんです。
<脚注>
※1:2015年2月18日、19日に日本武道館で行われたVAMPS主催フェス。2月18日出演:[Alexandros]、Gerard Way、NOTHING MORE、VAMPS/2月19日出演:Buckcherry、sads、SIXX:A.M.、VAMPS
※2:2015年5月2日に新木場STUDIO COASTで行われたLOUDNESSとOUTRAGEによる初の共同イベント。出演:LOUDNESS、OUTRAGE、ゲスト・sads、オープニングアクト・HER NAME IN BLOOD
(文・金多賀歩美)
sads
<プロフィール>
1999年7月7日、シングル『TOKYO』でデビュー。2002年には全131公演という驚異的な本数のツアーを展開。2003年の活動休止までにシングル9作品、アルバム6作品を発表。2010年1月29日に再始動を発表し、現メンバー、清春(Vo)、K-A-Z(G)、クボタケイスケ(B)、GO(Dr)での活動をスタートさせる。同年5月、日本武道館公演を開催、7月には新体制初の音源となるアルバム『THE 7 DEADLY SINS』を、さらに12月にはミニアルバム『Lessen 2』を立て続けにリリース。再始動後毎年7月にはライブを行うことが恒例となっている。2014年6月14日~7月7日、short circuit「Evil 7 playground」にてシングル『spin』を、2015年6月18日~7月7日、short circuit「midst of mayhem」にてMUSIC VIDEO SINGLE『May I Stay/Light of Life』を会場限定リリース。今後、アルバムの制作が予定されている。
■オフィシャルサイト
http://www.sads-xxx.jp/
『May I Stay/Light of Life』
2015年6月18日(木)~7月7日(火)
short circuit「midst of mayhem」会場限定販売
(mid field inc.)
前シングル『spin』に続き、会場限定販売という形で発表されたsadsの最新作。新曲2曲のMVに加え、4月に行われたEX THEATER ROPPONGIでのライブ映像、ドキュメント&インタビューを収録した全64分。
FFRD‐0022
¥6,500(税込)
仕様:トールケース、DVD1枚
特典:ポストカード3枚セット
【収録内容】
01. May I Stay
02. Light of Life
03. LIVE @2015.04.12 EX THEATER ROPPONGI
・HONEY
・Hate
・FREEZE
・See A Pink Thin Cellophane
・GOTHIC CIRCUS
04. 特典映像
・ドキュメント&インタビュー
※英語字幕 オンオフあり
【ライブ情報】
●short circuit『midst of mayhem』
6月18日(木)恵比寿LIQUIDROOM ※FC ONLY
6月19日(金)浜松Live House窓枠
6月25日(木)名古屋BOTTOM LINE
7月3日(金)梅田CLUB QUATTRO
7月4日(土)梅田CLUB QUATTRO
7月7日(火)赤坂BLITZ
●lynch. presents 「THE VERSUS」feat. sads
9月30日(水)赤坂BLITZ