A9パーソナルインタビュー第1弾は、ドラムのNao。8月23日の11th Anniversary Live「Re:birth-飛翔-」を終えてからわずか3日後というタイミングで行った今回の取材において、終始笑顔の絶えないNaoらしく冗談を交えながらも、飾ることなくどこまでもまっすぐに、現在の胸の内を語ってくれた。そして、自分だけの音を求めるがゆえの壮大な夢を教えてくれた。
◆1年間蓄えてきたものはこんなもんじゃない
――8月23日のライブを終えてまだわずか3日ですが、率直な感想を教えてください。
Nao:とりあえず1年前の約束を果たせて、ちゃんと5人でステージに帰ってこられて良かったなと。本当にホッとした感じですね。課題はまだまだたくさんあるので、がんばらないとなと思います。
――完全復活を遂げた実感はありますか?
Nao:1年間蓄えてきたものはこんなもんじゃないぞという意味で、完全復活とはまだ言いたくないという感じですかね。まだこれから、1年間蓄えたエネルギーを見せていけると思います。
――とても印象的なオープニングでしたが、「PRAY」のあとに幕が下り、フロアが見えた瞬間はどんな感覚でしたか?
Nao:イヤホンをしている僕のところにも、すごく歓声が届いたので、気のせいでなければ、今までで指折りの歓声だったと思います。おーーっと思いましたね。
――初めてステージで新曲たちを披露してみて、いかがでしたか?
Nao:まだまだこれからツアーでみんなと作っていく、成長していく曲もあるかなと思いました。でも、ドラムは良い感じでしたよ。レコーディングの時は、これはマジしんどいなというか、手数が多くて速過ぎて必死だったんですけど、それを越えてライブが始まる頃には、朝飯前だったという。余裕を持って演奏ができましたね。ちょっと最初だけ「お、始まる」という感覚はありましたけど、特別な緊張はなく、すごく自然にステージにいられました。
――先日のインタビューで、「銃弾」のレコーディングは特に苦労をしたと言っていましたよね。
Nao:ライブでは本当に朝飯前でしたね。鰻を食べたら叩けたという、レコーディングで自分的にも面白いエピソードがあった曲なので、それを思い出すと笑いそうになるんですけど(笑)、そういうエピソードを知った方たちからも「そんな曲だったんですね」というお言葉をもらったりしていたので、出来上がりまでのストーリーが見えると、みんなの中でまた違った楽しみ方もできるのかなと。そういうストーリーを作っていきたいなと思いました(笑)。
――新曲に関して、お客さんの反応が想像以上だったもの、想定外だったものはありますか?
Nao:オーディエンスの表現力が高まったなと思ったんですよね。ここは静かに見て聴いてくれている感じかなと思っていたところで歓声が上がったりして、なんか海外でライブをした時の反応っぽいというか。何かすると反応が来る、みたいな。「あれ? いつもこんなに反応来るっけな?」と(笑)。まぁでも、それだけ楽しみにしていてくれたからなのかなと思いましたが、これがずっと続くといいですね。
――終演のアナウンスが流れても、アンコールを求める声がずっと鳴り止まなかったですしね。
Nao:色々な理由があったと思うんです。メンバーみんなの声を聞かせて、だったり、やっと帰ってきてこれで終わりじゃないでしょ、みたいな感じだったんじゃないかなと。でもみんなの気持ちは楽屋まで届いていて、それは本当に嬉しかったです。ツアーへの励みになりました。
――1年ぶりですから、色々な期待があるでしょうね。
Nao:僕たちもやりたいもの、見せたいものは色々とあるんですけど、やっぱり1日で全部見せているようじゃね(笑)。全てを見せちゃダメじゃないですか。恋愛と同じです(笑)。もっと知りたいと思わせないと。
――(笑)。では、この日最もグッと来た瞬間、心に残っている場面を教えてください。
Nao:「すべてへ」ですかね。最後の最後で、「あぁ、本当に帰って来られたんだな。良かったな」という気持ちが溢れ出てきました。まぁ、他にも色々とありますけどね。俺の中でピークは2曲目「RUMWOLF」だったので(笑)。一番緊張する瞬間でした。この曲の中で4小節のドラムソロがあるんですけど、めっちゃ速くて難しくて、その日の太鼓の張り具合でよれたりするんですよ。張り具合によって跳ね返りが違うから、その感覚を掴むのが大変で。結構緊張するんですよね。でもバシッと綺麗にキマッたので、もう今日は俺大丈夫だと思って、そこから自信に満ち溢れたドラムプレイでした。
――2曲目で良かったですね(笑)。
Nao:早い段階で成功して良かった(笑)。ここで失敗したら後を引いちゃうんですよ。あーキマんなかったなぁ…みたいな。
――先日のインタビューで、「笑顔で叩きます」という宣言もありましたが。
Nao:叩きましたよ! きっと、見えたはずです。
――それにしても、沙我さんとのセクションには驚きました。
Nao:(沙我が)「叩きたい」って、数日前にいきなり言ったんですよ。
――そうだったんですか! お二人で相当練習したのかなと思っていました。
Nao:いや、ちょいちょい(笑)。
沙我:練習っていうほど、やってない(笑)。(※沙我、次のインタビューのため隣で待機中)
Nao:俺なんて、直前までリズムを覚えてなかったですからね。覚えらんねーって(笑)。「ダンダッダッダダンダンダダン」って、ずっと独り言で言ってました。
――あ、Twitterで呟いていたのはこれだったんですね(笑)。
Nao:そうなんです。
――でも、お二人の息がぴったりでしたよ。
Nao:彼の太鼓が意外と良かったので、息を合わせやすかったぜ(笑)!
――(笑)。ちなみに、8月23日の朝ごはんは何を食べたんですか? もうNaoさんと言えば、ごはんというイメージがあるので、一応聞いておこうかと(笑)。
Nao:何食べたっけー。たぶんですけど、会場に着いてからお弁当を食べましたね。前日、暇だったんですよ。やることを終えて安心して、暑かったからビールをひたすら飲んでいたら気持ち悪くなって。朝起きたら、お腹が減ってなかったんです。なので、とりあえず会場に行くしかないなと。だから、ヘアメイクさんに「昨日俺がビールを飲み過ぎたから、ちょっと太ったと思ってるでしょ?」って尋ねましたね。
――そのお答えは?
Nao:「そんなこと思ってませんよー!」って。真意はわからないですけど。
――(笑)。
◆「かっこいいバンド」の代名詞になりたい
――新音源『銀河ノヲト』がついに8月23日の会場からパッケージとしての販売がスタートしましたが、周囲の反応はいかがですか?(※会場でのCD販売を前に、クラウドファンディングのサポーターには楽曲を先行配信)
Nao:配信した時は反応が来てたけど、パッケージに対しては何も言われてないな…(笑)。でも、凝っている作りなので、うちの親からは「あんた、これ2700円(税込)で大丈夫なの!? 安くないの!? このカンカンとか作って大丈夫なの!?」って心配されました。今だからできるパッケージというか、物としての価値を見出せるように、今後も作っていけたらいいなと思います。ああいうのって、物として良いじゃないですか。絶対、後々プレミアになる気がするんですよね。何万枚も作ったわけではないし。今のうちに買っておこうかな(笑)。
――確かに、貴重なものになりそうですね。さて、9月3日から始まるツアーに向けて、先日のライブを経た現在のお気持ちはいかがですか。
Nao:しっかり、自分たちのやろうとしていること、見せたいことを表現するっていうだけなんですけど、なんだろう…気持ち一つでがんばります。本当にもうそれだけですね。気持ちでプレイして、伝わればいいなと。楽しみです。アジアも去年回ったので慣れたというか不安もないし、ちゃんと伝わっていたみたいだし、大丈夫じゃないですかね。今度はもっと色々なものを食べたり、前回と違ったところに行ってみたいな。せっかくなので、楽しみたいなと思いますね。時間ないのかなぁ。
――楽しめるといいですね。
Nao:アジアかぁ、円安だし楽器を買いたいですね。前回、楽器屋に何店か行ったんですけど、日本にもあるメーカーがあったり、あまり知らなかったメーカーが向こうでは主流だったりして、まだまだ日本にちゃんと入ってきてない良い楽器があるんじゃないかなと思って。発掘したいですね。自分だけの音を求めて。今、材料から自分で調達したくて、海外で土地を探してるんですよ。
――え!?
Nao:森林を育てたくて。その木を使ってドラムを作りたいんですよ。
――壮大ですね!
Nao:いやいや、絶対できますよ! 湿度が高くない国で、木が乾いていて、日本とは違う鳴りがするという。カラッとしてスコーン!みたいな。求めています。土地、待ってます!
――(笑)。本当に来ちゃうかもしれないですね。
Nao:「Nao、コレデイイカ? ハンコ、ココ」みたいな。
沙我:Naoさん、海外人気高いじゃん。
Nao:いやいや、高くないよ(笑)!
――「私の土地をどうぞ」というメールが届くかもしれないですよ(笑)。
Nao:行きますよ。夢は大きく。でも、本当に無理じゃないと思っているんですよね。まだ先の話になるとは思うんですけど。楽器を作っている海外のメーカーって、意外と会社じゃなくて普通の家らしいんですよ。家で作っているから生産が遅くて、年に数台しか作れないっていう。でも、すごく良いメーカーだったりするんです。それを考えると、できるんじゃないかと。
――実現できるといいですね。
Nao:オリジナルブランド、Naoブラで(笑)。
――(笑)。では最後に。今後のA9、どのようなバンドを目指したいですか?
Nao:シンプルに、かっこよくなりたいですね。「A9って、意外とかっこよくね?」ってちょっとずつ言われていって、「かっこいいバンド」の代名詞になりたいな。歳を取っても、というか、歳を取ったからこそというような。ただ綺麗にかっこいいんじゃなくて、男臭さもちょっと出たらいいかなと。
――年齢とキャリアを経たからこその、男のかっこよさですね。
Nao:そうそう。皺すらかっこいい、みたいな。汗が似合うバンドになりたいです。
(文・金多賀歩美)