HIZAKI

ただのヘヴィーな曲になってしまうと自分じゃない

「Crimson Mirage」は、曲の雰囲気とタイトルがピッタリだなと思いました。

HIZAKI:ChatGPT(笑)。今度から曲をインポートしたら、タイトルを勝手に考えてくれたらいいな。これは実際どうだったか…自分で考えたんかな? 忘れたけど、この曲が多分最初にできましたね。前作でツアーを回って、もうちょっとライブをこうしたいなっていうところから作った曲だと思うので、結構Tsunehitoのおかげというか。隙あらばライブ中「オイオイ」言っているので、そんなTsunehitoが活きる曲を出そうかなみたいな感じです。

なかなかリフ押しの曲ですよね。7月頭に「ここ数日作ってたヘヴィな曲が完成間近!だが、かっこいいんだけど、なんかしっくりこなくてボツになりそうだ」、「救済出来た!」と書いていたのは、「Crimson Mirage」と「Form is emptiness」どちらかな?と思って。

HIZAKI:それも「Form is emptiness」ですね。

HIZAKIさんは相変わらず制作過程を結構つぶやいているので、興味深いです。

HIZAKI:あんまり隠さないというか。ファンクラブブログはもっと書いているし、お客さんと一緒に作っている感じを出したいかな。ホンマに作曲だけに集中していると、何週間も音沙汰なしになってしまうので、何かは書いとこうみたいな(笑)。でも、ライブをしたりファンと一緒に過ごすと、曲ができやすかったりしますね。

3曲目の「Celestial Veins」は直訳すると、Celestial=天空の・神聖な、Veins=血脈・流れ、などのようですが。

HIZAKI:そんな感じです(笑)。これは元々、Jupiterの春のツアーでやった曲です。本来あまりインストコーナーをやるつもりはなかったんですけど、ヴォーカルのKUZEさんが喉を本調子に戻している最中なので、ライブではちょっとインターバルを挟みたいというところで、急遽作った曲だったんです。そのツアーでやって、なんかもう飽きたなと思ってボツにしようかみたいな話になったんですよね。で、1回それを試しにMAKI君にアレンジしてもらったら、曲がガラッと変わって、これはもしかしたらソロでいけるかなと採用しました。あと、Jupiterでやるには、ちょっとTERU色が少なかったのもあって。

そんな流れがあったんですね。壮大な雰囲気がありつつ、切なさ、エモさのある聴かせる1曲ですよね。ちょっと驚いたのが、前半のメロディをベースが担っているというところで。なかなか珍しい形ではないでしょうか。

HIZAKI:そうですね。フレーズは自分で考えたんですけど、ソロのツアーだと2時間もずっとギターソロを弾きっぱなしになるので、ここで休めるパートがそろそろ欲しいんじゃないかと思って(笑)。

まさかの理由でした(笑)。でも、ベースがTsunehitoさんだからこそみたいな部分もあるのかなと。

HIZAKI:これはそこまで考えてなかったですね。Tsunehitoには、自分なりに変えてくれていいからと言ったんですけど、そのまま弾いてくれましたね。ああいうベースを作るの、僕は結構得意だったりします。

それと個人的には、後半でソロがギター、ヴァイオリン、ギターという流れになっているのがすごく効果的だなと思いました。

HIZAKI:ライブでたまに起こることなんですけど、インストバンドならではで、アドリブコーナーみたいなものが2回に1回ぐらい突然始まったりするんですよ。そういうのをちょっと出してみましたね。2個目のギターソロはMayto.が弾いてくれています。

そして、先ほどから度々話が出ている4曲目「Form is emptiness」について改めて。色即是空を英語にすると、こうなるとは初めて知りました。これは仮タイトルが「HIZAKI4激しい」だった曲ですよね(笑)?

HIZAKI:はい(笑)。仮タイトルは大体「激しい」とか「メロスピ」とか「ロック」とか、そんなのばかりです。

ボツになりかけたのを救済できたというのは、どのように生まれ変わったんでしょう?

HIZAKI:こういう激しい曲って、いくらでも作れると言えば作れるんですけど、そこに自分らしさを出せるかというところが一番の課題で。この曲、チューニングを7弦ギターと同じ音域まで下げているんです。そうすると他との差別化じゃないけど、最近7弦ギターを使うバンドも多いので、ただのヘヴィーな曲になってしまうと自分じゃないなっていう。それで、自分らしくないかもなと思ってボツにしかけたんですよね。だけどギターソロを入れてみたら、やっぱり自分らしくできたので、採用しました。

確かに今作中で一番、低音域のギターフレーズが際立つ曲になっていますよね。

HIZAKI:多分、ここまで下げたのは初めてです。

ちなみに、MAKIさんが「特に4曲目はドラムがエゲつないです!!」とXに書いていたので、大変な曲なんだろうなと思って(笑)。

HIZAKI:(笑)。MAKI君はもっと速いプレイも当然できるんですけど、この曲は力を抜けないという意味で大変と言っていました。全力で叩き切らないといけないのが、しんどいんだと思います。

そして最後の「Moon Shard」は、アコースティックライブから生まれた曲ということで。

HIZAKI:JillとMayto.と一緒にアコースティックライブをたまにやっているんですけど、基本的にはカバー曲が多くて。それで新曲を用意してみようかというところで、Jillが弾くメロディを作っていきました。その時はまだアコースティックギターとヴァイオリンだけだったんですけど、シンセも入れてみたらどうかと、最終的にこの形になりましたね。

早く音源化したい気持ちがあったのでしょうか?

HIZAKI:いや、全然するつもりもなかったんですけど、なんとなく自分でシンセを考えた時に、もしかしたらこの曲はもっと化けるかもと感じて。それでラフだけ作って、信頼しているRookie君にシンセを頼みました。すごくセンスが良くて、昔のJupiterも結構頼んでいたんですよね。以前、僕がレコーディングに参加したアイドルの曲が、最終的に良い意味ですごい曲になって返ってきて。どういうことや!?と思ったら、Rookie君がシンセを入れていたみたいで。

そんな繋がりが。「Moon Shard」の途中でリズムが入ってくる構成は、ラフの時点であったHIZAKIさんのアイデアですか?

HIZAKI:そうですね。でも、あくまでダイナミクスというか、前半は大人しくして、後半で盛り上げるというのは、やっぱりRookie君さすがだなと思いました。

それにしても綺麗な曲ですよね。

HIZAKI:誰にも伝わらないと思いますけど、メロディ的には結構La’cryma Christiを意識していて。僕の影響の受け方ってわけわからないんですよ(笑)。

以前のJupiterのインタビューでも、「Guilty as Sin」のサビは浜崎あゆみさんをイメージしたと話していました(笑)。

HIZAKI:そうそう(笑)。一見全然関係ないようなものをイメージしていることがあります(笑)。

誰かのために動きたいみたいな気持ちが大きくなってきて

ちなみに、今作の中でギタリスト的に最も難易度が高いのはどの曲でしょうか?

HIZAKI:コピーする場合の単純なテクニックの難しさで言うと、速さ的にやっぱり「Form is emptiness」ですかね。でも、作るという部分で難しいのは「Eidolon」じゃないかな。真似できないメロディというか。他にないというところの難しさで言えば、それだと思います。コード進行とかは簡単なんですけどね。

「Crimson Mirage」と「Form is emptiness」はベースもHIZAKIさんが弾いていますが、レコーディングでベースを弾く時に心掛けていることはありますか?

HIZAKI:物理的に右手のピッキングはやっぱりギターとは別物なので、ちょっと準備が必要ですね。ただ、どんなに練習してもベーシストっぽい音にはならないというか。そこが難しいですけど、ロー感がなくならないようには心掛けているかな。

メンバーの皆さんの今回のレコーディングの中で、1年活動を経たからこその前作との違いを感じる部分もありましたか?

HIZAKI:MAKI君は元々とんでもなく上手いんですけど、より上手くなったというか、説得力が増したなと。今、サポートとかで年がら年中ライブをやっているので、一音一音の責任感みたいな、そういうところがすごく増したなと思います。1年前はメタルドラマーに特化していたのが、今はより幅が広がったなと録っていて感じましたね。

取材日現在ツアー真っ只中で、残すところファイナルのみですね。

HIZAKI:今回の新曲は全部やっています。先にライブでやって、リリースが後という形は久しぶりですね。特に「Crimson Mirage」と「Form is emptiness」は、初聴きでもノリやすいだろうなと。それは結構狙い通りというか、そこまで展開が複雑な曲は今回用意してないので、この形でよかったなと思います。決して締め切りに遅れたわけではありません(笑)。

(笑)。ちなみに9月7日の大阪公演の後に、「なんだか…自分の人生においても大切なライブになりました」と投稿していましたが、何か思うところがあったのでしょうか?

HIZAKI:すごく感動的なライブだったんですよね。ちょっと色々あって、メンバー同士で話すことも結構多くて、その中で理想の形ができたかなと感じたんです。ソロと言いつつも、メンバーのため、ファンのためみたいな気持ちが大きいというか。このメンバーが全員そういう性格をしているので、誰かのために動いたり、楽屋の中でもそういうのがすごく多いんです。自分もどちらかと言えば、そういう性格で。俺が俺がってタイプだと思われがちで、誰も信じてくれないですけど(笑)。

でも、YouTubeでのタロット占いで、HIZAKIさんはしっかり「自己犠牲」と出ていましたよね(笑)。

HIZAKI:あれ、ホンマかいなと思って(笑)。…でも、やっぱり変わったのかも。10年前とかまでは俺が俺がのほうの性格だったかもしれないけど、まぁ色々あって、そしてコロナ禍もあって、すごく変わった気がします。誰かのために動きたいみたいな気持ちが大きくなってきて。そういう中でも、あの日はこのメンバーでよかったなと思えるライブだったんですよね。ていうことをMCで言ったら、Mayto.がジーンと来てました(笑)。Mayto.もやっていたバンドを最近抜けて、心境の変化があったみたいで。

どうやら良いツアーになっているようですね。

HIZAKI:なっていますね。なんか修学旅行みたいな感じ。大体どのバンドも、機材車に乗った瞬間に車内はシーンとなっているのが普通ですけど、うちはキャッキャしてます(笑)。

本当に楽しそうです。今回のツアーを終えて、今後はどのような予定ですか?

HIZAKI:2月17日が僕とJillの誕生日なので、まず来年2月16日にこのメンバーでライブをします。で、17日は僕とJillとMayto.の3人で、アコースティックライブをやります。そして、3月から4本ぐらいのツアーをやる予定です。各メンバーの誕生日を入れつつみたいな。内緒ですけどね。

サプライズなら、ここに書けないですね。

HIZAKI:いや、書いてください。というかもうグループLINEに、「内緒だけど、ここTsunehitoの誕生日ライブだよ」って入れているんで(笑)。

(笑)。ところで、前作と今作は2年連続でのリリースとなりましたが、今後もソロの音源制作は精力的に続けていくのでしょうか?

HIZAKI:続けていきたいですけど、ギターインストを頻繁に出すというのは、なかなか作曲が難しいというか。そういう面でどうかなっていうのはあるんですけど、ライブはやっていきたいですね。ただ、ライブもギターインストってヴォーカルがいない分、やっぱりちょっと飽きが来るので、そこをすごく気にしてしまいますね。ツアーをやっても、5〜6本で飽きてないかな?と思って、そこをどうしていこうかなと。理想を言えば、またリリースして、ツアーを回れるといいんですけどね。来年は春以外にもさらにツアーをやろうかなと考えています。

どうしてもインストの難しさはありますよね。

HIZAKI:そうなんです。それと、この記事が出る頃にはもう発表されているので言ってしまうと、本当は今年Jupiterでアルバムを出して、ツアーもやる予定だったんですけど、急遽ドラムが抜けることになりまして。それでJupiterの活動があまりできなくなって、今回ソロで音源を出してツアーという形に変えたんですけど、来年はJupiterも動き出すので期待していてほしいです。ちゃんとアルバムを出して、ツアーを回ります。Versaillesも別に止まっているわけではないので、VersaillesとJupiterとソロという3本を、一つひとつちゃんとやっていきたいなと思います。

(文・金多賀歩美)

HIZAKI

オフィシャルサイト

リリース情報

New EP『Eidolon』
2025年9月24日 (水)HIZAKI ONLINE STORE販売
2025年10月4日(土)ライブ会場先行販売
2025年10月15日(水)一般発売&配信

[通常盤](CD)ZRHZ2501 ¥2,640(税込)

[オフィシャル通販限定盤](CD+撮影メイキングDVD-R)¥3,300(税込)

収録曲
  1. Eidolon
  2. Crimson Mirage
  3. Celestial Veins
  4. Form is emptiness
  5. Moon Shard

ライブ情報

●HIZAKI LIVE「Beyond the Eidolon」
2026年
2月16日(月)西荻窪 BETTYROOM
3月5日(木)横浜 Music Lab. 濱書房
4月24日(金)初台 The DOORS
5月15日(金)梅田 Zeela
5月16日(土)今池 3STAR