KIRITO

我ながら結局妥協しないよなっていう

作品を出すごとにバンドサウンドの進化系になっていくKIRITOさんソロですが、今回、全体的にベースラインが目立つものが多いなという印象を受けました。

KIRITO:(深く頷く)今回はベースがChiyu(SLAPSLY)だったんですけど、すごく仕事をしてくれましたね。Chiyuらしいというか、オリジナリティが出ていると思います。すごく良かったと思う。

Chiyuさんのアイデアも結構組み込まれていると。

KIRITO:すごく組み込まれていますよ。ベース録りは今回リモートだったんだけど、例えば原曲に忠実なバージョンと、自分なりに結構動いてみましたみたいなバージョンだったり、いろんなパターンを送ってきてくれたので、そこのチョイスをするのはすごく面白かったですね。原曲以上のものをどんどん出してくれる感じだったので、助かりました。

できる男ですね(笑)。

KIRITO:本当にできる男ですよ(笑)。

「TIME AXIS」はリズム隊が要の曲だろうなと思います。ドラムのリズムが全体的に面白いのと、AメロBメロとサビのコントラストが強くて、今作の中でも特徴のある楽曲だなと感じます。

KIRITO:ドラムで言うとHiroki(C-GATE)も今回初だったんですけど、やっぱりさすがの実力を見せつけてくれていると思いますね。

「A NEW BIBLE」はリズムセクションのサウンドがすごくタイトだなと。

KIRITO:元々イメージしていたものと、最終的にこうしようみたいなのは、ざっくり変えた部分もあるので、最後の最後でやっと正解が見えたみたいな感覚があります。

ギターのアレンジ及びレコーディングは、JOHNさんとの共同作業のような形だったそうですが、特に試行錯誤したものというと?

KIRITO:いやー、本当にもう全部なんですけどね。ギターだけでも1ヵ月くらいかかったので。しかも自宅スタジオに来てもらっての作業だったから、終わりが見えない中での試行錯誤でした。僕自身がその場でアレンジを細かく決めながら、JOHNにプレイしてもらってという作業は、本当に出口が見えないぐらい膨大だったけど、やっぱり我ながら結局妥協しないよなっていう。いや、そもそも妥協しないんですけど、本当にしないなぁと思って(笑)。

(笑)。ちなみに「Golgotha」の冒頭のギターリフが新鮮でした。

KIRITO:崩してなんぼみたいなとこもあるんですけど、あえて崩さないで誰でも耳馴染みがありそうなフレーズをわざと持ってきたりとか、なんか色々やっていますね。

「月の残像」はギターソロもありますが、KIRITOさんとJOHNさんのアイデアはどれくらいの比率なんでしょう?

KIRITO:ギターソロに関しては全部僕ですね。前もって決めていないので、録るとなった段階で、その場で「ちょっと待ってね」ってギターソロを作って、それをJOHNに弾いてもらうっていう。そこに関しては、JOHN自身が自分のものとしてフレーズを弾くのに結構時間がかかったほうかもしれないですね。リズムの取り方がちょっと変わったフレーズなので、その部分で苦労していたみたい。

バンドの音以外の部分でも、例えば「KINGDOM OF THE NEW SEEDS」や「COMPLETE」の冒頭のシンセは、これまでのKIRITOさんの曲にはあまりなかったような雰囲気かなと。

KIRITO:シンセは草間さんにお願いしているので、イメージを伝えて、草間さんのスキルの中で僕自身も「おー!」って思えるようなものを入れてもらえました。そこも本当に共同作業でしたね。

それと、「VENUS」の可愛らしさのある歌声はKIRITOさんならではだなと。

KIRITO:綺麗というよりかは、変に可愛らしく歌うことが逆にキモいみたいなとこを狙っていたかもしれないですね。

(笑)。英詞部分の訳を考えると、この曲は破壊と再生を歌いながらも、KIRITOさんにとっての女神=ファンの方々を指すと捉えることもできるのかなと思ったのですが。

KIRITO:もう全然、そう受け取ってもらって構いませんよ。

ところで、曲作りでいわゆる降ってきたというのはKIRITOさんの場合あまりないとのことでしたが、前作では「Gene」は急に降ってきたと話していましたよね。今回はありましたか?

KIRITO:あったかなぁ…? 「瓦礫の花」は結構スルッと出てきたかな。今作の中では一番スルッと出てきて、大概そういう曲は良かったりするから、そういうのも今回「瓦礫の花」をリードトラックに持ってきた理由の一つかなと思いますね。

自分が生きてきた点と点は線で繋がる

先ほどのリード曲の話とも近いのですが、過去二作では「I BLESS YOU」「DEAR PLUS ALPHA」と1枚の中で最も温かな曲がラストを締め括っていたのに対して、今回の「A NEW BIBLE」はそれとは違う形ですよね。この楽曲を最後に持ってきた意図を教えてください。

KIRITO:やっぱりそこも共通した考えになるんですけど、この曲が1曲目に来てもいいような感覚で作っていたんですよ。終わりであると同時に始まりであるみたいなことを表現するには一番いい。だから、最後の曲が「A NEW BIBLE」というのは、また何かの始まりを予感してもらえるようなものだと思うんですよね。温かいものっていうよりは、新たな始まりであり、「A NEW BIBLE」という言葉からも連想するような、新しい黙示録的な感じですかね。次への始まりみたいなものを感じてもらえばいいと思います。

最後の歌詞が〈We are the beginning of a new species. And a great story is being painted.〉ですし、次への期待感がある終わり方です。ところで、「制作のペースの部分だけで言えば、毎年フルアルバムをリリースするというのは、ここまでが峠のような気はしている」との発言を目にしたのですが、それが8月末段階での言葉だったというところで、『CROSS』が完成した今もその感覚は変わっていないですか?

KIRITO:その時期はより病んでいたと思うし、今もまだできたばかりなので、病んでないかというと若干病んでいるんですけど(笑)。毎回そういう気持ちにはなりますよね。もう出尽くしたし、ここまでのことを人間がやれるわけないと思っていて。それでも結果やっているので…そう思うとわからないですね。また色々アイデアが出てくれば、やりたいと思うのかもしれない。ただ、制作している最中だったり、それが終わった直後というのは、本当にメンタルは病みまくっているので、もう二度とできないと毎回思っていますよ。次やるかやらないかは、わからないけどっていう。

なるほど。そして、『CROSS』を引っ提げたツアーが「CROSS OVER THE TIME AXIS」、来年2月のPIERROTのライブが「END OF THE WORLD LINE」というタイトルで、もうすごいとしか言いようがないです。

KIRITO:そこはね、今の段階ではささやかに連想してもらって、後で色々話させてもらえればなと。

KIRITOさんが描いてきているのは、昔からずっと続いているストーリーだということはもちろんですが、具体的な楽曲や作品とは別に、アーティストとしては普段どこまで未来を見据えて活動されているのかなと思って。

KIRITO:いやー、楽ではないですよね。なんか変に伏線を自分で張って、それを回収してみたいな流れの中で、ある種ちょっと予言者みたいな、思惑通りにいろんなものを動かしているような見られ方をしますけど、自分の感覚としてはそんなに完璧に色々コントロールしてきたつもりはないんですよ。世界線とか、もっと言うと量子論的な背景を自分の世界観に持たせているから、どっちに振れるかわからないけど、自分で張っておいた二つの両極端の伏線のどちらかが回収されることで、点と点が繋がって線になるみたいなことがやれてきていて。ただ、なんでもかんでも思惑通りにやってきたわけではないんだけど、思惑じゃないほうになったとしても、そこには説明がつくっていう特殊な理論付けができる量子論の特性に助けられているというか。プラスでもマイナスでも説明がつくっていうところに助けられているのかなと思いますね。どっちにしろ、自分が生きてきた点と点は線で繋がるんだなってことの結果です。

どこまで考えているんだろうと思う方は多いんじゃないかなと。

KIRITO:そういうふうに思わせるのが得意ってことですかね。全て計算しているかっていうと割とそうでもないんですけどね。その時その時、一生懸命にやった結果、繋がってるなみたいなのを表現するのが得意なのかもしれない。

描いているものに一貫性があるからこそできることですよね。さて、改めて今回はどんなツアーにしていきたいですか?

KIRITO:歌詞の世界観を別にしても、本当に楽曲、サウンドとして今回もとことん攻めているという自負があって、この攻撃的な部分を生で見せられるのはやっぱりライブしかないから、それができるだけの自分の状態を作り込んで臨みたいなと思っています。最近PIERROTもやったけど、KIRITOというものに立ち返った時に、また違うパワーというか、今現在のKIRITOのパワーや凄みをありのまま見せたいと思うので、めちゃめちゃ気合いが入っています。

(文・金多賀歩美)

KIRITO

オフィシャルサイト

リリース情報

New Album『CROSS』
2024年11月13日(水)発売
(発売元:ブロウグロウ/販売元:ソニー・ミュージックソリューションズ)

[初回限定生産盤](CD+DVD+チェキ風フォトカード(全3種中1種ランダム封入))IKCB-9589~90 ¥4,730(税込)

[通常盤](CD)IKCB-9591 ¥3,300(税込)

収録曲

[CD]※共通

  1. CROSS OVER THE WORLD LINE
  2. Golgotha
  3. VENUS
  4. KINGDOM OF THE NEW SEEDS
  5. Document
  6. 月の残像
  7. 瓦礫の花
  8. TIME AXIS
  9. COMPLETE
  10. A NEW BIBLE

[初回限定盤DVD]
「瓦礫の花」Music Video +メイキング映像

ライブ情報

●KIRITO Tour 2024-2025「CROSS OVER THE TIME AXIS」
2024年
11月16日(土)YOKOHAMA Bay Hall
11月17日(日)YOKOHAMA Bay Hall
11月24日(日)SUPERNOVA KAWASAKI
11月25日(月)恵比寿LIQUIDROOM
12月3日(火)仙台Rensa
12月7日(土)札幌PENNYLANE24
12月14日(土)福岡DRUM Be-1
12月21日(土)梅田CLUB QUATTRO
12月22日(日)名古屋ボトムライン
12月25日(水)Spotify O-EAST(FC限定)
2025年
1月5日(日)Spotify O-EAST
1月6日(月)Spotify O-EAST

サポートメンバー:海(G/vistlip)、JOHN(G)、Chiyu(B/SLAPSLY)、Hiroki(Dr/C-GATE)