清春、ソロ作品21枚目となるニューシングル『涙が溢れる/sari』をリリース! 楽曲に込めた想い、本音を語る!
清春が新たに世に送り出すのは、愛溢れるミディアムバラード「涙が溢れる」と、濃密なロックナンバー「sari」の両A面シングル。清春のこだわりから生まれる究極のサウンドは、様々な要素が重なり合い一つのアート作品となる。そんな最新作について聞くうちに、話はよりディープな方向へ。少々の棘も交えながら語られた本音。その根底には、清春の“音楽”に対する真摯な想いと“ヴィジュアル系”というシーンへの愛情が確かに在る。
◆僕とファンの子たちが共有しているものを音源にもしたい
――一見切ないタイトル「涙が溢れる」ですが、この“涙”はネガティブな意味合いではないですよね?
清春:そうですね。良い方向ですよ。
――愛溢れる歌詞ですが、今回の歌詞はどの辺りから生まれたのでしょうか?
清春:僕の場合は仮歌くらいの段階でライブでやることがあって、その場で即興で歌詞を作って歌うので毎回違うんです。この曲もそういうパターンだったんだけど、曲のイメージとしてはスケール感が大きいという感じがしてて。僕の曲で「HORIZON」という曲があるんですけど、それに代わるような曲、続編ではないけど「HORIZON」よりも大きいものを目指してて。「HORIZON」は〈生まれ変われるとしてもどうか僕で〉という歌詞の“僕で”が“君で”にライブで成長していっている曲で、「涙が溢れる」もライブを重ねているうちに、ファンの人たちとの関係性を歌うんじゃないかな、という予感はなんとなくあり。そういう方向で改めて書きました。
――PVに1カットだけ入っているライブの映像が、まさにファンのみなさんとの相思相愛の曲という感じがして感動しました。
清春:あれは素晴らしかったですね。ビジネス的な側面でライブというものを扱ってる人たちが多いと思うんですけど、僕の場合は違うので。そこが最終的でもあり基本でもあり、という場所。「CDよりもライブ」って言うこと自体は簡単なことだし言いやすいことなのかもしれないけど、そこが本当であるっていうのが意外とないと思うんですよね。CDはもちろん大事なんだけど、ライブの感じ…演奏ではなくライブのムードというか僕とファンの子たちが共有しているものを音源にもしたいということなので、CDとライブが別っていう次元ではないんですよね。
――初披露が昨年末のライブで、3月のリキッドルームでのライブ、「APRIL ONE WEEK」(※1)、5月の『流星』リリース 記念ライブでも披露されましたが、感触はいかがでしたか?
清春:最初にやったときの反応は良かったですよ。最近はライブ後半にやることが多いので、声が辛いんですけど。高いキーが長く続くので。僕にしては曲調がすごく明るいんですよね。これはチャレンジしてみたんですけど、僕が思うがっかりするチャレンジではない。僕がファンだったらがっかりするなっていう曲ってあるんですよ。違うところを目指してるのはわかるんだけど今までやってきたことと完全に違うだろっていうような。基本的に僕は明るい曲があんまり好きじゃないから自分でも作りたくないんですけど。あとは自分がファンだったら急に明るい曲が来たら嫌だろうなっていうのが昔からずっとあって。
明る過ぎる曲って今まで作ってないんですよ。明るいコードでもメロは切ないとかちょっと悲しげとか、たまにマイナーコード入ったり、引き戻したりすることってあるんですけど。これはドマイナーなところには行ってなくて、僕があんまり聴かないようなTHE BEATLESとかに通じる王道のコード進行を僕なりに解釈して、でもやっぱり明るくなり過ぎない、明るいというよりは大きな方向に。
――私の印象としては、AメロBメロは清春さんらしいなと思ったんですけど、サビ頭の2フレーズで驚きました。
清春:サビってどの部分だと思ってます(笑)?
――え!? 〈凍る雨のステージ〉の部分ですよね?
清春:(笑)そうですね。大サビだよね。メロが4つあるのは僕の中では珍しいから。
――確かに。では〈忘却を果たす音がして〉の部分というのは?
清春:本当はここが小サビだったんですけど、アレンジの段階でサビ前の仕掛けっぽくなりましたね。
――サビ頭の〈凍る雨のステージ 君は忘れないでいて〉の部分は清春さんには珍しいなと。
清春:明るく感じる? まあ俺も感じるんだけど。あと僕の中では青春っぽく感じますよね。コードは超王道だしね。でも〈忘れないでいて〉がちょっと物悲しくて上手くできてるなとは思います。“初期の名曲”ってどのアーティストにもあるじゃないですか。そういうところには出てこない曲だよね。だいぶやってきてやっと生まれた名曲っていう感じの印象です。
――この作品にはたくさんのミュージシャンの方々が参加されていますよね。
清春:ギターが三人入ってるんですけど、元々二人(三代堅、中村佳嗣)だったギターに是永(巧一)さんのギターを加えてまろやかにしてもらいました。
――それはどの段階で?
清春:最後の方。ライブのフレーズのまま出すのもいいんだけど、やっぱり作品だからより良く仕上げたくて。是永さんには黒夢の「ミザリー」のアルバムバージョンを弾いてもらってて、やっぱり上手いなって。歌に対しての解釈の仕方とか。三代さんてどっちかというとトラックの人だから、トラックを積み上げていくっていう感覚で完全な歌メロ的ではないんですよね。
アコースティックなものも大好きなんだけど、是永さんほどはメロウじゃないんですよ。(次の)アルバムもそうなんですけど、今回のテーマに、いろいろなミュージシャンを使いたいっていうのがあって。鍵盤の五十嵐(宏治)さんも素晴らしかったし。
――ヴォーカルのレコーディングはいかがでしたか?
清春:んー…なにげにAメロが一番難しかったですね。〈ねえ 明日が〉っていう出だしが。こういうキャッチーな曲って出だしが難しい。僕の歌って密かにコブシが細かく回ってるというか、音符が一個の音符の中で結構動いてるんですよね。「はー」ではなく「はぅあー」って細かいから、そのニュアンスを出すのが難しい。キャッチーな曲であればあるほど、メロディーの印象は崩したくないんだけど歌の癖は無くしたくないので。歌唱法なんだけどね。普通に歌ってれば簡単なんだけど、山谷があるので。まっすぐになると印象が変わっちゃうんですよ。
――難しいですね。
清春:頭の中で鳴ってるメロがこれなんですよ。そのメロに対しての自分の声の当て方なんで。当て方がたぶん独特というか変わってるんだと思うんですよね。若手の子たちだとそこが当たんない(笑)。完全に当てていくと、当てたことの経験によってメロディーの感じも変わってくるんですけどね。
実はメロディーの締め方に息が入ってくるのにもちゃんと音程がある。エンジニアの人は「ッ」とか子音には音程はないって言うんですけど、僕の中ではすごくあると思ってて。歌い方のタイプによるんですけど、僕らみたいな繊細な部分も激しい部分もあるジャンルって珍しいから。
それがあるのっていわゆるヴィジュアル系、スクリーモ、エモくらいじゃないですか。
僕らみたいな、しかももう少し歌に寄るっていうことになると、まあまあ難しいよね。
――実は難易度が高いジャンルですね。
◆楽曲として積み上げた
――「sari」を両A面に持ってきたのはなぜですか?
清春:僕的に好きな曲調になったというか。これもライブ先行でやってるんだけど、昔の曲で「I know」っていう曲に近いイメージがあって。もうちょっと開けていくんだけど。「sari」っていう言葉がすごく気に入ってて、カップリングやアルバムの中の1曲というよりは両A面という扱いにしたかった。でも1曲目じゃないっていう。僕が好きなアーティストのCDを聴いてこれが入っていたら、すごく推す曲ですね。
――この曲の初披露はリズムレス(※2)のシリーズ公演でしたよね?
清春:そうだね、普通のバージョンじゃないライブだったと思う。それ何年前?
――2010年。2年前ですね。
清春:意外と古いね。
――「sari」と「tanatos」はようやく音源化ですね。リズムレスでのイメージが強かったので、今回音源化されて「sari」が予想外にロックサウンドになっていて驚きました。
清春:もちろんそういうバージョンでもできるんだけど、あの頃は黒夢とsadsをもう一回やりますってなって、sadsをやってる裏でコツコツと作ったり、リズムレスのライブをやってたんですよね。sadsに対して反対の意味もあったのでダークサイドというか、ああいう『TANATOS』、『EROS』、『ORPHEUS』、『SIRIUS』っていう繊細な感じでやってたんだけど。最近はこの感じでやってるかな。両方の感じを混ぜてみたんですけどね。
――レコーディングしてみていかがでしたか?
清春:だいぶ形は変わったけど、まあこれは今僕らが思ってるこの曲のレコーディング状態でしかないので。「tanatos」はどちらかというとライブ寄りではあるんですけど、「sari」はドラムもちゃんと叩いてるので、生か生じゃないかっていうのはやっぱりすごく違いますよね。楽曲として積み上げた感じだと思うんですよ。「tanatos」はムードだけで持っていってる。でも「sari」は両A面だったので、明るさに対しての切迫感もありつつ。あと「sari」のPVは…見た目が好きな人にとっては良いPVですよね(笑)。
――(笑)確かに「sari」の方はお化粧ばっちりで。画的には真っ赤な感じで。
清春:「sari」は僕の中でフラメンコのイメージだったんですよね。
――スパニッシュな雰囲気のギターが入っていますよね。
清春:あのギターめっちゃ上手いですね、是永さん。あれは途中から思いついて、なんかフラメンコにしたいなと思って。それと、女性コーラスも入ってるんですよね。「tanatos」にも入ってる。
――コーラスはなぜ入れてみようと?
清春:『TANATOS』、『EROS』、『ORPHEUS』、『SIRIUS』をやっているときに、僕の中でなんとなく“女神”っていうワードがあって。トラックの中に楽器の一つとして入れるのがいいかなと。
――なるほど。ところで、歌詞中の表記は日本語の「去り」ですが、タイトルの表記が「sari」なのは?
清春:「去り」だとちょっと不吉に感じちゃうんですよね。悟りとかそういう感じの「sari」にしたかったんだよね。焦りとか怒りとか。僕の歌詞って意外と深いですからね(笑)。
ただ難しいだけじゃなくて「なるほど」と段々わかっていきますからね。
メロとか全体のサウンドに隠れちゃうことがあるんですけど「あっ!」と思うときがあると思うので、単純に聴いてるのと歌詞を見ながら聴いてるのとで全然違ってゆきます(笑)。