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1年8ヵ月ぶりとなるlynch.のニューアルバム『ULTIMA』が完成! 5人が作り上げた“現時点での「究極」”を収めた待望の最新作、その魅力に迫る

多くのファンが待ちわびていたであろうlynch.の最新フルアルバムが完成した。前作アルバム『XIII』から1年8ヵ月という時を経て届けられるこの作品に冠されたのは“究極”を意味する『ULTIMA』。葉月が“現時点での”という言葉を添えたうえでの究極の作品は、今この瞬間のlynch.の魅力を色濃く映し出し、これからの彼らの更なる飛躍を予感させる1枚となっている。珠玉の12曲が絶妙なバランスで展開していく最新作を、まずはじっくりと心ゆくまで堪能していただきたい。現在、15周年の只中にある彼らが、「act」と題して精力的に展開している数々の活動を華やかに彩るであろうこの作品について、ヴォーカルの葉月にじっくりと話を聞いた。

◆絶対的なものをぶつけられるバンドに

葉月

――アルバム、圧巻の仕上がりでした。

葉月:ありがとうございます。めちゃくちゃしんどかったですけど、やっと終わりました。

――作詞がかなり大変そうでしたが、大丈夫でしたか?

葉月:大丈夫じゃなかったです(笑)。1月は丸々、歌録りをしながら作詞をしていましたからね。僕は、シャウトはエンジニアを通さずに自分で録るので、エンジニアとのメロディー部分のレコーディングが終わった後も、シャウトがてんこ盛りで残っていて。しかも、シャウトの歌詞ってすごく書きにくいんですよ。普通のメロディーと同じようには書けなくて、この語感だとこの音が出ないとか色々制限があるんです。今回シャウトが多いので、しまったなーと思って(笑)。

――今回、時間がかかったのはなぜだったんでしょう?

葉月:単純に作業量が多かったのかなと思うんです。『XIII』に比べると随分早く全部の曲ができていたし、今までよりも余裕がある状態でスタートできたはずなんですけどね。しかも終わるときはヌルっと終わるんですよ。「あ、終わったのかな…?」と思ったら、「じゃあ〇日に取材です」と言われるので、「やったー!」という感じではなく徐々にという感じなんです。

――もっと盛大に、めでたい感じで終わるのかと思っていました。

葉月:そういうことは、なかなかないんですよ(笑)。

――さて、今回のアルバムはちょっと含みのあるタイトルですね。

葉月:『ULTIMA』というのは“最後の”という意味らしいんですけど、僕が付けたときのイメージとしては“究極の”を意味する「ULTIMATE」の略くらいのつもりでいたんです。だから全然深い意味はないし、これが最後とか、これが究極でこれ以上のものは出せないという訳では全くなくて、単純に語感とイメージしていた世界観からですね。タイトルが決まったのはかなり後でした。制作が始まった段階で「近未来的要素を取り入れてみよう」とメンバーにLINEをして、色は青みがかかった黒でと伝えてアーティスト写真やMVの撮影をしていく中で、僕の中で「ULTIMA」という言葉がイメージにピタッと合ったんです。メンバーには「“最後の”とか“究極の”って、意味的に逆に足かせにならないかな。大丈夫?」という相談はしましたけど。

――皆さんからの返事は?

葉月:サラッと「いいんじゃない?」って(笑)。それに、これは現時点での“究極”であって、この後またすぐ更新しちゃいますから。

――まさに究極の最新作ですが、フルアルバムにすることはいつ頃決まったんでしょう?

葉月:形態に関しては、フルアルバム以外の選択肢はなくて。『XIII』を出した時にレコード会社に、「もうしばらく出したくない!」という話をしたんです。まぁ、基本的には1年に1枚は出してねというノリではあるんですけど。

――ノリ…?

葉月:契約ですね(笑)。だけど僕は、1年に1枚だとペースが速すぎてもったいないなと思うんですよ。その作品を大事にし切れていない感じがするじゃないですか。なので、アルバムを作るのはしんどいし、『XIII』も大事にしたいし、ちょっと休みたいからできるだけ次のリリースまでの期間を空けたいと伝えたんです。ただ、あんまり出さないと僕らもツアーのやりようがないし、新しい曲があったほうが取材もしていただけるんですけどね。

――『XIII』を掲げて活動していた期間はかなり長かった印象です。

葉月:そうですね。でも、メジャーになってからはこういうペースですけど、インディーズの頃なんて3~4年に1枚っていう、外タレかベテランみたいなペースでしか出していませんでしたからね(笑)。

――そうでしたね(笑)。それにしても、これまでにリリースされた作品を見渡してみると、シングルよりも圧倒的にアルバムが多いというのが実にlynch.らしいです。

葉月:確かにうちはあんまりシングルを出さないですね。何形態も出すような売り方をしないので、シングルだとあんまりよろしくないんですよ(笑)。それに、音楽的にもシングルという感じではない気がしていて。僕が好きな海外のアーティストも、作品はやっぱりアルバムばかりですし、シングルが出てもこちらも「来た!」とは思わないですからね。

――ちなみに、この取材の時点ではまだ、今回のアルバムが何曲入りなのか明かされていないので、ファンの方々はかなり気になっているようです。

葉月:そうなんですよ。頻繁に聞かれるんですけど、まだ発表されていないことを俺が言う訳ないじゃないですか(笑)。でも何曲入るのかは大事なことなのかな。「8なのか? 15なのか!?」みたいな。

――心待ちにしていた最新作ですから、皆さん気になるところだと思いますよ。今回は12曲入りですが、選曲の段階で何曲くらい出ていたんでしょう?

葉月:13曲ですね。いつもジャストなんですよ。10曲入りなら10曲しか出さない。今回、悠介君の曲がもう1曲あったんですけど、それは次回にしてくれと伝えて12曲です。

――個人的にアルバム『EXODUS-EP』(2013年リリース)の時の、「23曲出して6曲にした」という話が、強く記憶に残っているのですが。

葉月:あの時、そんなに出たんでしたっけ! 確かに曲出しにすごく苦労した記憶があります。最近はそういうことはないですね。

――作品のヴィジョンがしっかり見えているからでしょうか。

葉月:そうですね。まず1曲できて、その曲がヒントになって、足りない要素を足していくんです。この曲ができたならこういう曲もほしいという連鎖で、欲するものを作っていくだけなんですよ。そうすると、「あぁバランスが良くなったな。この曲はちょっと入れるのが難しいから次回にしよう」となる。こういう流れにしようと最初から決めているわけではないんです。むしろ、最初に全体を決めて作るというやり方はしたことがないですね。

――だからlynch.の作品は1枚を通して聴いたときに違和感がないんですね。

葉月:うん。違和感はないと思います。

――『XIII』は歌に特化したアルバムでしたが、今回の作品で意識的に特化させた部分はありますか?

葉月:ずっと自分の中で目標があって。最近フェスによく呼んでいただいて、自分たちのことを知らない人の前に出ることが多かったんです。例えばルナフェスだったらジャンル的にホームじゃないですか。そうじゃなくて、完全にアウェーで、何なら色眼鏡で見られるところから始まるような状況のステージが多かった。そういう所にポンと出たときによく言われるのが、「lynch.ってヴィジュアル系だけどカッコよかったな」とか「lynch.って何なの? ヴィジュアル系なの? ラウド系なの?」ということだったんです。僕としてはそれが悔しいんですよ。「ヴィジュアル系なのに」とか「ヴィジュアル系だけどカッコよかった」っていうのは、結局ヴィジュアル系というものにまだ縛られている証拠だし、「lynch.って〇〇なの?」「××なの?」って言われると、じゃあどちらかだったらダメでどちらかだったらいいんですか?と思うんです。まだジャンルに縛られているというか、lynch.という存在がわかりにくいのかなと。

――なるほど。

葉月:僕は、「初めてlynch.を観たけどカッコよかったな。あんなロックの形があるんだね」と思ってもらえるくらいの、絶対的なものをぶつけられるバンドになりたいという気持ちがあった。だから、次の作品ではそうなれるような方向にバンドを持っていってくれるものを作りたかったんです。それはこういう音楽をやろうとか、こういう曲調でとか、そういうことで済む話ではなく、本当に全部がピタッと一致していないとダメで、写真もMVも音楽も歌詞も、それでもまだ足りなくて、宣伝の打ち出し方一つまで重要になってくるんだろうなと思うんですよ。まずはそこに向かうという目標があって、それを念頭に置いて曲を作っていました。それで具体的にどうしたと言われると難しいんですけどね。

――大きくも明確な目標です。葉月さんは最近、評価のされ方について触れていましたよね。「数字を求めることは悪じゃない」という言葉が印象的でした。

葉月:僕はずっと数字命ですからね。「わかるやつだけわかればいいんだぜ」という考えではないです。成績こそが全て。内容は良くて当たり前なんですよ。ファンの人が「良かったです」と思ってくれるのは当たり前で、それが大前提の上で良い成績を取りたい。そこで満足していたら全然足りないです。

――「僕は自分が信じたこの音楽で、いずれ1位を獲りたい」ということでしたが。

葉月:現時点で1位は絶対無理ですけどね。

――即答ですね。

葉月:まだ絶対無理です。そこがわかっていないと逆にダメですよ。自分たちの立ち位置を理解せずに「今回1位を目指しているんですよ!」とか言っているやつはずっと1位になれないです。まだ絶対獲れないですけど、いずれはと思っています。

――本当に冷静に現状を見ているんですね。1位奪取はいつ頃を見据えているんでしょう?

葉月:どうでしょうね。でもあんまり時間が経っちゃうと、ヴィジュアル面での勝負が難しくなっちゃうじゃないですか(笑)。

――いやいや(笑)。でも例えば、The Birthdayのチバさんのような魅力もありますよね。

葉月:でも、僕らとは全く違う魅力ですからね。lynch.がああなれるかと言われると難しい。今僕らはチバさんにはできない良さを武器としてやっているので、そこがまず損なわれますよね(笑)。実は僕、今朝まさにチバさんの動画を観ていたんですよ。昔、フジロックでTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTが1曲目で中断したときの。

――偶然ですが、私も今朝「ペットボトル事件」の動画を観ていました。

葉月:お、偶然ですね! それも観ようかと思っていたんですよ(笑)。フジロックの動画のチバさんがめちゃくちゃ若かったんですけど、今のほうがカッコいいなーと思いながら観ていました。

◆覚悟をもって聴いてほしい

――今回のアルバムを聴くにあたって、ファンの方に伝えておきたいことはありますか?

葉月:まず再生する前に、シャッフルになっていないかを確認してほしいですね。本当に好きなアーティストの新譜を買って再生したときに、シャッフルになっていた時のショックたるや…! 「これ、1曲目じゃなかったのか!」という、アーティストの意向に沿えなかったあの罪悪感。もう一度1曲目に戻して聴いても、もう初聴じゃないですからね。そのくらいの覚悟をもって聴いてほしいです。

――これは重要ですね。それにしても、今作はイントロダクションがないのが新鮮でした。この始まり方は『EXODUS-EP』以来ですね。

葉月:迷ったんですけど、毎回入っているので今回は入れるのをやめてみようかなと思ったんです。「ULTIMA」は始まり方に特徴があっていいなと思ったので、無しでもいいかなと。あと、この曲は僕の中ですごくこだわりがあって、再生してから音が流れ出すまで1秒あるんですよ。最初にマスタリングで上がってきた時は再生した瞬間に音が出ていたんですけど、ちょっと色気がないなと思って1秒だけ空けてもらったんです。これが結構効くんですよ。空けていないものと比べるとよくわかるんですけど、再生ボタンを押してからその一瞬で「さぁ、どう来るんだ?」という気持ちの整理ができる。そこにはこだわりましたね。

――アルバムの頭の1秒とは盲点でした。続くリード曲の「XERO」は河村隆一さんがコーラスワークで参加されていますが、これはどういう経緯で実現したんでしょう?

葉月:去年の夏に開催された隆一さんのイベント(「RK presents Children of the New Age ~新時代の子供達へ~」@Zepp Tokyo)に参加させてもらって以来、何度か食事をさせてもらったんです。すごく優しい方で、その時に「俺たちはファミリーだから、何でも言って。コーラスとかいつでもやるから」って言ってくださったんですよ。

――何て優しい…! 隆一さんは今年1月の葉月さんの単独公演「奏艶」を観た後、「どこにもない時間をありがとう」とブログに書いていましたね。

葉月:そうなんです。本当に優しい方なんですよ。アルバムの制作が始まって、「ところで、先日言っていたコーラスって、本当にやっていただけるんですか?」と聞いたら、「もちろんやるよ」と言ってくださって、あれよあれよという間に決まった感じです。

――Jさんがベーシストとして参加した「TRIGGER feat. J」(2017年リリース)のアルバム『SINNERS-EP』のリード曲)の時は、Jさんに仮オファーをしてから曲を作り始めたということでしたが、今回は?

葉月:今回は既に「XERO」という曲があって、コーラスを入れてもらうならここ、というところまで決めた状態でお願いしました。せっかくやっていただくならリード曲だと思いましたし。

――隆一さんがコーラスで参加しているということで、穏やかな曲を想像していたのですが、再生して驚きました。

葉月:「激しいな!」って(笑)?

――はい(笑)。しかも、とても贅沢な使い方ですよね。

葉月:出てくるのが最後の最後ですからね(笑)。あと、サビの真ん中のファルセットも隆一さんです。そこも最後も僕と半々くらいで混ぜてますね。

――隆一さんの声と葉月さんの声はとても相性が良くて、見事に調和していました。中でも最後の〈永遠に いのちを奏で〉が美しすぎて。

葉月:最初はもっと隆一さんの声は小さくてもいいのかなと思ったんです。でも、抜けがすごすぎて小さくならないんですよ(笑)。強い声ですよね。これはもう出すしかないし、出さないともったいないなということで今の感じで入っています。

――『XIII』の時、Jさんのワンテイクの美学に触れたそうですが、隆一さんもワンテイクなんでしょうか?

葉月:あの方はご自身のスタジオで録るんですけど、多くても3回くらいしか歌わないそうです。しかも、全部通して3回歌って「あとはよろしく」と帰るらしくて。僕は結構細かくAメロだけ、サビだけを3回ずつ歌っていきます。

――葉月さんは、歌録りでは自分が欲しいニュアンスを得られるまで部分的にやり直すと言っていましたよね。

葉月:昔はそうでしたね。耳に技術が追い付いていない状態だったので、欲しいニュアンスが表現できるまで時間がかかったんですよ。今は最初に1~2回歌った段階で、「こうすればいいんだな」というのがわかるので、それを3回くらい歌って、エンジニアに良い所を選んでもらう感じです。でもJさんがワンテイクにするのもわかるんですよ。何回も何回もやっていると、こなれていって勢いもなくなるし、緊張感がなくなっていくんです。

――少ないテイク数だと最初の衝動が閉じ込められるんですね。

葉月:僕も衝動はありますけど、まだワンテイクで抑えられる自信はないですね。もちろん、ライブDVDはワンテイクですけど、音源レベルではなかなか。

――それにしても、夢のようなコラボでした。lynch.は作品を経るごとLUNA SEAの面々との絡みが増えていっていますね。

葉月:僕からしても夢のようですよ。あとはSUGIZOさんと真矢さんだけです。でも、うちにはドラマーがいますからね(笑)。

――ついに晁直さんとのツインドラムが…

葉月:いやいや、どうかなー(笑)。

◆その上昇志向、その思いこそが〈ねがい〉

――「今書いてる歌詞がただの変態 でも男の正直なキモチ 読んで引いてください」というツイートがずっと気になっていたのですが、「EROS」の歌詞は比喩ではなく、まさにド直球でした。

葉月:もう何も気にせず、嫌われる覚悟で全てを曝け出しましたからね(笑)。

――これと双璧をなすような「GROTESQUE」(アルバム『XIII』収録曲)は、「あの曲に関しては女性に引かれる覚えはありません」ということでしたが、今回は「男の正直な気持ち」ということで。

葉月:言うても、これは大分偏っていますけどね。僕はこうですけど(笑)。

――〈貴女に射舞りつきたい〉という漢字も目を引きます。葉月さんは、『XIII』で悠介さんの歌詞を一部平仮名にしてもらったそうですが、そういうところにもこだわっているのかと驚いたんです。

葉月:そうそう。そういった意味では今回僕は「ULTIMA」があまり気に入っていなくて。内容はすごく気に入っていますけど、見たときに美しくないんです。字ばっかりで(笑)。もちろん歌詞なので字ばっかりなんですけど、他の歌詞は見た目も美しいじゃないですか。でも「ULTIMA」は漢字ばっかりで、かと言って平仮名にできる漢字もなく、意味的に歌詞を変えたくもなかったので、困ったなー…と言いながら終わりました(笑)。これしかないので、仕方がないなと思って。歌詞を読まない人からしたら本当にどうでもいいことだと思うんですけど、それくらい歌詞の全体を見た時の姿は気にしますね。

――それはもう、デザイナーや編集者の考え方ですね。

葉月:歌詞ってパッと見たときに絵みたいに見せられるんですよ。だから僕は、改行の位置や一行空ける場所もすごく気にします。大事なところは前後1行空けてあると目に付くし、聴いたときにドキッとさせられると思うので。

――視覚的な美しさも追求しているんですね。lynch.の歌詞カードの見方が変わりました。

葉月:最近、サブスクでも歌詞が出ますけど、あれがどう出ているのか気になっているんですよ。ちゃんとやってくれているのかなと。間に「(間奏)」とか出てないかなとか(笑)。

――ありそうです(笑)。ところで、「EROS」は悠介さん作曲ですが、こういう歌詞がのるということはどの段階で伝えたんですか?

葉月:そもそも悠介君の曲の仮タイトルが「EROS」だったんですよ。じゃあこういう歌詞にしようと思って。まぁ、男は皆変態ですからね(笑)。

――文字通りエロス全開の歌詞でした。一転して、「ZINNIA」と「IN THIS ERA」は歌詞に〈死〉という言葉が出てきますが、今回のアルバムは2曲ずつ、歌詞に共通する言葉が見られたので、対になっているのかなと思ったんです。

葉月:僕、両方に〈死〉という言葉が入っていることには昨日気づいたんですよ。あ、そうなんだと思って(笑)。なので、全然意識していなかったんです。

――意図せず出てきた言葉だったんですね。「ZINNIA」は一癖あるアウトロも聴きどころです。あっさり終わったと思わせておいて…という。

葉月:おまけみたいなやつですよね。あれも全部悠介君がやってくるので、僕は音楽に関しては何も関与していないんです。歌を歌っているだけなんですよ。

――そして、個人的には「IDOL」のメロのセンスがたまらない!と思ったのですが。

葉月:これは絶対、皆好きだと思うんです。最初に歌メロが突然浮かんで、iPhoneに録音して持っていたんですけど、ちょっとポップすぎるかなと思って。でも、そろそろアルバムの曲を出さないといけないというときに、じゃあこれをやってみるかということで作ってみたら意外といけるなと思ったんです。しばらくやっていないんですけど、「LIE」(2011年リリースのアルバム『I BELIEVE IN ME』収録)のような方向性もlynch.の中ですごく良い要素だと思うので、そっちの方向で作ってみようということで組み上げた曲です。

――この曲のサビのヴォーカルの色気がたまらなかったです。特に末尾の歌い方。

葉月:お、そうですか。ありがとうございます。それにしても、このド歌謡曲が「ALLERGIE」の次に入っているからすごいなと(笑)。

――それでいてバランスが取れているのが、このアルバムの凄さだなと思いました。アルバムのラストは「EUREKA」です。今回久々にラストの曲の前で落としたので、最後に何が来るんだろうと思っていました。

葉月:『GALLOWS』(2014年リリースのアルバム)と『D.A.R.K. -In the name of evil-』(2015年リリースのアルバム)がこのパターンですよね。落としてからの「PHOENIX」、落としてから「MOON」みたいな。

――この曲は明確にライブを意識して作っていますよね。

葉月:そうですね。ものすごく計算高く作られていて、ラストを飾れる曲はlynch.にはたくさんあるんですけど、その中でも一位を目指した曲です。ラスト部門優勝!みたいな。どういう要素があれば人気が出るのかを考えたんですよ。メロディーの良さ、歌詞の良さ、曲調と色々あると思うんですけど、間奏をどうしようと思ったときに、このパターンが突如浮かんだんです。シンガロングだけにしてみたらすごいことになりそうだなと。当然もうライブの景色が見えますよね。そこで優勝を確信しました。

――間違いなく優勝です。ところで、歌詞の〈ねがい〉とは何でしょう?

葉月:何でしょうね。具体的には無いんですよ。だって嫌じゃないですか、「宝くじ当たれ!」とかだったら(笑)。どの曲もそうなんですけど、僕が歌詞で書くのは“生まれて生きて死ぬ”ということ、その中でどうするかという話でしかないんです。それ以外に特別書きたいことはないんですよ。「IDOL」は別ですけど、他の曲はほぼ全部同じことを言っていて、生まれて生きて、僕は生きている以上は進んでいきたい、上っていきたいと思っているので、それ自体が願いみたいなものなんです。例えば「武道館でやりたい」とかそういうことではなく、その上昇志向、その思いこそが〈ねがい〉ですね。

――葉月さんがSNSで書いていた、「いまこの曲は僕のデスクの上にしか存在しないけど、これがメンバーの手に渡って、アレンジが加わって僕の歌詞と歌がのって、それがスタッフの手に渡って、ステージや照明のプランが決まって、そして最後に皆のパワーが乗っかる 凄いことになる予感しかしない」という言葉通りになりそうな曲です。ファンの方々が思い描いている光景が具現化されるのが楽しみですね。

葉月:そうですね。スタッフも仕掛けがいがありそうですし。この曲はデカいところでやりたいんですよ。「ULTIMA」ツアー(「[XV]act:5 TOUR’20 -ULTIMA-」)は小さいライブハウスが多いので、もどかしいんですけど。

――このツアーは26本ということでなかなかのボリュームです。

葉月:多いなー。『XIII』の時は35本やっていたので、lynch.の中では特別多いわけではないんですけど、去年がちょっと少なかったですからね。

――前回お会いした時は「act.0」が始まる前でしたが、もう「act.10」まで発表されています。前回のインタビューで今後の展開について、「骨組みは決まっているので、盛り上げて盛り上げて、最後はボーンと打ち上げる」と言っていましたが、これは決まりましたか?

葉月:決まりました。大きく打ち上がればいいなと思っています。「EUREKA」が映えると思うので、楽しみにしていただけると。『XIII』が出て、ツアーを回って、ステップアップが1段できたという感覚があるんです。act.10に行く頃には、そのステップアップが2段、3段くらいできるんじゃないかと思っているので、それを押し上げるくらいの気持ちで応援してほしい。ちょっと手伝ってくれると嬉しいです。

――このアルバムで打ち上がると凄いものが見られそうです。

葉月:いや、まだ新しい何かが出るかもしれませんよ…? まだ2月ですからね、何があるかわかりませんよ。

(文・後藤るつ子)

ARTIST PROFILE

lynch.

<プロフィール>

葉月(Vo)、玲央(G)、悠介(G)、明徳(B)、晁直(Dr)から成るロックバンド。激しくもメロディアスな楽曲と圧倒的なライブパフォーマンスでシーンを牽引する。2011年6月、アルバム『I BELIEVE IN ME』でメジャーデビューし、多数の作品をリリース。2018年8月、アルバム『Xlll』と共に13周年に突入。2019年9月18日、『Xlll』の世界観を約4年ぶりのホールツアーを通してフィルムに収めた映像作品『HALL TOUR’19「Xlll-THE LEAVE SCARS ON FILM-」』をリリース。4月18日より、ニューアルバム『ULTIMA』を掲げ、「[XV] act:5 TOUR’20 -ULTIMA-」をスタートさせる。

■オフィシャルサイト
http://lynch.jp/

【リリース情報】

ULTIMA
2020年3月18日(水)発売
(KING RECORDS)

ULTIMA
[数量限定豪華盤]
KICS-93904
¥9,000+税
(2CD+Blu-ray+Photo Book)
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[初回限定盤]
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¥3,500+税
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ULTIMA
[通常盤]
KICS-3904
¥3,000+税
(CD only)
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【収録曲】

[CD]※全形態共通
DISC1:
01. ULTIMA
02. XERO
03. BARRIER
04. EROS
05. ALLERGIE
06. IDOL
07. ZINNIA
08. IN THIS ERA
09. RUDENESS
10. MACHINE
11. ASTER
12. EUREKA

DISC2:ULTIMA VOICELESS DISC(全12曲収録)

[Blu-ray]※数量限定豪華盤のみ
・XERO MUSIC VIDEO
・XERO MUSIC VIDEO MAKING
・[XV]act:1-XV BIRTHDAY-SHADOWS ONLY 19.12.27 NAGOYA CLUB QUATTRO
01. ADORE
02. 59.
03. dizzy
04. vernie
05. CRYSTALIZE
06. an illusion
07. SORROW
08. quarter life
09. GALLOWS
10. EVIDENCE
11. INVADER
12. A GLEAM IN EYE

[DVD]※初回限定盤のみ
・XERO MUSIC VIDEO
・XERO MUSIC VIDEO MAKING

【ライブ情報】

●[XV] act:5 TOUR’20 -ULTIMA-
4月18日(土)岐阜club-G
4月19日(日)静岡SOUND SHOWER ark
4月25日(土)熊本B.9 V1
4月26日(日)鹿児島CAPARVOホール
4月29日(水・祝)福岡DRUM LOGOS
5月8日(金)高崎club FLEEZ
5月10日(日)KT Zepp Yokohama
5月14日(木)仙台RENSA
5月16日(土)青森 Quarter
5月17日(日)秋田Club SWINDLE
5月23日(土)山口RISING HALL
5月24日(日)岡山CRAZYMAMA KINGDOM
5月30日(土)和歌山SHELTER
5月31日(日)奈良EVANS KINGDOM CASTLE HALL
6月6日(土)新潟LOTS
6月7日(日)富山MAIRO
6月13日(土)帯広MEGA STONE
6月14日(日)北見オニオンホール
6月16日(火)札幌PENNY LANE24
6月27日(土)高松オリーブホール
6月28日(日)松山WStudioRED
7月4日(土)沖縄桜坂セントラル
7月5日(日)沖縄桜坂セントラル
7月12日(日)Zepp Nagoya
7月18日(土)なんばHatch
7月26日(日)TACHIKAWA STAGE GARDEN