◆バンドがないんだったら俺はもう発信しないと思うから
――復活して1年半経ちましたが、変わったなと思います?
怜:復活時期は震災もあって、体とバンドが動くならやりたいって一心だったし、時間が経ったといえど、その間もみんな音楽活動をしていろんなものを経ているからね。今年に入ってからすごく考えているんだけど、俺は、バロックが大好きで、歌うことが心底好きなんだよね。
でも、「音楽が好き」が入口じゃない。そのことに悩んだこともあったんだよ。でもすごくシンプルで、俺は大好きなバンドのメンバーと出会って、俺には歌という手段があって、あいつらと奏でられるものがたまたま音楽だった。俺はこのメンバーとやりたいから歌の技術も欲してる。kannivalism、バロックってバンドがないんだったら俺はもう発信しないと思うから。
――単純明快ですけど、その衝動はなかなか無いと思いますよ。
怜:俺はメンバーに恋をして、メンバーも俺に恋をしてくれてる。その集合隊が世の中に爪痕を残す手段がたまたま音楽だった。「音楽を好きにならなきゃいけない!」とか、らしくあることが逃げだと思っていたこともあったけど、そうじゃなかった。…こういう記事、ほんと万ちゃんとか読んだ方が良いと思うよ。こんなにメンバーをこよなく愛してるやつはなかなかいないからね(笑)?
――怜さん、メンバーに心底恋してますね。
怜:うん(笑)。でもこれに気付けないまま年を重ねていくのはいやだなって、葛藤の中で気づいたんだよね。俺不器用なんですよ。メンバーで会議で真剣な話してると泣いちゃいますからね。うまく言えなくて(笑)。
――そんな怜さんに、メンバーはもう慣れてる?
怜:うん。「あ、怒ってる」とか「あ、眠いんだな」とかね。
――眠いって、子どもみたいな(笑)。
怜:子どもみたいでしょ(笑)。そこで、万ちゃんと晃くんが「よしよし」ってしてましたね。ダブルスポンジです(笑)。
――愛されてますねぇ。
怜:うん。でも愛されるならより愛さないとね。
――じゃあ愛する万作さんが帰ってきたら、まず何て言いましょうか?
怜:「とりあえず坊主だな」って。あ、でも大丈夫かな…短くしちゃって…。
――心配してる(笑)。
怜:まぁ「遅せーよ。早く来いよ」かな。あとは「これから毎日スタジオ抑えるから練習してきてね」。
――優しいなぁ。ところで今回の『キズナ』と『たとえば君と僕』は万作さんが戻って弾いているところを想定して作っていたりはするんですか?
怜:うーん、それよりはその頃の心情で作ったかな。『キズナ』はそもそも演奏しようと思ってなかったから。
――そうなんですか? 確かにまだライブでは聴いていませんが。
怜:あの曲は、ステージでやる曲なのか?って考えるとね。やる想像はしてない。演奏して作った曲じゃないからね。
――2013年のバロックには色々驚かされそうです。
怜:そうだね。まずは、3月にライブ(3月1日、3日、赤坂BLITZにて行われる「TOUR バロック現象 第5現象 2013.03.01」、「TOUR バロック現象 第0現象 2013.03.03」)が決まったから、それに向かっていくかな。CDも出たばっかりだしね。
――NHKホールでやった「溢れるは純情」と「湿度」という新曲2曲が気になっているんですが。
怜:あれは実は、あっくんの曲です。
――晃さん曲でしたか。「キズナ」「たとえば君と僕」の2曲が圭さんの曲だったから、ちょっと新鮮ですね。
怜:確かに。いつも交互くらいなんだけど、たまたま圭が続いたね。
――今回のシングル『たとえば君と僕』はどういったコンセプトで作ったんですか?
怜:候補として5曲出たんだけど、時間の許す範囲の中で悩んで悩んで選んだのが『たとえば君と僕』だったんだよね。でも俺は5曲の中のどの曲でも良いと思ってた。どれもバロックだから。メッセージ性云々というより、今回3人で作ったバロックの曲はこれだよ、と切り取っただけなんだ。
――この曲はいつ頃できたんですか?
怜:3年前に圭が原曲を持っていて。その時はプリプロまでやったのに形にならなかったんだけど、すげー良い曲で。今回、圭とスタジオに入ったときに「この曲聴いてよ」って言われたんだよね。実はその2日前に、俺は家でたまたま当時の音を聴いていたりして。
――シンプルかつストレートな歌詞ですよね。
怜:この曲は、メッセージ性云々よりも、今の気持ちを書くならシンプルに恋かなと思って。それなら大勢に向けて書くよりも一人に向けて書いた方が響くかな、ってそのくらい。内容は恋の歌なんだけど、3年前の風景も、感じたことも詩に入ってる。その頃暗く見えていた空があって、それが今は光に代わって感じるところとか。当時から今の風景で恋を綴った詩です。
――いつもの怜さんの言葉選びとは違う、あまりにピュアな恋の歌に驚きました。
怜:あまりに飾りっけがないでしょ(笑)。歌詞もアレンジも最近なんだけど。
――プリプロまでした3年前はなぜ形にならなかったんでしょうね。
怜:形にしようとは思ったんだけど、その時は俺の曲の捉え方が今と違ってたんだよね。
今は、突き抜けた明るさとかピュアなものを感じているけど、3年前はこんなストレートでメロディアスな曲にとてつもなく残酷な歌詞をのせようとしていて。圭と「形になんねーな(苦笑)」って(笑)。
――3年経ってこの形で完成したのは正解だったのかもしれませんね。
怜:そうだね。あと、この曲がなくならなくて良かったなと思う。
――今回のタイトルの『たとえば君と僕』なんて、少女マンガに出てきそうなのに。
怜:そうそう(笑)。このタイトルは晃君と「“君と僕”に何か言葉を足したいよね」って話していて、晃君はアニメとか好きだから「“たとえば”ってどう?」ってすごいキラーパスをくれたの。
――晃さんさすがですね。タイトルはメンバーと話し合って決めることが多いんですか?
怜:そうだね。『モノドラマ』とか『メロウホロウ』は俺が付けたけど、『凛然アイデンティティ』だったら「なんとか然アイデンティティ」にしようって俺が言ってね。その後にみんなで考えて。
――何です、そのすごい縛り(笑)。
怜:すごいでしょ(笑)。「俄然?」「自然?」「愕然?」みたいなね(笑)。
――『俄然アイデンティティ』ってガムシャラ感がすごいですが(笑)。
怜:そうそう(笑)。最後は「俄然」か「凛然」で悩んだ。ちなみに『ザザ降り雨』は仮タイトルが「ザザ降り雨のなんとかシンドローム」で、そこから短くなった。
――『キズナ』は?
怜:『キズナ』は本当に番外編。バロックのバンドとしてのテーマが先にあって、他のタイトルは付けられなかったからね。
――あらゆる意味でスペシャルですね。
怜:うん。あえて言うなら漢字表記はないかなってくらい(笑)。バロックらしい表記にしたいなと思って。漢字にしてたらもっと深刻に受け取られたかもしれないしね。ひらがなだと可愛いし(笑)。
――「きずな☆」って感じになりそうですもんね(笑)。
怜:それはYOMIくん(NIGHTMARE)に任せます(笑)。YOMIくん、なんかひらがなのイメージあるんだよなー(笑)。NIGHTMAREは英語表記のタイトルが多いのに。
――前回の対談の時にメアド交換してましたけど、仲良しになりました?
怜:うん。二人で飲みに行こうよって約束もした。行けてないんだけどね(笑)。
――そういえば、今二人とも黒髪ですね。
怜:うん。YOMIくんと同じ髪型とかいいんじゃないかな。身長一緒くらいだし。ユニットでYOMIくんはひらがな担当で、俺はカタカナ担当。って勝手に妄想してごめんと伝えてね(笑)。
――素敵過ぎる(笑)。
怜:そんな感じで今年もらしくいたいです(笑)。
(文・後藤るつ子)
バロック
<プロフィール>
怜(Vo)、圭(G)、晃(G)、万作(B)によって2001年に結成。2003年にメジャーデビュー。同年8月、結成から2年3か月という史上最速で初の日本武道館公演を行う。2004年12月解散。2011年7月17日に横浜赤レンガ倉庫野外特設ステージでフリーライブを行い、9月に正式に復活を発表。2012年1月4日に同時発売したシングルが、オリコンチャート週間シングルランキングにてインディーズアーティストによるシングルトップ5内3作同時ランクインという史上初の快挙を成し遂げる。6月20日シングル『ザザ降り雨』、7月18日最新シングル『メロウホロウ』をリリース。2012年12月にワーナーミュージック・ジャパンより1stシングル『キズナ』を、2013年1月に2ndシングル『たとえば君と僕』リリース。
■オフィシャルサイト
http://www.pigmy.jp/
『たとえば君と僕』
2013年1月23日発売
(ワーナーミュージック・ジャパン)
12月12日にリリースした第1弾シングル『キズナ』に続く、2ヶ月連続リリース第2弾。ストレートな歌詞とメロディが印象的な1枚。
【収録曲】
<CD>
01.たとえば君と僕
<DVD>
【初回限定盤A】
「たとえば君と僕」ミュージック・ビデオ
【初回限定盤B】
「メロウホロウ」ミュージック・ビデオ収録