Rest of Childhood

最新作『MILK』完成の裏側と、現体制の始動から1年余りを経たロックバンドRest of Childhoodの今

ex.OLDCODEXのYORKE.ことHAL(Vo&G)、ex.Hysteric BlueのTakuya(Dr)を中心に2018年に結成したスリーピースバンド、Rest of Childhood。前ベーシストの脱退を経て2021年11月にex.RIZEのu:zo(B)が加入、第二章の活動をスタートさせ早1年余りが経過した。そんな彼らがこれまでライブで披露してきた未音源化曲をシングル作品として連続リリース。『通り雨の歌』(2022年10月)、『Fact』(同12月)に続く第三弾シングル『MILK』をこの度、世に送り出す。Vif初登場となる3人に現体制での活動の中で感じてきたこと、最新作について話を聞くと、今現在のRest of Childhoodというバンドの形が見えてきた。


バンドってミラクルな物語だなと(HAL)

HAL

Vif初登場ということで、よろしくお願いします。

全員:よろしくお願いします!

Takuya:彼らは表現者HALと開拓者u:zoです。

HAL:ギター&ヴォーカルのHALです。

u:zo:ベースやってます。u:zoです!

Takuya:僕は玉拾いあるいはトンボ掛けのTakuyaです。

(笑)。2021年11月1日にu:zoさんが加入し、現体制となって1年余りが経過しましたが、サポートの頃には気付かなかった、メンバーになってから初めてわかったことはありますか?

u:zo:HALは一緒にバンドとしてやるようになってから全く印象が変わりました。一つのことを長く考える人だなぁって、良くも悪くもアーティストの正しい気質なのかなと思っています。Takuyaは想像通り大人で、計算もできるし、その場でのアドリブもできる。決断力があるので、バンドのリーダーとして欠かせない存在ですね。音楽的にも色々な引き出しがあって勉強させてもらっています。

Takuya:u:zoはベーシストでありながら昔はトランペットを吹いていたり、ロック野郎なのかと思ったらゆったりした音楽を好んで聴いていたりと、楽器という意味でもジャンルという意味でも音楽全般を愛するミュージックラバーだったことがわかりました。あと、めちゃフランクで話好き。この辺は実際にバンド組んで音を合わせる前とはガラッと印象が違いますね。ギャップってやつ。

HAL:Takuyaは結成時から変わらずリーダーを任せていて、リーダーとしての資質がやっぱり抜群だと思います。とにかくせっかちで、物事を進めていく人なのに僕のマイペース過ぎる性格にも寄り添ってくれて、感謝しています。u:zoは3人の中では一番、どう人に見られたいのか?っていうことを常に気にしてセルフプロデュースしているんだなと。それをナチュラルに見せるのも上手で。これは一緒にバンドを組まなかったらわからなかったなぁ。

メンバーにならないとわからないことって結構あるんですね。

HAL:そうですね。バンドとしては、それぞれの個性は全く違うけど、それぞれが尊重して動ける仲間たちなので、そういう意味ではバンドってミラクルな物語だなと思います。

確かに。ちなみに、現体制の始動と同タイミングでYORKE.さんがHALさんに改名されましたが、やはり改名して良かったと感じていますか?

HAL:当時は、YORKE.としてのキャリアとこのバンドでの立ち位置を考えると、自分が混乱することが多くなっていた時期だったので、よりパーソナルなモードでいられるようにHALを名乗ったんですよね。気持ち的にも楽になったと思います。ファンレターに「HAL」「HALくん」って宛名が溢れていて、それを見るたびに自分の中のスイッチが切り替わるような感じです。

そうなんですね。ライブを観ているとRest of Childhoodはまさにメンバー全員が主役のバンドだなと感じます。これぞスリーピースの醍醐味!と実感する瞬間はどんな時ですか?

HAL:ライブの時の立ち位置かな。Takuyaのドラムの立ち位置もフロントで、3人横並びが僕たちのベーシックなので、真ん中にいる僕は左右にメンバーがいて、より近い距離で音を出しているから、それはスリーピースならではかなと思います。

初めて観た時、横並びかつドラムセットがセンターを向いていてフロアに対して横向きなのが新鮮でした。

Takuya:なるほど、そう感じる人も多いかもしれないですね。スリーピースの醍醐味は、予定調和ではなくても調和するところ。例えば誰かの気分一つで上げまくったり、繊細になったり、その場の瞬間でバンドごと自在に変化できるところですね。

u:zo:自分は曲を作っている時に一番感じますね。曲や歌詞から皆で作り上げていけるのがバンド…改めて最高だなと。なおかつスリーピースだと人数が少ないので、それぞれの表現が大きく反映されるところが醍醐味ですね。

逆にスリーピースならではのアクシデントはありますか? その時はどのように乗り越えましたか?

u:zo:いや、乗り越えられてないですね(笑)。課題だと考えています。

Takuya:そうかな(笑)? 僕的には、アクシデントは多々あれどスリーピースならではというのはない気がします。

HAL:スリーピースだからというアクシデントっていうか、自分以外の誰かと何かをやることで起こり得ることは当然あるのかなと。前メンバーが脱退してTakuyaと二人になった時のほうが大変だったかなぁ。

それはバンドとしてものすごく大きな出来事ですからね…。では、この1年余りでバンドが特に進化したなと思う部分を教えてください。

Takuya:特段進化はしていない気もしますけど、ライブハウスからイベントに誘ってもらったり、友人のバンドと対バンイベントをしたり、外に向けての視野が広がっていると思いますね。

HAL:u:zoの加入によって、よりストイックに向き合うっていうか、集中力が増したような気がします。僕自身の足元のセッティングもギターも結成時とは大きく変わったし、現状は、よりシンプルに削ぎ落としたシステムにしています。対バンだったりサーキットフェスにも出演したり、戦えるフィールドが増えてきた分、経験値も増えて、そこは強くなっているなと思います。

u:zo:進化ではないかもしれないけど、知り合ってから長いとはいえ深くお互いを知らなかったのが、段々とそれぞれの芸術面や個性がわかるようになってきたと思います。HALやTakuyaも俺がこんな人間だって予想外のことが多かったと思いますし。音楽をやる上でそこって重要なんですよね。

一緒にビートを揃えている感じは他の曲になくて大好き(Takuya)

Takuya

初の流通盤シングルとして昨年10月に『通り雨の歌』、12月に二作目の『Fact』、そして三作目となる『MILK』がこの度リリースとなりますが、このリリース順や選曲はどのように決めていったのでしょうか?

Takuya:季節に寄せて、ですね。

HAL:そんなに深く考えていなかったかもしれないですね。感覚的っていうか。どの曲もリリースを決める前から作っていた曲たちなので、この並びはとても自然な流れに感じているというか、違和感がないなって感じです。

「MILK」は女性目線の歌詞ですが、どのようなきっかけでこの歌詞が生まれたのでしょうか?

HAL:毎週火曜に僕がパーソナリティを務めているラジオ番組の放送後、ファンクラブ「Party of Childhood」でアフタートークを生配信しているんですけど、そこのコミュニティで集まってくれたファンの皆から「こんな曲が欲しいなー」とか「こんな気分の時に聴きたい曲を作ってほしい!」とか、たくさんコメントをもらうんですよね。その時間の中で閃いたっていうのがスタートです。

なるほど。キャッチーなメロと、テクニカルでタイトなリズム隊のサウンドがさすがのRest of Childhoodらしい楽曲ですが、リズム隊としてはどのようなイメージでこの楽曲に取り組みましたか?

Takuya:u:zoが加入してからはビート一発で引っ張れる強さとしなやかさも得たと思うので、特に苦労した記憶もないですが、抑揚をつけて歌の世界観を引き立てることは常に意識しています。「MILK」に限って言うと、BPMを決めるのに試行錯誤しました。多分ライブでは一定ではない、加速したり落ち着けたり操作しているはずなので、レコーディングの便宜上、一定テンポに定着させる上での聴かせ方とかは絶妙なのかもです。

u:zo:女性の気持ちが全くわからないので大変でした。結果から言うと、バースはしなやかなラインというかどっちつかずなラインで、フックは激しいガッツリ8ビートにしました。おかしくなるぐらい考えたのですが…これが自分の中の女性のイメージです。うまく説明できないです(苦笑)。

歌詞のストーリーを音で表現する上で、意外な部分に難しさがあったわけですね。唯一無二のHALさんのハスキーな歌声が、センチメンタルなムードを増幅させていると感じます。歌録りで心掛けたことを教えてください。

HAL:主人公となる女の子を強くイメージしました。失恋を引きずって、少しでも前に進もうとライブハウスの片隅でステージの僕と目が合った瞬間っていうか。それで、その女の子の気持ちを代わりに歌に乗せて届けているような、そんな気分でレコーディングしましたね。

ちなみに、HALさんがエレキギターを弾いたのはRest of Childhoodが初めてだそうですが、今回のギター録りで苦戦した箇所、または4年前なら弾けなかったかもしれないと思う箇所はありますか?

HAL:どちらかというと僕の癖を生かして作った楽曲なので、特に苦戦したってことは思い付かないかなぁ。大分スムースにレコーディングを楽しめるようになったのは、とっても成長した気がします。始めた頃は、レコーディングで手が攣ったりしたもん。

そうなんですね。レコーディングでは3人で意見をハッキリ言い合うそうですが、今回メンバーからの提案で変更した点はありましたか?

Takuya:自分も含めバンドでOKを出したテイクでも、納得がいかなければ別日に録り直したりしました。

u:zo:ベースラインについては特になかったです。構成は2ndフックの後からは皆で大分揉みましたね。

HAL:やっぱりラストですかね。リハーサルの時に今の形になったと思うんですけど、ドラマチックなエンディングで、時系列的にも一気に今に引き寄せる感じで、ロックしてるねー!って気分。メッセージとの対比がすごくマッチしたなぁと思います。

改めて今回のレコーディングやアレンジで特に試行錯誤した部分、チャレンジした部分を教えてください。

HAL:サウンド面に関しては、メンバー3人が同じ方向を見てゴールを目指せたなと思います。この曲を作った時から、僕の頭の中でずっと女性のコーラスが聴こえていたので、それをトライして形に出来て、理想にかなり近い場所に行けたと思います。

Takuya:先ほどu:zoも言っていましたけど、構成かな。何度もサビが来るので、それを感じさせないために、ループ感を出さないよう意識しました。

u:zo:二日間レコーディングの期間があって、1日目で曲が録れてしまって安心していたんですけど、イントロのベースの歪みの倍音の感じとかフックの8ビートの感じ、ちょい後ろだけどスピード感を的なところが次の日になって納得がいかず、結構録り直すことになりました。自分が感じたのは湿度による変化ですね。音というよりは楽器(ネック部分)の触り心地で結構グルーヴが変わるんですよ。2日目は除湿をかけっぱなしにしていたこともあって、納得のできるテイクが録れました。解決できたのは偶然なのでメモメモって感じでしたね(笑)。

それは興味深いお話です。では「MILK」に関して、あえてご自身以外の二人のパートの「ココが好き」というポイントを挙げるなら?

Takuya:ベースはなんと言ってもド頭。音色もプレイも何か絵が浮かぶようで素敵。ギターは意外かもしれないけど間奏の部分。形としてはベースソロなんですけど、その部分のギターがリズムギターになっていて、あの一緒にビートを揃えている感じは他の曲になくて大好きですね。他の曲では歌に比重がいっているので、“ギターのHAL”と一緒にやってる感が好き。

u:zo:あえて言わないで、ライブを観に来ていただけたら「ここか~~~~っ」ってわかると思います。

HAL:んー。全部好きかなー。答えになってない?

(笑)。ライブでまたしっかり体感したいと思います! ところで、今作のジャケットは漫画家のふるかわしおり先生のイラストとのコラボレーションということですが、コラボに至った経緯を教えてください。

Takuya:HALが元々お知り合いだったそうで、この話を持ってきてくれました。

HAL:以前、僕自身がふるかわしおり先生の漫画の登場人物として描いてもらうというコラボレーションをさせてもらったことがあって、僕の活動をずっと応援してくれているんですよね。それで、ライブに遊びに来てくれて、「『MILK』で漫画が描きたい!」とライブ後にとても高い温度で伝えてくれたんです。今回は女性が主役の曲だし、ピッタリだなぁって。そういう意味では、ふるかわしおり先生の新たな一面をRest of Childhoodが引き出せたのかなと思っています。

色々な経験をして音楽に還元できるように生きていこうと(u:zo)

u:zo

ちなみに、現在のRest of Childhoodの活動の仕方としては、アルバムを出すことをあまり重要視していないと先日Takuyaさんが話していましたが、今後のリリースについてはどのように考えていますか?

Takuya:アルバムを出したいと思っています…(笑)!

HAL:気が付いたら曲が増えちゃって…というペースでやっていて、「あ、そういえばリリースしてないんだっけ?」ってことが多いので、僕自身は楽曲ごとにベストなタイミングで開放してあげたいなという思いです。それがアルバムになることもあるかもしれないし。今はそんな気分ですね。

昨年12月23日の「The End of Our Silent Nights」@新横浜NEW SIDE BEACH!!をもって、ついに「Silent Nights」が「終わり」を迎えたわけですが、改めてこれまでの日々を振り返って、コロナ禍があったからこそ気付けたこと、できたことはありますか?

HAL:まだ振り返って笑えるほど時間は経っていないけど、コロナ禍で起こった様々なことが、ようやく冷静に考えられるようになってきたのかなって。とにかくどんな状況でも走り続けてきたけど、それが正しかったのかどうかもわからないし。でも、強く繋がれたファンやライブハウスの存在は確実に目の前に感じていて、それが一番なのかなと思います。

Takuya:どんな我慢を強いられようと、どんな形に変わろうと、音楽は人々を支える力になり得ると改めて思いましたね。

Takuyaさんはライブでファンの皆さんの分まで頑張って歌おうとコーラスしていたら、まさかの音域が2音上がるという副産物を得られたと言っていましたよね。

Takuya:あっ、そんなこともありましたね(笑)!

u:zo:自分はコロナ禍になって二つの仕事掛け持ちから三つ目の仕事を始めたんですけど、意外と体力も余裕で、今までダラダラしていたんだなと…状況に甘えてサボってたなぁと気付きました! 仕事に限らず旅行だったり、美味しいものを食べたり、スポーツしたりして、色々な経験をして音楽に還元できるように生きていこうと、新たなライフスタイルも手に入れました。

素晴らしいです! いよいよ2月10日から声出し解禁での「Rest of Childhood “The Terminal” Tour ’23」が開催されます。「The Terminal」に込めた思いを教えてください。

Takuya:人生いつでも選択の連続。また同じようで違う毎日に旅立ってゆくのだな、と。

HAL:僕たちももちろんそうなんですけど、フロアにいる一人ひとりがその日をきっかけにまたポジティブな景色を持って行けたらいいなって、そんなことを考えています。

では、ツアーへの意気込みをお願いします。

u:zo:Rest of Childhoodに加入してから、まだ皆の声を聞いたことがないので単純に楽しみです! 楽しい時間を過ごせることを楽しみにしています!

Takuya:僕らみたいなバンドはライブハウスで騒いで日頃の憂さを昇華させるのが醍醐味だと思うので、ようやく本分に戻ってきたなという意識です。

HAL:コロナ禍でライブハウス自体から遠ざかってしまった人も待ってるよ!って伝えたいし、初めて遊びに来てくれる人にも、来る時より帰り道に「レスチャのライブ楽しい!」と思ってもらえるような時間を作っていきたいと思います。

最後に、皆さんそれぞれが思う今後のRest of Childhoodとしての目標を教えてください。

u:zo:ちょっとずつ良くはなってきていますが、今は先が見えず目標を立てられる状況ではないので、やれることをやって皆さんに楽しんでもらえるような楽曲、演奏をしたいと思います!

Takuya:いくつになっても心は自由に遊んでいていいんだよ、と体現できる存在でいられればいいな。

HAL:これまで以上に真剣に遊んでいくというか。まずはこの3人で夢を描いて向かっていくことがいつになっても大事だと思います。

(文・金多賀歩美)

Rest of Childhood

オフィシャルサイト

リリース情報

●New Single『MILK』
2023年2月1日(水)発売
※タワーレコード渋谷店、梅田NU茶屋町店、名古屋パルコ店にて完全数量限定販売

[CD]ROCH-0007 ¥770(税込)

収録曲
  1. MILK

ライブ情報

●Rest of Childhood “The Terminal” Tour ’23
2月10日(金)千葉LOOK
2月11日(土)熊谷HEAVEN’S ROCK VJ-1
2月28日(火)川崎Serbian Night
3月18日(土)静岡UMBER
3月19日(日)岡山PEPPER LAND
3月21日(火・祝)福岡culture spot BAD KNee LAB.
4月1日(土)仙台ROCKATERIA