メリー

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9月19日、日比谷野外大音楽堂でのライブをもってメリーのギタリスト、健一が脱退する。彼が今何を思うのか。その胸中を語ったラストインタビュー。

2001年10月にガラ(Vo)、結生(G)、健一(G)、テツ(B)、ネロ(Dr)によって結成されたメリー。19年共に歩んできた健一が、2020年9月19日の日比谷野外大音楽堂でのライブをもって脱退する。2020年2月に脱退を発表し、当初は3月から始まるツアー、5月のなかのZEROホールでのライブが、この5人でのラストライブとなる予定だった。しかし、新型コロナウイルスによる未曾有の事態で、ツアーは延期、再延期と困難を極めた。そして、8月からついに始まったメリー「5 Sheep Last TOUR」ツアーを経て、いよいよ明日、メリーの健一としての最後のステージに立つ。今、彼の胸の中にある思いとは――

◆最大限、その感情は表には出さないようにしていた

――今日、9月15日は、9月19日に行われる日比谷野外大音楽堂でのゲネプロでした。メリーの健一として最後のリハーサルを終えましたが、いかがでしたか?

健一:ライブハウスを借りて本番さながらのリハーサルだったので、本当にこの日が来るんだなと、日比谷野外大音楽堂でのライブに向けての実感がすごく出てきましたね。良いリハーサルになったと思います。本番でのイメージもちゃんとできました。

――8月1日、新横浜NEW SIDE BEACH!!(CORE限定)から、メリー「5 Sheep Last Tour」が始まりました。このツアーの手応えはいかがでしたか?

健一:最後まで完走しなきゃという気持ちが強かったです。とにかく大変なときだったじゃないですか。

――そうですね。新型コロナウイルスの影響がある中でツアーが始まりました。

健一:自分からは絶対に誰にもうつさないという気持ちでやっていました。

――ツアーが始まり、ライブはどんな様子でしたか?

健一:だんだん盛り上がっていったという印象があります。ついこの前の群馬でのライブ(9月13日に開催された高崎 club FLEEZ公演)が、1番いつものツアーのようなライブになりましたね。本当に盛り上がりました。

――ステージから見えるファンの人たちの表情はいかがでしたか?

健一:楽しそうでしたね。自分としてもそれが1番なんです。ファンの人たちに楽しんでもらえることで、自分も楽しめますから。

――健一さんの地元である、群馬でのステージに立っているときは特別な思いはありましたか?

健一:高崎 club FLEEZは、自分が駆け出しの頃から出入りをしていて、1番思い入れの深いライブハウスだったので、本当に来られて良かったなという気持ちになりました。

――健一さんは、新型コロナウイルスの影響がある中でツアーを決行すると決めたとき、どう考えましたか?

健一:正直に言うと、自分はビビっていた方でした。「どうなんだろう?」という気持ちがある反面、ずっとツアーの延期が続いていたので、どうしていいかわからないという感じではありました。でも、その頃は他のバンドが誰も動いていなかったじゃないですか。誰もやっていないときに、メリーだけはやっているというのは、バンドとしてはすごく強いなと思ったんです。実際にツアーが始まってからは、感染症予防対策をしてくれている人たちのおかげでライブができているということを感じました。

――当初は、今年の2月1日に脱退を発表して、3月21日に赤羽ReNY alphaから始まるツアー、そして5月16日の、なかのZEROホールでのツアーファイナルをもって脱退の予定でした。しかし、新型コロナウイルスの影響でツアーが延期、さらに再延期になったときに、健一さんは何を思ったのでしょうか?

健一:そうなるよねという気持ちでした。仕方ないと思っていましたね。脱退を発表してからもずっといるので、気まずいなという思いもありましたけど(苦笑)。

――脱退を発表したのは2月1日ですが、自分の中で脱退を決めたのはいつですか?

健一:以前から少しずつ考えていて、メンバーに話したのは昨年の10月くらいです。多分メンバーもなんとなくわかっていたんだと思います。自然に受け入れてくれて、優しいなと思いました。

――脱退の発表の1週間後、2月8日に神田明神ホールでのライブがありました。あの日のステージで健一さんはどんな思いでいたのでしょうか?

健一:自分は感情的にならないタイプだとずっと思っていたんですけど、あの日は、いろんなことを思い出しちゃいましたね。高校の頃から学校もまともに行かずに、ギターやバンドをやってきて、ずっとこれしかやってきていなかったので、そういう記憶が自分の中でぐちゃぐちゃになりました。自分でもまさかこんな感情になるとは思わなかったです。でも、最大限、その感情は表には出さないようにはしていました。

◆メリーは1番夢に近づいた居場所

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――健一さんにとって、「メリーのギタリスト・健一」としての19年間は、どんな日々でしたか?

健一:夢ですね。1番夢に近づいた居場所でした。メリーのメンバーになるまで、そこまで人気のあるバンドをやってきていなかったんですけど、メリーになってからは大きな活動をするようになって、すごく自分の夢に近づきました。

――メリーに人気が出てきたとき、健一さんは何を思いましたか?

健一:元々、人前に立つのがあんまり得意じゃなかったので、思った以上に緊張するものなんだなと思ったりしましたね。大きなステージになるほど、上手くギターが弾けなかったこともあって、自分は向いていないのかなと思ったこともありました。

――そう思うことがありながらも19年間続けてこられたのはなぜだったのでしょう?

健一:夢を見ていたからだと思うんですよね。堅実な人の中には「夢を見るな」という人もいると思うんです。でも、自分は夢を見ちゃうんですよ。自分はサッカーが好きで、海外で日本人選手が活躍している姿を見るのがすごく好きなんです。彼らは夢を見せてくれる。だから、自分も夢を見せられるような存在でいようと思ったんです。メリーの中で自分が1番、夢を追っていたのではないかと思います。

――メリーのライブで、自分が思い描いていた夢が現実になったなと思ったライブは?

健一:メリーが過去最大のキャパシティで行った横浜文化体育館でのライブ(2008年5月開催の「Many Merry Days FINAL」公演)ですね。

――健一さんが作曲をしたメリーの楽曲で、特に思い出深い曲は?

健一:自分は割と感覚で曲を作っちゃう人なんですけど、最も感覚のみで作った曲が1曲あって。それが「ドラマティック・チルドレン」(2003年3月リリースのアルバム『現代ストイック』収録)です。本当にもう感覚のみで作ってしまっていて、コード進行もよくわからない感じだし、曲として決して良いとは言えないと思うんですけど、そこに付き合ってくれたメンバーにありがとうと言いたいです。

――歌も大変だったのでしょうか?

健一:そのとき、確かガラに「楽器みたいな声」という注文をしたら、やってくれたんですよ。よくやってくれたなと思いましたね。

――健一さん作曲以外の曲ではいかがですか?

健一:メリーの歌ものは全部良い曲ですよね。特に「チックタック」(2009年12月リリースのシングル表題曲)は、歌が入ったときに「こんな歌が入るんだ!」と感動しました。自分の想像を超えている歌だったんです。

――ライブで演奏していて好きだった曲は?

健一:「そして、遠い夢のまた夢」(2005年3月リリースのシングル『さかしまエンドロール~phantom of the gallery』収録)は、コード進行がとにかく良くて好きですね。

――健一さんの目に、メンバーはどう映っていますか?

健一:ネロは全身全霊ですね。裏表がほとんどない人だと思います。テツさんは、ステージでは自分が1番ベースの音から近いところにいるんです。だからわかることなんですけど、テツさんはミスをしないのがすごいです。

――テツさんは、現在はプレイングマネージャーもされていますね。

健一:すごいなと思います。自分には絶対無理です(笑)。結生君は、自分に寄ってきてくれる存在でした。20年近く一緒にいて、結生君は本当に音楽が好きなんだなとずっと思っていました。ガラは、最初に会ったときから歌が上手い。それはずっと変わらないですね。そして、ライブでは力を抜かない。昔からずっと本気だった。

――その姿は、この新型コロナウイルスの影響がある中でのツアーでも変わりませんでしたか?

健一:そうですね。ガラは絶対に手を抜きません。

――健一さんは、今のメリーをどう見ていますか?

健一:他のメンバーはみんな強いなと思います。心が強い。絶対に折れないメンタルを持っている。そして器用なので、状況によって変化できるのが、すごいなと思いますね。夢って遠いところにあるから夢だと思うんですよ。大きい夢ほど、遠いところにあるじゃないですか。でもその夢を追いかけているときが1番良いときというか、輝いているときだと思うんです。だから、夢を追いかけられる人は追いかけてほしいと自分は思っています。海外で活躍する日本人選手を見る気持ちと一緒ですよね。メンバーはみんな器用なので、これからもメリーに夢を見たいです。

――現時点で、脱退後のヴィジョンはありますか?

健一:こういうことをしていこうかなと考えていることはありますが、今はまだ何も決まっていません。

――ギターは?

健一:正直な気持ちを言うと、今はあんまり弾きたいとは思っていないですね。また弾きたいと思ったときがきたら、という感じです。

――当初は、なかのZEROホールでのライブで脱退する予定でしたが、メリーの歴史を語る上では欠かせない、日比谷野外大音楽堂でのライブ(※メリーが同会場でライブを行うのは、2020年9月19日のライブで通算7回目となる)になったことはどう思っていますか?

健一:本当は、自分らしくこっそり去ろうと思っていたので、すごい大舞台になってしまったという思いもあります。でも、野音が最後のライブになるということは、バンドとしても自分としても、これ以上ないくらいの舞台だと思ってます。

◆ここは終わりではなく、始まり

――健一さんにとって、メリーとは?

健一:“夢”だったと思うんですよ。この前、地元で一緒にバンドをやっていた友達から連絡をもらって、「今までバンドを続けてくれてありがとう。俺たちの夢を叶えてくれてありがとう」って言われたんです。自分ではそこまで大したことはできていなかったと思うんですけど、それがすごく嬉しくて。だから“夢”だったんだなと思いました。

――健一さんは夢を叶えた人だと思います。

健一:(笑顔で)自分にしては上出来だなと思いますね。

――脱退を前に、今ファンに伝えたいことは?

健一:1番はまず感謝です。「ありがとう」と伝えたい。そして「ごめん」とも言いたいです。期待に応えられなくて、申し訳ないなと。ただ、もしかすると、自分がいなくなった後に、メリーのファンをやめてしまう子もいるかもしれない。でも、できることなら、これから何が起こるかわからないメリーを楽しみにしていてください。メリーのライブにも行ってほしいです。

――これまで支えてきてくれた人に、健一さんから伝えたいことは?

健一:支えてくれた全ての人のおかげで、やってこられました。昔、ローディーをやっていてくれた人にも、全然顔を見せなくなっちゃった人にも、本当に全ての人に感謝しています。

――明日はいよいよ日比谷野外大音楽堂でのライブですね。

健一:ここは終わりじゃないと思うんですよ。始まりだと思うんです。自分はすごく映画が好きなんですけど、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』の中で、科学者のドクが言っていた言葉があって。「未来はもとから白紙だから。その白紙にどういう絵を描くかは、自分次第だ」と。まさに、その日から始まって、そこからどういう絵を描いて、どういう色の人生にするかは自分次第だなと。みんなそうだと思うんです。明日のライブに来てほしいという気持ちはもちろんあります。でも、今は色々とあるときなので、まずは自分の健康を第一に考えてください。

――最後に、明日のライブに向けてメッセージをお願いします。

健一:明日のライブは、メンバーが色々なアイディアを持ってきてくれて、5人で考えてきました。間違いなく良いライブになります。

メリー

(文・武村貴世子/編集・後藤るつ子)

ARTIST PROFILE

メリー

<プロフィール>

2001年10月にガラ(Vo)、結生(G)、健一(G)、テツ(B)、ネロ(Dr)によって結成されたロックバンド。パンクロックのような強烈なメッセージと、哀愁と轟音(ヘヴィネス)の融合による唯一無二の“レトロック”と呼ばれるサウンドで、型破りなライブパフォーマンスを見せる。2020年2月1日にギターの健一が脱退を発表。9月19日、5人でのラストツアー「5 Sheep Last TOUR」のファイナル公演として「5 Sheep Last Tour【FINAL】そして、遠い夢のまた夢」を日比谷野外大音楽堂で開催する。

■オフィシャルサイト
http://merryweb.jp/

【ライブ情報】

●5 Sheep Last Tour【FINAL】そして、遠い夢のまた夢
9月19日(土)日比谷野外大音楽堂