清春

清春

待望のニューシングル『流星/the sun』をリリースする清春。
楽曲に込められた想い、そして3つの顔をもつ清春の今に迫る!

2010年に黒夢とsadsの活動を再開させ、現在は黒夢、sads、ソロアーティストという3つの活動を並行して行っている清春が、約2年4ヶ月ぶりのニューシングル『流星/the sun』をリリースする。2つのバンド活動を経たからこそ生み出されたこの楽曲制作の裏側から、PVで共演を果たしたINORANへの思い、清春が思う現在の音楽シーン、ミュージシャン像まで、アーティスト“清春”の今が詰め込まれたロングインタビュー。

――ソロ名義では約2年4ヵ月ぶりのリリースですが、久々という感覚はありますか?

清春:リリース自体はsads、黒夢とあったし、ソロはライブをコンスタントにやっているので、あんまりないですね。ただ、写真やPVを撮るときに一人とか、そういうときには感じる。

――清春さんは常に動いているイメージがあるんですが、いわゆる“地下活動期間”みたいなものは作らないのでしょうか?

清春:ないよね。まぁ今は3つの活動をやってるから実際できない。ライブはしたくなっちゃうので。ミュージシャンなんだから、なんらかの形で常に音楽に近い方がいいんじゃないですかね。スタイルはともかく究極は、ほぼ毎日外見もピシッとして人前で歌うというのが理想なんですけど。その方がミュージシャンぽいじゃん、と思うけど、そこまではまだ出来ないのでレコーディングとか曲作りとか。たまにしかライブをやらないっていう時期を作ったこともあるけど、つまんないよね。

――やっぱりライブをしたくなります?

清春:というか、やってないと何の人なのか自分でわからなくなる。チケットを買ってもらった人たちの前で常に音楽をやるっていうのが一番正しいんじゃないですか。まずファンの人たちの喜びを満たして、その人たちと一緒にたまたま来てくれた友だちや彼氏彼女がファンになっちゃったっていう、目の前でわかる変化っていうのは本当に理想なんじゃないのかなと思うんです。

――3つの活動を同時に行うと発表したのが2010年。3年目の今年は1月に黒夢の武道館と4月には韓国公演もあり、今回ソロのリリース、そして先日sadsの7月のライブが発表されて、より同時進行しているなと。

清春:あ、武道館って今年なんですね。去年的な感覚でした。黒夢は基本的には日本でライブはあまりやらないんですよね。アジアは慰安旅行的な感じで(笑)、決してアジアを征服するとかさらさら思ってないんですけど。もう一度活動しているので、当時やってなかったこと、やれなかったことをやろうという。基本的には“清春”っていうアーティスト名が一番長くなってきているので、それをメインにしているんですけどね、気持ちの中で。でもやっぱり3つは大変だったよね。

――改めて清春さんの中での3つの活動のイメージをそれぞれ一言で表すと?

清春:ソロは音楽。サウンド志向。sadsはスポーツに近い(笑)。アスリート的。で、黒夢は…そうだな、友情かな。あんまり言わないですけどそういうの。いろんな人との友情ですね。人時はもちろんだけど、舞台監督やスタイリスト、再始動のきっかけになった編集者の東條(雅人)さんとか、当時関わってくれた楽器のテクニシャンの人たちやエンジニア…そういうのが無ければたぶん黒夢は代々木のライブ一回きりでしかなかった気はする。

◆ノックアウトするような音楽じゃなくて、浸れるとか包むとかっていうものを目指せる

――今回の「流星」ですが、初披露したのが昨年11月のライブだったと思うんです。あれから約6ヶ月経つので、ファンのみなさんにとっては待望のリリースなんじゃないかと。

清春:そうだね。先にライブでやっちゃうからね、大体。

――清春さんて、まだリリース日も決まっていない楽曲を何曲もライブで披露しますよね。

清春:ソロでは「海岸線」っていう曲があるんですけど、曲自体は「HORIZON」(2005年3月リリース)を作った頃からあるんですよ。ちょいちょいライブでやってて音源化していなくて、今レコーディングしている次の音源にも入らないです。ほとんどの新曲をライブで先にやっちゃうっていうのは、バンドだとやらない方がいいと思う。ソロだとやってもいいと思う。

――その違いは?

清春:音楽を“聴いている”度合いだよね。こっちからすれば“聴かせてる”度合い。バンドだとどうしても、聴くというよりまずノセなきゃいけないじゃないですか。ライブの光景上。ちゃんと聴くっていうことに集中する曲より、反応しないといけない種類の曲が多いと思うよ。ソロで僕みたいな音楽だといいのかなって。激しい曲は僕もあんまり初披露しないしね。

――2010年2月~7月に連月開催されたリズムレスのライブの時点で披露していた新曲もありますよね。「sari」、「tanatos」、「messiah」とか。

清春:あぁ、それもう2010年でした? 今回その辺は全部レコーディングしてますよ。

――アルバムができるくらいの曲数の原曲が既に上がっていた中、今回シングルリリースとしてこの3曲を選んだのは?

清春:「流星」はもう単純に「流星」を出したかったですね。それに対して“星と太陽”というのがなんとなくあって、タイトルは最初違ったんですけどこれを「the sun」にしようと。わかりやすく“静と動”という部分ですかね。“星と太陽”=“夜のものと昼のもの”という。「the sun」もデモテープ上は結構前からあったんだけど割とロック気味だったので発表はしてなかったんです。今レコーディングしている「sari」や「tanatos」をライブでやってたときは、sadsの制作をしながらだったけど、「流星」とかは黒夢の曲作りくらいに作ってるので、sads、黒夢を経てできている。三代さん(アレンジャー三代堅氏)からも言われたんだけど、ポップな方向に気持ちがいっているというか、余計なことがないというか。早かったりデジタルなものだったり普段聴いている洋楽のようなものは、sadsや黒夢で解消できる。「流星」に関して言えばちょうど20枚目の区切りの良いところで、ソロでやる音楽という部分でセパレートしたというか。ただポップになるだけじゃなくてもうちょっとサウンド志向に、歌もキャッチーなんだけどトータル的にサウンド全体で浸れるものを目指せるようにしてる。ノックアウトするような音楽じゃなくて、浸れるとか包むとかっていうものを。今はsadsと黒夢があるから、テンポが早いものを無理にソロでやろうと思わなくていいっていうのは、なんとなく感覚的にあったんじゃないかなと。作り始めて「これはソロっぽいな」っていうときは限りなくソロっぽくアートにいこうとするので。

――それぞれ音楽的に違いますよね。

清春:「アロン」とか「ミザリー」とか黒夢で復活以降に出した曲は「ソロっぽい」と言われたりしたんですけど、僕の中では作ってるときの意識が違うんだよね。人時くんが弾いてる姿を想像しているかしていないかはすごく大きくて、やっぱり黒夢っていうか…ソロではやらないんだよね。…難しいんだけどさ、黒夢のMAXのポップな部分とソロのちょっとテンポのあるときの曲が被るっていうのは、仕方ない。同じ人間が作ってるんだから。自分の中ではソロの王道は「流星」だったり、「輪廻」、「HORIZON」、「slow」とか。

――わかります。

清春:これがなかなか伝わりにくいというか。ファンじゃない人からすると「一緒じゃん」て思うかもですよね。ただ逆に言えばソロで「ミザリー」歌ったとしても、あんまり違和感無いと思うんだよ。ソロでも「少年」(黒夢)を歌ってたときもあったし、今もソロで「SANDY」(sads)も歌ってるし、あんまりこだわってないんだけどさ。基本的には別の人がやってるわけでもないから。

――そうですね。では今回の3曲は原曲が上がっていた中では一番新しいものということで。

清春:はい。僕は「rally」が気に入ってます。「the sun」はINORANくんがPVに参加してくれたっていうこととか、「流星」は1曲目なので推し曲なんですけど、サウンド的には「rally」がいいところ行けたなと。

――曲よりも歌詞を完成させるのが大変だとよくおっしゃっていますが、今回はいかがでした?

清春:そうね。「流星」はたしかに困ったな。でも全部困ってるよ。

――「流星」で一番悩んだのはどの辺りですか?

清春:美学みたいなものもありつつ、いかにシチュエーションを説明せずに情景を浮かばせるかっていうのが難しいよね。「流星」って“流れる星”っていうことと、僕とファンの間ではわかってることなんですけど、『TANATOS』、『EROS』、『ORPHEUS』、『SIRIUS』(2010年2月~7月&2011年12月に行われたシリーズ公演)をバンドの活動の間にもやっていたということを入れたかったというのもあって〈SIRIUS〉という言葉を。一般の人にとっては“SIRIUS”ってなんなんだろって思うかもしれませんけど、ファンの子たちにしかわからないワードがシングルにあってもいいのかなと思ってて。あと20枚目のシングルなので〈二十を愛して〉というのも入れつつ、でもそれは“20枚”っていうことも含め、バンドをやってる今の状況の“二重”みたいなこともあるし他にも。

――「流星」のPVは今までの清春さんにはないパターンですね。

清春:顔の連続だよね(笑)。あのとき、がんばりましたね。顔の調子をすごく気にしながらやってました。油断するとおじさんぽさが出ちゃうので(笑)、すっごいモニターチェックしながらやってましたね。

――テーブルのシーンのカメラ目線が清春さんと対面で座っている感覚になってちょっとドキッとします。

清春:テーブルの向こうにサーシャちゃんていう女の子がいて、あれ本当に喋ってるの。

――その自然な感じが出たんでしょうか。

清春:パパの感じが出ちゃいましたかね(笑)。実はね、使ってないカットが一個あって、マイク無しで歌ってるカットがあるんですよ。いずれまた編集してアルバムには入るんじゃないかなと。一番がんばったバージョンが、全く使われてないんですよ(笑)。おかしい。「え!? 無いじゃん!」って言ったんだけど。

――(笑)。「the sun」はリフがとても印象的なロックナンバーですが、この曲はどの部分からできたんですか?

清春:うん、リフだね。sadsでもいいかなと思ってたものなんだけど、ちょっと違うのかなと思い始め、リフの中でもポップな、sadsよりももう少し転調感を出そうと思って仕上げたかな。あのリフから想像できないメロでしょ?サビとか。

――そうですね。

清春:リフはモトリー・クルーとかに近い、往年のUKよりはもうちょっとLAメタルみたいな感じ、渋い感じというよりは割と短調な感じで、若干泥臭い感じも出てるんだけど。これ、僕はミュージシャンなので、違うアーティストの人があのリフからあのメロに行ったら驚きますけどね。Bメロの最後からサビへの行き方とか、よくできてるなと思います。

――バンドの楽曲の作り方は比較的想像できる範囲ではありますが、ソロアーティストって結構謎です。各パートのリフ等も、原曲を作ってる段階で頭に浮かんでいるんですか?

清春:リフは僕の場合は原曲のまま。あんまり大きく変わることはない。デモテープを作って、リズムパターンだったりリフだったりいじってほしくない部分は指定して、あとはよりよくお任せします、みたいなのが多いんですけど。作り方的にはsads、黒夢と変わらないですね。リフから作るパターンなのか、コード進行からいくパターンなのか、リズムから作るパターンなのかっていうだけで。リフも5弦6弦をメインに使っていわゆるパワーコードで指の癖みたいなものでいくのか、いったことないところにいくのかでもすごく違うので。そう言われればソロは謎だよね。でもソロの方がサウンド志向ですね。割とデモの段階から全部のパートを把握してる。三代さんとキャッチボールして、僕が原曲を投げてアレンジが返ってきて、パート録るときにディスカッションして。「これバンドっぽすぎちゃう」とか「歌謡曲っぽすぎちゃう」っていうのを修正するときもあるね。両方のさじ加減はしてます。
でも意外と一人で曲作ってる感覚というか。宅録みたいな感覚だと思ってくれれば。それを三代さんと二人でやってるって感じ。

――「the sun」の歌詞で〈ロベリア〉というワードが気になったんですけど、清春さんの誕生花なんですね。

清春:あっ鋭いですね。初めて気付く人がいましたね。普通気付かないよね。

――(笑)。花言葉が「悪意、謙遜、譲る心」などのようで。

清春:完全に「悪意」です。〈ハレルヤ〉に対しての〈ロベリア〉。

――この曲も〈The Sun〉と〈The Moon〉だったり、〈ロベリア〉と〈ハレルヤ〉だったり、対になる言葉がありますよね。

清春:正直、どういう意図で書いたか忘れちゃったんですけど(笑)、それぐらいでいいだろうと思って書いてるんでしょうね、こういうタイプの曲の歌詞って。言葉選びの名詞や接続詞だったり、対になってる言葉だったり、響きが似てたり、若干HIP HOPみたいな書き方だと思うんですよね。響きが綺麗とか引っかかるとか「何歌ってるんだろう、わかんないな」って歌詞見たら「あっ同じ響きだけど言葉が違う」っていう。僕の作詞方法の種類の一つですかね。