先日、配信シングル『Hack to the basic』をリリースしたCHOKE。今年、世界中を恐怖とパニックへ陥れている「コロナ」という見えない恐怖。今年のCHOKEは、コロナを…ではなく、世の中の狂騒に翻弄される人たちの様を揶揄しながらも、自分自身を見つめ直すことの大切さを、『全然問題ねぇ』『人間惨歌』2枚の配信シングルの中へシニカルな表現を通して描き出した。
トリッキーな要素を満載したオルタナティブでラウドな楽曲へ、痛い言葉を並べた『全然問題ねぇ』と『人間惨歌』とは異なり、『Hack to the basic』でCHOKEはニューメタルな音楽要素を軸に、どんな状況下へ陥ろうと自分の道を示してゆくと宣言。曲調も歌詞にも前向きな姿勢を提示してきた。その理由を、彼らの言葉たち(インタビュー)から感じ取っていただきたい。
◆過去2作のような問題提起してゆく内容よりは、もっと前向きに楽しめる歌にしたかった
――「Hack to the basic」の歌詞の一節に、〈ライブハウス楽屋の隅っこ 仲間たちの想いもSpit 透き通るような気持ちでいざ逝かん 次は俺たちが時を刻む番〉と記せば、MVはライブハウスを舞台に撮影をしました。この曲には、厳しい制限下にあるライブハウスという環境で活動を続ける自分たちの現状や、世の中からぶった切られ(Hack to the basic)ようとしているライブハウスという環境についての、CHOKEなりの思いも記しているのか。まずは、そこから聴かせてください。
REON:その題材を歌詞に加えたことや、ライブハウスでMVを撮影したのにも事情がありました。
KVYA NONO:撮影をしたライブハウスで予定していた主催イベントが、コロナ禍により中止になりました。そこで無駄にキャンセル料金を払うよりは、発表を予定している楽曲のMVを制作してしまおうと。それまで行き詰まっていた楽曲制作をそこから一気に仕上げ、生まれたのが「Hack to the basic」になります。
REON:ようやく、少しずつですがライブハウス環境も元に戻り始めていますけど、本当の意味で元に戻るにはまだまだ遠い先の話。それでもライブ活動を続けている中、この環境の中で生きていくことに自分たちでも改めて充実感を覚えれば、その楽しさや喜びを感じてもらえたらなという思いも中には記しています。
――CHOKEは、この場所(ライブハウス)で生きていくとも、「Hack to the basic」の中で宣言していません?
REON:バンドは、ライブ活動をやってナンボの存在。今も、ライブハウス毎に「マスク越しなら声を出してもOK」「モッシュは駄目」など異なるガイドラインが敷かれている。お客さんたちも、以前と同じ環境ではまだライブを楽しみづらい状態。そういう環境の中で、まずはCHOKEが率先して新たなライブの楽しみ方を伝えたい。その思いも「Hack to the basic」を通して感じてもらえたらなと思ってる。同時に、今後へ向けてのCHOKEとしての決意表明も、ここには記しています。楽曲もノリが良いから、いいつかみになるんじゃないかな。
――確かに、今年配信シングルとして販売した『全然問題ねぇ』『人間惨歌』と比べたら、キャッチーさはかなり増していますよね。
REON:「Hack to the basic」はとてもノリの良い楽曲。だからこそ、過去2作のような問題提起してゆく内容よりは、もっと前向きに楽しめる歌詞にもしたかった。
――楽曲制作面でも、「つかみ」は意識していたのでしょうか?
KVYA NONO:CHOKEを始めたときによく言われたのが、「ニュー・メタルリバイバルのバンド」という言葉。昨年から今年にかけてはとくに、メタルコア界隈や重めの音を放つヴィジュアル系バンドとの対バン活動を積極的に重ねてきた中、自分たちでも、改めて「メタルコア界隈には格好いいバンドがたくさんいる」ことに気付かされました。その刺激もあったのか、「これからの自分たちは何処へ進み、どういう音楽を提示してゆくのか」を考えたときに、「一度、自分たちの原点となるニュー・メタルに回帰してみよう」という話になれば、今回は、そこを意識して制作した面はありました。実はずっとニューメタルテイストの楽曲を出そうと話には上がってたんですが、タイミングを逃していて今回遂に出せた感じ。同時に、CHOKEのサポート・ドラマーのToshiya Satoくんのドラムは、とてもノリを重視したプレイを示してくれる。そこから強くインスピレーションを受けた面も、ニュー・メタルへ原点回帰してゆく一つのきっかけになりましたね。
Toshiya Sato:デモトラックをいただいたときから、KVYA NONOさんに「この曲ではノリを重視した曲にしたい」と言われてたこともあって、自分の持つビート感とCHOKEの持つ世界観を上手く重ねながら、REONさんのラップとの絡みや弦楽器陣とのノリの共有を意識したプレイを心がけ、叩きました。
B5:メンバーみんな、自分たちの根底にある音楽性や表現したい楽曲スタイルが一緒だったからこうやってバンドを組んだわけだけど。そこの面へ改めてアプローチした結果、以前に持っていたスタイルを、より進化させた形で提示できたのが「Hack to the basic」だったからね。
◆2000年代前半にアメリカで流行った、いわゆるニュー・メタルと呼ばれるムーブメントの匂いへ、オールドスクールなHIP HOPの要素や日本ナイズされたミスクチャーというスタイルの持つ空気を加えて生まれたのが「Hack to the basic」
――「Hack to the basic」を聞いたときに感じたのが、日本の音楽シーンでよく言葉として使われていた「ミクスチャー」というスタイル。あの当時の匂いも、楽曲から感じさせてくれますよね。
B5:2000年代前半にアメリカで流行った、いわゆるニュー・メタルと呼ばれるムーブメントの匂いへ、オールドスクールなHIP HOPの要素や日本ナイズされたミスクチャーというスタイルの持つ空気を加えて生まれたのが「Hack to the basic」。僕ら自身が、あの頃の空気を吸って生きてきたメンバーたち。「その当時の空気感を新たなスタイルで示すバンドが、今のライブハウスに現れてもいいんじゃねぇ?」という意識や考えを持って、「Hack to the basic」を制作した面は確かにあったなと思う。
――懐かしさを感じさせながらも、けっしてレトロでは終わってない感覚がCHOKEらしいですよね。
B5:スクラッチの音を入れるなど「いかにも」なテイストを出しながらも、今のノリも投影。何より「Hack to the basic」は「楽しもうぜ」というのを一番大事なテーマに据えて作ったからね。
KVYA NONO:僕の中でのニュー・メタルの解釈としてあるのが、「サンプリングを入れてナンボでしょ」というHIP HOPのテイストを用いた姿勢。だからスクラッチを入れれば、c/w曲となる「Stay high (retake)」には女性ヴォーカルのサンプリングを張り付けるなど、そういう面にも、今回の作品ではフォーカスを当てています。そのうえで意識したのが、2000年代当時のスラム感というか、当時のHIP HOP特有の「ウェーイ!!」のようなノリ感とは間逆にある、ダウナーでルーズな感覚を大切にしてゆくこと。『Hack to the basic』はシャッフル系の楽曲ながら、けっして跳ねたビートに感じさせないところも、極力スウィング感を無くす演奏を意識した結果のこと。とくにギターには、アンダーグラウンド感を出せたなとも思ってる。
――アゲアゲなパーティミュージックに行ってしまったら、それはCHOKEではないですもんね。
KVYA NONO:違います。それに、REONさんがライブで「イエーイ!!」と叫んでる姿とか想像出来ないじゃないですか。確かにHIP HOPテイストも強いように、ノリ的にパーティ系にも持っていける楽曲ですけどサビなんかはシティーポップの気だるくアダルトなコード感に影響を受けています。あくまでもダウナーに落としてこそCHOKE。そこはしっかり意識した作りになりました。
B5:それでも、ライブの中で演奏をした場合、他の曲と比べたらノリの良さは目立つ曲なんだけど。「Hack to the basic」の歌詞は、その人の捉え方によってはポジティブにもネガティブにも捉えられるように、いろんな解釈を与えていける面白さがある。そういう自由な解釈が出来る曲としても捉えて欲しいなと思っています。
◆順応していくのではなく、その流れをぶった切ってでも新しい生き方を示していかないと、少なくとも自分や自分の身近な人たちの現状は変わっていかない
――改めて「Hack to the basic」の歌詞に込めた想いについても聞かせてください。
REON:今年はコロナ禍という空気に生活が振り回されていけば、今も混沌としているように、いまだ答えが見つかってない状況じゃないですか。それこそ春先頃の僕は、5月や6月頃には、大きな力を持つ人たちが「これからはこういう風に進んでいきましょう」という指針を示すのかなと勝手に思っていたんですけど。現実には、何も示せてはいない。もしかしたら示しているのかも知れないけど、僕には響いてこなかったし、未来は何も見えなかった。「誰かの指示を待っていたら、このままでは自分たちが行き詰まってしまう」。その不安や不満を含め、「未来へ進む道の判断は自分で決めて行くしかない」と感じたことからアジテートしたのが、『全然問題ねぇ』や『人間惨歌』でした。今回も、いくらだって不満は言葉に出来たけど、そこではなく、もっとポジティブなほうへ気持ちを導いていきたかった。だからこそ、曲調も含め、前向きな想いをメッセージしたわけです。サウンド面でも、他のメンバーたちも言ってたように、僕自身もニュー・メタルは自分の音楽スタイルのベーシックにあるもの。楽曲自体が「自分たちのベーシックに立ち返ろう」という意志を持っていたこともあって、歌詞でも「Back to the basic」な姿勢へ立ち返った面もあったなとは思ってるんだけど。ただ、それではヒネリが弱すぎると思い、頭の一文字を変え、「ぶった切る」や「ハックする」という意味を持つ「Hack to the basic」という言葉を掲げました。つまり、「今のベーシックにあるものを壊す」。そこをベースに思いを綴りだしたことが、今の歌詞へと繋がりました。
――「今のベーシックを壊す」というのは、「現状を、今の世の中を変えてしまおう」ということ?
REON:これだけ長く自粛ムードが続いていくと、今は、その中で身についた生き方が生活のベーシックになっていく。しかも現状を見る限り、この状態はまだまだ続いてゆく。だからと言ってそこに順応していくのではなく、その流れをぶった切ってでも新しい生き方を示していかないと、少なくとも自分や自分の身近な人たちの現状は変わっていかない。つまり、「まわりがどうこう」という空気に関わることなく、一つ自分たちの道を決め、それを開拓していこうという意識でいるのが今のCHOKEだからこそ、その思いを「Hack to the basic」には詰め込みました。加えて、CHOKEとしてライブ活動をしていく中で感じ続けてきた、CHOKEを本気で好きでいてくれる人たちとの強い関係や、CHOKEへの想い。本気で「好き」をぶつけ、僕らと繋がっている人たちは今、世界中にいる。そういう人たちへ前向きな想いを伝えたかったという理由もありました。あと、サウンド面でのB5さんのアプローチの話も、ぜひ聞かせてやってよ。
――そこ、教えてください。
B5:今回、「Hack to the basic」の演奏で使ったのは、昔よく使っていたベース。それが、ニュー・メタルが流行っていた当時にいろんなベーシストが使っていた定番のベース。今回、ニュー・メタルへの回帰というテーマがあったことから久しぶりに引っ張りだして弾いたところ、めちゃくちゃ演奏にハマりました。
◆今回は、まさに「Back to the basic」ならぬ「Back to the CHOKE」した作品
――「Hack to the basic」を通し「Back to the CHOKE」したわけですが、今後も今のスタイルを突き詰めていくのでしょうか?
KVYA NONO:今回の配信シングルのc/wにもリテイク曲として入れた、1stアルバムに収録していた「Stay high(retake)」もよくライブで演奏すれば、「ああいうニュー・メタルな感じこそ、本来CHOKEが進むべき道なのかも」という話をメンバー内でもしているんですけど。ここ最近のCHOKEはトリッキーな面を強調しながら「してやったぜ!!」という姿勢を見せてきたことから、今後は「Hack to the basic」のような姿勢を見せてゆくのか。それとも、また違う方向性を示すのか…。正直、そこは自分たちでも、そのときのモード次第のようにはっきりと見えているわけではないです。むしろ、何が飛びだすのかを楽しみにしていて欲しいなと思います。
――CHOKEと言えばトリッキーな音楽性を示すバンドという印象を持ってしまいますが、じつはニュー・メタルなスタイルがこのバンドのベーシックなんですね。
KVYA NONO:そうなんです。しかも今の時期は、トリッキーさりよりもシンプルさの中へ格好良さを求め始めているんだろうね。「Hack to the basic」なんて、6弦ギターで出来るチューニングの曲だし。基本、レギュラーチューニングで演奏をし、一部二音下げた音を入れ込みフックを利かせてゆくスタイルなのも特徴だからね。
B5:これもすべては、Toshiya Satoくんのドラムの音にインスピレーションを受けたことがきっかけ。彼のドラムは、ノリ良い楽曲ほど映えるからこそね。
Toshiya Sato:メンバーみんな、僕のドラムの特徴をすごくつかんでくれています。僕自身が、コテコテのメタルだけでなく、いろんな音楽スタイルを貪欲に吸収してきたタイプ。それこそ、8ビート一つを取っても、その曲のテイストに合った叩き方をしてゆく性格。今回の「Hack to the basic」でも、メタルにモダンポップのノリを重ねるような演奏を心がけたことで、重たさとノリの良さを両立させられたと思っています。
KVYA NONO:今回は、まさに「Back to the basic」ならぬ「Back to the CHOKE」した作品じゃない?
B5:そうだと思う。いろいろ試していく中、改めて「自分たちは何者だったんだろう」というベーシックに立ち返ったような…ね。
◆俺らはニュー・メタルという空気を吸いながら生きてきた。あの頃の空気をまとって、またライブハウスでもっともっと暴れてやってもいいんじゃねぇ!?
――『Hack to the basic』のトレーラーでCHOKEは、未来へ向けた謎かけをしてきました。
KVYA NONO:あの映像はすべて自分が編集をしたように、REONさんの意識も汲み取ったうえで、僕なりの問題提起として示したもの。捉え方によってはネガティブにも受け止められそうだけど、CHOKEの未来は明るければ、2021年はいろいろ仕掛けてゆくとも先に伝えておきます。
REON:今年はコロナ禍の影響もあって、解散したバンドや、ライブ活動の熱が冷めたバンドなど、いろんな姿を目にしてきたし、今も、そういう姿が見えています。そこで嘆いたところで、現状なるようにしかならない。だったら物事をネガティブやマイナスに捉えるのではなく、どれだけ楽しめるか。自分も、他のメンバーも、CHOKE自体が、どんな逆境さえも楽しもうとしてゆく人たちばかり。このバンドに関しては、今後もどんな状況下へ陥ろうとネガティブになることはないですよ。
B5:2020年最後に『Hack to the basic』を通して示したポジティブな姿勢を、CHOKEとしては2021年にも繋げていきたいからこそね。
KVYA NONO:リリースペースも落とすことなく、今年の活動をベーシックに、2021年は今以上にスキルを身につけながら進化していきますよ。
B5:俺らはニュー・メタルという空気を吸いながら生きてきた。あの頃の空気をまとって、またライブハウスでもっともっと暴れてやってもいいんじゃねぇ!?
KVYA NONO:前2作で見せたトリッキーな姿もCHOKEだけど、自分たちの本質にあるのはニュー・メタルなスタイル。こんな時代だからこそ、一度原点回帰をしたうえで、CHOKEとしてのポジティブな姿勢を示した『Hack to the basic』へ、まずは触れてください。
Toshiya Sato:今年出した「全然問題ねぇ」「人間惨歌」「Hack to the basic」の3曲が、これから未来へ進むCHOKEのニュー・ベーシックとなる曲たち。中でも「Hack to the basic」は、2021年のCHOKEを示すターニングポイントの曲になるのは間違いないと思います。
REON:今年はずーっと、そう。まだまだ自粛ムードは続いていきそうなように、現代社会は、それが生きるためのベーシックになっている。でも、俺らはそこにずっと落ち着いてなんかいられない。それをぶった切って、次のステージ(生き方)へ進んでいく。自分たちのベーシック(Back to the basic)へ一度立ち返り、自分たちの本質を見極めたうえで新しいベーシックを示していく。それが、今のCHOKEとしての生き方だからこそね。
(文・長澤智典)
【「Hack to the basic」MV】
【『Hack to the basic』Trailer】
【リリース情報】
●New Single『Hack to the basic』
オフィシャルサイトにて販売中 ¥400
1.Hack to the basic
2.Stay high(ReTAKE)
3.Hack to the basic-Instrumental-
4.Stay high(ReTAKE)-Instrumental-
※2,3,4はオフィシャルショップ限定
配信URL
https://linkco.re/AvAAm3pE
【ライブ情報】
2月10日(水)大塚deepa
2月24日(水)高田馬場AREA
CHOKE オフィシャルサイト
http://choke.tokyo/
CHOKE Twitter
https://twitter.com/CHOKE_tokyo_jp(日本語)
https://twitter.com/CHOKEofficialEN(English)
CHOKE YouTubeチャンネル
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