MERRYが放つ渾身のニューアルバム『Beautiful Freaks』。1年という時間をかけ、丹念に具現化された、MERRYの美しくもイビツな世界を堪能せよ!
結成10年という節目の年、MERRYが世に放ったのは「美しき異端児たち」と名付けられたニューアルバム。実に2年半ぶりとなるフルアルバムには、イビツさと優美さが同居する自らを称したタイトルが与えられ、それに相応しい16曲もの楽曲が収められた。過去を踏襲しつつ覆し、一つ一つ作り上げられた楽曲たち。驚きに満ちた1枚に込めた想いを、メンバー5人が語ってくれた。
◆初めて“人に贈るためのアルバム”を作ろうと思ったんです(ガラ)
――2年半ぶりのフルアルバム『Beautiful Freaks』。ボリューム、クオリティ共にファンが待ち望んでいた以上の名盤ですね。
ガラ:ありがとうございます。今回、移籍して(1st)シングルを出すのと同時にアルバム作りが始まって、そこに足りないピース(曲)を足して完成しました。
ネロ:制作期間も1年以上かけたんですよ。
――アルバムのテーマは?
ガラ:“退廃”っていう大きいテーマは元々あったんですが、自分たちがそれに捕らわれ過ぎていたので、もっといろんな角度から考えたんです。その時にこれまで凝り固まっていた以外のものが見えてきて、そこからどんどん広がっていった感じですね。
――“レクイエム”というテーマもあると伺ったんですが、この言葉にはどんな意味があるんでしょう?
ガラ:初めて“人に贈るためのアルバム”を作ろうと思ったんです。今までは割と自分が吐き出して気持ち良い、自己満の世界だったんですけど、ここ数年自分の周りでいろんなことがあって、もっと遠くまで自分の歌が届いたらいいなと。歌い方も歌詞の表現方法も、その想いだけで変わると思うんです。
――アルバムの方向性はどのように考えていましたか?
結生:移籍第一弾シングル「The Cry Against…/モノクローム」は、これまでのバンドの世界観と完全に切り離しました。そこからスタートして、哀愁や新しい部分が徐々に混ざり合って、アルバムが完成したんです。
――今回、収録曲があまりに多彩で1曲好きな曲を選ぶのが難しいですね。
結生:そうですね。それぞれ光ってますし、それぞれ違う色をしているので。
――そんな名盤から、ぜひここは聴いてほしい! という推しをお一人ずつお願いします。
テツ:今日リハーサルで「finale」をやったんですけど、これまでのMERRYになかった壮大な曲です。あと「絶望」はかつてないくらいベースがわかりやすく攻めてます。この曲を作るとき、フェスで一発で盛り上がる曲にしようと話し合って、形にしました。
結生:今回のギターは今までのアルバムの中で一番難しいです。アレンジがかなり複雑なので。MERRYらしさであるギターの単音のフレーズは今までで一番濃いのではないかと。特に「絶望」は、ずっとギターソロみたいな(笑)。アレンジにとことんこだわったので逆に普通のアレンジの曲がないと思います。じっくり聴いてほしいですね。
健一:自分が一番気を使ったのはピッキングの強さです。いつも速い曲とか激しい曲は力が入り気味になってしまうんですけど、音が重くならないように気を使いました。課題がクリア出来た感じです。今回メンバー全員のアレンジ期間がすごく長かったので、そういう面でもこだわることができたかなと。
ネロ:バンド的にもドラム的にも「SWAN」ですね。壮大なバラードです。14曲目まで激しくて、ドラムもバッタンバッタン言いまくってますが、「SWAN」でバンドとしてもドラマーとしてもやればできるじゃんという。ストーリー的にもエンドロールというか落とし所ですね。存在のでかい曲です。
ガラ:今回、歌のキーが全部高いんですよ。おかげでいろんなことに挑戦出来ました。実は全部2回くらいずつ録り直しているんです(笑)。もう1回歌わせてくれとか、ここのシャウトは気に入らないからもう一回やるとか、細かいところまで作り込めた。今までは癖全開で歌っていたけど、今回は曲がバラエティーに富んでいたので癖を活かす方法も色々試せました。
――次につながるアルバムになったんじゃないですか?
ガラ:いや、次は全く考えてないです。今自分ができるベストな作品をと考えていたので、むしろ「これがわかってもらえなかったらもうしょうがない」と開き直れるくらいの作品だと思ってます。次はこうしよう、という考えが今は何もない。早くこのアルバムをライヴでやりたいという思いだけですね。
――アルバムタイトルは『Beautiful Freaks』。この意味深な名前を付けたのはなぜ?
ガラ: MERRYを一言で表すとBeautiful Freaksだと思うんです。歪だけど美しいとか、バンドだけどすごく歪とか。そういうところを楽しみながら10年やってきましたから。
――自分たちの音楽のスタンスの再確認という意味でもあるんでしょうか?
ガラ:自分たちだけじゃなく、MERRYの曲を聴いてくれる人たちや曲もですね。あと“美しき異端児たち”って言葉は自分たちへの意思表示でもあるんです。こうじゃなきゃいけないよ俺らは、みたいな。
◆良い意味で期待を裏切ってきたバンドだからこそ異端と言えるし、その部分がバンドの核になる(健一)
――10周年という節目の年を迎えるわけですが、バンドをやってきた10年は早かった?
ネロ:あっという間ですね。これまでメンバーチェンジもせず好きなことを続けてこられたのは幸せなことだなと思います。
テツ:昔やったいろんなライヴとかちょっと前の事みたいに思えますし。
――10年前と変化したことは?
テツ:(バンド自体に)色んな良い肉が付いてるなと思いますね。ただ、主の部分は変わってないです。特にこのアルバムを作っているときにその芯の部分が引き締まったなと思いました。
――MERRYの芯や核って何でしょう?
テツ:やっぱりレトロな部分とか、ヘヴィネスなところとか…
ネロ:むしろキャッチーさじゃないですかね。どんなにヘヴィだろうと激しかろうとグチャグチャな曲だろうと…例えば「The Cry Against…」「消毒」「-sabbat-
みたいなキてる曲も改めて聴くとすごくキャッチーなんですよね。ポップとは違う、キャッチーさ。掴みがあるというか。それに長けてきた10年かなと。
健一:MERRYは昔から人がやらないことをやってきたんですよ。音楽にしろライヴにしろ。良い意味で期待を裏切ってきたバンドだからこそ異端と言えるし、その部分がバンドの核になるんじゃないかと。
――アルバム制作中、他のメンバーの音に良い意味で驚かされたことはありました?
ネロ:日々ですね。曲作りをしているときから、プリプロしているときも。もちろん、ぶつかり合いもありました。戦ってますからね。戦い終えてから一致団結する。
――10年間、同じメンバーで同じ音楽を作るということは、やはりバンドとしての団結力があるんだろうと思うんですが。
ネロ:今回のアルバムは今まで一番チームプレーが出来たと思います。今までは独断ドリブルの人もいたし…まぁそれはそれで成り立ったんですよね。それくらいイビツでしたし。
――独断の人、とは?
ネロ:僕なんか特にそうかもしれないですね(笑)
――(笑)。今回のレコーディングで何かエピソードはありますか?
結生:レコーディングの時に初めてみんなのやっている細かい事がわかって、その化学反応を楽しんでいた部分もありましたね。
ネロ:例えば激しいけどシンプルなドラムの曲の場合、自分が(音を)押さえた分、誰かが前に出るわけですよ。そりゃー、睨みきかせちゃいますよ。僕は(音を)押さえてるんですもん。どんなものを聴かせてくれるんだと。それがあんまりぐっとこなかったら突っ込み入れちゃいます。僕も散々言われましたけど。完成して聴いたときはすごい達成感でしたね。最近やっと、いちリスナーとして客観的に聴けるようになってきてます。
――ところで、このアルバムを聴いて、音のクリアさに驚いたんですが。
ネロ:あ! そうなんです。海外のミックスエンジニアに頼んだんですよ。その方々の更なる料理により、このサウンドが生まれました。
結生:シングルの「モノクローム」でイェンス(・ボグレン/OPETHやSOIL WORK、DIR EN GREYの仕事歴で知られるエンジニア)に任せたんですけど、音の太さとか、すっきりした分離とか、バランス加減の大胆さだったり予想以上のものが返ってきて、アルバムもお願いしようと。
ネロ:僕たちの新しいものや往年のレトロをどうミックスしてくれるのか、すごく楽しみにしてましたね。時差もあるので(ミックスした音が)夜中に届くんですけど、大音量で聴くと興奮して眠れなかったし。「SWAN」はオジー・オズボーンとかやってる人だったんですよ。
結生:ここまで生々しいけど歌をきれいに出せた曲は無かったかなと思いますね。
◆BeautifulとFreaks、そのイメージの先のライヴをしたい(テツ)
――ここまで読んで、読者の方のアルバムへの期待も相当高まっていると思います。アルバム発売2日後にはツアーが始まるので参加する方に心得を。
ガラ:聴きこんできてほしいです。アルバムを聴いて「これ、ライヴでやったらどうなるんだろう!」って思った2日後には初日の横浜ですから。ライヴ一本一本、楽しみにしてもらった倍以上に返したい。プレッシャーもあるんですが、それを超えていかないと11年目とか先は無いなと思うので。
――今回は夏の長いツアーですが、ツアー前に体力作りはしているんですか?
テツ:走ったりしてますね。ステージに立つ者として体力作りはしないと。
結生:俺もやらなきゃと思っているんですけど…
ネロ:やってないんでしょ?
結生:…やってないです。前回のツアー「freak show」に何もせず臨んで肩にキたので、やらないと、と思いつつ。
健一:自分も確実にやったときの方が動きながら演奏しているときの感じが違うので、やらないとなって感じです。
――ネロさんは? 長いツアーはドラマーには大変だろうなと思うんですが。
ネロ:イメージトレーニングしてます。こんなことしたらびっくりするかなとか。構想を練りながら。でも究極を言うと僕しかいないですからね。リズムを止めたら死刑だと思っているので。そのためには何だってします! 全身全霊で!
ガラ:僕も家の周りを走ったりとか。結構爆弾抱えているところが多いのでストレッチしたり。今回長いツアーなので心配なんですけど、あんまり気がちっちゃくならないようにしたいなと思います。これだけのアルバム作ったら責任取らなきゃいけないですからね!
――今回のツアーはBeautiful DayとFreaks Dayの2パターンでライヴを展開するそうですが。ほぼ交互に行われますがそれぞれどんな内容になりそうですか?
テツ:それぞれの単語のイメージがあるじゃないですか。BeautifulとFreaks、そのイメージの先のライヴをしたいなと。Freaksだったら異形の者っていう、Beautifulだったらこれまでの自分たちの軌跡をたたえるようなセットリストでも良いと思うし。
――この二つは対照的というか、決してイコールにはならない言葉ですよね。
ガラ:僕は、二つはそんなに離れていない気がするんですよね。変な例えですけど美しい場所って危ない場所にあるじゃないですか。山を登らないときれいな景色が見えないというか。それと一緒で、遠くから見たり噂で聴いていてもMERRYの音楽はどんなものなのか自分で触れてみないことには分からないと思うんですよね。このサイトを通じてMERRYを知ってもらって、ライヴ行ってみようと思ってもらえたらなと思います。
――良いコメントですねぇ。
ガラ:…あれ? 俺まとめちゃいました?(笑)
――良い締めの言葉ありがとうございました!
(文・後藤るつ子)
MERRY
<プロフィール>
ガラ(Vo)、結生(G)、健一(G)、テツ(B)、ネロ(Dr)の5人によって2001年10月に結成されたロックバンド。パンクから歌謡曲までさまざまなジャンルを大胆にクロスオーバーさせたサウンドでたちまち話題に。哀愁とヘヴィネスの融合による唯一無二の“レトロック”を進化させながら、これまでに6枚のオリジナルアルバムを発表。7月27日移籍後初となるアルバム『Beautiful Freaks』をリリース。
■オフィシャルサイト
http://merryweb.jp/
『Beautiful Freaks』
2011.07.27発売
(FIREWALL DIV.)
1年という制作期間で作り上げられた16曲を収録。“美しき異端児たち”と名付けられたこの1枚でMERRYの今を堪能できる。
【収録曲】
<ディスク1 / AUDIO>16曲収録
1. -choral-
2. finale
3. モノクローム
4. ザァーザァー
5. Fleeting Prayer
6. -sabbat-
7. 不均衡キネマ
8. 絶望
9. スカル
10. 夜光
11. クライシスモメント
12. 消毒
13. The Cry Against ME
14. アイデンティティー
15. SWAN
16. -dawn-
※初回生産限定盤A、初回生産限定盤B、通常盤共通
<ディスク2 / DVD>
【初回限定盤A】
*MERRY SONIC 10 WINTER ~Special 2night [白い羊] [黒い羊]~ at SHIBUYA-AX 20101229 より初回生産限定盤Aには[黒い羊]、 初回生産限定盤Bには[白い羊]の模様を収録
【初回限定盤B】
*MERRY SONIC 10 WINTER ~Special 2night [白い羊] [黒い羊]~ at SHIBUYA-AX 20101229 より初回生産限定盤Aには[黒い羊]、 初回生産限定盤Bには[黒い羊]の模様を収録