実際ヴィジュアル系は何も変わってない(千秋)
2016年に行われたイベント「VISUAL JAPAN SUMMIT」@幕張メッセ国際展示場9-11ホールでの、「いつからV系はカッコ悪いものになったんだろう。ここから、うちらがカッコいいV系に戻していかないといけない」という逹瑯さん(MUCC)の発言を思い出しました。世間一般的にヴィジュアル系がカッコいいものでなくなっていると感じていましたか?
千秋:それは僕の中で答えはあって。ヴィジュアル系というのはダメージジーンズなんですよ。初めてダメージジーンズを履いた人って、当時どう思われたんでしょう?という話で。今は当たり前に皆が履いているから普通に見えるんですけど、なんでわざわざ服を千切るの?っていう話じゃないですか。それってファッショナブルという漠然とした理由だと思うんですよ。日本にヴィジュアル系というものが生まれるより前から、メイクをしているバンドなんていうのは海外にいたじゃないですか。それから日本には色々なバンドが出てきた。つまり、当たり前になったというだけで、実際ヴィジュアル系は何も変わってないんですよ。
なるほど。
千秋:例えば「死にたい」とか過激な言葉を使ったり、日本のようなコンプライアンスが厳しい国で深層心理を突く表現をする、それをパンクスじゃなくてメイクをした男たちがやるというのがヴィジュアル系だったんですよね。だから新鮮なんですよ。僕も初めてダメージジーンズを履いた時、勇気が要りました。親に「そんな汚いの履かんといて」って言われましたもん。でも今はもう「なんでそれ、ダメージあるの?」って聞くことがダサいじゃないですか。要は、ヴィジュアル系は言っていることもやっていることも、変わってないんですよ。ライヴのノリは変わったと思いますけど。よく昔のヴィジュアル系は過激だったとか言いますけど、正直な話、パンクスのほうが過激だし、ラウドロックだってヘドバンしますし。誰もカッコ悪くはなっていなくて、当たり前になったというだけの話だと思うんですよ。
斬新だったものが当たり前になった結果。
千秋:ただ、ファッションと同じように、新しいものを取り入れていかないといけないのを、ヴィジュアル系はずっとダメージジーンズでいるから、何も変わってないけど慣れちゃったというだけです。ここ5年くらい僕も思ったことがあって、ヴィジュアル系って何かダサいというイメージになってきたけど、いや違うと。ずっと同じ服を着ているだけだと。ファッションにも移り変わりがあるから、一周回っただけという話なんですよ。バンドの思想も変わってないと思いますけどね。むしろ、その上で昔よりいろんな知識があって、いろんな音楽性が入ったりしていると思いますね。
Miyako:昔は男がメイクをするってあまりなかったから、俺がヴィジュアル系を好きになって母親のファンデーションをこっそり借りて顔に塗った時って、すごくドキドキしたというか。何か悪いことをしているような感じがしたけど、今じゃ、ヴィジュアル系ではない若い男の子で普段からメイクをしている人もいるという話を小耳に挟んだりするから、俺の学生時代には考えられないことだなと思います。
お母さんの化粧道具を使うというのは、結構ヴィジュアル系あるあるですよね。
Miyako:そうですね。化粧品を買いに行くのは恥ずかしいから、当時は勝手に借りて塗ってみて。でも、雑誌で見ていたバンドのようにはなかなかならないし、どうやっているんだろうと。カラコンというものも知らなかったから、なんでこんな目の色をしているんだろうとか、ヴィジュアル系の色々なところに惹かれましたね。
SORAさんは、この10年間のヴィジュアル系シーンの波はどのように感じていますか?
SORA:僕は埼玉県三郷市の出身で、千秋やみーちゃん(Miyako)ほど流行りのヴィジュアル系を知らなかったし、先ほど言ったように真っ黒なバンドが大好きだったので、キラキラしているバンドは若干アンチだったんですよ。DEZERTに入ったばかりの頃は、そういうバンドが流行っていたんですよね。僕の中では、流行っているものをやりたくないという気持ちがあったのと、千秋の周りにはキラキラしている方々が結構いるイメージだったのに、DEZERTは真っ黒で布を纏ってやっていたので、その逆行している感じに僕はすごく惹かれたんですよね。ヴィジュアル系の波というと、千秋もSacchanも言っていたように、グルグル回っているものだと思うんですよ。ファッションと同じように流行もあるでしょうし。ただ、僕の場合は流行っているものF●CKで、自分の好きなものが好きで、今もそれをやらせてもらっているので、この10年でいろんなことを経験しましたが、やっぱりヴィジュアル系のロックが好きですし、もっと伝えていきたいなと思っています。
Sacchan:僕は何もないところから始まっているので、箱で言うとO-WESTとか憧れがあって。みーちゃんもそうじゃなかった?
Miyako:O-WESTは憧れがあったよね。あそこでワンマンができたら、もう売れたみたいな感覚があったな。
Sacchan:今もそういうのはあるのかもしれないですけど、僕らの時系列で言うと、まずはO-WEST。近しいバンドとか、少し先輩で言うと東京指定のライヴでO-WESTを観に行って「お、すごい。こんなにお客さんがいっぱいいるんだ」と、僕らからすると現実的なリアルな人気バンドを関係者として観られたり、僕はちょっとだけ、えんそくのローディーをやっていたことがあるんですけど、自分たちがライヴをやる前にローディーとして行って経験してみたりとか…。
Miyako:なんでえんそくのローディーをやろうと思ったの?
Sacchan:いや、ちょっとご縁があってね。それもとてもありがたかったですね。もっと言うと同世代の知り合いのバンドを裏方として手伝ったり。もちろんこれだけじゃないんですけど、バンドが始まる前からいろんな目線でヴィジュアル系に関われていたので、それも踏まえて振り返り直してみると、今の僕たち含め一般的にアンダーグラウンドと言われるであろう世界線の部分は、良い意味で変わっていないのかもしれないですね。
誰に何と言われようとバンド、ヴィジュアル系、音楽が好き(SORA)
6月18日に控えている日比谷野外大音楽堂公演の開催は今年1月に発表されました。昨年7月のアルバム『RAINBOW』リリースに際したインタビューの中で、「野外でやらないと終われないでしょ」という発言がありましたが、この頃、既に野音は決まっていたのでしょうか?
千秋:わからないですけど、それを聞いてスタッフが日比谷を探したんじゃないですかね。あそこは抽選なので。「日比谷取れたけど、やる?」と言われたから、やるというくらいですね。絶対に日比谷でやりたいとかは、僕は思っていなかったので。
これまでにバンド内で日比谷野音の話が出たことはあったのでしょうか?
千秋:ないんじゃないかなぁ。そもそも僕的には野音でやるから云々という考えはなくて、割と渋公と同じくらいの感覚です。野音って気合いが入っているのは当事者だけで、観る側からしたら結構たまったもんじゃないというか。僕的にはちゃんと観るなら渋公のほうが行きたいと思っちゃう人なので、まぁ野音は一種のお祭りみたいな感じですね。
DEZERT史上最大キャパとは言え、ホールツアーも経験している近年のDEZERTとしては、やっていておかしくない規模感ですよね。皆さんにとっての日比谷野音とは?
SORA:D’ERLANGERの聖地ですよね。今、D’ERLANGERとも関わりがあって、僕はTetsuさん、みーちゃんは一郎さん(CIPHER)の舎弟みたいな感じで特にお世話になっていて。野音はD’ERLANGERのイメージがあったので、やることが決まってすぐにTetsuさんに報告しましたね。キャパがデカいからどうという考えは、僕はどこに対してもなくなったんですよ。野外ということに関しては気持ちよさそうだなとは思いますけど、千秋が言う通り、行く側からしたら雨だったら嫌だなと思うでしょうね。僕は外が好きなので、楽しみだなという思いはあります。
Miyako:野音って大きい公園の中にあるじゃないですか。俺、大きい公園が好きなんですけど、普段はあまり行かないので、野音の日はお散歩とかできるのかなぁ?と思っています。
Sacchan:僕はマジで思い入れがなさ過ぎて(笑)。本当に野音に関しての自分の中の情報が何もないというか。1回観に行ったことがあるくらいで。それこそ近しいバンドがやっていますけど、それに対してどう思ったという情報すらないです。今までやる箱の中で一番何も知らずに行く場所みたいな感じですね。ただ、どうしても野外ということで、天気、光、自然にめちゃくちゃ影響を受けると思うので…とにかく僕らがどうということと関係なく、雰囲気が違うライヴにはなるんだろうなと思います。
最後に、今後DEZERTはシーンの中でどんな存在になっていきたいですか?
Sacchan:今の若い子はダンスや歌い手に行っていて、それが昔はバンドだったりしたわけで、そうやって時代はどんどん移り変わっていくと思うんです。ただ、流行り物って後発の人が出てきて、気付いたらセンスのない人がやっていることが多かったりするんですよね。V系というジャンルも後発後発でどんどんクセのないものになっていってしまったんだろうなというのが僕の中でのイメージなので、それが流行り終わった時に、言い方は悪いですけどセンスのない人たちが排除されて、一回クリーンになって、実はまともなことをやっている人たちが残って、それが少数派に見えて、すごく新しく斬新に見えて、実はカッコよかったりもして、というサイクルだと思うんです。なので、その時にちゃんとヴィジュアル系でカッコいいことをやれている存在になればいいなと思っています。
SORA:昨夜ちょうど考えていたんですよ。DEZERTは各々のルーツがある中でバンドを始めて、10年経って、結局どこを目指しているんだろうなと。昨日L’Arc~en~Cielのライヴを観に行ったんですけど、東京ドームで5万人くらい入っていて、すげーなと思うじゃないですか。例えば東京ドームでやったらゴールなのかな?と思うと、kenさんと話していたら、あの人の中では全くそうじゃないんですよ。kenさんから「SORAの満足は何?」と言われたんです。俺の場合は何だろうと思った時に、今は目先に日比谷がありますけど、シンプルに楽しく続けたいなというのがあって。僕は誰に何と言われようとバンドが大好きで、ヴィジュアル系も好きで、音楽が好きなので。ただ、真剣にやっているがゆえに時折辛くはなるんですよ。辞めたくなったこともあります。でも続けたいと、ここ1~2年ですごく強く思っていて。カッコよく続けるために、楽しいことを一生懸命DEZERT皆で考え続けられたらいいなというシンプルな思考になりました。バンドを10年もやっていると、いろんな憧れの先輩方とも直接お会いできているので、日本で会いたいけど会えていないアーティストはhideさんだけなんですよね。そういう先輩方とも親交がある中で色々考えると、喧嘩しながらでも、まためちゃくちゃ仲良くなるんだろうけど、続けたいなというのが僕の思いです。
Miyako:ヴィジュアル系のチーズちくわみたいになれたらいいなと思います。ちくわだけ食べても美味しいし成り立つんだけど、チーズが入っていたらなお良いよねっていう。ヴィジュアル系のそういう感じになれたらいいな。俺はそう思います。
千秋さんはいかがですか?
千秋:良いバンド、以上!
(文・金多賀歩美)
DEZERT
千秋(Vo)、Miyako(G)、Sacchan(B)、SORA(Dr)
オフィシャルサイト
リリース情報
New Single『再教育』
2022年3月23日(水)発売
[初回限定盤](CD+DVD)DCCL-242〜243 ¥3,500(税込)
[通常盤](CD)DCCL-244 ¥1,500(税込)
収録曲
[CD]※共通
- 再教育
- インビジブルビリーヴァー
- ミスターショットガンガール
[DVD(初回限定盤)]
「DEZERT LIVE TOUR 2021 RAINBOW -カメレオンは空を見上げて笑えるか?-」ライヴ映像
・7月23日@Zepp Haneda
- 「絶蘭」
- さくらの詩
- 神経と重力
・10月16日@恵比寿LIQUIDROOM
- 「絶蘭」
- 殺されちゃう
- MONSTER
- デザートの楽しいマーチ
ライブ情報
●DEZERT SPECIAL LIVE 2022 in 日比谷野外大音楽堂 “The Walkers”
6月18日(土)日比谷野外大音楽堂
※入場者全員に新曲「The Walker」CD無料配布
●アルルカン Presents「束の世界-SONOSEKAI- 2022」
8月27日(土)なんばHatch
出演者:アルルカン、DEZERT、and more…