SLAPSLY

CHIYUがソロプロジェクト「SLAPSLY」としてリスタート。その経緯とコンセプトアルバム『OUTBURST 〜The best of the CHIYU〜』完成の裏側に迫る。

ベースヴォーカルとして2018年にソロ活動をスタートさせたCHIYUが、活動5周年を機に今年9月よりソロプロジェクト「SLAPSLY(スラップスライ)」としてリスタート。この度、新曲5曲に加えて過去作品からライブの定番曲9曲をセレクトした、ベスト盤的要素を含むアルバム『OUTBURST 〜The best of the CHIYU〜』をリリースする。昨年〜今年のCHIYUの動きを辿りながら、SLAPSLY始動の経緯と、ベーシストとしても様々なアーティストのサポートを務め多忙を極めるなか完成を迎えた今作について、じっくり話を聞いた。


ずっとモヤモヤしていた

CHIYUさんのVifインタビュー登場はアルバム『SCREAM on the WALL』(2021年11月)以来ということで、早くも2年近く経とうとしています。

CHIYU:そうですよね。去年は曲が全く出せなかったです(笑)。

2022年はツーマンを多くやっていた印象で。加えてThe THIRTEEN、ナナ、CHIYUさんによるスリーマン3公演もありました。

CHIYU:ツーマンもそこまでの本数はないですもんね。で、スリーマンは確か11月でしたよね?

はい。ツーマンは6本、イベントが1本ありつつ、ワンマンは3月の周年ライブと12月に恒例の「聖誕祭」があったという2022年でした。

CHIYU:ソロのライブそれだけなんや(笑)。少ねーなー、(マネージャーに)ライブ増やして(笑)!

(笑)。ただ、ツーマンが多かったことは、やっぱり広げていこうという思いが強かったのかなと。

CHIYU:単純にライブが少なかったのと、とは言えワンマンばかりやってもなという流れからだったんですよね。今回リリースしてワンマンツアーをやりますけど、じゃあその後はとなったら、やっぱり色々な人とライブをしたいなという思いはずっとありますね。

2022年を「自分の中でモヤモヤしていた『このままじゃダメだな』という気持ちが確信に変わった1年だった」と話していましたが、確信に変わったのは何かこれと言えるきっかけがあったのか、徐々に思いが積もった結果だったのか、どちらでしょう?

CHIYU:多分、徐々になんでしょうけど、ライブがつまらないというか。ちょっと語弊があるかもしれないですけど、ライブの本数を増やしたとて、持ち曲だけで回さないといけないから、曲が増えていないと同じことの繰り返しになってしまうんですよね。やっぱり2022年は曲をリリースしていないので余計にそうだったんですけど。それも良くないなという負のループみたいな。それでずっとモヤモヤしていたんですよね。

なるほど。

CHIYU:最初の1〜2年は特にそうならないように、がむしゃらに曲を作っていたんですけど、曲の作り方もこの5年で変わってきているし、時間がないからって、とにかく無理やり出すのも違うなと。だから変に出せないというのもあったんですよね。決して全く曲を作っていない2022年ではなかったんですけど、自分のその時のテンションに合う曲が作れなかったというのが正直なところです。そういうのも色々重なって、多分こっちがそう思うということは、ファンの子も多少なりともそう思っているだろうなと。どこかで仕切り直さないとなというのは、特に2022年最後の対バンだったスリーマンで結構思ったかもしれないですね。

なおかつ今年はSuGの活動もあったので、昨年から水面下で動き出していたであろうことを考えると、サポート業も含めて様々なことが同時進行していたわけですよね。

CHIYU:SuGについては、去年の1〜2月くらいから話はあったんじゃないですかね。今年はPENICILLINが2月から30周年のツアーがあったので、とにかく1月でソロの曲をガッツリ作るしかないという感じだったと思います。去年の聖誕祭の前にも曲は一応あったんですけど、自分自身のテンションが変わっているのと、リリースを今年9月目処にした時に、色々逆算すると1月に作らないともうダメだなと。とりあえず、東京にいなくても作業が進むところまでは持っていかないとなという感じでした。

ベーシストとしてのサポート業とソロアーティストの両立で最も大変なのは、ソロの制作なんじゃないかなと。

CHIYU:そうですね。頭の切り替えが必要なので。PENICILLINのツアー中にKIRITOさんの曲を覚えつつソロの歌詞を書いてみたいな、もうわけがわからないですよ(笑)。今、俺、どれ?みたいな(笑)。

マネージャー:今年の2月は京都、東京、福岡という行程もあったしね。

CHIYU:そう。PENICILLINの京都、KIRITOさんの渋公、PENICILLINの福岡2daysという地獄4days(笑)。全部同じアーティストだったら、行けばあとはやるだけなのでいいんですけど、全部曲が違ったし(笑)。しかもKIRITOさんのあのライブは、半分くらい俺がやったことがない曲だったんですよ。他のサポートメンバーはツアーを回っていたから、ある程度固まっているし、「何だよこれ、ずるいなぁ」ってなりながら(笑)。終わってからも、こっちはすぐに福岡に行かなきゃいけないけど、皆は打ち上げ楽しそうだなぁっていうのもありつつ(笑)。

(笑)。切り替えはもちろん、制作は集中力が必要なので、怒涛のスケジュールだと大変だろうなと思います。

CHIYU:ただ、時間があればいいってもんでもないですしね。サポート業のほうは、PENICILLINやKIRITOさんの曲を覚えるのがめちゃくちゃ早くなりましたよ。何となく1回聴けば、2回目でもう弾ける曲もありますし。すぐ忘れますけどね(笑)。

ところで、SuGの39日間限定の活動を終えた今、どう感じていますか?

CHIYU:あのツアーに関して言えば、あれ以上でも以下でもないと思うんですよね。とにかくファンの子のモヤッとした感情を解消できれば、俺はそれだけでいいという感じだったので、それはできたかなと。スッキリさせたから、今度はこっちはこっちでちゃんとソロに集中しようという。別に引きずるつもりもないし、引きずったとて終わったものは終わったので。

パッと見てわかる変化があったほうが絶対いいなと

昨年末に、2023年のソロ活動5周年に向けて「しっかり見つめ直してリスタートしようと思っている」と話していて、この度ソロプロジェクト「SLAPSLY」としてリスタートを切ることになったわけですが、こういう形にしようというアイデアの発端とは?

CHIYU:去年ずっとモヤモヤがあって、なおかつソロ活動としては今年9〜10ヵ月空くことがもう決まっていたので、リニューアルしたいという話は聖誕祭の時にお客さんにしたんですけど、普通にリリースして、普通にやっても多分変わらないなというのはあったし、自分の気持ち的にも見え方的にも、パッと見てわかる変化があったほうが絶対いいなと思っていて。SLAPSLYという名前は曲ができかけているくらいの段階で決まったんですけど、それまで半年以上、何か良いのがないかなと探していて、ようやく最後のほうでハマりました。とにかくパッと見で変わったことをわからせたかったというのが結構デカいですね。

SLAPSLYになることによって、具体的にこれまでのソロ活動との一番の違いはどんな部分になっていくのでしょう?

CHIYU:CHIYU名義の時も、サポートメンバーはサポートだけどメンバーくらいのテンションでやっているということを言ってはいたんですけど、やっぱりまだ「“サポート”でしょ?」感はあるし、メンバー自身も“サポート”としてやっている感覚が強かったので、バンド名にしてしまえば“CHIYU”ではなくなるというところで。今回から“サポート”という出し方をしていなくて、“SLAPS MEMBER”としていて、SLAPSってスラング用語で「イケてる、最高」みたいな意味なので、「今回のイケてるメンバーはコイツら」みたいな感じで、そういう見え方的にもバンド感を出していきたいなと。それと、ライブでは今までサポートの衣装は作っていなかったんですけど、今回のテーマに合う衣装もちゃんとサポート用に作って、ヴィジュアル的にも一つのバンドとわかるようにガラッと変えましたね。

そういえば、昨年の聖誕祭で「AMArican Dream」のShunさん(G)ヴォーカルver.をやった時に、CHIYUさんが「自分の曲を歌わずにベースだけ弾くって…本当に楽(笑)。煽れるし、前にも上手にも下手にも行ける」と言っていましたよね。

CHIYU:サポートメンバーには、あのくらいのことをもっとやってほしかったんですよ。でもやっぱりサポートとしてはちょっと引いてしまうから、ソロプロジェクトのメンバーとして入ってしまえば、もっと煽れるし、勝手にセンターをぶん取ってもらってもいいし。何してもらってもいいんですよ。ただ自分が目立ちたいだけってことではなく、バンドが良くなるのであれば目立ってくれていい、自分のバンドくらいのテンションでやってくれたらなと思っていますね。

10月28日から始まるSLAPSLY としての1stツアーがJOHNさん(G)、宏崇さん(Dr)とのスリーピースと発表されていますが、基本的にはこの固定メンバーでやっていく予定ですか?

CHIYU:元々はそう思っていたんですけど、AKB48みたいに「今日の劇場に出るのはこの人たちです」くらいのテンションでもよくて。本当は完全固定ができればいいんでしょうけど、物理的にサポートに合わせる形もどうかなというのは議題としてあったんですよ。それと、自分としても刺激をもらえるなと思ったので、今回メンバーを一新してJOHN君と宏崇と一緒にやろうという話になりました。これで例えば「他の現場があるので、JOHN君は無理です」となった時に、JOHN君待ちにはしたくなくて、こちらがライブができる可能性があるのであれば、また新たなSLAPS MEMBERを見つけてくるというのでもいいと思っていて。それがソロプロジェクトの強みでもあるなと思います。それと、このメンツでやるのは初めてなので、ハマるかどうかもまだわからないですしね。

現時点ではツアーまでまだ1ヵ月以上あるので、音を合わせるのもこれからですもんね。

CHIYU:そうですね。俺もJOHN君もまだ曲を覚えてないですね(笑)。

今回、ライブのセットリストをイメージしたベスト盤的なアルバム『OUTBURST 〜The best of the CHIYU〜』がリリースされますが、まずこのタイトルに行き着いた経緯を教えてください。

CHIYU:実は、そこに関しては何でもよかったんですよ。本当に最後の最後で決めた気がしますね。極論『CHIYU BEST』だけでもよかったくらいで。だけど、やっぱり何かワードが入っていたほうが覚えやすいし、この先ベスト盤が出ることになった時に「どのベスト?」ってなるなというのもあるし(笑)。なので、やっぱりタイトルを付けようと。それで、一回壊してしっかり固めたいという気持ちがあったので、このタイトルになりました。

なるほど。

CHIYU:最後のほうで2〜3パターンくらい候補があって、マネージャーとどれがいいか話し合ったんですよね。5周年みたいな意味で『Half Decade』とか、『OUTBREAK』はただ壊れて終わるからやめようとか(笑)。でも一回壊して、暴発みたいな意味で、内に秘めているものを爆発させたいからこれにしようと『OUTBURST』に落ち着きました。あまりにもストレート過ぎるから一回止めようとも思ったんですけど。あ、『Outbreak of Wall』とかもあったな。他にも色々あったんですけど、これが一番ハマりがよかったんですよね。

単語で覚えやすいし、意味としてもわかりやすいですよね。

CHIYU:変に凝りすぎても本当のコア層にしかわからないし、シンプルでわかりやすいほうがいいなと。僕自身の感覚がこの2〜3年でそういうふうに変わったんですよね。歌詞も然り、迷ったらわかりやすいものを提示しようと。