NOCTURNAL BLOODLUST

NOCTURNAL BLOODLUST

赤坂BLITZで作り上げた極上の空間を見事にパッケージングしたライブDVD。そこに滲む彼らの音楽への思い、そして思い描く未来とは――

ライブを一度観れば、その圧倒的な実力で叩きだす強靭な音と強烈なライブパフォーマンスの虜になる……そんな唯一無二の空間を作り出すNOCTURNAL BLOODLUST。“エクストリームミュージックの異端児”として、決して平坦ではない道を歩んできた彼らが、今年6月20日、過去最大キャパである赤坂BLITZを見事ソールドアウトさせ、満場のフロアを狂乱の渦に巻き込んだことは記憶に新しい。その模様を余すところなく収めたライブDVD『銃創 AT ’15 AKASAKA BLITZ』について、そしてこのライブを経たこれからについて、5人の超ロングインタビューをお届けする。

◆誰の目にもわかる差を出したかった(Masa)

――赤坂BLITZは、振り返ってみてどんなライブでしたか?

尋:目標ではあったんですけど、あくまでもバンドの進む道順の中の一つという感じです。

Natsu:うちは階段を一段ずつ上がっていくようなスタンスでやっているんです。その中で、2014年12月にやった恵比寿LIQUIDROOMの次に大きな会場がBLITZだったっていう単純な話でもあるんですよ。どの会場でも「ここでライブができたらすごいよね」って思うんですけど、BLITZに関しては「ついにBLITZに来たか」という思いがメンバー全員にあったと思います。

――この場所でライブDVDを撮ろうと思ったのはなぜですか?

Masa:前に出したライブDVD(2014年リリースの『GEARS OF OMEGA』)が代官山UNITのものだったので、次に出すならそれと差がつく映像にしたかったんです。だから、あえてLIQUIDROOMではライブDVDを出さなかった。規模も全く違うし、特効もいっぱい使えるから、映像にするならBLITZだなと。

――代官山UNITのライブが2013年12月、そこからわずか1年半でBLITZワンマン、しかもソールドアウトというのは、すごい急成長ですね。

尋:だいぶ変わりましたね。

Masa:『GEARS OF OMEGA』から今回の『銃創 AT ’15 AKASAKA BLITZ』までライブDVDは一切出さなかったから、その間NOCTURNAL BLOODLUSTのライブに来ていなかった人たちは、代官山UNITの映像の印象で止まっていると思うんです。でも、その間も俺らはTSUTAYA O-WEST、LIQUIDROOM、新木場Studio CoastやTSUTAYA O-EASTで、大きいイベントにも出ていたわけだし、どうせ映像を出すなら「え! こんなデカいバンドになってたの!?」って思われたかった。ちょこっと人気が出たくらいで映像を出すより、誰の目にもわかる差を出したかったんですよ。

Cazqui:格闘ゲームでも、強い技は必殺技ゲージを溜めてから出すものですからね。

Daichi:大分、チャージの時間があったね(笑)。

――(笑)。それにしてもBLITZのライブは照明がかなり豪華でしたね。

Masa:関わるスタッフさんがすごい人たちだったんですよ。照明さんはMAN WITH A MISSIONをやっている人だったし、PAさんはLUNA SEAをやっている人だったし…、そういう意味でかなりいいノクブラを見せられたと思います。

Cazqui:あと、BLITZのライブは、昨年末に出したアルバム『THE OMNIGOD』の集大成でもあったなと。LIQUIDROOMのライブはリリース直後だったのですが、BLITZをやる頃にはだいぶ収録曲がファンの間で浸透していたし、演出込みでベストなセットリストを組めたと思います。 セットリストに関しては、BLITZ以外のライブでも常に考えていて、1ヶ月前にやっていたツアー(NOCTURNAL BLOODLUST presents 13大都市 ONEMAN TOUR 「THE ORIGIN」)では逆にそのテンプレートをぶち壊そうぜっていう流れでやっていたんですけど、BLITZではそれまで一つ一つ積み重ねてきた、俺らの中でノクブラだなっていうところを突き詰められたと思います。

◆やっとあの場所で一つの形として、曲たちに完成を迎えさせてあげられた(Daichi)

――NOCTURNAL BLOODLUSTは、セットリストは全員で決めるんですか?

Daichi:リハーサルをやりながら全員で、ああでもないこうでもないって言いながら考えています。

尋:BLITZでは沙幕も使ったし、特効もあるからずっとああだこうだ意見を言いながらやっていました。UNITでも特効は使ったんですけど、BLITZほどてんこ盛りではなかったし、BLITZは天井が高いから使える特効の幅が広がるので、それによっていろんな曲を視覚的にも音楽的にも楽しめるようなセットリストにしたんです。

Cazqui:特効は会場によって使える場所と使えない場所、映える場所と映えない場所があるんですよね。BLITZの幕開けは「GENESIS」だったんですけど、イントロで一回静寂があってからバンドがドーンと始まりますよね。そこで紗幕を落としたり、CO2噴射などの特効を使う演出は、作曲段階から考えていたものだったんです。『THE OMNIGOD』は「シネマティックメタルコア」というコンセプトを念頭に置いて制作したアルバムなので、そのイメージをやっと忠実に再現できました。

尋:『THE OMNIGOD』収録曲「DESPERATE」も、映画音楽みたいな気持ちで作っているんですけど、「DESPERATE」はすごくいかつい曲なので、ここで炎が使えたら、炎を操る俺たちっていう最強の化け物感というか、ラスボス感が出るんじゃないかと。

Natsu:あの炎が出ているライブ映像は、MVにしてもいいくらいの完成度だったよね。

尋:うん。BLITZは本当に、視覚的にも音楽的にもすべてにこだわったライブにしようと頑張って作りこんだからね。

――パフォーマンス、演出、あの日の会場の空気と相まって、本当に完成度の高いライブでしたし、その空気を余すところなく詰め込んだDVDでした。

尋:僕、映像で観たら結構ガチガチでしたけどね(笑)。あのライブ以降、気持ちもスタイルもパフォーマンスもいろいろ変化して、今は一つ段階を踏んだNOCTURNAL BLOODLUSTとしてライブをやっているんですけど、あの時はあの時の最高のNOCTURNAL BLOODLUSTを出せたなと。ある意味『THE OMNIGOD』としてのNOCTURNAL BLOODLUSTはあそこで完結したなと思います。

Daichi:『THE OMNIGOD』も過去の作品も、リリースした段階で曲は完成ではないんですよね。僕たちの熱や会場の熱を含めて完成していくものだと思うんです。だから、やっとあの場所で一つの形として、曲たちに完成を迎えさせてあげられたなと。そこからまた変化や進化をしていくんですけど、ある意味一つのNOCTURNAL BLOODLUSTという形を提示できたなと思うライブでした。

◆観終わった後に「…このバンド、マジでかっけーわ」と(尋)

――ではこのDVDの見どころをお願いします。

Masa:個人的には「DESPERATE」の炎ですね。

尋:…あ、それ俺が言おうとしてたやつ…。

Masa:(笑)。結成時からこのバンドで炎を使いたかったんです。でも、あのくらい会場が広くないとできないから、ずっと使えなかったんですけど、やっと実現しました。

Natsu:念願だね。

Masa:うん。そういう意味でもBLITZはやりたかった場所の一つでもあるんです。ここだったら思い描いていたライブができると思っていたので。もちろん、それまでに自分たちが成長して人気を出さなきゃいけないんですけど、ずっと我慢していたことが実現できるわけですからね。それに、普段イベントでしかノクブラを観たことがなかった人たちがこの映像を観たら、「この人たち、こんなにワンマンで作りこむんだ!」ってイメージが変わるんじゃないかな。イベントだと特に飾らず、最初から最後までぶっ通しだし、MCもコミカルで接しやすい感じでやってますけど、ワンマンでは特効含め、作りこみが全然違うってわかると思うんですよ。

――おそらくこのライブ、もしくはDVDで初めてノクブラのワンマンを観たという人もいたと思いますが、度肝を抜かれたでしょうね。

Masa:そうですね。そこでまたハマっていくんでしょうねぇ(笑顔)。

全員:(笑)

Cazqui:今までこういった場で世間やリスナーに対して訴え続けてきた事は、このDVDを観てくれれば伝わると思います。

――分厚い内容の作品ですものね。

Cazqui:なにせ初回盤は2枚組ですし!

――物理的にも分厚い(笑)!

Cazqui:そう!そして熱い!「DESPERATE」では炎が燃え盛る!

尋:ちなみにあの日、僕の手の動きに合わせて炎が出るという演出だったんですけど、DVDにはそこがあんまり映されてなくて、なんかジタバタしているようにしか見えないんですよ(笑)。

全員:(笑)

尋:そして実は僕、このDVDをちゃんと観たのが2日前なんです。いつも利用しているスタジオで流してもらっているので、映像だけはボーっと観てたんですけど、音は鮮明聴こえていなくて。それで、2日前に家でまじまじと観たんです。先ほど見どころについて聞かれましたけど、すごく簡単な感想を言わせてもらうとですね、観終わった後に「…このバンド、マジでかっけーわ」と。

全員:(笑)

尋:一作品を通してそう思いました。これがカッコよくなかったら僕らが否定されたようなものだし、いろんな思いがこみ上げてきますよね。ここまで来たなっていう。そして、やっぱり映像に残すことはすごく大事だなと思いました。この前のO-EASTは映像に残っていないじゃないですか。時間をかけて3時間のライブを観ると細部までいろんなことをしているのがわかるし、「なんてかっこいいバンドなんだろう!」って思いますよ。見どころなんて、そんな問題じゃないです!

――すみません、愚問でした!

Masa:尋さん、締めの言葉になっちゃったじゃん(笑)。

◆その場にいた全員のボルテージの抑揚が見える映像(Natsu)

――NatsuさんはこのDVDを観てどんな感想を持ちましたか?

Natsu:“世界観”という言葉は、わりと抽象的に使われていますけど、BLITZのセットリスト自体が、それを全面に出しているんです。演出込みで考えたセットリストで、メンバーだけじゃない、そこにいた千人以上のお客さんも含め、その場にいた全員のボルテージの抑揚が見える映像になっているなと。Cazquiがさっき「シネマティックメタルコア」って言っていましたけど、映画のワンシーンみたいに、バンドが指揮者になってお客さんも一緒になって空気を一緒に演奏しているような映像になっていると思います。曲が始まる前からその世界が少し作られていて、そこからボルテージが上がって一緒にテンションが上がっていく。その感じが映像からも伝わって、心が躍り上がるような作品になっているので、観ていてハラハラドキドキするような、エンタテイメント性にあふれた映像だと思います。

――確かに、心拍数が急上昇する映像作品でした。

Natsu:僕が観て感じてほしい部分はそこが大きいですね。最初はすごく非現実的なところを押し出しているんですけど、後半に行くにつれて、だんだん人間の持っている熱が上がって行って。アンコールは特にそうですけど、最後に尋がいきなり「もう1曲やろうか!」って言ったのも、人間だから、その時のボルテージがマックスだからできることで、そういうところを観てほしいです。

――あの最後の「ちょっと待ったーー!」からの「もう1曲やろうか!」はライブならではでしたね。

Cazqui:ちなみにそのシーンの見どころは、余った炎の無駄打ちです。

全員:(笑)

Natsu:俺、あれにめっちゃびっくりした(笑)。

Cazqui:全部を出し尽くす勢いで、ボンボン出てたもんね。あの日の炎、客席も熱かったらしいんですよ。一番熱かったのはNatsuだと思いますけど。

Natsu:うん。リハの段階で試しで火が出たんだけど、両肩がマジで焼けるかと思った。黒くなってないよな!?って思わず見たくらい(笑)。

Cazqui:でも、そういうのってその場にいた人にしかわからないじゃないですか。真夏の映像をクーラーがガンガンきいた部屋で観ても、その暑さを体感出来るわけじゃない。身をもって体験することでしか理解出来ない、伝わらない部分は確実にある。ファンはそれを知っているからこそ、チケットを買ってライブを観に来てくれるのだと思います。けれどこうして映像作品を出すからには、リアルな熱を伝えられるものにしたかったんですよね。ギャップを感じさせない、とても素敵な内容に仕上がったと思います。ただ敢えて「本物には及ばない」と言っておきたい(笑)DVDを気に入ったらライブに来てね。

◆このライブそのものが、一人ひとりのファンとメンバーの戦い続けてきた証(Cazqui)

――Daichiさんは映像を観てどう感じました?

Daichi:僕はライブをしているときは、お客さんが盛り上がりすぎて、ステージの向こうは全部CGなんじゃないかって思ったりするんです。でも映像を観たら、ステージ側の演出がカッコよすぎて、ステージ側は全部CGなんじゃないかと思いました(笑)。

――ステージから観た印象と映像で観た印象は違うものなんですね。

Cazqui:違いますよ。映像を観て、「え! こんなに盛り上がってたの!?」と思いました。「え、そこモッシュしちゃう!?」みたいな。

全員:(笑)

Daichi:この映像は、これまでライブに来たことがない人も観ると思うんですけど、その場にいるお客さんたちがめっちゃ楽しそうだったので、その映像を観てまたライブに来てくれたらうれしいなと思います。あと、途中途中で停止してみると、結構な回数、僕が白目をむいているので…これいいのかなと思いつつ…(笑)。でも演出が盛りだくさんだったので、普段のライブより作りこまれていたし、CDよりもこのライブDVDで聴く曲たちのほうが完成形だと思うので、曲の真の姿を見てもらえたらなと思います。1曲1曲そういうところに注目してもらえたらと思います。

Cazqui:さっき“世界観”という言葉が出ましたけど、これってすごく曖昧で抽象的な言葉ですよね。「世界観あふれるロックバンド」って煽り文句はそれだけで高尚さが出るし。ノクブラには仰々しい演出もあって、確かにそれは、そういった煽り文句が相応しいエッセンスの一つであると思うんです。ストリングスの導入や、ドラマティックな楽曲展開であったり、それがあれば世間では世界観があるって言われますからね。ならそれは具体的に何なの?って話ですけど。登場人物は?シナリオは?と。僕はそういう抽象的な煽り文句としてではなく、ちゃんとNOCTURNAL BLOODLUSTには世界観があると思っているんですよ。この映像が物語っているんですけれど。DVDのひろぽん(尋)を見てもらえれば分かる通り、だいたいライブの最初の方で怒っているんです彼は。

――怒りですか。

Cazqui:目の前の人たちのノリに対して怒っている時もあるでしょうが、多分それだけじゃないんですよ。そんな小さな事じゃない。この映像では、彼を含め、全ての人間が「何者か」と戦っているんですよ。その中の一つはまず「自分」ですよね。本人も汗だくで歌っていて苦しいし、俺たちだってあれだけ激しいライブを3時間もやるのは肉体的にも辛い。でもそれはメンバーだけじゃなく、フロアのお客さんも一緒だと思うんです。一人一人が見えない敵と戦っていると思うんです。ファンの人たちも日々会社勤めをしたり、学校に通ったり、求職中だったり、十人十色ですが、チケットを取ってあの会場に辿り着くまで、色々な過程があると思うんです。日常において、理不尽な出来事だって沢山あると思う。我々もあのDVDに収録されている3時間のために、今日まで今までいろんなものと戦ってきました。例えばこういう場ではいつもバンドイメージだったり、メタルだのヴィジュアル系だの、本来は自分らで説明するまでもないような、ナンセンスだと思う事も必要に応じて主張してきました。セットリストも、最初は憤怒に塗れた内容ですよね。ボーカルの表情も煽りも。けど、映像の中で、その表情が段々ほころんでいくんです。フロアのファンを含め、登場人物は会場にいた全員です。見どころは最後の「A Bullet of Skyline」が終わった時のみんなの表情です。フロア込みで一体になってますよね。この時、ひとつの敵を打ち倒せたんじゃないかなって思えましたよね。このライブそのものが、一人ひとりのファンとメンバーが戦い続けてきた証なんです。

尋:いよっ!(笑顔で拍手)