2021.08.12
圭@渋谷ストリームホール
<THE ELEGY-夜明けの明星->
1st STAGE<TRANSPARENT UTOPIA./2nd STAGE<WITH LOTS OF LOVE.

圭が自身の誕生日でもある8月12日(木)、東京・渋谷ストリームホールにて<THE ELEGY-夜明けの明星->と題して、1st STAGEは<TRANSPARENT UTOPIA.>、2nd STAGEは<WITH LOTS OF LOVE.>とコンセプトの異なるステージを1日2公演で開催した。

圭がBAROQUE無期限活動休止を受け、ステージの中央に立ち、本格的なソロ活動へと踏み出したのが今年4月。そこから約4ヵ月。

この日に行った<THE ELEGY-夜明けの明星->において、1st STAGEではギタリストとしてインストメインのアクトに挑み、2nd STAGEではギターやピアノを弾きながら、ヴォーカリストとして自身のソロ曲やBAROQUE曲を歌った圭。

ギターインストでも歌ものでも、ソングライターとして美メロ至上主義をつらぬく圭にとっては、この二刀流のステージが自分をトータルで表現するにはまさにぴったりだった。

本格的なソロに踏み出して以降、驚くようなスピードで成長を遂げ、表現者としてギタリストだろうが、ヴォーカリストだろうが、どちらも温度差なく、その両方で変わらない気高さと、キラキラとしたスターオーラを放ちながら華のあるスタイリッシュなパフォーマンスを魅せられるようになったからこそ、実現できた今回のステージ。

圭というアーティストが放つ音楽、そのスタンダードとなりうる独自のライブのあり方が見えた2公演となった。


1st STAGE<TRANSPARENT UTOPIA.>

まずはDr.の山口大吾(People In The Box)、B.の高松浩史(THE NOVEMBERS)、Key&Mani.のhicoといういつものサポートメンバーが白シャツにネクタイ、黒いパンツで統一した衣装で姿を表したあと、スペーシーなSEに波の音が重なり、圭がギタリストとしてオンステージ。ライブは新曲「spirit in heaven.」で幕を開けた。

オープニングから、まるで1st STAGEのアートワークをトレースしたようなメロディーがギターから立ち昇っていったところはあまりにも美しく、その完璧すぎるギターワークに心から感動。

ライティングと相まって、夜明け前、うっすらと空が白んでいく時間帯を幻視しているような気分にどんどん浸らせ、そこからさらに新曲を立て続けにアクト。

新曲はどれも『4deus.』で見せられた脳内宇宙でダークエナジーが激しく渦巻いているような風景とは別世界にあるものばかり。果てしなく広がる白い静かな空間を、一人ぼっちでずっと浮遊していくような景色が、曲を重ねるごとに現れては消えていく。

そんな景色を音で表現しながらも、目の前では圭がいまや彼のライブセットでは定番となりつつある“花道”を使って、スタイリッシュで華麗なパフォーマンスを次々ときめていく。

そんな圭に見惚れるファンに向かって「歌わねぇじゃん! 金返せとかいわないでよ」と語りかけフロアをリラックスさせた彼は「その代わりこっちはギターで歌うんで。インストで音楽の深いところまでいって全身で音を浴びて下さい」と言葉を続け、1st STAGEの趣旨を伝えた。

このあと中盤では「my fanny valentine」をまろやかなジャズギターサウンドでカバーしたり、about tessのギタリスト、takutoをゲストに迎えてヒリヒリするようなジャムセッションを繰り広げたり、親友でもあるDURANとは彼の「Echo(Electric Gospel)」を楽しそうにカバーして、普段あまり見られないようがギタープレイも存分にアピール。

そのあと、ライブは再び新曲を交えて白い静かな世界へと没入。本編ラストの「in the light.」では文字通り、恐ろしいほど澄みきったギターのメロディーで、夜が明けて光あふれていく世界を観客に染み込ませていった。

圭のギター・スタイルはコードのカッティングで世界観を表現したり、テクニカルな速弾きやエフェクターワークで実験的な音を出して長々とソロを弾いたりするようなものではない。

圭のなかで最強なのはインストでも歌ものでも、やはり“メロディー”なのだ。インストでは歌の代わりに思う存分ギターが美しいメロディーを奏でてくれる。だからこそ、ファンは彼が作る歌ものと変わらない感覚で音楽に触れ、ギターインストライブも楽しめる。そんな特異性を知らしめた1st STAGEだった。

2nd STAGE<WITH LOTS OF LOVE.>

2nd STAGEの<WITH LOTS OF LOVE.>は1st STAGEのサポートメンバーにG.の結生(メリー)が加わり、結生以外は黒い衣装に着替えてステージに登場。真っ白いスモークが吹き出す舞台。

点滅を繰り返す光のなか、雷音に雨音が重なると、ヴォーカリスト、圭がハンドマイクでオンステージ。新曲「PANDORA.」を白いロングタキシードジャケットを着て、足先まで白でトータルコーディネイトした姿で歌いだした。

続いて躍動感たっぷりに花道へと駆け出し、軽快にステップしながら歌いだした「17.」では、歌唱中さらっとウインクをきめるなど、フロントマンとしての表情、仕草も自然と出せるようになった圭。白一色のファッションを着こなせるボディライン、整った容貌、繰り出す仕草。キャリア20年目にしてこの日37歳を迎えたとは思えない端麗な王子っぷりで、冒頭からこの歌に込めたメッセージ通りみんなを“自由な世界”へと連れ出して見せたところはお見事。

その王子がBAROQUE曲「LAST SCENE」から徐々に変貌。圭は楽曲が進むにつれて歌、表情、ギターを歪ませていき、無垢で繊細で自由だった自分が邪悪な自分に飲み込まれていく様を表現者としてパフォーマンスしていく。

白いファッションもいつの間にかレオパード柄のコートと黒いパンツに変わり、そのコートのポケットに片手をつっこみ、花道で観客を見下ろし薄笑いを浮かべる圭。

その表情がどんどん危うくなり、歌い方も挑発的になっていったところで放たれたのが「I LUCIFER」だった。これも元々はBAROQUE曲だが、そのなかでも圭のヴォーカルに素早く馴染み、ダントツなフィット感でライブのクライマックスを作る必須ナンバーになっていった。

この日、汗だくになりながらボーカリストとして自分をむきだしにして、邪悪な自分を振りきるようにこの曲を叫び、歌った圭の歌のテンションは信じられないほどエモーショナルで胸に響くものがあった。

そこから、間髪入れずにコートをビックシルエットの白シャツに着替え、キレキレの演奏と歌で「the primary.」、さらにパンキッシュな「4letter word.」とアッパーな圭サウンドを続けて投下すると、ファンも身体を揺らして反応。

「2nd STAGE。ヴォーカル&ギターでやるのは今回で3回目。みんな楽しんでる?」と会場に問いかけた圭は、今から20年前の同日。17歳の誕生日を迎えた日に、バロックとして新宿ロフトで無料初ライブを1日2公演で行ったことを感慨深そうに振り返った。

「でも、そのときロフトに向かうときの気持ちは20年経った今も何も変わっていません」と集まったファンに伝えたあと、ピアノの伴奏に続いて、新たな幕開けを告げるようなギターフレーズから「BIRTH OF VICTORY」、「PUER ET PUELLA」をプレイ。ファルセットを使った歌唱を交えながら、壮大な祝祭空間を場内に生み出していって本編は幕を閉じた。

アンコールはメンバー紹介からスタート。ここでは結生が20年前のバロックのロフトのライブに行っていたことを打ち明け、みんなを驚かせた。

「それで終演後に楽屋に挨拶にいったら子供が出てきて(笑)。しかも、ちょっと生意気で」と圭に会ったときの感想を伝えると、思わぬ形で過去の自分を暴露された圭は大照れ。場内に和やかなムードが広がったあとは、コロナ禍が続く世の中に向けてメッセージを込めて作った「STAY」を自分の歌で届けたあと、ピアノを弾きながら「ring clef.」を愛情をたっぷり込めて歌唱すると、圭の音楽が光、希望の粒となって観客をやさしく包みこみ、ライブはフィニッシュ。

すべてを終えた圭は「37歳になりましたけど、ここからより一層攻めて。たくさんの愛に守られ、今日までやってこれたと思うので、それをエネルギーに替えてみんなを幸せにできたらいいなと思ってます」と決意を告げ、そのあとは笑顔で手を振り、お別れの挨拶をしてステージを後にした。

自身の誕生日、<THE ELEGY-夜明けの明星->というタイトルの元で、2つのタイプの異なるライブを繰り広げた圭。ギターでも歌でも輝くことができるこのスター性をもったアーティストとしての存在感と、ギターインストも歌ものも“メロディー”で聴かせることができる音楽性。

これらすべてを伝えることができる今回のような二刀流のライブスタイルを、今後どういう形で進化させていくのか。圭のソロがますます面白くなってきた。

(文・東條祥恵/ライブ写真・上溝恭香(TAMARUYA))


【サブスク配信情報】
●圭
・Amazon Music Unlimited:https://music.amazon.co.jp/artists/B085XQWR3Y
・Apple Music:https://music.apple.com/us/artist/kei/1465709836
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