この曲はもう自分自身そのもの
9月の「Phantom」公演@恵比寿ザ・ガーデンホールで「雫」を初披露しましたが、原曲を誰も知らない状況下でアコースティックver.を先に披露してしまうという異例の展開でしたよね。
KIRITO:バラードなのでアコースティックにアレンジしやすいかなと思って。逆にアコースティックを聴いてもらったうえで原曲のアレンジの違いを聴いてもらうのも面白いかなと思ったので、やってみました。
メッセージ性の部分でも繋がりが素晴らしかったです。温かさや願いというものを強く感じて、「雫」に続いた楽曲が「SIGHT」「ホログラム」「PRAY」だったことも、この曲の色を象徴するものだったなと。
KIRITO:曲と曲の繋がりみたいなものは作っている時はあまり意識していないんですけど、結果的に新旧織り交ぜてやっても何か繋がりが見えるというのは、僕が作る曲の特徴というか。自然とそうなるものなんだと思うんですけど、作っている時はあれと繋げよう、これと繋げようとは考えていないんですよね。
アルバム収録の「雫」は歌とピアノのみで1コーラス進んでいきますが、過去にこの形をやったことはありましたか?
KIRITO:どうだろう…ちょっと覚えてないですけど、多分ない気がしますね。
KIRITOさんの声がかなり近く感じられますよね。
KIRITO:そうですね。前半はそういうのを意識してリバーブ的なものを全部カットして、ピアノに対して歌がノンエフェクトで乗っかることで、耳元で歌っているような聴こえ方になるように作りました。
歌録りはスムーズでしたか?
KIRITO:どれもスムーズでしたね。曲順通りに録っていきました。近年は割とそうしているんですけど、今回も1曲目から順番に歌を録っていったので、ストーリーの流れも自ずと感じながら表現できましたね。1曲目の「テロメア」の感情から最後の「I BLESS YOU」に繋がっていく流れのグラデーションを、録りながら自分で感じながら表現していたので、そういうのも伝わればいいなと思います。
「雫」からの「Storyteller」、そして最後の「I BLESS YOU」はストレートでリアリティのある歌詞ですよね。「Storyteller」はKIRITOさんの人生と決意表明のような曲だなと。タイトルも、自分の生き様をアーティストという立場を通して、全てをストーリーとして見せていくというKIRITOさんの生き方を映し出したものなのではと思いました。
KIRITO:まさにそれですね。自分はヴォーカリストだけど、別の肩書きを付けるとしたらストーリーテラーだなと思ったので、この曲はもう自分自身そのものです。前評判というかファンの人的に、アコースティックライブでの先行披露やYouTubeでの全曲ダイジェストを聴いたりして、「雫」がわかりやすくバラードなので胸に響いているとは思うんですけど、実際のところ自分的にはむしろ「雫」の後の「Storyteller」のほうが泣けるんですよね。
とてもわかります。
KIRITO:なので、実際アルバムがリリースされてから、じっくり歌詞を聴きながらちゃんと流れで聴いてもらうと、「雫」も良いんだけど「Storyteller」のほうがグッと来ると思いますね。
この3曲は曲調としても優しさがあるので、あえて3曲を連続させずに間に「RAID」「NEOSPIRAL」が入ることによって作品としてすごくバランスが取れているんだろうなと。
KIRITO:ストーリー的にも必然的にそうなるし、楽曲の聴かせ方も激しければいいというわけではないし、バラードが特別ということでもないので、全体のバランスを考えてアルバムそのものを表現する時に、もうこれしかないという並びで曲がハマっていきましたね。
ラストの「I BLESS YOU」はキャッチーな楽曲で、多幸感溢れるライブの画が見えます。
KIRITO:これはライブでこうなるだろうなというのを、すごく考えて作りました。まだ今は時期的にコロナの問題がどうなるかわからないですけど、本来のライブの形に戻った時には皆で合唱できるようなセクションもあったりという、すごくライブを意識したアレンジにはなっていますね。
あの英詩部分はいずれ皆で歌うことを想定しているわけですね。
KIRITO:そうですね。そういう考えで作りました。
この楽曲の歌詞は、KIRITOさんが関わってきた全ての人たちへのメッセージというふうに感じました。
KIRITO:過去に対してどうという意味合いはあまりないですけど、自分自身と聴いてくれる人に対しての未来を考えたうえでの世界観で書きましたね。
10月26日に公開された全曲ダイジェストで、他の楽曲は全てサビ部分でしたが、「I BLESS YOU」に関してはサビではない英詩部分をチョイスしていて、これはKIRITOさんなりの意図があるんだろうなと。
KIRITO:そうそう、自分で編集している時に直感的に「I BLESS YOU」に関してはサビじゃないなと思ったんですよ。それで変則的にあの部分を持ってきちゃったんだけど、それはなぜかと言ったら、この曲を象徴している部分がむしろサビではなくてここにあるからという感覚だろうなと思うんですよね。
なるほど。例えばこれが最後のサビ部分だったりすると、断片的に作品の結末が見えてしまうという懸念点もあるかなと。
KIRITO:確かに、そういう部分もありますね。
全曲ダイジェストを公開して、ファンの方からの反応はいかがですか?
KIRITO:やっぱり「楽しみです」とか「早くフルで聴きたいです」という反応はいっぱい届いているんですけど、今回特に今までとちょっと違うなと思ったのは、スタッフやミュージシャンの人だったり、業界の中でのウケが良いなと。しばらくぶりの人からわざわざ連絡が来たり、「Discord」のMVを見たり音源を聴いて「すごく良かったよ」と連絡をくれる人が結構多かったんですよね。
物理法則すら壊そうと思っている
11月12日のYOKOHAMA Bay Hallから「KIRITO Tour 2022-2023「THE CREATING REAL WORLD」」がスタートし、年明け1月7〜8日のSpotify O-EASTまで続きます。今年4月30日〜6月5日に開催された前ツアー「KIRITO Tour 2022「THE EMERGENCE OF ANTIMATTER」」で“KIRITOソロ”の新しい形が構築されましたが、あのツアーで見えたものはどのようなものでしたか?
KIRITO:Angeloが1月に活休前ラストライブをやって、そこからソロとして初めての本格的なツアーだったから、あれをやったことでこれから先も行けると思ったんですよね。バンドとはまた違う形でも、自分の100%をステージで表現してやっていけるという確信が生まれました。ただ、前回は配信リリースした新曲3曲が軸にあったうえで、あとは昔作った曲でセットリストが構成されていたから、今回『NEOSPIRAL』の曲が軸になってセットリストがガラッと変わると、自分の100%の勢いがより加速していくなと。そういう自信に溢れていますね。
個人的に前ツアーで感じていたのが、サポート陣と共に“チームKIRITO”を皆で一緒に構築していこうという思いが、結果としてどこかピースフルな空気が充満することに繋がっていったのかなと。
KIRITO:どうかな。色々な見せ方ができるので、「ANTI-MATTER」からの3曲の方向性の違いからの今回の「Discord」だったり…多分、誰も本当の意味で俺のことは読めないと思うんですよ。ピースフルなものも作れるけど、いつだってAngeloよりPIERROTよりストイックで刃物のような緊張感のある見せ方はできるし、断片で俺を読むことは誰にもできないですね。そういう意味では『NEOSPIRAL』でのツアーというのは、実際観てもらえれば一番わかると思うんだけど、僕がバンドをやってきた流れを考えても、どのバンドよりもどの時代の瞬間よりも、一番緊張感があって鋭くて、全てにおいて上回っているということを普通に見せていきます。だから、バンドだとかソロだとか、プロジェクト、ユニット、呼び名は何だっていいけど、そういう次元じゃないんですよ。もう、KIRITOという概念なので。
常に攻撃的であってこそKIRITOさんですから、そこに期待している人は多いんじゃないかなと思います。
KIRITO:そうなんですよ。ヴィジュアル面でもそうかもしれないし、「Discord」のMVも『NEOSPIRAL』という音源も、やっぱりどれに関しても「これをやっている人って本当に50歳だよね?」という言葉をよく聞くんですけど、それを一番感じるのはこれからやるツアーですよと。それどころじゃない、本当に何歳なんですか?っていう時間の物理法則すら壊そうと思っているので。一番激しいし、一番すごいものになる確信しかないですね。
やっぱり最新が最高のKIRITOさんですからね。
KIRITO:そうですね。色々なことが証明されると思いますよ。これまで皆さんが持っていた固定観念みたいなものがぶっ壊れて、一回戸惑うと思うんですよね。バンドって何だっけ?とか、KIRITOって何だっけ?とか(笑)、今まで与えられた材料で判断していた概念みたいなものを全部壊そうと思っているんですよ。Angeloが活休した時に、「やっぱりバンドのヴォーカルのキリトが見たかった」みたいな声も結構あったんだけど、今回『NEOSPIRAL』を聴いて、ツアーを観て、そのうえでもう一回同じことを言えるか聞いてみたいなと思っていますね(笑)。それってあなたの感想ですよね?っていう(笑)。そういうのも全部ぶっ壊そうと思っています。
ツアーも今後のKIRITOさんも楽しみでしかないです。
KIRITO:そういう意味では、地味に新しいというか。地味にひっくり返そうとしているものが、実はデカいんですよね。これくらいのキャリアと年齢になった、バンドをやっていたヴォーカリストがソロになった時に、こうなるだろうみたいな長年の歴史の中で大体予測できる流れというものすら蹴り飛ばしてやろうと思っているので、新しい例になっていくんじゃないですかね。こういう人もいるんだという生き方レベルで。
それでこそKIRITOさんです。
KIRITO:うん、やっちゃうんですよね。
(文・金多賀歩美)
KIRITO
オフィシャルサイト
リリース情報
New Album『NEOSPIRAL』
2022年11月9日(水)発売
(発売元:ブロウグロウ/販売元:ソニー・ミュージックソリューションズ)
[初回限定生産盤](CD+DVD)IKCB-9583〜84 ¥4,730(税込)
[通常盤](CD)IKCB-9585 ¥3,300(税込)
収録曲
[CD]※共通
- テロメア
- ANTI-MATTER
- Discord
- BUTTERFLY IN A PHANTOM
- VICTIM
- INTO THE MIRROR
- MASTERMIND
- 雫
- Storyteller
- RAID
- NEOSPIRAL
- I BLESS YOU
[初回限定盤DVD]
・Music Video
「ANTI-MATTER」
「INTO THE MIRROR」
「RAID」
「Discord」
・Making of「Discord」
ライブ情報
●KIRITO Tour 2022-2023「THE CREATING REAL WORLD」
11月12日(土)YOKOHAMA Bay Hall
11月13日(日)YOKOHAMA Bay Hall
11月19日(土)CLUB CITTA’川崎
11月24日(木)新宿BLAZE
11月25日(金)新宿BLAZE
12月3日(土)札幌PENNYLANE24
12月8日(木)仙台Rensa
12月10日(土)umeda TRAD
12月11日(日)名古屋ボトムライン
12月18日(日)福岡DRUM LOGOS
12月25日(日)Spotify O-EAST(※FC限定)
2023年
1月7日(土)Spotify O-EAST
1月8日(日)Spotify O-EAST
サポートメンバー:海(G/vistlip)、JOHN(G)、Masa(B/NOCTURNAL BLOODLUST)、Allen(Dr)
●KIRITO Dinner Show 2022「LIMITED – A new kind of cell -」
12月27日(火)グランドプリンスホテル新高輪 大宴会場 飛天
サポートメンバー:JOHN(Ag)、菅野大地(Pf)、李令貴(Perc)