2024.03.07-3.08
D＠豊洲PIT
「D 20th Anniversary Year 無期限活動休止前 Last Tour 2023～2024「血界」Grand Final」
「去年5月に無期限の活動休止を発表してから10ヵ月、本当にあっという間でした。悲しい気持ちのままツアーを回るのは嫌だったので、今年に入るくらいまでは活動休止という現実、その気持ちにどこかヴェールをしてきた気がします。このツアーは自分の地元秋田から始まって、ビックリするくらい盛り上がって楽しくて、各地で回を重ねるごとにどんどん幸せな気持ちになっていきました。どんなに愛していても、例えどんな力を持っていても、全てのものには必ず終わりがやってきます。だから、僕はずっと永遠を願って、メンバーも皆も永遠の存在になってほしくて、Dの世界観を作ってきたんだと思います。明日が終われば、当たり前のように過ごしてきた20年間は過去になりますが、たくさんの思い出と曲が消えてしまうわけではありません。寂しい気持ちになったら、月や太陽、水や風、火や大地、美しい地球の存在を目にしてDを思い出してください」
これは2024年3月7日、Dの無期限活動休止前ラストツアーのグランドファイナルとなった豊洲PIT2days公演の第一夜、アンコールにおいてASAGI（Vo）が述べた言葉で、ここに至るまでの経緯と思いが端的に表れたものだった。
2023年に結成20周年を迎えたDは、コロナ禍を経て4年ぶりに多くのライブを重ねながら、実に7年ぶりとなる新作アルバム『血界』を完成させ、12月より12ヵ所24公演にわたる今ツアーをスタートさせた。『血界』はDが描き続けてきたヴァンパイアストーリーの集大成であり、ASAGI扮するヴァンパイアの王・ドライツェンとドライツェンの息子・ジャスティス、それぞれをメインにした2枚組CDとなっていることから、ステージも各地で第一夜をジャスティスday、第二夜をドライツェンdayとする2days公演で開催することに。
その終着地となったのが豊洲PIT。無期限活動休止という決断に至る以前に、Dは20周年での「過去最大領域への挑戦」を掲げており、この“過去最大領域”とは単に会場の大きさだけでなく、過去最大キャパと最大動員記録どちらも兼ね備えたもので、これまでの活動が最大限に実る場所にしたいとの考えから、自身過去最大キャパであった豊洲PITでの2days公演という答えに辿り着いた。つまり、先述のコンセプトと“最大領域”が示すものが合致し、さらに両日とも見事にソールドアウトという、まさにこれ以外あり得ないと言っていいベストな形が整ったのだった。
迎えた第一夜、「Dの“最大領域”へようこそ！」というASAGIの言葉と共にフルスロットルの幕開けから、終始熱量の高いステージを繰り広げたDと薔薇の申し子たち（ファンの呼称）。アルバム『血界』は、新曲13曲と既存曲を合わせた全28曲収録の特大ボリューム作品だが、ラストツアーにおける1ステージのボリュームも相当なもので、このグランドファイナルではそれぞれ約3時間半～4時間にわたり、第一夜30曲、第二夜32曲が披露されるというとてつもなく濃密な二日間となった。
無論それはヴァンパイアストーリーの集大成であると同時に、Dというバンドそのものの集大成。二日間で『血界』収録の新曲全てを網羅しつつ、ライブ鉄板曲、Dの代名詞的フラッグ曲、さらにレア曲の数々という構成で展開していった。当然、ジャスティス、ドライツェンそれぞれの始まりの曲も組み込まれ、第一夜の「弾丸」ではASAGIが銃を手に歌い、HIROKI（Dr）のドラム台をASAGI、Ruiza（G）、HIDE-ZOU（G）、Tsunehito（B）が囲む形で5人が円になるいつもの光景が見られれば、第二夜の「Vampire Missa」ではステージに松明の炎が上がり、ステージ、フロア共に息の合ったジャンプで一体感を増すことに。
両日の中盤では、『血界』収録の各メンバー扮するヴァンパイアのキャラクターをテーマにした楽曲たちを立て続けに披露。エキゾチックなムードの「紅沙 ～マカイロドゥスの涙～」（大地を司るウィルダネス＝HIROKI）で全メンバーのデスボイスがフロアを盛り立てれば、メロディアスな「赤い惑星の天秤」（火を司るカーバンクル＝Tsunehito）では温かな空気に。中毒性のあるHIDE-ZOUのギターフレーズから始まる「千年樹の希い」（風を司るラファーガ＝HIDE-ZOU）は激しさもありながら光を見せてくれ、水を想起する美しい始まりの「流線上のアクア」（水を司るキルヒアイス＝Ruiza）はサビメロと同じフレーズを含むRuizaによるイントロやギターソロも印象的だ。
本編最終ブロックでは、物語のマルチエンディングとなっている楽曲たちが。四つ目の終わりとして豊洲PIT公演で来場者にプレゼントされた新曲「Elfhame ～[R]osalie’s End～」が眩い白色の光に包まれながら両日奏でられたのち、第一夜では「Arca ～[J]ustice End～」、第二夜では「終末と逆行のコナトゥス ～[D]reizehn End～」と、それぞれの終わりを。そして、「目には見えなくとも、形は残らずとも、きっと心のどこかに…。20年前の選択は決して間違っていなかった、この思いがどこかの誰かを救えたと信じて」（ASAGI）と、壮大なバラードナンバー「Nirgends ～[F]inal End～」が両日の本編を締め括ったのだった。
時系列は前後するが、第一夜の「鬨の声」「Guardian」、第二夜の「黒薔薇の騎士」といった暴れ曲や、全員で旗を振った「薔薇の聖戦」（両日）、「Night-ship“D”」（第二夜）、タイトルコールで歓喜の声が上がったレア曲の数々も薔薇の申し子たちにとって嬉しいものであったに違いないし、HIROKIのドラムソロや楽器隊4人でのインストゥルメンタル「天球Syzygy」（第一夜）、「天象Parade」（第二夜）はやはり見応え抜群。本編最終ブロックの中で供された「血界 NEW WORLD ～Justice ver.～」（第一夜）、「血界 NEW WORLD ～Dreizehn ver.～」（第二夜）では、サビの途中〈離れていても声は聞こえる〉で演奏を止め、思い思いにメンバーの名前を呼ぶオーディエンスの大歓声が鳴り響き、〈忘れない〉と歌う曲の再開と同時に銀テープが舞うという感動的な一幕があったこと、第二夜のアンコール「真昼の声」では、〈もしあの日君に出逢わなければ 何もかも止まったままに〉と歌った後に「出会ってくれてありがとう」とASAGIが囁く場面があったことも忘れ難い。
なお、ヴァンパイアストーリーというモチーフを通し、現実へのメッセージをリンクさせているのもDの楽曲の特徴で、例えば「流線上のアクア」の〈涙は見せずに最後の日まで あなたのよく知る僕で在りたい〉〈嘘でもいいから またすぐに逢えると言ってよ あなたの隣がいい うまく言えないけれど 共に過ごした日々をまだ溶かしはしないから〉、「赤い惑星の天秤」の〈終わりの日が来るとしても 私は最後に叫ぶ 生きた証 生まれた愛を後悔のないように届けたくて〉といった胸を打つASAGIのリリックが、一段とリアリティを持って響いてきたことも印象深いものだった。
ここに最終夜のアンコールで各メンバーから届けられた言葉を残したい。
「20年間の思いと感謝をこの瞬間に全て言い尽くすのは難しいけど、僕が生きているうちはずっとずっと思い続ける大切なものです。思いだけはずっと生き続けると信じています。この20年間でたくさん宝物を見つけることができました。メンバー、そしてたくさんのファンの皆、スタッフ、関係者、友人…皆に出会うことができました。ここにいる全員、本当に出会ってくれてありがとう。人生の中でかけがえのない時間を過ごしたこの20年間に後悔はありません。20年間、たくさん歌って、たくさん曲を作りました。自分自身の心、体、魂、Dのために削れるものは全て削って、全力を尽くしてきました。唯一、この先の未来を約束できなかったことだけがDを愛する皆に申し訳ないと思っています。皆がどれだけDを好きで、どれだけDを愛してくれたのか…今日この体に刻んで生き続けます。本当に長い間、ありがとうございました」（ASAGI）
「Dのスタート時、このバンドは間違いなくカッコいいバンドになると確信して、夢を追いかけることにしました。僕ら5人の目標や、それぞれの目標、色々なことを叶えて、経験して、皆から愛をもらいました。どの瞬間も忘れられないもので、この先も大切に胸にしまって、何かあったら思い出して生きていくんだなと思います。この5人で音を出すことがめちゃくちゃ好きでした。昨日今日とDの最大領域を掲げて、こうやって5人で音を届けられて本当に幸せです。めちゃくちゃ美しい景色です。この美しい景色を作ってくれた皆、声を届けてくれた皆、集まってくれた関係者の皆さん、仲間たち、全員本当にありがとうございます。そしてメンバー、皆大好きです！ ありがとう！」（Ruiza）
「たくさんの声、たくさんの思いをこのステージで感じています。本当に感謝しかなくて。このツアーを通して20年間のたくさんの思い出を振り返って、こうしてグランドファイナルのステージに立てて本当に嬉しいです。Dは自分が音楽を始めた時の夢を叶えさせてくれた、唯一無二のバンドだと思っています。この5人で奏でるDの音楽は永遠のものだと思っているし、それは僕らも皆も同じだと思っています。皆と同じ時代に生まれて良かった。目を瞑れば思い出が蘇ってくるかもしれないけど、目を開けば明日が見えるだろ！？ 前を向いて生きていこうぜ！ 皆できるよな！？」（HIDE-ZOU）
「音楽、バンドをやっているということは、聴いてくれている子の人生の一部になると思っています。皆が集まってくれたこと、自分がDのメンバーに出会えたこと、皆がDの音楽を聴いてくれたこと、知ってくれたこと、そういった当たり前ではないことが重なって、今日を迎えられたことが本当に嬉しいです。自分が2005年に加入してから今まで本当に色々なことがありましたが、それも全て応援してくれている皆、メンバー、関係者の方々、本当に色々な方々のお陰だと思っているので、皆さんありがとうございます。こうしてステージで音を出して皆に体感してもらえるのは今日が最後なので、全身で感じて、体に刻みつけて、心にも刻みつけて、大切にしまっておいてほしいなと思います。そして今後Dの音楽を聴いた時には、思い出して浸ってくれたら嬉しいです」（Tsunehito）
「こんなにたくさんの人に名前を呼ばれるって気持ちいいね。涙腺が弱くなっているので、あまり真面目なことは言えないですけど、Dを20年やってきて本当に後悔はないですし、自信を持って最高にカッコいいバンドだと自負しています。皆さんもこうして集まってくれたということは、Dが打ち出す音楽に対して共感してくれているわけじゃないですか。だから、皆さんも感性が同じ仲間です。今日来られなかった方も含めて、皆さんに感謝の気持ちを述べたいと思います。ありがとうございます。Dは今日で歩みを止めますけど、メンバー各々これからスキルアップしていくので、またこの5人でステージに立つ時には皆さん来てくれますよね！？ 友だち10人連れて来いよ！」（HIROKI）
そして、「Night-ship“D”」をプレイする直前にはASAGIがこんな言葉を告げたのだった。
「Dの航海は荒波ばかりでした。ファンの皆と一緒に旅をしてたくさんの物語を紡いできました。いざ船を降りる日がやって来るのはとても悲しかった。今夜、Dという船は碇を下ろして停泊するわけですけど、この船は命より大事なものなので、ずっとずっと大切にしていきたいと思います。時には掃除をしたり、一人でエンジンをかけてみたり、オールを漕いでみたり（笑）。そんな感じでDの船を見守っていきたいと思います」
かくしてDの20年間の活動の最後、グランドファイナル計62曲のラストは、「休止してもほんの僅かでも望みがあるのなら、僕はこの楽園に咲くDという薔薇を守り続けたいと思います。その願いが叶うように全員で歌ってください」（ASAGI）と、「EDEN」の大合唱をもって温かな愛に包まれ、終幕を迎えたのだった。
そして「Dはこの5人が最高のメンバーです！」とASAGI。5人で手を繋ぎ深々と一礼、メンバー同士ハグを交わし、Ruiza、HIDE-ZOU、Tsunehito、HIROKIがステージを後にすると、ASAGIは最後に「皆に愛されて幸せな20年間でした！」「たくさん夢を叶えてきて、また新たな夢が見つかりました。千年後にまた会おう！ 生きて生きて生き続けるぞ！ 皆、愛してるぞ！」と告げたのだった。
改めて「血界 NEW WORLD」にある歌詞を記そう。
最後の願い 我らは繋ぐ 魂の絆が絲を結ぶ
重なる想い 離れていても声は聞こえる 忘れない
永遠の約束 廻る星々 千年の時を経てまた逢おう
虚無（終わり）の先に存在（始まり）がある
今薔薇色の血を流せ 血界 NEW WORLD
銀テープに印字されていたのは「千年の時を経てまた逢おう」だった――。
◆セットリスト◆
【03.07】
01. In the name of justice
02. Revive ～荒廃都市～
03. Deadly sin
04. UNCROWNED KING
05. 薔薇の聖戦
06. 弾丸
07. Kudlak ～死の巨星～
08. 花惑
09. メテオ ～夢寐の刻～
10. Sleeper
～ Dr.solo ～（アネクメネ）
11. 天球Syzygy
12. Quartet～真夜中の四重奏～
13. 紅沙 ～マカイロドゥスの涙～
14. 赤い惑星の天秤
15. 千年樹の希い
16. 流線上のアクア
17. Elfhame ～[R]osalie’s End～
18. Arca ～[J]ustice End～
19. Canis lupus
20. 鬨の声
21. 血界 NEW WORLD ～Justice ver.～
22. Nirgends ～[F]inal End～
En1
01. Pride
02. Dearest you
03. Guardian
En2
01. 嘆きの天使
02. 夜の眼と吟遊詩人
03. Day by Day
En3
01. Rosarium
02. Wonderland savior ～太陽と月の歯車～
【03.08】
01. Schwarzschild
02. 太陽を葬る日
03. Vampire Missa
04. Der König der Dunkelheit
05. 薔薇の聖戦
06. Face
07. Kudlak ～死の巨星～
08. Blood Moon
09. 組曲「狂王」第一番 灯火の雄馬
10. 組曲「狂王」第二番 死の影を運ぶ鳥
11. 組曲「狂王」第三番 美醜なる不死の獣
12. 組曲「狂王」第四番 黒羊は忠誠の夢を見る
13. 組曲「狂王」第五番 落陽に哭く蝙蝠
～ Dr.solo ～（ザハブを継ぐ者）
14. 天象Parade
15. Noblesse oblige
16. 紅沙 ～マカイロドゥスの涙～
17. 赤い惑星の天秤
18. 千年樹の希い
19. 流線上のアクア
20. Elfhame ～[R]osalie’s End～
21. 終末と逆行のコナトゥス ～[D]reizehn End～
22. 黒薔薇の騎士
23. 血界 NEW WORLD ～Dreizehn ver.～
24. Nirgends ～[F]inal End～
En1
01. Night-ship“D”
02. 闇より暗い慟哭のアカペラと薔薇より赤い情熱のアリア
03. 7th Rose
En2
01. Alice
02. 闇の国のアリス
03. 真昼の声
En3
01. Lost breath
02. EDEN
（文・金多賀歩美／写真・TAKUYA ORITA）
【リリース情報】
●New Album『血界』
2023年12月23日（土）発売
［数量限定盤TYPE-A］（2CD＋DVD）GCR-245 ￥7,700（税込）
※オフィシャル通販限定
［数量限定盤TYPE-B］（2CD＋DVD）GCR-246 ￥7,700（税込）
※オフィシャル通販限定
［通常盤TYPE-C］（2CD）GCR-247 ￥4,400（税込）
＜収録内容＞
［Disc-1（CD）］
01. 血界 NEW WORLD ～Dreizehn ver.～
02. Noblesse oblige
03. 組曲「狂王」第一番 ～灯火の雄馬～
04. 組曲「狂王」第二番 ～死の影を運ぶ鳥～
05. 組曲「狂王」第三番 ～美醜なる不死の獣～
06. 組曲「狂王」第夢番 ～旅鼠の行進～（Instrumental）
07. 組曲「狂王」第幻番 ～死出虫の舞踏会～（Instrumental）
08. 組曲「狂王」第四番 ～黒羊は忠誠の夢を見る～
09. 組曲「狂王」第五番 ～落陽に哭く蝙蝠～
10. シュヴァルツヴァルトの獣
11. ヴァイスヴァルトの花嫁
12. 天象Parade（Instrumental）
13. 流線上のアクア
14. 紅沙 ～マカイロドゥスの涙～
15. 終末と逆行のコナトゥス ～[D]reizehn End～
［Disc-2（CD）］
01. 血界 NEW WORLD ～Justice ver.～
02. Kudlak ～死の巨星～
03. 薔薇の聖戦
04. Revive ～荒廃都市～
05. Deadly sin
06. UNCROWNED KING
07. REVENANT ～黒夜現の章～
08. REVENANT ～白昼夢の章～
09. 天球Syzygy（Instrumental）
10. 赤い惑星の天秤
11. 千年樹の希い
12. Arca ～[J]ustice End～
13. Nirgends ～[F]inal End～ ※TYPE-Cのみ収録
［TYPE-A：Disc-3（DVD）］
01. 血界 NEW WORLD ～Dreizehn ver.～（Music Video）
02. 血界 NEW WORLD ～Dreizehn ver.～（Music Video Making）
［TYPE-B：Disc-3（DVD）］
01. 血界 NEW WORLD ～Justice ver.～（Music Video）
02. 血界 NEW WORLD ～Justice ver.～（Music Video Making）