2025.12.27
SLAPSLY@高田馬場CLUB PHASE
「CHIYU 聖誕祭2025 〜博打なんて所詮チョコレート〜」

ベースヴォーカルCHIYUによるソロプロジェクト“SLAPSLY”が、タイゾ(G/夜光蟲、DRUGS)、Tohya(Dr/vistlip)を“SLAPS MEMBER”に迎え、12月27日、高田馬場 CLUB PHASEにて「CHIYU 聖誕祭2025 〜博打なんて所詮チョコレート〜」を開催した。

年に一度の祝福の夜。CHIYUがSNSで事前に予告していた通り、彼自身の希望により、この日はオープニングSEに代わってTohyaのドラムソロからスタートした。もともとドラム始まりの「嘘のない世界」のイントロを発展させた演出で、CHIYUとタイゾが登場すると、そのまま同曲へと突入するかつてない幕開けとなった。

加えて、この楽曲が収録された初のフルアルバム『SCREAM on the WALL』(2021年11月発売)は、「ソロアーティストCHIYUの主軸を作りたい」という思いから制作され、さまざまな“壁”を描いた作品。現在のSLAPSLYの活動へと繋がる重要な分岐点とも言える1枚であり、王道ポップロックに乗せて、自問自答しながらも歩き続ける姿を歌う本楽曲は、今宵の始まりにふさわしいものだった。

CHIYU

序盤ブロックでは、“ベースヴォーカル”CHIYUを存分に堪能できるナンバーが並び、「愛欲の華」「コピー人間」「TRICK STER」と、曲を追うごとに熱量がクレッシェンドしていく流れに。ここでCHIYUが「今年も言うよ。本当に年末のクソ忙しい時期に集まってくれて、ありがとうございます!」と告げたように、誕生日当日に“聖誕祭”ライブを行うのは彼の恒例行事。この日の終盤には、「来年もやるよ」と、早くも次回開催を予告する一幕もあった。

「また新たな一歩を踏み出したいなと。ソロの始まりの曲を聴いてください」と披露されたのは、1stミニアルバム『Seven Deadly Sins』(2018年4月発売)収録の疾走感溢れるロックナンバー「無限の風」。続いて、ひとたびベースを置きハンドマイクで歌に専念した「月と影と私」、ベースヴォーカルとヴォーカルパートを巧みに使い分けた「Gift」、メロディックなベースフレーズの間奏が魅力的な「書生論」が演奏され、多面的なCHIYUの表情を提示していく。

これら3曲はいずれもシンセの比重が高いという共通項を持ち、サウンド面での流れも自然。そのうえで、「無限の風」から「月と影と私」「Gift」へと連なる配置は、異なる時期に制作された楽曲でありながら、見事なストーリーを描き出した。〈願い続けても 愛を注いでも 全てが叶うわけじゃないさ〉と歌う「無限の風」、男性と女性それぞれの視点、表と裏の顔という二面性を表現した「月と影と私」、そして天性の“騙す才能”を持つ女性目線で綴られる「Gift」という具合に。

タイゾ

なお当夜、「聖誕祭はとにかく楽しみたい。緩くやりたい」と語っていたCHIYUだが、ここまでの流れはむしろ実に硬派な構成だったと感じたのは、何も筆者だけではあるまい。実際、CHIYU自身も「あのゾーン(中盤ブロック)が一番緊張すんのよ。ここからは自由に楽しめる」と明かしており、「ここからは全力でブチ上げる曲ばかりになりますので、元気残ってますよね!?」と投げかけ、「Nothing is Over」を皮切りに本編最終ブロックへ。

ゴリゴリのベースに巻き舌も取り入れたヴォーカルアプローチで一気に火をつけると、CHIYUとタイゾが左右のお立ち台に上がり、オーディエンスとともに鳴らしたハンドクラップから「アマランヴ」で文字通りのお祭り騒ぎとなれば、タオルが旋回したパーティーチューン「Infinity & Beyond」では、CHIYUがフロアに下りて歌う場面も。さらに「2025年のストレス、すべて出せ! ストレスなんてクソ食らえ!」と言い放ち、当夜のサブタイトル「博打なんて所詮チョコレート」という一節を含む「ESPOIR」、そして「V.I.P.」と、目まぐるしい展開を見せるハードナンバー2曲を畳み掛け、本編はクライマックスを迎えたのだった。

Tohya

アンコールでは、まさかのパートチェンジ(Vo.Tohya、B.タイゾ、Dr.CHIYU)で「L or R」を披露し、場内を大いに沸かせると、「今日は僕の誕生日ではなく、CHIYUさんの誕生日ということで、何か忘れていません!?」とのTohyaの言葉を合図に、盟友・美月(Sadie、The THIRTEEN)がケーキを手に登場。祝福ムードに包まれ、全員で「Happy Birthday」を大合唱する一幕となった。…のも束の間、演奏出演なしでステージに上がったからには役目を果たさねばとばかりに、美月がキレ味抜群の漫談(?)を繰り広げ、嵐のように去っていった。ここでCHIYUが何気なく口にした「聖誕祭らしくなってきた」という一言は、彼への最上級の賛辞と捉えていいだろう。

「好きって叫ぶ準備できてるかい!? (美月にイジられたことから)今までで一番やりにくいな(笑)」と言いつつ、ポップソング「Egoistic GAME」で愛溢れる空間が広がれば、ヘヴィーかつイケイケなアッパーチューン「FREAKY DANCE」で再び白熱の光景を作り上げた。そして、「これだけ楽しくライブができているのは、皆さんのおかげです。2026年もしっかり後悔のないように、皆さんを幸せにしたいと思います」というCHIYUの言葉から、最後に届けられたのは「Regret」。この楽曲もまた、1stミニアルバム『Seven Deadly Sins』収録曲であり、さらに美月が作曲を手掛けたナンバーであるという事実が感慨深い。〈僕がいるから〉と歌うキャッチーなロックナンバーでオーディエンスとの一体感を生み、〈君との居場所さ『Dear My Bastared』〉と締めくくる、2025年のラストおよび聖誕祭らしいフィナーレとなった。

「本当に出会ってくれてありがとうございます。2026年もよろしくお願いします。SLAPSLYでした!」とのCHIYUの挨拶をもって当夜は終幕を迎えたが、最後に3人の会話の中で、今後を期待させるやり取りが交わされていたことを付記しておきたい。

SLAPSLYのステージを構成する“SLAPS MEMBER”は、フレキシブルな体制をとっていることから、これまでにさまざまなミュージシャンが参加してきた。その中でも最多出演となるのがギタリスト・JOHNであり、タイゾが「JOHNさんとツインギターをやってみたい」と口にすると、CHIYUは「合同SLAPSLYも面白そう。どこかのタイミングで必ずやりましょう」と応じたのだった。思い返せば、去る9月に開催されたSLAPSLYの2周年公演で話題に上がった“パートチェンジをやってみよう”というアイデアが、この日ついに有言実行となったわけである。そう考えると、“合同SLAPSLY”が現実のものとなる日も、きっとそう遠くはないだろう。

今後の動向に関して当夜新たな発表はなかったものの、「来年、必ず音源を出したいし、対バンも増やしたいし、SLAPSLYとしての活動を月に1回は必ず入れていけるように頑張ります」と、力強く語ったCHIYU。終演後には公式サイトおよびSNSにて、現時点で発表されている情報をまとめた年間スケジュール表が公開された。2026年も精力的な展開を見せるであろうSLAPSLYに期待したい。

CHIYU

◆セットリスト◆
01. 嘘のない世界
02. 愛欲の華
03. コピー人間
04. TRICK STER
05. 無限の風
06. 月と影と私
07. Gift
08. 書生論
09. Nothing is Over
10. アマランヴ
11. Infinity & Beyond
12. ESPOIR
13. V.I.P.

En
01. L or R(パートチェンジ:Vo.Tohya、B.タイゾ、Dr.CHIYU)
02. Egoistic GAME
03. FREAKY DANCE
04. Regret

(文・金多賀歩美/写真・まいつむり。)


CHIYU/SLAPSLY オフィシャルサイト