ガーデンシアターを最高のライブにして一段上にステップアップしたい(葉月)

新曲「BRINGER」は、ストレートかつキャッチーかつこれぞlynch.という楽曲です。
葉月:そうですね。わかりやすいものにして、たくさんの人の心を掴んで、東京ガーデンシアターに呼び寄せようという魂胆です。
この曲はいつ頃作られたんでしょう?
葉月:これは今年の6月ぐらいかな。「GREEDY DEAD SOULS / UNDERNEATH THE SKIN」のツアー中ですね。
前作に収録された「GOD ONLY KNOWS」は、実は元となった曲が2008年に作られていましたが、この曲は本当に最新作なんですね。歌詞の〈あとどれだけ歌えるだろう?〉という部分に、葉月さんは大丈夫だろうかと心配していました。
葉月:大丈夫ですよ(笑)。今まではそんなこと思っていなかったんです。考えるようになったのは、ここ最近かな。僕は今42.5歳ぐらいなんですけど、本当に最近になってこういうことを思うようになってきたんですよ。
ソロの新曲「灼華」にも〈迫りくるLIMIT〉という言葉がありましたね。
葉月:そうですね。そもそも、ソロを始めたのもそういう気持ちからだったりするんですよ。自分が五体満足というか、いわゆるピークと言われる期間中に、少しでもできることはやっておきたいなと思うようになって。まだおじいちゃんになったことがないのでわからないですけど、これから技術を上げていくことはできても、フィジカルの面ではできることが減っていくと思うんです。そういうことを考えなくていい時間って、すごく貴重だなと思って。lynch.の活動もそうですし、ソロもそうなんですけど、この時間を無駄にしないようにやりたいという意思の表れです。
今回も、葉月さんの歌詞によく出てくる〈夢〉という言葉が使われていますが、これは未来に向けての〈夢〉なのでしょうか。
葉月:色々ありますけど、それこそ東京ガーデンシアターのアリーナ公演だって夢の夢のそのまた夢だったんです。今後、音楽をずっと続けていくというのも夢だし、小さい会場でギューパンでやるのだって夢に描いたものの一つです。「BRINGER」に、〈残酷な”時”は流れ 夢枯らしていくのか〉という歌詞が出てくるんですけど、夢というのはこの活動自体を表す言葉なんですよ。新たに特定のこれという夢があるわけではなく、夢が今現在進行中みたいな状態なんです。
玲央:前作のツアーの楽屋で、セカンドリテイクアルバムに新曲を入れるんだったらこういう感じかな、という打ち合わせしていたので、初めて曲を聴いたときはその通りのものが投げられたなと思いました。歌詞は、葉月自身の「最近こういう風に考えているんです」という発言がすごく反映されているという印象ですね。言い換えると、自分自身に向き合ったすごく素直な言葉で、今の気持ちをファンに届けたいんだろうなと。それを受け取るファンは、僕らと一緒に歩んでいく同じ気持ちの人たちだと思うんです。もちろん新しく寄り添ってくれる方もいらっしゃると思うんですけど。剥き出しという表現が一番しっくり来るのですが、剥き出しな今のlynch.を反映している曲という印象です。
今現在のlynch.が詰め込まれているんですね。
玲央:『ALLIVE』(2020年12月リリースのアニバーサリーデジタルシングル)の時は、みんなでここに向かって行こうよという一つの目標があって、そこに向かっていく印象だったんです。今回も、それに近いことは近いんですけど、20年という歩みも含めて「BRINGER」の方がみんなで一緒に行こうよという感じがもっと強いなと思います。あちこちからここに集まるのか、出発点が一緒で、みんなで一緒に歩いていくのか…僕自身はそんな違いを感じました。
20年も一緒に活動してきた上で、そういう思いでいられるのは稀有なことです。
玲央:興ざめするかもしれませんけど、僕の中ではまだたった20周年という感じなんですよ。あっという間だなって。20年もバンドを続けてすごいですねってよく言われるんですけど、あんまりピンと来ていないんですよね。だって皆さんも、お仕事を20年くらい続けられるじゃないですか。だから真摯に向き合っていたら20年経っちゃった、という言い方の方が近いかなと思うんです。20年やることが目標じゃなかったから、もう20年かという感覚なんですよ。
一歩一歩進んでいったら20年経っていたんですね。
玲央:そういうことです。
きっと玲央さんは、すでに次の10年のことを考えているんだろうなと。
玲央:考えています。でもネタばらしをしないように、あんまり口を開かないにしないと(笑)。
(笑)。さて、今回せっかくVif初のお二人での取材なので、20年前からのお二人の歴史を聞かせていただきたいのですが、お互いの第一印象を覚えていますか?
玲央:葉月は名古屋の若手の後輩という印象はありつつも、僕ら世代にはない感性をすごく持っているなと。葉月自身は10代半ばからオリジナルのバンドをやっているので、芸歴の世代的には一つ下なのかもしれないですけど、年齢は二世代下なんですよ。だから僕ら界隈がよしとするものだったり、ライブの組み方や楽曲の作り方だったりが違って、面白いなと思いました。あともう単純に声がすごいという印象でしたね。
葉月さんから玲央さんをバンドに誘って、一度断られたんですよね。
玲央:それは僕自身も覚えています。断った理由は、葉月単独ではなく、葉月がやろうとしていたバンドが幼すぎたというのが一番大きいんですよ。当時「一緒にやろうと思っているメンバーがいるんですけど、どうですか」という感じだったんですけど、そういう事情でお断りしたんです。
その後、葉月さんが組んだベリィの音源を聴いて驚かれたそうですね。確かに、当時から葉月さんの声は他にはない魅力がありました。
玲央:僕の中では、『妖幻鏡-sea-』(2002年12月リリースされたオムニバスアルバム)に入っているベリィの「リワインド」という音源が1番良いなと。そして、あの短期間で成長できるのはやっぱり若さ故だし、自分に持ってない感性をいっぱい持っているなというのは思いましたね。
葉月さんは玲央さんの第一印象は覚えていますか?
葉月:覚えているのが第一印象なのかはもうわからないんですけど、活躍されているkeinのギターの方! スター!という感じでしたね。
玲央:当時、葉月が一緒にやっていたバンドのベーシストがkeinにローディーで来ていたんですよ。その子が、「うちのメンバーを連れてきます!」って言って、当時あったミュージックファームの系列のCDショップの前で挨拶したんですよ。出入り口の前の駐車場が溜まり場になっていて、そこで会ったのが初対面だったと思います。
葉月:うわ、keinの人や! こんなとこに普通にいるんだなと思いました(笑)。
玲央:僕は実家がすぐそばだったので、暇だとしょっちゅう歩いて行っていたんですよ。そこに行くと大体誰かいたので。怖い先輩もいましたけど(笑)。
葉月さんにとって玲央さんは圧倒的先輩だったわけですが、一緒にバンドをやらないかと自ら勧誘したのはすごいです。
葉月:他に一緒にやりたいと思う人がいなかったんですよ。そのタイミングでちょうど玲央さんはkeinが終わって、僕も自分のバンドが終わったので、お互いどこにも所属していなかった。そういう人の中ではもう圧倒的な存在だったんです。
玲央:当時、僕が27歳で、葉月は18~19歳だったかな。まだ成人式前だったよね。
葉月:そうですね。でも、玲央さんを最初に誘ったときにOKをもらってバンドを組んでいたらGULLETが結成されていなかったんですよね。そう考えると、あの時に一緒にやらなくてよかったかもしれないです。GULLETがあってよかった(笑)。
確かに(笑)。20年前からずっと一緒にやってきて、お互いの立ち位置や相手への印象はいつ頃変わりましたか?
玲央:明確に変わった時期というより、お互いに年齢を重ねて大人になっていくわけじゃないですか。なのに、10代の葉月と20代、30代、40代の葉月の扱いが一緒だったら問題ですよね。彼自身もフォロワーや後輩というものが増えているわけで、周りが僕と葉月の関係性を見ていて、今の葉月に10代の葉月と同じ扱いをしていたら、それは良くないと思うんです。これはバンドの話というより、社会に出たらみんなそうだと思うんです。葉月だけじゃなくて他のメンバーに対しても、極力そういう風にしていきたいというのが僕の考え方なんですよ。
いつまでも後輩扱いではないんですね。RYUICHIさん(LUNA SEA)が葉月さんを、「すごく勉強熱心」だと言っていましたが、玲央さんから見ても葉月さんのそういう点はどう思われますか?
玲央:探求心、好奇心、対象を研究するという貪欲さですね。多分、RYUICHIさんも同じことをおっしゃっているんだと思うんですけど、気がついて思うだけなら誰でもできるんですよ。でも、それを実際に自分のものにしたいと思って手を伸ばすことって、ほとんどの人はできないんですよね。諸々の事情があって諦めてしまう人が多い中、葉月は必ず手を伸ばして掴みに行くというか、手にするまで諦めない。そういう部分は他の人にはないなと思いますね。
葉月さんは、元々大先輩だった玲央さんが、メンバーという見え方に変わったタイミングはいつだったんでしょう?
葉月:やっぱり結成時かなぁ。大先輩ではなくメンバーの玲央さん、になりましたね。もちろん、とは言え…というところはありますけど(笑)。
玲央:やっぱり年齢の開きが与える影響は大きいですよね。バンド内では僕と明徳との年齢差が一番大きいので特にそれを感じます。
明徳さんは永遠の末っ子感がありますが。
玲央:でも実はHAZUKIバンドだと末っ子感がないんですよ。
葉月:HAZUKIバンド内で年齢的には真ん中なんですよね。TSUYOSHI君(G/Unveil Raze)とか響君(Dr/摩天楼オペラ)とか、もっと年下のメンバーがいるので。
玲央:なのでちょっと兄貴風を吹かせているんです(笑)。でも僕はそうあるべきだと思うんですよ。これでlynch.の立ち位置のままHAZUKIバンドをやっていたら、「年下がいるんだし、もうちょっと引っ張ってやりなよ」って思いますもん。「向こうは不安なんだから、自分が不安にさせてどうするの」って思っちゃうので。でも彼の立ち回りを見ていると、自然にそれができているのが嬉しくもあり、大人になったなぁと思うこともあり。そんな年上目線で見ています(笑)。
結成時3人だった頃は、無骨な男臭いバンドだったというlynch.に、悠介さんが入って明徳さんが入って、変化しながらまた次の10年が始まるというのは感慨深いです。その大きな足掛かりとなるのが、12月の東京ガーデンシアター公演ですね。
葉月:僕的には全てが東京ガーデンシアターのためにあるんです。ガーデンシアターを成功させるためにイベントを成功させて、LUNATIC FEST.でもお客さんを勝ち取って、ワンマンツアーもライブを重ねて、地方からも東京に来たいと思わせたい…こうやって全部が繋がっていて、ガーデンシアターを最高のライブにして、動員的にも成功させて、一段上にステップアップしたいんです。その上で、来年また新しい作品を作ろうとなった時に、より注目が集まるような状態にしたいと思っています。
玲央:20周年プロジェクトのファイナルがガーデンシアターなので、ここをきっちり決めないとこの先の10年、20年の流れが変わってきてしまうなと思っているんですよ。新たに一つひとつ丁寧に、でも勢いを持って向き合っていかなければいけないなと思っています。あとは寒くなってきますので、Vifと言えば健康ということで(笑)。体調管理に気をつけて全力で駆け抜けていこうと思います。
(文・後藤るつ子)
lynch.
葉月(Vo)、玲央(G)、悠介(G)、明徳(B)、晁直(Dr)
オフィシャルサイト
リリース情報
『THE AVOIDED SUN / SHADOWS【数量限定盤】』
2025年9月24日(水)発売
(KING RECORDS)

[数量限定盤](CD+Blu-ray)KIZC-90783〜6 ¥9,900(税込)
収録曲
[Disc.1:CD]『THE AVOIDED SUN』
- LIBERATION CHORD
- I’M SICK, B’CUZ LUV U.
- ROARING IN THE DARK
- ECDYSIS
- FORGIVEN
- ANEMONE
- THE UNIVERSE
- DAZZLE
- ENEMY
- PROMINENCE
- FROM THE END
[Disc.2:CD]『SHADOWS』
- LAST NITE
- ADORE
- MAZE
- EVILLY
- I DON’T KNOW WHERE I AM
- AMBIVALENT IDEAL
- THE BLASTED BACK BONE
- SHADOWZ
- CULTIC MY EXECUTION
- MARROW
[Disc.3:CD]『BRINGER』
- BRINGER(新曲)
- AN ILLUSION
- DOZE
- A GLEAM IN EYE
- ALL THIS I’LL GIVE YOU
- JUDGEMENT
[Disc.4:Blu-ray]
- BRINGER(新曲)Music Video
- BRINGER(新曲)Music Video Making
ライブ情報
●lynch. 20th ANNIVERSARY PROJECT “XX act:7”
「LIMITED 3 DAYS」 Spotify O-WEST
10月13日(月・祝)〈MEN’S ONLY〉
10月14日(火)〈WOMEN’S ONLY〉
10月15日(水)〈SHADOWS ONLY〉
●lynch. 20th ANNIVERSARY PROJECT “XX act:9”
TOUR’25「THE AVOIDED SHADOWS」
10月24日(金)大阪BIGCAT
10月26日(日)高松Olive Hall
10月27日(月)神戸VARIT
11月1日(土)福岡DRUM LOGOS
11月3日(月・祝)鹿児島CAPARVO HALL
11月5日(水)広島SECOND CRUTCH
11月14日(金)富山MAIRO
11月16日(日)金沢EIGHT HALL
11月21日(金)仙台RENSA
11月22日(土)秋田Club SWINDLE
11月24日(月・祝)函館 club COCOA
11月26日(水)札幌cube garden
12月5日(金)Live House 浜松窓枠
12月6日(土)名古屋DIAMOND HALL
●lynch. 20th ANNIVERSARY PROJECT “XX FINAL ACT”
lynch. 20TH ANNIVERSARY XX FINAL ACT「ALL THIS WE’LL GIVE YOU」
12月28日(日)東京ガーデンシアター