ソロワーク15周年を迎える今年、自身9枚目となるニューアルバム”Dive youth, Sonik dive”をリリースしたINORAN。全10曲、その圧倒的な完成度を誇る楽曲の魅力に迫る!
『Dive youth, Sonik dive』と名付けられたINORANのNewアルバム。「ジャンルは関係なく」「自分の今の気持ちに正直なものを」…そう語られたこの作品にはまさに、INORANの「今」が惜しげもなく詰め込まれている。“骨太”というより“グラマラス”。力強いロックでありながら、思わず目を見開く予測不能な展開は魅力に満ちていて、どこか蠱惑的ですらある。圧倒的な音世界を描き出したINORANに、作品への想いを聞いた。
◆自分の気持ちにオーガニックに出した音
――傑作と名高いアルバム『Dive youth, Sonik dive』ですが、今回の作品を作るにあたって、テーマはあったのでしょうか?
INORAN:テーマは作品ごとに掲げたり掲げなかったりしているんですけど、今回は“自分の今の気持ちに正直なものを”、というのがテーマかもしれないな。ミュージシャンという職業としても、趣味としても、生きがいとしても、作品を作る時には良い意味で色々考えるんですけど、今回は本当に今思っていることを、ジャンルは関係なく直感的に正直に作ったんです。作っている過程もライブも、今この音楽をきっかけにみんなで楽しめるもの、それを無我夢中で余計なことを考えずにシンプルに紡ぎ出した音ですね。
――とても素直に作品を生み出せたということでしょうか。
INORAN:そうです。自分の気持ちにオーガニックに出した音だなと。
――思ったままの音楽を具現化したアルバムということで、満足度は幾層倍にもなったのでは?
INORAN:確かに、すごく満足度が高いですね。いつも作り終わった後に、課題が残ったりするんだけど、今回ほとんどなかったし。
――逆に、“思ったまま”を作ることに難しさはありましたか?
INORAN:うん、やっぱり難しい部分はある。経験もしているし、スキルもあるし、どっちかっていうと独りよがりとは裏腹なところがあるから。
――自分の気持ちに素直に作ったという今回のアルバムですが、『Dive youth, Sonik dive』というアルバムタイトルにはどんな意味が込められているんでしょう?
INORAN:深い意味はないんですよ。単に「Dive」という言葉が使いたかった。このタイトルはツアータイトルを決める時に一緒に決めたんですけど、遊び心がありますよね。“楽しんじゃえ!”みたいな言葉です。
――「Sonik dive」は直訳すると“音に溺れる”という意味ですよね。勝手なイメージですが、INORANさんの日常そのものなのかなと。
INORAN:まさにそうですね。全てが音楽に直結していくので。仕事であり、趣味であり、生活そのものです。
――アルバム制作中はさらに音に溺れる生活だったのでは?
INORAN:そうですね。レコーディング中の3~4カ月間は、どっぷりでした(笑)。
――1年2か月ぶりのアルバムですが、制作期間自体はとても短かったんですね。
INORAN:そうなんです。僕はいつも曲を書き溜めずに制作前に一気に作るので、制作期間は短いんですよ。
――短いながらも、さぞどっぷり音に溺れた期間だったろうと思います(笑)。ところで、一つ前のアルバム『Teardrop』から、それまでの作品に比べてロックテイストが一気に強くなったと感じたのですが、今回のアルバムでもその流れは意識的に踏襲していますか?
INORAN:『Teardrop』はライブとロックをすごく意識して作ったんです。作っている間に色々アイディアが出てきてしまうんだけど、それをできるだけ我慢して、シンプルに作り上げた作品。今回はそこで我慢せずに、でも勢いは落とさずに作りましたね。
――土屋アンナさんや、YELLOW FRIED CHICKENzのベーシスト・u:zoさんを始め、今回もたくさんのアーティストやスタッフの方がレコーディングに関わっていますが、INORANさんの作品はいつもどんな風に作られていくんでしょう?
INORAN:レコーディングの中で、コロコロ変わりながらかな(笑)。僕はあまりアルバムの設計図を作ったりしないんです。こういう音で、曲のここはこうで、っていうのがなくて。作っても変わっちゃうし、人とやるってことはそういうことだし、それが面白かったりするんですよね。土屋アンナちゃんと作った曲(「no options」)はまさにそうですよ。ある日突然、女性ヴォーカルが思い浮かんで、アンナちゃんの声を入れたらすごく良くて。あと、「HOME」は、ある日の朝、寝起きに思いついて、その日の昼間には録ってたっていう(笑)。
――まさにその瞬間瞬間のアイディアがパッケージされているんですね。
INORAN:うん。確かに今まで(の作品)と全然違って、今回は直感がすごく多いなと。僕だけじゃなくてスタッフもね。そこは理屈じゃなくて。だから今回のアルバムはすごく説明しづらいんです。「なんでタイトルは『Dive youth, Sonik dive』なんですか?」「なんで歌詞は英語なんですか?」「何でロックなんですか?」って聞かれても「わかんないけどこうなったんだよね」という感じで(笑)。その答えは後から付いてくるものなのかなと。これからアルバムが出て、みんなが聴いてくれて、ライブでみんなで良い時間を過ごせれば、そこで意味が付いてくると思う。だから現時点では全くわかんないですね。今まで(の作品)よりも説明できないから、インタビューで苦労が多いな(笑)。
――ご苦労をおかけします(笑)。ところで今回のアルバムは全10曲入りですが、この曲には苦労した、というものはありましたか?
INORAN:ないんです。適度にチャレンジもあり、適度にプレッシャーもあり、全て乗り越えられた曲ばかりで。
――では、録っていて最も面白かった楽曲は?
INORAN:「grace and glory」かな。女性のコーラスが総勢10人以上入っているんだけど、このコーラスも、レコーディングの時に「女子の声がほしいよね」って言って、すぐに呼んできてもらったんです。彼女たちは本当に本番で使われるのかわからないまま、わーっと歌って、わーっと帰って行ったという(笑)。
――(笑)。その場のアイディアがすぐに具現化されるのはすごいですね。1曲1曲とても個性がある楽曲ぞろいですが、中でも先ほど話が出た、土屋アンナさんが参加している「no options」はレトロなリズム感がとても新鮮でした。
INORAN:ある日、あのリズムの曲を書こうと思ったんですよ。リズムのルーツを調べたら、GSとかあのあたりから来ていると。「カッコいいなGS!」ということで、作って歌って、コーラスまで入れて、TD(※トラックダウン)直前に「女性とデュエットみたいにしたらカッコいいかな」と思って。そこで思い浮かんだのがアンナちゃんで、連絡したら「OK」だった。…で録ったと。
――展開がものすごく早いです(笑)。
INORAN:スタッフは「本当にやるの?」みたいな感じだったと思うんだけど、「絶対カッコいいって!」って言って。実際、できたらさらにカッコよくなった(笑)。
――確かにものすごくカッコよくて癖になりました。
INORAN:僕は、リズムが浮かんだときには頭の中で全部(の楽器の音が)鳴ってるんです。ベースもギターも。そのまま頭にUSBを差して、PCに繋いだらCDが作れちゃう感じ。もし、思いついた曲をそのまま再生できる機械があったら3か月もかからない…あ、でもそれじゃつまんないか(笑)。途中の過程があって、そこが一番大事だからね。やっぱりUSBじゃない方がいい(笑)。
――(笑)。
◆今はライブの熱が全てだから
――INORANさんは、今回の土屋アンナさん以外にも、清春さん(清春の最新シングル『THE SUN』のPVで競演)等、これまでもたくさんのアーティストの方と音楽を作っていましたが、誰かと作品を作ることの魅力は何でしょうか?
INORAN:やっぱりすごく刺激を受けるし、この人ってこういう立ち位置にいたり、こういう歌を歌う人なのか、こういう表現をする人なのか、なるほどなっていうのが音で会話するとすごくよくわかる。清春くんは何年か前から知っていたんですけど、すれ違いざまにちょっと話したりとかする程度だったんです。
――意外! ガッツリお友達じゃなかったんですね。
INORAN:そうなんです。全然ガッツリじゃないんですよ。これまでそういう機会がたまたまなくて。今回(PVでの競演を)彼の方から誘ってくれて、すごく面白いなと思いましたね。撮影中も、音楽論とかいろんな話をしたし。彼はすごいアーティストですよ。
――PVでのINORANさんと清春さんの競演、とてもゴージャスでした。それにしても、INORANさんは、気軽に抵抗なくいろんな方と組んでいますよね。
INORAN:もっといろんな人と、いろんな音楽をライトにできると良いと思うけどね。日本だとレコード会社とか事務所とか、いろんな事情があってなかなか難しいし大変。でも、何でも面白いっていう気持ちを大切にした方が良いと思うんですよ。スタッフも「大変だ」って思わずに楽しまないと、その音楽自体が全然面白くなくなっちゃうから。
――確かにそうですね。ところで、PVと言えば今回の収録曲「Get Laid」のPVの華やかさに驚きました。FashionTV(※世界で唯一のファッション専門エンターテイメント・チャンネル)とのコラボだったそうですね。
INORAN:そうなんです。FashionTVの方が知り合いで、クラブに行った時にこういうの良いなと思って「一緒に作りません?」ていうノリで始まったんです。
――ロックスターなINORANさんと、たくさんの美女の競演が素晴らしかったです。
INORAN:彼女たちもすごく楽しんでくれたと思います。「Get Laid」は6月26日からメイキング映像が公開になってるんだけど、これが良いんですよ。曲より長いっていうね(笑)。見てもらうとわかると思うけど、撮影はすごく楽しかったです。みんな繋がりで参加してくれたから、仲間で作った感じもすごく良い。今回、(人と人の)繋がりってすごく大切だなって思いましたね。みんながそういうことを見落としがちな世の中になってしまっているけど、繋がっていこうよと。自分の世界は狭いかもしれないけど、自分の手が届く人に伝えていきたいなと思いました。そういう意味ではこの作品を作って良かったですね。
――そんなINORANさんのメッセージを直に伝える場である、ライブツアー『Dive youth, Sonik dive』もいよいよスタートですね。お聞きしたかったのですが、レコーディングとライブ、純粋にどちらがお好きですか?
INORAN:やはりライブですね。レコーディングも、スタッフと音の会話ができるし、世の中にないものが生まれる瞬間に立ち会えるので好きですけど、今はライブの方が熱を感じます。レコーディングが劣っているわけじゃないけど、今はライブの熱が全てだから。すごく大好きです。
――アルバム『Dive youth, Sonik dive』がライブだとどんな風になるのかもとても楽しみです。
INORAN:すごく良いと思いますよ。ライブならではのアレンジで全曲もっと派手になってます。観に来る方、楽しみにしていてください。
(文・後藤るつ子)
INORAN
<プロフィール>
日本を代表する伝説のバンドLUNA SEAのギタリストとして活躍。1997年よりソロ活動を開始。1st アルバム『想』では世界的人気アーティスト「dj krush」とタッグを組む。現在までにベスト盤を含むアルバム10枚を発表。ソロ活動中にFAKE?のメンバー(2002~2006年)としても活動し、香港ではGUN’S ‘N’ ROSESのオープニングアクトを務めたり、LUNA SEAのRYUICHIとD-LOOPのH.HAYAMAとのユニットTourbillonでは日本武道館でデビューライブを飾るなど精力的な音楽活動を展開。2011年の今作の布石となるシングル『Hide and Seek』はオリコンウィークリー初登場10位を飾る。6月30日より、Live Tour 2012 “Dive youth, Sonik dive”をスタート。
■オフィシャルサイト
http://inoran.org
『Dive youth, Sonik dive』
2012年6月27日発売
(キングレコード)
2012年、ソロ・ワークス15周年を迎えるINORANが放つ、熱く激しく勢いを増した不変のROCK’N ROLL ALBUM。
【収録予定曲】
[CD]
01. smoke
02. Get Laid
03. grace and glory
04. Selfless
05. no options
06. Hide and Seek
07. One Big Blue
08. Nine closets
09. HOME
10. LEMONTUNE
[DVD]※15周年記念初回限定盤のみ
DVD(“Get Laid” Music Clip)+30cmLP(CDとver違いの楽曲を一部収録)