美しくも激しく、力強くも繊細。荘厳な合唱が彩る音楽の新境地。摩天楼オペラ渾身のフルアルバム『喝采と激情のグロリア』をフィーチャー!
他の追随を許さない圧倒的なセンスと卓越した技巧で、具現化された楽曲たち。今回、新たに取り入れた「合唱」によって、彼らの持ち味であるシンフォニックなサウンドは、繊細かつ大胆により深く進化を遂げ、12通りの類い稀な美しい音楽として私たちの前に姿を現した。聴く者の心の奥深くに触れるような楽曲たちを手に、留まる事を知らず、常に貪欲に更なる高みを目指す摩天楼オペラ。5人のスペシャルインタビューをお届け!
◆セッションしながら作るから、ちゃんとバンドの作品として生まれ変わる(Anzi)
――今回のアルバムタイトルである『喝采と激情のグロリア』は、シングル『GLORIA』の頃から掲げていたテーマだそうですね。
苑:はい。最初、合唱をやりたかったんです。そのために、1曲で表現するよりも、長いスパンで表現したいと思って。“喝采と激情のグロリア”という言葉自体は、シングル『GLORIA』の歌詞を書いているうちに、ポッと出てきたんですが、“喝采”はシングル『GLORIA』(“栄光”の意味)を、“激情”は次のシングル『Innovational Symphonia』を表していて、今回のアルバムが『喝采と激情のグロリア』ということで、段階を踏んでいるんです。
――このアルバムでテーマが完結したんでしょうか?
苑:そうです。
――摩天楼オペラは、昨年3月に1stアルバム『Justice』をリリースして、同年10月にシングル『GLORIA』をリリースするまでの期間、ライブ活動を一時休止していましたよね。『GLORIA』の段階で掲げたこのテーマには、バンドの新たなる一歩という意味はあったんですか?
苑:直接このテーマとは無関係ですが、シングル『GLORIA』はバンドのリスタートという意味で“光り輝く栄光へ向かう”という意味があったと思います。
――アルバムの全体像はどの段階で決まったんですか?
Anzi:このテーマを掲げた時から、それぞれに妄想はスタートしていたと思います。1stアルバム『Justice』のツアーが終わったあたりで、このテーマが出てきて、ちょっと長いスパンでコンセプト的なものを決めてやっていこうと話し合ったんです。その時、ドラムの悠とベースの燿が、職業病で腕や指を痛めていて、プレイするのが難しい時期だったんですが、その分ミーティングが濃厚にできたので、その段階でシングルからツアーファイナルまでの大雑把な全体像は見えていました。レコーディングでは、このとき考えていたものをブラッシュアップして、より良くしていく作業をした感じです。
――レコーディングといえば、摩天楼オペラは特殊な作業をしているイメージがあります。
彩雨:レコーディング自体は他のバンドさんと同じですよ。
Anzi:違うのは曲の作り方ですね。最近はPCで楽曲が作り上げられちゃうこともあって、作曲者が他のパートまでアレンジをして作りこむという人も多いようですが、うちは本当に古典的で、コード進行とメロディだけの素材に対して、スタジオでセッションしながら作るんです。だから、作曲者個人の作品にならずに、ちゃんとバンドの作品として生まれ変わる。そういう根本が違うから、他のバンドさんにはない独特のサウンド感にはなるのかもしれません。
――DTMに頼らない曲作りは、昨今ではレアかもしれませんね。
悠:確かに。プリプロはちゃんと作ってからレコーディングに望むんですけどね。むしろ、あんなに作り込むバンドは珍しいかも。レコーディング中にアレンジを固めるバンドさんもいますからね。
Anzi:うちらはレコーディング前に固めたら、大幅なブレはなく、割とスムーズにレコーディングを終える感じですね。
彩雨:今回参加した合唱の人たちは、レコーディングのその日に初めて楽譜を見て曲を聴いて、1~2回練習しただけで本番やっていましたけどね。
苑:まじで!? すごいなー。
Anzi:それがスタジオミュージシャンの仕事ですから。
彩雨:そういう意味では、俺らはバンドらしいというか、スタジオミュージシャン的な発想でバンドをやっていないんですよね。バンドさんによっては、サウンドプロデューサーがいて、その人の言う通りにやっている人たちもいるんですけど、うちらはセルフプロデュースなので、“音楽をやっている”という感じがします。
――皆さんの音楽がブレないのはそのせいかもしれませんね。
◆全員で一つの曲の作業をして、完成したものは全員が納得したもの(燿)
――それにしても今回のアルバム、合唱をやりたいという衝動が如実に表れていますね。
苑:そうなんです。半分以上が合唱曲になりました。
――作曲の段階で合唱曲にすることを計算に入れて作っていたんですか?
彩雨:作曲の段階で合唱がないと成り立たないものもありましたし、合唱を入れなくても良かったけれど後から入れてみた、というものもあります。4曲目の「悪魔の翼」は合唱ありきでメロディも作っていますね。「永遠のブルー」は最後に女声コーラスが入るんですけど、最初のプリプロ段階では合唱を入れる予定はなかったんです。でも、僕が入れたかったから入れました。違うアルバムに違う形で入っていたら合唱は入らなかったかもしれません。
燿:曲を作ってる最中、みんなで意見を出し合っているので、曲はどんどん変化していきますね。うちは全員で一つの曲の作業をして、完成したものはその段階で全員が納得したもの、という状態なんです。
――今回、全員納得するまで一番時間がかかった曲はどれですか?
苑:揉めたのどれだっけ(笑)?
彩雨:「SWORD」かな。
悠:「喝采と激情のグロリア」は時間がかかったよね。
Anzi:でもうちは2時間くらいで1曲できるから、時間がかかってるうちに入らないからね(笑)。
――2時間!?
Anzi:僕らはみんなそれなりに音楽に対するボキャブラリーが豊富で、例えばコード進行のパターンを変えずにボーカルに合わせたキーに上げ下げするとき、すぐに書き直して、みんなでセッションしながらこねくり回して「はい完成」ってなるんです。テンパって「明日まで待って」なんて言うメンバーがいないんですよ。ま、そんなメンバーがいたらクビですけどね(笑)。僕らはミュージシャンを仕事としてやってますから。
――厳しい…でもさすがですね。
Anzi:うちは優秀なんです(笑)。
悠:まぁアレンジは大体、ファーストインプレッションで決まっちゃう場合が多いですけどね。1発目か2発目で決まって、あとはその中で少し変えたりするくらいです。
――このペースならアルバムもすぐできちゃいますね。
Anzi:そうですね。時間がかかるのは彩雨だけです。彼は受け持つトラック数が多くて、合唱も彼が計算しなくてはいけないので。ギターは曲作りした次の日にレコーディングしても良いくらいの最低限のプレイしかしてません。楽なポジションです(笑)。
――Anziさん、あのギター弾いていて楽ってことはないと思いますけど(笑)。
Anzi:僕、基本あんまり考えてないんで(笑)。
――それにしても、摩天楼オペラはレコーディングのトラック数が総体的に多そうな気がします。
燿:うちは多いですよー。
彩雨:相当あります。うちはレコーディングスタジオがすごくちゃんとしていて、インディーズの時とトラック数を比べると、ドラムの量が全然違いますね。ギターも1回の録りで、いろんなところにマイクを置いて音を混ぜたり。そういう意味ですごく増えてますね。ドラムもバスドラを録るのに同じ位置に違うマイクを置いたり、距離を変えて置いたりしてますから。
――同じ位置に違うマイクを置いて録る、というアーティストに初めて遭遇しました。
悠:スネアも上と下に2個マイクを置いてます。「邪魔だなー」って思いながら。
全員:(笑)
――邪魔だなと思ってるんですね(笑)?
悠:そりゃ、ない方が叩きやすいですよ。
Anzi:間違えてマイク叩いちゃうと「ちょっと高級だからヤバいぞ」ってなるしね。
悠:大丈夫! 全部カバーが付いてるから(笑)!
彩雨:(笑)。キーボードも一旦綺麗にまとめて、スタジオでもう一回鳴らしてから、いろんなところにマイクを置いて収録したのを混ぜたり…そういうマニアックなことをしてます。うちはパート数とトラック数が噛み合ってないんですよね。
Anzi:エンジニアさんにトラック数減らしてって言われたもん(笑)。
◆変化球でも摩天楼オペラの振り幅の広さを表せた(彩雨)
――みなさんそれぞれの、アルバムの聴きどころを教えていただけますか?
悠:このアルバムで初めて摩天楼オペラを聴く人もいると思うんですけど、そういう人にはまず「GLORIA」を聴いて欲しいです。今、俺たちのライブは、オーディエンスと一緒に歌いながらやるんですけど、こういうライブって、なかなかこのシーンでは見ることができないと思うんですよ。
――確かになかなかないですね。
悠:そうなんです。日本人はどちらかというと、聴く方に徹しているんですよね。それが良いところでもあると思うんですけど、僕らはヨーロッパとかアメリカでライブをやってオーディエンスが歌ってくれた時の気持ち良さを知っているので、メンバーからこういうライブをやってみたいという意見が出てきて。そのきっかけになったのが「GLORIA」で、ここから昔の曲もみんなが歌ってくれるようになったので、ぜひ聴いて欲しいですね。
――演奏する側からするとオーディエンスが歌ってくれるのは嬉しいものですか?
悠:嬉しいですよ。曲が浸透しているってわかるし、人の声の集合体には心をグッと捕まれる時がありますから。
――確かに! ではAnziさんは?
Anzi:僕は10~12曲目の終盤3曲の流れが推しポイントです。アルバムを聴いたらリスナーの方はこのあたりでハイライトのような印象を受けると思うので、そこを楽しんでもらえたら嬉しいですね。ここは曲の並びはもちろん、曲の繋がり方や間は特にこだわったし、今聴いてもここは僕的には鳥肌ゾーンなので。
――この3曲を終盤に入れたのはなぜでしょう?
Anzi:「喝采と激情のグロリア」をラストに入れるのは最初から決めていたんです。そうしたら、この曲の前に大げさな前奏が欲しくなったんですよ。それで、11曲目にインストゥルメンタルを持ってきて、曲頭はピアノから始まるようにアレンジしていたんです。それと同時に「永遠のブルー」を作っていたんですが、曲終わりは色々試した中でピアノで終わろうということになって。で、ここを繋げたらかっこいいんじゃないかと。
――確かにこの3曲はごく自然で美しい一つの流れがありますよね。
Anzi:楽しんでいただけると嬉しいです。
彩雨:僕の聴きどころは、変化球なんですけど、5曲目の「Freesia」です。この曲は、普段、摩天楼オペラでは使わないような音色と音階を使っていて、それがこの異国感を出しているんですが、こういう変化球でも摩天楼オペラの範疇で収まっているということでうちのバンドの振り幅の広さを表せたかなと。こういうところにも注目していただけたら嬉しいです。
――「Freesia」の曲頭の異国情緒たっぷりな弦の音は、鍵盤で出しているんですか?
彩雨:鍵盤です。元々あれはシタールという、ギター的な楽器なんですけどね。
――この曲はシタールの音色と、苑さんの歌声がエキゾチックですよね。
苑:あの歌い方がやりたくてこの曲を作ったんです。昔はああいう唱法ができなかったんですけど、できるようになった今こそ!と思って(笑)。ちなみに僕のおすすめの聴きどころは「喝采と激情のグロリア」の大サビの、〈永遠を生む 私たちのグロリア ここで生まれて ここで命を落とすの〉の部分です。ここで、僕の上ハモリと下ハモリを重ねていて、そこにさらに合唱の方々がコーラスで入ってくるんですけど、他の合唱部分はハモリがない単品ばかりなのに、ここは声が重なりまくっているんです。じっくり聴いて欲しいですね。
――荘厳ですよね。良いヘッドホンで聴きたい箇所です。では燿さんの聴きどころは?
燿:そうですね。全曲捨て曲なしの、統一感はありつつもバラエティに富んだ楽曲たちなので…全部聴いてもらって、気に入った曲があればそれがあなたの聴きどころですってことで。
全員:まとめんなよ(笑)!
――ものすごく綺麗に締めていただきました(笑)。
燿:あれ!? 結構真面目に答えたんだけどな(笑)。
◆わかってるけど認めたくないんだ! 俺はMだって!!(悠)
――1stアルバム『Justice』からちょうど1年ですが、この1年は摩天楼オペラにとってどんな年でした?
彩雨:いろんなことがありましたね。ドラムとベースの腕や指のことがあって、これまでのバンド活動の中ではなかったくらいの期間、ライブをやらなかったんです。でも、その一方でこの1年で2回も全国ツアーをやっていて。これも実はこれまでで初なんですよ。長いこと休んでいたくせに実はライブは結構やっているので、何か不思議な感じです。
――かなりアクティブな1年だったんですね。
彩雨:そうですね。楽曲も結構作りました。去年の10月、12月にリリースしたシングルはカップリングがそれぞれ3曲ずつあって、短い期間に一気にたくさんレコーディングしたんです。それも今までなくて。夏はみんなずっと曲作りをしていて、スタジオにこもっていたし、やることはやったなって気がしますね。
燿:「これ、ライブやってたら間に合わなかったよね」って話をよくしてました(笑)。
Anzi:あの休みがあったからこそ、この作品が…休んでよかったね(笑)。
全員:(笑)
――それにしても今日のインタビューで摩天楼オペラの印象が変わりました(笑)。
悠:うちのバンド、よく怖そうって言われるんですけどねー。何でですかね。
燿:お前のヒゲじゃない?
悠:俺のことだったの(笑)!? でもうちはニコニコ動画で番組やったりしてますからね。
Anzi:僕とか、ダウンタウンさんが大好きですし。前にイベントで、純粋にギターを始めた子の「どうしたらギターが上手くなれますか?」っていう純粋な質問に「お笑いを観ろ」って答えたことありますからね。
全員:(笑)
Anzi:そこにはア―トがあるんですよ。
――摩天楼オペラは結成から6年目を迎えるわけですが、お互いに目新しい発見はありました?
悠:うーん、彩雨くんが時として暴君になるくらいですかね。
燿:去年からだよね。
悠:ブレイクしたよねー。まさかのニコ動で。あの時はドSだもんね。
彩雨:昔は自分はもっとドSだと思ってたんですけど、どうなんですかね…。
Anzi:いや、自称Sの俺から言わせると、アヤックス(彩雨)はMだと思うよ。
苑:僕も年々Mになってきたしなぁ。
彩雨:もう年を取っちゃったな。もうガツガツいけない…。
悠:Sは疲れるよね。俺、Sじゃないのかなって最近思うようになったもん。
Anzi:悠君は違うよね。リアルなところ、Sは俺と燿さんだと思うよ。
燿:…わかってるよ! わかってるけど認めたくないんだ! 俺はMだって!!
全員:(爆笑)
燿:今年一番面白かった!
◆来た人の人生の記憶に残るようないつまでも覚えているような瞬間を残したい(苑)
――すごいカミングアウトでしたが、Anziさんと燿さんは、何かカミングアウトすることありますか?
Anzi:僕はあんまり私生活でも裏表がないんですけど、この前、付き合いが長い友達に「え、Anziくんてスーパー行くの?」って言われたんですよ。俺、私生活でもそういうキャラなのか!と思って(笑)。なので、私生活では突然ポップでキャッチーな男の子になる、というわけではないです。
悠:(笑)。カミングアウトは「実はスーパーに行きます」で良いんじゃないの?
――ある意味すごいカミングアウトです(笑)。燿さんは?
燿:最近気づいたんですけど、駅の階段で上りと下りって矢印が書いてあるじゃないですか。俺あれを無視する人が許せないんですよね。俺が上りの矢印がある方を上っているときに、そこを下ってくる人がいても絶対よけないです。その時、俺、頑固だなって思いました。
悠:あんたは頑固だよ。
苑:大群が来たらどうするの?
燿:よけない! だって矢印は上だもん! モラルを守れない人が許せないんだよね。警察の職務質問も許せないし。僕、結構怒るんですよ。
悠:うん。すげー怒るんですよ。見たことないくらい怒る。
燿:俺が何かしたていで言ってくるからカチンとくるんだよね。
悠:面白いけどね(笑)。
――皆さんの意外な一面を知ってしまいました(笑)。4月24日からスタートする全国ツアー「GLORIA TOUR-sceneⅢ-」、ZEPP TOKYOで行われる「GLORIA TOUR-GRAND FINALE-」が楽しみです。
苑:「GLORIA TOUR」 をsceneⅠ、sceneⅡとやってきて、最初にオーディエンスに提示した合唱がどんどん大きくなってきているんです。最近では合唱曲以外でも歌ってくれるようになっていて。sceneⅢでは合唱曲自体が増えるので、ライブがすごく楽しみです。SEから万歳していきたいくらい意気込んでます。半年間の集大成がZEPPになるので、来た人の人生の記憶に残るようないつまでも覚えているような瞬間を残したいですね。
Anzi:今、一つのテーマを掲げて走っていますが、ZEPPをやって、力果ててさよならではなく、そこから未来が楽しみになるようなライブにしたいなと思っています。ZEPPのステージで収まりきらないような、武道館やドームでこの楽曲を聴いたらどういう風になるのか、オーディエンスが妄想してくれるようなライブにしたいですね。
(文・後藤るつ子)
摩天楼オペラ
<プロフィール>
苑(Vo)、Anzi(G)、彩雨(Key)、燿(B)、悠(Dr)の5人から成るロックバンド。2007年12月より現メンバーでの活動を開始。インディーズシーンで精力的に活動し、2010年12月22日、ミニアルバム『Abyss』でメジャーデビュー。2011年7月メジャー1stシングル『Helios』で、オリコンウィークリーチャート初登場16位を記録し、同年10月にはメジャー2ndシングル『落とし穴の底はこんな世界』を発表。2012年3月、メジャー1stフルアルバム『Justice』を発売。10月に3rdシングル『GLORIA』、12月に4thシングル『Innovational Symphonia』をリリース。
■オフィシャルサイト
http://matenrou-opera.jp/
摩天楼オペラ「喝采と激情のグロリア」SPECIAL SITE
http://matenrou-opera.jp/kgg
『喝采と激情のグロリア』
2013.3.6発売
(King Records =music=)
摩天楼オペラのメジャー2ndフルアルバム。シングル『GLORIA』から掲げてきたテーマを完結させた1枚。
【収録曲】
01.-overture-
02.GLORIA
03.Plastic Lover
04.悪魔の翼
05.Freesia
06.CAMEL
07.Merry Drinker
08.SWORD
09.Innovational Symphonia
10.永遠のブルー
11.Midnight Fanfare
12.喝采と激情のグロリア
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アナザージャケット1種ランダム封入(全5種)特殊パッケージ仕様