NoGoDが新体制後、初の作品となるニューミニアルバム『神劇』をリリース! 7曲で描く濃密な世界観、最新作に込めた思いを探る――
昨年3月、長きに渡って苦楽を共にしてきたベースの華凛が脱退し、4人での再スタートを切ったNoGoD。新体制となって1年、前作アルバム『proof』 以来1年7ヵ月ぶりとなる待望の最新ミニアルバム『神劇』が完成した。無人の観客席で撮影された斬新なアーティスト写真に音源への期待も高まっていることと思うが、「久しぶりに自信を持って、これは良い作品だなと言えるものができた」という団長の言葉通り、今の彼らの世界観をギュッと濃縮した圧巻の1枚となった。この作品について、脱退について、そしてこの作品と共に歩を進める新生NoGoDの未来について、前半は団長(Vo)とK(Dr)、後半はKyrie(G)とShinno(G)のインタビューをお届けする。
団長×K Interview
◆全部シングルカットしていいようなキャッチーさと楽曲の振り幅でありながら、全く飽きさせない作り(団長)
――前作アルバム『proof』から1年7ヵ月ぶりのリリースですが、NoGoDのリリースがこんなに空くのは珍しいですね。これまでの最長は、『Renovate』(2016年3月リリースのシングル)と『Missing』(2017年4月リリースのシングル)の間の1年1ヵ月でした。
団長:確かに。しかもその時は、間に配信が挟まっていたんじゃなかったかな。
K:『Passion Play』(2016年10月15日配信)があったね。
団長:なので、1年以上音源を出していないのは初めてなんです。その間にブリキのサーカス団をやったり、FC限定でシングルを配布していたりはするんですけど、正式に音源をリリースするのは久しぶりですね。
――お二人にとってどんな1年7ヵ月でしたか?
K:多分いろんなことがあったんでしょうけど、俺はあんまり意識しませんでした。
団長:去年は、華凛ちゃんが辞めるまでも辞めてからもバタバタで。ゲストミュージシャンの方に曲を覚えていただくためにスタジオにも結構入っていて、さらに『proof』を出してからも楽曲作りを続けていたんです。これまで楽曲作りに関しては「次にこのリリースがあります」と言う話が出てから動いていたんですけど、2018年は先にフルコーラスでアレンジも終わらせた楽曲を何曲もストックしておいて、その中から作品を作ろうということになっていて。毎年ライブやリリースで忙しくしている中で、音源制作がやや疎かになっているという感覚があったので、今回は核となる音源制作をしっかりやりたかったんです。
K:実際にやってみたら劇的に違いましたね。もちろん、これまではワンコーラスで終わりだったものが全尺になっているので、作業は倍以上あるし、団長の作詞も同時にあげなくてはいけないので大変ですけど、その分仕上がりは抜群で、曲を汲み取りやすくなった気がします。
団長:いつもは曲の良さを引き出すというより、曲を作品に染める作業が入ってくるんです。でも今回のやり方だと、歌詞もコンセプトに囚われずにその曲に沿ったものをファーストインプレッションで出せるので、本来の曲の良さを生かしやすいし、1曲1曲の精度が上がった気がしますね。
K:特に今回のアルバムは、自由に自分の好きなものを持って来るというのがコンセプトだったから、そういう面でも良かったかもしれないね。
団長:そうだね。とにかくまずはアウトプットをして、使うか使わないかは後で並べて考えようということで。その段階で、まだこの作品の構想というのはなかったんですけど、結果的に収録された曲はそこから生まれたものが多かったです。
――選曲の基準は何だったんですか?
K:趣味じゃない(笑)?
団長:趣味か(笑)。骨組みは割と早い段階で決まったんです。15曲くらい並べた中から「masque」「シアン」「Borderline」を入れるということになって、そこから組み立てていったら『神劇』という作品のテーマが見えて来て、舞台や劇というコンセプトに固まっていきました。
――NoGoDにとって、7曲というボリューム感と全曲書下ろしの新曲という構成は珍しいですね。
団長:確かに、シングルカットなしのオール書き下ろしはないですし、ミニアルバムもインディーズラストの『羅針盤』(2009年9月リリース)以来じゃないかな。
K:メジャーに行ってからは『四季彩』(2014年3月リリース)以来ですね。
団長:ミニアルバムを作ってみて、フルアルバムより世界観が出しやすいなと思いました。今回の収録は7曲ですけど、フルアルバムだと12曲くらい入るので、強制的に他の色を足さないといけなくなるんです。なので一つのコンセプトを濃縮して出すにはミニアルバムは良いなと思いました。今回、1曲1曲のアクがすごく強くて、全部シングルカットしていいようなキャッチーなメロディーと楽曲の振り幅ではあるんですけど、全く飽きさせない作りになったと思います。物悲しさや暗さがコンセプトにあるので、アルバムを通して一つの雰囲気を持っていますし。
K:収録曲を聴いて、納まりがいいなと思いました。聴き応えがありつつ心地いいというか。ただ、しっかりボリュームはあるんですけど、最後の「そして舞台は続く」が終わると「あれ? もう終わりか」というちょっとした物足りなさもありつつ。ちょうどいいというと安い感じがしますけど、そういう印象が強いですね。
――「そして舞台は続く」はラスサビの歌詞もあって、強いインパクトを残す1曲でした。
団長:この曲は最初、歌詞が全て違っていたんです。他の曲の歌詞は最初に書いたプリプロの時のままなんですけど、「そして舞台は続く」だけはアルバムの雰囲気ができあがってから、この曲を最後にして意味を持たせてしまおうということで、舞台に関連する歌詞に全部書き直しました。アルバムの雰囲気を作る上ですごく大事なエッセンスだったんです。
――これまでのアルバムの最後の曲にはなかったテイストの曲ですね。
団長:そうですね。我々のフルアルバムだと、この後にボーナストラックでアルバムのストーリーから外れた曲が入ってしまうことが多いんですけど、今回は完全にここで完結できているんです。あと、マスタリングで曲間を決めるんですけど、この曲の後はバツッと切って曲の余韻をカットしました。そこからそのまま1曲目の幕開けに戻れるように、音が繋がっているんですよ。
――NoGoDの作品は毎回曲間にもこだわりが感じられて、作品全体に聴き応えがあります。
団長:コンマやフレームで決めるので、「何秒」とか「このくらいの感じで」というよりも、「何フレくらいで」という決め方をしていますからね。
――そこまで含めて作品なんですね。
団長:そうですね。だから本当は盤で聴いてもらうのがアーティストとしては一番嬉しいんですよ。配信サービスは便利だけど、曲間がなくなっちゃうので。そこまで含めて空気感を盤に収めているので、聴いてもらえると嬉しいなと思います。
――今作から4人での制作となりましたが、大きく変わったことはありますか?
K:作業や気持ちの面で大きく変わることはないですね。ちなみに実際入っているベースの音はKyrieさんです。
団長:変わったのは、Kyrieの作業が増えたくらいですね(笑)。今回、ベースのクレジットを載せるかどうか迷ったんですよ。でも、「ギター&ベース」と載せるのは違うだろうと。クレジットのどこかに「ベース:Kyrie」とは載せますけど、あくまでも七弦団員です。
K:Kyrieの別名を作ったらいいんじゃないの?
団長:なるほどね! じゃあ「ベースプレイング:巨匠」でいいや。
K:ビッグネームだなぁ(笑)。
◆やっていることもやりたいことも、ありがたいことに今いる場所も一緒(K)
――今回、どの曲がどなたの作曲ですか?
団長:「Curtain Rises」「masque」「DOOR」がKyrie、「シアン」がShinno、「Borderline」「far away」「そして舞台は続く」が俺で、今回の作詞は全て俺ですね。
――意外でした。この歌詞はKyrieさんだろうなと思った曲が複数あったので。
団長:今回、全体的に悲壮感があるので、そういう風に見えるのかもしれないですね。
――そういう曲が多くなったのはなぜだったんでしょう?
団長:やっぱり心境の変化なのかなと思います。それは華凛ちゃんの脱退云々ではなくて、純粋に歌詞に関してはそういうものを書きたくなったんです。我武者羅に底抜けに強くあれ!という歌詞を書くのに若干飽きてきているというか。「DOOR」が唯一明るいですけど、でもどこか悲しさやしんどさを残しているし、「Borderline」の最後のサビに書いた〈そのラインは遥か彼方〉で、超えられるところまでまだ来ていないという感覚を残しておきたいなと。今回の作品では、一貫して「masque」の主人公がいて、その人がずっと遠いところの何かを追っているんです。
――〈遠い〉と言う歌詞が散見され、「Tonight!」(『proof』収録曲)にも出て来た〈本当の自分〉と言う歌詞も登場します。
団長:そうですね。ただ、「Tonight!」は外に向けて言っているんですけど、今回の歌詞は全部主観なんです。
K:俺は「far away」のサビのパワーがすごいなと思いました。その言葉だけで世界観を掴むことができるというか。今までそういうことがあんまりなかったので。やるやん! 進化してしまったやん!と(笑)。
団長:底知れぬわ!と(笑)。
K:ちなみに、演奏面では、「DOOR」と「そして舞台は続く」が今回の俺のキレポイントでした。できねーわ!と言うくらいハードルが高かったです。この2曲ではとても勉強になりましたし、それがちゃんと乗り越えられたかはわからないですけど、作品にできてとても良かったと思います。
団長:久しぶりに自信を持って、これは良い作品だなと言えるものができました。毎回自信がないわけじゃないし、一生懸命やってはいるんですけど、どう捉えられるんだろうとかライブでどう変わっていくんだろうとか、伸びしろに未知の部分が多いんです。でも今回は、出す前から良い作品だと思っているし、出てからもこれが悪いアルバムだと言われる気がしないし、ツアーを周って2年くらい経っても「やっぱり良いアルバムだ」と思えるだろうなという自信があります。
――歌詞の満足度も高そうですね。
団長:そうですね。中でも「そして舞台は続く」の歌詞を丸々書き直してよかったなと思いました。これを書き直したことで、メインのアーティスト写真を無観客の劇場で撮りたいというイメージが湧きましたし。バンドがそういう場所で写真を撮ることはなかなかないと思うので、気に入っていますね。あと、「シアン」の歌詞も好きです。
――〈今のままでも何とかはなるんだ でもこのままじゃきっと いつかだめになる〉と言う歌詞が印象的でした。
団長:人間て、何とかなるじゃないですか。もちろん、何とかなっちゃったって言うのも悪くはないんですけど、一つ一つの選択の舵を自分で取っておかないといけないなと思うんです。バンドは特にそうなんですけど、続けることは簡単なんですよ。辞めなければいいだけなので。ただ、自分たちはそういうタイプじゃない。もしNoGoDが、「全然やりたい音楽じゃないけど、このバンドをやっていたらいくら入ってくるからやるか」という状況になったとしたら、多分辞めています。これをやりたいから、これがやれるからやっているんですよ。…ただ、このアルバムがミリオンヒットしたら、この意見は変えようと思っていますけどね。
K:(笑)。そうだね、お金も大事だからね。
団長:我々も生業としてやっているわけですからね。こんな夢のない話をしてしまうとあれですけど、音楽で飯を食うって決して楽なことじゃないですから。
――NoGoDは職人気質なメンバー揃いだから、結成から14年という長い間続いてきたんでしょうね。
団長:そうですね。でも、山奥の小屋に籠って壺を作る職人のような、要は誰にも認められず、自分だけが良いと思う作品を作るアーティストにはならないようにしようと思っています。作ったら里に出て売らないといけないわけですからね。今、NoGoDという名前は色々な人に知ってもらえていると思うんですけど、音までちゃんと届いている人数はまだ少ないと思うんです。これからはヴィジュアル系が好きな人たちだけでなく、ロック全般が好きな人たちにも響かせていかないといけないなと。でもこの作品はそういうロックファンが聴いても悪い作品だとは言わないでしょうし、むしろどこか引っかかってくれると思うんです。歌詞の内容も含め、仕上がっているなと。
K:お、出たね、仕上がり。
団長:仕上がっているし、平成最後の名盤ですよ。平成最後の月に、これを超える作品はないですね。まぁみんな新元号に合わせてリリースすると思うんですけど。
K:間違いないね(笑)。
――ところで、お二人は専門学校からの知り合いということなので、とても長い付き合いですよね。
K:そうなんですよ。意外と長いよね。ちゃんと話したのは卒業してからだから、15年くらいかな。
――お互いをどういうアーティストだと思っていますか?
団長:K君は器用だし、センスがあると思います。ドラマーって自我の強い方が多いイメージがあるんですけど、彼は要塞を組むとかカタログに載るとか、そういう見た目の欲があんまりなくて。ドラマーとしての名声よりも、ドラマーとしての楽しさを貪欲に追求しているなと思いますね。
K:俺はヴォーカルというものをそんなに知っているわけではないですけど、団長は楽器屋さんに近いヴォーカリストだと思います。ライブ中のキメや曲間を、後ろの楽器に合わせてくるヴォーカルってあんまりいないと思うんですよ。リズム隊を聴く人もあんまりいないし。でも彼は、メロディーはベースで聴いて、リズムはドラムで聴く。こう話すと普通のことみたいですけど、ヴォーカリストにこういう人は少ないんです。「俺が主体だ! 俺について来い!」って気持ちが強い人が多いので。でも彼はそういうところをしっかり聴いていてすごいなと思うんです。普通、歌ってパフォーマンスしていたらそれどころじゃないはずなのに、それがナチュラルにできている。あと、割とリズム感がありますね。
団長:あ、でも、たまにとんでもないリズム感の時がありますよ。
K:テンションが上がっちゃうとどうしてもね(笑)。待って~!早~い!という時があります。
団長:自分の体感のリズムが走り気味なのに、歌がもたれ気味っていうね。
K:自分の中のリズムがしっかりしちゃっているから、考えるとできないんでしょうね。すごく器用だけど不器用な人です。
団長:みんな10年以上一緒にいるし、NoGoDは同機がないので、「こいつはこういう時に絶対テンポが落ちるな」とみんなわかっているんです。ライブ中は誰かが阿吽の呼吸で支えてくれるので、バンドとしてのアンサンブルが崩壊することはめったにないですね。
K:誰かしらが支えますからね。
団長:その信頼関係で俺も「頼む!」と思っていますし。
K:こちらも「任せろ!」と思っていますし。
――その関係性がいいですね。
団長:それが新体制になってよりわかりやすくなったと思います。伝達がスムーズになって、一人一人との密着度が強固になったイメージがありますね。どうしても人数は関わってきて、伝達に一番無駄がないのがソロ、次がデュオ、バンドの完成形はスリ-ピースだと思うんです。5人、6人になるとそれだけ伝達にラグが生じるんですけど、4人になってスムーズになったなと思います。それが得た物かな。もちろん失ったものもありましたけどね。
――新体制(4人体制)になったNoGoDの今後をどう考えていますか?
K:俺は何も変わらないんですよ。形が変わったかもしれないけど、みんなが言うほど変わったとも思っていなくて。やっていることもやりたいことも、ありがたいことに今いる場所も一緒。そう考えると変わらないなと思うんです。やれるだけやるし、良くも悪くも周りに影響されにくい人間で良かったと思います(笑)。
――Kさんらしいマイペースぶりですね。
団長:うちは俺以外、割とマイペースですからね。自分はこういう言い方をすると悲しむ方がいるということは重々承知しているんですけど、今のNoGoD、すごく良いんです。作品を作っていて、また一歩先に進めたなと思いました。NoGoDはマイナスを掛け算してプラスに変えられるバンドなんですよ。実は、去年の秋にライブ活動を一度止めるまではベーシストを入れたいなと思っていたんです。でも4人でNoGoDをやってみて、ライブも雰囲気もすごくよくて。別に5人の時が悪かったとかじゃなく、4人になってより強固になったので、これは良い起爆剤になるなと思います。ファンの中には過去のNoGoDしか認めないという人もいるかもしれないんですけど、音源を聴いてライブを観てもらえれば、何でNoGoDを好きになったか思い出してもらえると思うので…顔ファン以外は(笑)。
K:(笑)
団長:皆様にはこのアルバムを出したNoGoDをぜひ体感していただきたいです。ツアーは東名阪でちょっとミニマムなんですけど、必ず何かしらのイベントツアー等で全国を回りますので。この作品を聴いていただければ、「私が一度でも好きになったNoGoDは、やっぱり良いバンドだ!」と体感してもらえると、太鼓判を押させていただきます。良いNoGoDを提示できたので、今加速しつつあるNoGoDから目を離さないでいただきたいです! 来年の結成15周年、デビュー10周年も色々と面白いことを考えているので、楽しみにしていただければと思います!